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派閥争いで「どっちについたら得か」を考える人が絶対出世できないワケ

プレジデントオンライン / 2021年8月8日 11時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/stockce

会社内で派閥争いが持ち上がったとき、どうすればいいのか。経営共創基盤の木村尚敬氏は「いちばんダメなのは、自分の損得を判断軸にしてどちらにつくか考えること。『自分が社長だったらどうするか』を判断軸にするべきだ」という――。

※本稿は、木村尚敬『修羅場のケーススタディ 令和を生き抜く中間管理職のための30問』(PHPビジネス新書)の一部を再編集したものです。

社長の行き当たりばったりの方針に振り回される我が社。役員は社長のイエスマンで、現場の声は一切伝わらない。そこで、中間管理職層が立ち上がり、社長の上の「オーナー会長」への直訴をしようという話が持ち上がっているらしい。
私も社長のやり方には反発を覚え、実際、直訴のメンバーに入るよう声もかけられているが、正直、こんなクーデターのようなやり方はどうなのかという思いもある。ただ、ここで参加しないと「裏切者」の烙印を押されかねない……。
Q:あなたならこのクーデターに参加するか? 「裏切者」と思われても反対するか?

■クーデターに参加するべきか否か

このケースを考える際に重要なのは、「判断軸」です。自分は何をもってイエス・ノーを決めるのか。それが問われます。

最もダメなパターンは、自分の損得を判断軸にすることです。

■損得を判断軸にしてはいけない理由

例えば、「社長についたら、管理職グループから爪弾きにされる」「管理職グループにつけば、上ににらまれて出世に響く」といった軸で判断しようとする。さらにはこの場合、クーデターに参加すれば「会長派」、参加しなければ「社長派」と見なされるでしょうから、「どちらの派閥につけば有利か」といういやらしい読みも働くかもしれません。

しかし、会社の中核を担うミドルリーダーであれば、判断軸はあくまで「事業の継続性や長期的な成長につながるか」であるべきです。そして、事業や組織を持続的に発展させるために、会社の仕組みや意思決定プロセスはどうあるべきかについて、「自分が社長だったらどうするか」を考える。それを自分の判断軸とすべきです。

「社長のやり方は、自分が考える『会社のあるべき姿』とは違う」と判断するのか、「自分が社長でも同じやり方をする」と判断するのか。そこをまず見極めるべきです。

■物事を変えたいなら「批判」より「提案」

「自分ならこうする」という提案がないまま、「社長のやり方が気に入らない」という感情だけで動くのであれば、それは単なるクレーマーです。「学級委員長が気に食わないから、担任の先生に言いつけてやろうぜ」と考える小学生と変わらないレベルの話であり、クーデターと呼ベるほど大層なものではありません。

木村尚敬『修羅場のケーススタディ 令和を生き抜く中間管理職のための30問』(PHPビジネス新書)
木村尚敬『修羅場のケーススタディ 令和を生き抜く中間管理職のための30問』(PHPビジネス新書)

よってこの場合、そもそも「クーデターに参加すべきか、否か」を問いとすること自体が無意味です。ビジネスパーソンが物事を変えたいなら、「批判」より「提案」が必要です。

目の前にある課題に対し、「自分なら具体的にこのような改善や改革をする」と言えるものがなければ、たとえ会長に直訴したところで、何かが変わるわけではありません。

批判をするのは簡単です。しかし「自分ならこうする」というポジションを取らない限り、他人を批判する権利はないと私は考えます。

企業経営や社会課題における重要な判断は、トレードオフの二択を迫られることがほとんどです。一方を立てれば、もう一方は立たず、全員賛成の答えは存在しません。

■「提案」があれば次に選ぶべき行動を判断できる

2020年に世界を襲ったコロナ禍において、「感染防止策か、経済対策か」の議論が沸騰しましたが、感染防止を優先して緊急事態宣言を出せば、「飲食店や旅行産業が潰れるじゃないか」と言われ、経済対策を優先して緊急事態宣言を出さずにいると「これ以上、感染者が増えたらどうするんだ」と言われる。どちらを選択しても、反対意見が出ることは避けられません。

ただし多くの人は、Aと言われれば「Bがいい」、Bと言われれば「Aがいい」と脊髄反射的に批判しているだけで、「自分ならこうする」と提案を持っている人はごく少数です。

提案がなければ、批判は批判のまま終わってしまい、現実の課題解決には結びつきません。だからこそリーダーは、どんな課題に対しても、提案を持っていることが求められます。

提案があれば、次にどう行動すべきかも判断できます。

「社長のやり方は、自分が考える『会社のあるべき姿』とは違う」と判断したなら、しかるべき相手に提案をぶつければいいでしょう。

取締役会にかけてもいいし、社長と1対1の勝負をしてもいいし、管理職たちが直訴しようとしているオーナー会長に持っていってもいい。どれが最も効果的かは、その会社の仕組みや意思決定プロセスによりますが、いずれにしても提案があることが大前提です。

■自分の提案をぶつけ、堂々とケンカせよ

一方、「自分が社長でも同じやり方をする」と判断したなら、管理職グループに自分の提案をぶつけるべきです。

管理職たちも提案を持っているなら、建設的な議論に発展するかもしれませんが、おそらくこの直訴計画は、ただただ「社長が気に入らない」という単なる感情論に基づく可能性が高いと推察されます。

そこで自分一人が「このクーデターは、本当に会社の事業継続性や長期的な成長につながるのか」という本質論を突きつければ、相手の反感を買い、直訴メンバーを敵に回すことになるかもしれません。

それでも信念を持って、堂々とケンカできるか。ここがリーダーとしての勝負どころです。

ボクシンググローブをはめたビジネスパーソン
写真=iStock.com/bee32
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/bee32

かつての日本企業はメンバーシップ型雇用が主流で、終身雇用・年功序列を約束される代わりに、会社への忠誠心を求められました。しかし今後は、グローバル競争力を高めるため、欧米と同じようにジョブ型雇用への転換を進めざるを得ないでしょう。

ジョブ型の組織では、忠誠心の対象は会社ではなく、あくまで「事業の継続性や成長性」です。一人ひとりが「どうすれば事業を持続的に発展させられるか」を純粋に考えることができれば、本当に強い組織へと変わっていくはずです。

■「出世したいなら上司から可愛がられろ」は本当か?

読者の中には、こう考える人もいるかもしれません。

「組織人が周囲と戦ってばかりいたら、結局は自分が排除されるだけでは?」
「そこまでハイリスクな戦いを挑まなくても、もっと穏便なやり方があるのでは?」

特にこれまで修羅場らしい修羅場を経験せず、順調に管理職になった50〜60代の人ほど、こうした疑問を持つかもしれません。

でも、断言しましょう。

修羅場を避けて、空気を読みながらうまく立ち回ることで出世してきたリーダーは、これからの時代は生き残れません。

かつての終身雇用・年功序列の時代なら、上の言うことを聞いて波風立てずにいれば、いずれそれなりの役職をもらえました。上司のご機嫌をうかがい、可愛がられる存在になれば、「お前もそろそろ役員にしてやろう」と引き上げてもらえたのです。

■自分で決めた経験がない管理職は結果を出せない

しかし、そんな時代はとっくの昔に過ぎ去りました。

成果を出せない社員を優遇するような余裕はどの会社にもすでになく、社内のポストもどんどん減っていっています。

そんな中、なんとか管理職のポストに就くことができても、結果が伴わなければすぐにポストを追われることになります。

波風立てずに生きてきたということは、「自分で決める」「反対を恐れずにやり抜く」ことをしてこなかったということでもあります。そうした人が組織のトップになって修羅場に直面すると、決めることも実行することもできず、身動きが取れなくなってしまうのです。

戦いから逃げ続けてきたために、いざ戦いを率いる立場になった時に成果が出せない。

最後は「管理職失格」の烙印を押されて、せっかく手に入れたポストを追われるのです。

■「修羅場経験」が価値となる

確かにこれまで日本の組織には、リスクを取らず、なるべく失敗しないように安全な道を歩んだ人が出世しやすい構造がありました。

しかし非連続な時代に突入してからは、むしろ王道を外れて修羅場を経験した人が経営トップに抜擢されるケースが増えています。

日立製作所の川村隆元会長や良品計画の松井忠三元会長がその代表的な例でしょう。いずれも低迷していた業績をV字回復に導いた名経営者として知られますが、二人とも子会社への出向を経験するなど、社内の本流を外れたキャリアを辿ってきました。

彼らは会社が危機的状況に陥ったタイミングで、いきなり経営トップに抜擢され、見事に改革を成し遂げました。本流を外れたことで味わってきた様々な「修羅場」の経験が活かされたのだと思います。修羅場を経験していないエリート出世組では、こうはいかなかったでしょう。

失われた20年を経て、日本の組織も従来のやり方では前へ進めないことに気づき始めています。リーダーの育成や登用についても同様で、将来の経営者候補となる管理職にあえて困難な事業やプロジェクトを経験させ、危機的状況に強い人材に育てようとする企業が増えています。

「出世するためには波風を立ててはいけない」時代はとっくに終わろうとしているのです。

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木村 尚敬(きむら・なおのり)
経営共創基盤(IGPI) 共同経営者マネージングディレクター
慶應義塾大学経済学部卒業。IGPI上海董事。IGPI では、製造業を中心に全社経営改革(事業再編・中長期戦略・ 管理体制整備・財務戦略等)や事業強化(成長戦略・新規事業開発・ M&A 等)など、さまざまなステージにおける戦略策定と実行支援を推進。著書に『ダークサイド・スキル』(日本経済新聞出版社)など。

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(経営共創基盤(IGPI) 共同経営者マネージングディレクター 木村 尚敬)

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