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「メディアに出ることにメリットはない」そんな落合陽一が5年間もネット番組に出ているワケ

プレジデントオンライン / 2021年8月2日 9時15分

落合陽一さん - 写真=宮﨑健太郎撮影

考える力を身につけるにはどうすればいいのか。『半歩先を読む思考法』(新潮社)を出した筑波大学准教授の落合陽一さんは「上質な情報をインプットし続けることだ。その道の専門家から直に話を聞く『耳学問』が一番良い」という――。(前編/全2回)

■「耳学問」のススメ

――新刊『半歩先を読む思考法』(新潮社)には、2020年4月のはじめての緊急事態宣言中に書かれた、コロナ禍の先を見通したような文章も収録されています。落合さんが未来について考えたり、判断したりする際に、大事にしている情報は何ですか。

本来は「聞きかじった知識」という意味で、あまり褒められた表現ではないのですが、ぼくはよく「耳学問」っていう言い方をしていて、何かを専門でやっている人から直接聞いたことを重視しています。もちろん文献や論文も調べますが、それらを書いてる人ややってる人に直接質問するのが一番良い情報の入手法だと思っています。

たとえば、大学と研究費の話とかだったら大臣と話したり、大学発ベンチャーの人と語り合ったり、具体的には、研究所の話だったら京大の山中(伸弥)先生に聞いてみるとか、それぞれの分野に詳しい人に会ったときに直接聞くっていうのを意識していますね。

――2017年に始まったNewsPicksのライブ動画番組「WEELKY OCHIAI」でも、毎週さまざまな分野の専門家の方々と会われています。

ぼくは、メディアに出ること自体にはそんなにメリットを感じていないんですけど、番組のゲストとしてお呼びして、面白い人やこちらに情報をインプットさせてもらえる人に会える、という意味ではメリットを感じています。

自分の日常ではなかなか会えない人と直接話をするのは、本当に上質なインプットになるので。

何かを知りたいと思ったときに、その分野の本を買ってきて読むより、その業界の人と友達になったほうが早い。どんなに詳しいビジネス書を読んでも、当事者である経営者や起業家からの「耳学問」にはかないません。本人に質問もできますから。

■その道の人に直に会って話すメリット

――この本の中にも、狂言師の野村萬斎さんや、音楽家のケンモチヒデフミさん、柔道家の羽賀龍之介さんなど、さまざまなジャンルの方とのエピソードが出てきます。

この前は建築家の坂茂さんに会いました。坂さんは、阪神淡路大震災や東日本大震災の時に、再生紙の紙管で被災者のための建築を建てたことでも有名な方なんですけど、そういう震災の時に、どんなふうに考えて建築するのか聞いたら、「ゴミが出ないようにする」って言われたんです。

さらに「移築しやすくて、でも10年くらい使える構造になっているようなものを建てる」って。使い捨てじゃない。ぼくは、紙と言われたときに衛生面を考えて、捨てやすくリサイクルしやすいものを作るのかと思っていたから、その逆の考え方が必要なんだって知ることができました。

――普通の社会人は、落合さんのように第一人者の方々に直接、話を聞く機会というのは持ちにくいと思います。

必ずしも、トップの人に会う必要はないと思います。

さっきも話したように、何らかの伝手をたどって、その業界の人と友達になればいいんです。トップじゃなくても知っていることはたくさんありますし、むしろもっと詳しいかもしれない。

自分の立場でアクセスできるいろいろな業界の人と会って、直に話をすることはけっこう重要だと思います。

■情報は、浴びるように頭に放り込めばいい

――インプット先の「多様性」と同時に、インプットする情報の「量」も膨大だと思うのですが、情報を整理したり、記憶したりするうえで意識していることはありますか。

特に何も意識していないですし、どんどん忘れてます(笑)。

でも、つどつど記憶の中から掘り出すことが多いですね。そういえば、あの人があの時、こんなことを言ってたな、みたいなことが、必要な時に頭の中から出てくる感じです。

人間、たくさん情報を浴びておけば、案外、覚えていると思うんです。上質な知識が、頭の中に肩ひじ張らない状態で入っていることが一番重要だと思うので、浴びるように頭に放り込んでおいて、ことあるごとに思い出していく。

知識って、将来、何に使うかわからないですからね。

革新と創造性のコンセプト
写真=iStock.com/edge69
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/edge69

――今回の本の中で<過去の自分と対話している>とも書かれていましたが、ご自身の過去の言葉や行動を何度も振り返りながら考えていました。

全然違うことをたくさん並行してやっているので、単純に、自分が過去に何を言ってきたかを忘れちゃうんです。さっきの記憶と同じで、必要に応じて何度も何度も振り返っています。

1日の中で、だいたい朝9時まで作品のことをやって、12時くらいまで会社のことをやり、12時から大学や研究の仕事をして、夕方6時以降はアートをやり、夜9時以降はメディアとか論文とか原稿のことをやって、夜の12時を越えると今度は制作のことを考えている……みたいに、いつも行ったり来たりしてるんです。

■将来への不安にどう向き合うべきか

――現在、新型コロナ以前には考えもしなかった事態になり、将来に不安を感じている人がたくさんいると思います。そういった不安にはどう対処したらいいでしょうか。

幸いなことに、日本という国にいると、本質的には、お金がなくなって死ぬことも、命を取られることもほぼないはずですよね。

あとは、世の中のちょっと先のことを考える時に、少し視野が広ければ、リスクっていうのはけっこうわかってくると思うんです。

――漠然と不安を感じるのではなくて、一つひとつのリスクをちゃんと考えるべき……ということでしょうか。

落合陽一『半歩先を読む思考法』(新潮社)
落合陽一『半歩先を読む思考法』(新潮社)

そうですね。たとえば、日本の大学で教員として働いているときの不安材料って、ひとつは少子化です。少子化は大学の経営にダイレクトに効いてくるわけで、大学は学生以外からマネタイズする方法をたくさん考えないといけない。

そういうことは随分前からわかっているから、企業からお金を入れたりして、大学の収益モデル自体を変えようとしているわけです。

そんなふうに、長期的にこうなっていくだろうなっていう見通しの中で、どう企業を回していくかとか、サービスを提供していくかみたいなことは、それぞれの仕事の中で当然いろいろあって、それに向けて仕込んでいこうよ、と。

■上質な知識が、将来を見通す力になる

――いまは新型コロナウイルスの終息時期もまだ見通せませんが……。

たとえば、人類が天然痘ワクチンを作り出してから天然痘が消えるまでって、184年かかっているんですよね。それを考えれば、新型コロナウイルスとの付き合いも、ある程度は長くなるんだろうな、ということがわかる。

一方で、ひとつの国で1日に100万人ワクチンを打つことができるインフラが整うことも、歴史上これまでなかったわけです。つまり、流通とかシステムの適応もかなりスピードアップされているから、予期せぬことへの対応も格段にレベルアップしている。新型コロナというウイルスへの不安より、むしろリスクを管理できていることのほうが、意味は大きいんだろうなって。

「半歩先」を考えるとき、それを意識しているだけで違うんですね。だから、将来を悲観する必要はそれほどないのかなって思います。

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落合 陽一(おちあい・よういち)
メディアアーティスト
1987年生まれ。メディアアーティスト。筑波大学学長補佐・准教授。デジタルネイチャー研究室主宰。Pixie DustTechnologies, Inc.CEO。著書に『魔法の世紀』(PLANETS)、『日本再興戦略』(幻冬舎)など。

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(メディアアーティスト 落合 陽一)

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