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「株投資で一番難しい」値上がりした株の売り時を確定させる"たった一つの法則"

プレジデントオンライン / 2021年8月7日 9時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/tommy

運良く保有する株が値上がりした場合、いつ売ればいいのだろうか。オンライン金融スクール「GFS」校長の市川雄一郎氏は「株価の値動きで売買を考えると損をしやすい。確実に利益を出す人は、株価の値動きとは違う判断基準を持っている」という――。

※本稿は、市川 雄一郎『投資で利益を出している人たちが大事にしている45の教え』(日本経済新聞出版)の一部を再編集したものです。

■コロナ禍の株高はなぜ起きているのか

2020年には、コロナ禍で全世界が大不況に陥っているにもかかわらず、株価は世界のどの市場でも大きく値上がりしました。なぜこんな経済の実情に合わない現象が起きているのでしょうか?

日銀や米国FRB(連邦準備制度理事会)などの通貨政策当局が市中に資金を大量供給してカネ余りが起きていることが大きな要因でしょうが、もうひとつの理由は「コロナ禍が終息すれば、世界経済は再び力強く上昇する」という世界の投資家の気持ち、期待が背後で支えているからだと思われます。

このように、株価は必ずしも足元の企業業績をダイレクトに映した価格にはならないし、企業価値とぴったり一致するわけでもありません。株価は、市場で取引をしている投資家が決めています。正確に言うと、投資家心理、つまり、「投資家の気持ち」が株価を決めているのです。

■「株価は常に間違う」

天才投資家と言われるジョージ・ソロス氏は、「再帰性(リフレキシビティ)」という理論をもとに、人の心理が与える相場への影響について語っています。理論そのものについては、書籍などを通じてご自分で勉強していただきたいのですが、非常に簡略化していうと、以下のような考え方です。

株価というのは常に間違える。なぜかというと、例えば、株価が100円から150円になったとする。そこで株が上がったからということで買いにくる人が出てくる。その結果、株価は200円になる。さらに今度は、200円になった、すごく上がっているということで買う人が現れ、株価はさらに上昇して250円になる。こうなると、もともと100円だったという株価はどこかにいってしまい、ここに乖離が生まれることになる。

つまり、株価が動いた後に、それを見て買ったり売ったりする人がいるために、これが連鎖していき、結果として、今ある株価が本来の価値とは違うものになってしまう。このように、常に株価というのは本来の価値とは違うところで動いているというのです。

これは株価が下がるときも同じで、下がったから売るという人が出てきます。慌てて売ろうとする人は少なくありません。それが連鎖して、下がり続けてしまうことになるというのですね。

株価は結局、人間の期待値や落胆のかけ合わせで決まるのです。そして、この期待値と落胆は人の心理ですから、常に上下します。ムードや勢いに左右されやすいものです。そうした人間の心理は、誰にも正確に読み取ることはできません。だから、無視してしまった方がよいのです。

■応援条件に合えば買って、合わなければ売る

では、値動きでないとしたら、どうやって売り時と買い時を判断すればいいのでしょうか?

株式の売買のタイミングを間違えないようにする法則が、実はひとつだけあります。それは「条件に当てはまる銘柄を購入し、条件に当てはまらなくなった時に売却する」という実にシンプルなものです。本来の投資とは、こういうものを言います。

ここでの「条件」とは、前回の記事で紹介した上がる株の4条件ではなく、それをベースにして、自分自身で決めた「あなただけの投資先の条件」という意味です。

「好きな商品を作っているから」とか、「女性が活躍している会社だから」とか、「環境対策への取り組み姿勢に共感できるから」など、あなただけの「投資先を応援するための前提条件」と言い替えてもいいでしょう。手間ひまはかかりますが、この法則を確立することが基本です。

値動きだけを見て、目先の利益を追求する行動は単なる「投機」なのであって、条件に合う銘柄を選んで資金を投じ、長期的な成長と利潤をじっくりと追求するのが真の「投資」です。そう考えると、「短期投資」という言葉は投資の本質と矛盾する言い方かもしれません。短期的な値動きだけを見て売買のタイミングを判断するのが短期投資の条件なわけですから、それは限りなく投機に近い考え方だと言っても過言ではありません。

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写真=iStock.com/guvendemir
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/guvendemir

■売り時例①「好きな商品や店がなくなった」

次に、「応援条件に当てはまらなくなった時」とはどんな場合なのか、ペッパーフードサービスを例題にして考えてみましょう。

例えば、あなたが食いしん坊で「いきなりステーキ」や「ペッパーランチ」が好きでよく行くから、同社株を上場時に購入したとします。その投資判断には「業績を伸ばして利益を上げてほしい」という期待に加えて、「お店をもっと増やしたり、味やサービスをもっと良くしたりしてほしい。そうなれば、もっと行きたくなるから」という、ファンとしての思い入れもあるはずです。

ところが、その後の展開は期待外れ。途中までは順調だったものの、無理な事業・店舗展開がたたって「いきなりステーキ」は店舗網を大幅に縮小、「ペッパーランチ」に至っては他の会社に丸ごと売却することになってしまいました。

普通に考えれば、ここが同社株を手放すタイミングになります。

「もう以前のような味やサービスは望めないだろう」と考えれば、最初の応援条件から外れるわけですから、売却するという判断になるでしょう。けれども、「まだステーキ事業は続けていく計画だし、きっと経営再建できるはず」と考えれば、何も急いで売ることはありません。目先の株価など気にせずに、そのまま持ち続ければよいのです。どちらを選択するかは、同社の今後の経営に対するあなた自身の分析や思いの強さ次第ということです。

■売り時例②「創業社長が退任した時」

もうひとつ、投資先の創業社長が交代するというケースを考えてみましょう。

市川雄一郎『投資で利益を出している人たちが大事にしている45の教え』(日本経済新聞出版)
市川雄一郎『投資で利益を出している人たちが大事にしている45の教え』(日本経済新聞出版)

あなたがハイテク系ベンチャーX社の株式を上場時に買ったとします。同社の創業社長であるY氏は強烈な個性とリーダーシップでX社の成長を引っ張ってきたオーナー経営者です。上場後も業績は絶好調で、同社株を持ち続けることに何の不安もありませんでした。

ところが、X社はある日突然、M&Aによって別の会社に買収されることがわかりました。創業社長のY氏も退任し、自分の持ち株も全て売却して、X社の経営から一切身を退くというのです。さて、あなたならどのように判断するでしょうか?

この場合も、要はあなた次第なのですが、基本的にはここは手仕舞いにする、つまり売却を考えるタイミングでしょう。なぜならば、会社の顔のような存在であるカリスマ型の創業社長が退く場合、その後の経営戦略だけでなく、企業文化や企業風土まで大きく変わってしまうことがままあるからです。「看板は同じでも、中身は全く別の会社」になってしまえば、当初の応援条件から外れることになります。

投資先を選ぶ条件は、業績データのように数字で計測できる定量的なものだけでなく、むしろ、数字では捉えきれない定性的なものの方が多いかもしれません。「好きなお店がなくなる」「創業社長が退く」といった応援条件の変化は、その典型例です。

応援条件を決めるうえで大事なことは、複数の条件を設けることです。ただ、あまり多過ぎると、話がややこしくなって、判断に迷うことにもなりかねません。その点は要注意です。何個くらいが適切かは人それぞれで、一概には言えませんが、最低限の条件さえ決めておけば、売買のタイミングを検討することは比較的簡単にできると思われます。

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市川 雄一郎(いちかわ・ゆういちろう)
Global Financial School校長
Global Financial School校長。CFPR。1級ファイナンシャル・プランニング技能士(資産運用設計業務)。日本FP協会会員。日本FP学会会員。1969年生まれ。グロービス経営大学院修了(MBA/経営学修士)。日本のFPの先駆者として資産運用の啓蒙に従事。ソフトバンクグループが創設した私立サイバー大学で教鞭を執るほか、金融機関の職員や顧客に対する講義や講演も行う。著書に『はじめての資産運用(日経文庫Personal)』[武田米生氏との共著]、『投資で利益を出している人たちが大事にしている45の教え』(日本経済新聞出版)がある。

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(Global Financial School校長 市川 雄一郎)

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