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「もし今日が人生最後の日だとしたら」落合陽一が悩むときに使う最強の思考法

プレジデントオンライン / 2021年8月3日 9時15分

落合陽一さん - 写真=宮﨑健太郎撮影

アウトプットの質を上げるには、何が必要なのか。『半歩先を読む思考法』(新潮社)を出した筑波大学准教授の落合陽一さんは「ひとりで抱え込んで悩んでも、ろくなことがない。考えをいったんアウトプットして、世の中と壁打ちをしたほうがいい」という――。(後編/全2回)

■考えをアウトプットする大切さ

――新刊『半歩先を読む思考法』は、2019年1月から約2年間、ウェブ上に書き続けた文章をまとめたものですが、日々、考えを「書く」ことで、何か感じたことはありましたか。

考えることはもちろん大切ですけど、アウトプットしたものを誰かに見せて考えてもらうのもけっこう大切だなって思いました。

自分の脳みそだけで考えると、どうしても考えの幅が狭くなるから、考えたことを誰かにぶつけて、それが返ってきて……つまり世の中と壁打ちをする。こういうことを繰り返す習慣が大切だなと。

ウェブ上に書くと、賛否はともかく、必ず誰かが意見を言ってくれますから。それに、ひとりで抱え込んで悩んでも、ろくなことがないので。

――ひとりで考える時間は、それほど必要ないでしょうか。

もちろん、「悩む」っていうフェーズを作らないと出てこないものもいっぱいあると思います。天才を万力でキリキリとしめつけることで出てくる「ストレスの雫」みたいなものは絶対にある。

それはそれで間違いなく価値があるんですけど、だいたいのものは、考えをいったんアウトプットして、世の中と壁打ちすることによっておもしろさが生まれてくる気がします。

■“壁打ち”できる環境を作ったほうがいい

――アウトプットした時に壁打ちできる環境を自分で作ることも大切なんですね。

ビジネスでも研究でも、何かおもしろいことを思いついたら他人と共有して、共有したものを互いに高め合ったり、深め合ったりするような環境に身を置けるかどうか、ということだと思うんです。

それは子育てでも同じで、子どもが小さいうちは、自分が考えたことを他人に聞いてもらったりとか、話したりするのが楽しいっていうコミュニティにおいてあげられれば、それは幸せなことだし、もしそういう環境じゃないなら、親がそういうコミュニティを探すことも大切だと思います。

手描き入力と出力サイクルイメージ
写真=iStock.com/claudenakagawa
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/claudenakagawa

――子どもの場合は、やはり親の力も大きいのですね。そういったコミュニティに身を置くことが、その人の姿勢(attitude)を育んでいくと。

そう思います。小さい時に、周囲がちゃんと考えを聞いてあげたりとか、安直な答えに突っ走っていかないようにしたりとか、ここから先は思い切ってやってみたほうがいいとか、そういう知的ノウハウをわかっている人たちがまわりにいると、子どもは磨かれると思います。

■思考を止めて、思い込んだ上で行動に移す

――筑波大学の永田(恭介)学長との会話の中で、<研究するには【思い込む力】が重要>というお話がありました。

研究に限らず、世の中のものってだいたいそうじゃないですか。ある程度の段階で「これはこの感じが正しいんだ」と思い込み、実際に手を動かしてやってみないと、成功も失敗もできない。

思考ばかりで知り過ぎちゃうと足が重くなるし、足を軽くするためには多少は向こう見ずなほうがいいんだけど、ただ向こう見ず過ぎるのもよくない。だから、どこかで思考を止めて、思い込んだ上で行動に移すこと。そこは大切だと思っています。

――落合さんが大学の先生として教え子を見ていて、その「思い込む力」で突き進める学生と、そうでない学生の違いってありますか。

これはいつも学生さんに口を酸っぱくして言っているんですけど、ふだん生活している時に、空いている時間をすべて研究に費やしている人は向いてるけど、そうじゃない人は向いていないよって。

研究と言っても、空いている時間すべてラボで実験装置を回してろ、という意味ではなくて、たとえば、食事の時に調味料が5つあったら、5つをそれぞれ使ってみて、どれがどうだったかを覚えておいてそれぞれの施行結果を吟味しまた繰り返す、みたいな人じゃないと、あまり研究には向いていない気がしますね。

つまり、生活の中でトライアンドエラーを永遠にし続けるようなタイプは、実験装置がなくても何かの研究をはじめるわけです。

たとえば、ぼくはいま、エキゾチックショートヘアの子猫を飼いはじめたんですけど、その体重増加曲線とか食事記録とか運動記録や水飲みの回数は、自動でとれるものも手動で記録するものも合わせて180日とか200日とか、飽きずに書き続けられるんですよね。その都度食べた餌の好みと体重増加を見比べながらやっていく。

■飽きずに続ける忍耐力も研究者には必要だ

――子猫の体重を記録しているんですか。

キャットフードの組み合わせを毎日変えて、トライアンドエラーをしてるんです。毎日記録していくと、このフードとこのフードの組み合わせだと、1日30グラムずつ増えていくんだ……みたいなことが少しずつわかっていく。

エキゾチックショートヘアの体重増加曲線を、毎日、エサを変えながら調べていくのは、ネットを見ても誰もやってないですよね。仮に、これを100匹でやったら、何か明らかになって論文書けるかなって思いながらやるんです。

研究って、こういうことを飽きずに続けられる人が向いているんだと思うんですよね。

――落合さんは研究者に向いているということですね。

ぼくはすべての事柄においてそういうプレースタイルなので。職業研究者っていうものが向いているかはわかりませんが、研究するっていうのは、実験室にこもって毎日実験することが本質ではなくて、何かわからないことを明らかにするためにエネルギーを使って、やり続けていくことだと思うので。

化学・科学イラスト
写真=iStock.com/emma
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/emma

■落合陽一が考える“強い人間”の条件

――『半歩先を読む思考法』の中では、<結局君はどうしたいのか、なんなのか、世界観は? みたいなことと向き合い続けることができた人は強い><魂の色と向かい合う時間を大切にしている>と書かれていました。

幸いなことに、日々、ものすごく忙しいんですけど、ぼくの場合、目の前のやるべきことが全部、魂の色を聞かれる仕事なんですよね。

「いまの時代に自分がどういう意味をもってこれをやるのか」「なぜいま世界でこれが必要なんだ」っていうことを、常に考えないといけない。そういった自分のコアにあるもののことを、「魂の色」と表現しました。

研究論文を書くとか、作品を作るとか、音楽会を仕上げるとか、会社の新しいビジョンや製品を作るとか、そういうものが全部、端から見れば「それでお前は何をしたいのか」「別にやらなくてもいいんだぞ」って言われかねない仕事ばかりなので。

■「もし今日が人生最後の日だとしたら」という思考法

――「なぜいまこの仕事をするのか」を考えるのが大切なんですね。

落合陽一『半歩先を読む思考法』(新潮社)
落合陽一『半歩先を読む思考法』(新潮社)

そう考えてみるだけで、全然、違うような気がします。たとえば、何かの「二番煎じ」って言葉がありますけど、なぜいま、このタイミングで二番煎じをするのかっていうことに説明がつけば、仮にテクノロジー的に二番煎じだとしても別に問題ないと思うんです。

最先端のものが常に機能するわけではない。たとえば、エジソンが最初に映写装置を作りましたけど、リュミエール兄弟はそれを発展させていまの映画につながる映写技術を作り、それが世界に普及しているわけで、リュミエール兄弟のことを二番煎じだっていう人はいないですよね。

――落合さんも一つひとつの仕事をする際に、「なぜいま」を常に考えながら臨んでいるわけですね。

そうですね。スティーブ・ジョブズのスピーチで「もし今日が人生最後の日だとしたら、今日これからやろうとしていることをやりたいだろうか?」という有名な言葉がありますけど、ぼくも常に「人生最後の日」にやらなそうな仕事はやらないって決めてるんです。

いま毎日たくさんの打ち合わせに出ているのは、それがどれも重要だからです。

――通常、雑誌などに寄稿する場合、1回の原稿で結論まで書いて完結するケースが多いと思いますが、今回の本では結論にいたるまでの途中経過が記されています。

次の記事に「続く」という形で終わっている原稿もけっこう本に入ってます。普通、2400字の原稿なら、だいたい600字ずつで起承転結がくるんですけど、ウェブで書く場合は制限もないので、2400字すべて「序」だけが書いてあったりして。

で、次の記事で終わるのかと思ったら、また次も「序」だけだったみたいな(笑)。自分で読み返しても、ああいうのは、けっこうおもしろいのかなと思いました。

――そのほかに、この本ならではの部分はありますか。

ぼくの生の言葉がいちばんよく出ている本だと思います。ぼくは、けっこう合理的な人間だと思われてるところがあるみたいなんですけど、実はそんなにシンプルじゃない。今回の本を読んでもらうと、意外なぼくの本質がわかってもらえるような気がします。

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落合 陽一(おちあい・よういち)
メディアアーティスト
1987年生まれ。メディアアーティスト。筑波大学学長補佐・准教授。デジタルネイチャー研究室主宰。Pixie DustTechnologies, Inc.CEO。著書に『魔法の世紀』(PLANETS)、『日本再興戦略』(幻冬舎)など。

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(メディアアーティスト 落合 陽一)

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