仕事のデキる人とデキない人を決定的に分ける「たった1つの口癖」
プレジデントオンライン / 2021年8月10日 9時15分
※本稿は、浅川智仁『仕事ができる人は、3分話せばわかる 信頼を勝ち取る「準備・具体性・ストーリー」』(三笠書房)の一部を再編集したものです。
■「5分もお時間をいただいて、ありがとうございます!」
できる人は、常にまわりへの感謝を忘れない――と言うと、陳腐に聞こえるかもしれません。
「そんな簡単なことで、『できる人』になれるはずがない」
「感謝くらいなら、自分だってやってる」
というわけでしょうか。
たしかに、よほど自分本位な考え方の持ち主でないかぎり、親切にしてもらったら感謝をするのが常識でしょう。
しかし、できる人の「感謝する力」は並のものではありません。
相手がまだ何かをしてくれたわけではないのに、いや、期待外れの行動に出たときでさえ、できる人は感謝をします。
たとえば、電話営業なら、「相手が電話に出てくれたこと」に、まず感謝してスタートします。
「この電話を取っていただいて、ありがとうございます!」
「突然の電話なのに、社名と私の名前を聞いてくださり、ありがとうございます!」
「5分もお時間をいただいて、ありがとうございます!」
「あろうことか、個人情報や、お悩み、願望、今の状況までお話しくださって、本当にありがとうございます!」
このように、成約に至るまでに感謝するべきポイントはたくさんあります。それはたとえ成約に至らなくても同じです。
■「なんだか感じが悪い人」になっていませんか?
逆に、感謝の気持ちに欠けていると、ちょっとした拍子にボロが出てしまいます。
たとえば、クロージング(顧客に成約をうながすこと)をかけたとき、お客さまに、
「うーん、やってみたい気持ちもあるけど、家族に相談してみないと……」
と渋られた場合、感謝の気持ちに欠けていては、
「えっ、ここまで話が進んだのに、今さら家族に相談するんですか?」
と思ってしまったりします。
あるいは、商談をしていて、先方が「検討したいから、数字とか、具体的に示してくれる?」と言ってきたとき、「うわっ、面倒だな」と思ってしまったり……。
たとえ口にしなくても、本音は言葉尻や態度に表われます。すると、成約はおろか、お客さまはもう心を開いてさえくれなくなります。
しかし、感謝の気持ちがある人は、
「ご家族に相談していただけるんですね! ありがとうございます!」
「あっ、期待してくれている。そうか、数字で具体的にお話ししたら、前に進めてくれるんだ! ありがとうございます!」
と、自然と考えることができます。
感謝されて気分を悪くする人はいません。ここまでお伝えしたように、人は自分を認めて肯定してくれる人を好きになります。
感謝を続けていると、やがて相手も、「なんだか感じのいい人だな」「この人から買ってやりたいな」と思うようになります。
「感謝できる人」と「感謝できない人」の差がそのまま、「できる人」と「できない人」の差になるのです。
■相手の心に「火をくべる」クロージング
電話営業でいよいよクロージングをするという際、相手に「家族に相談したい」と言われたら、私はよく、こんなトークをしていました。
「やってみたいんだけど、その前に家族と相談したい……」
「えーーー本当ですか! うれしいです!」
「えっ、なんで喜んでるんですか?」
「だってこの電話を取っていただくまでは、商品のこと、もっと言うと僕の存在すら知らなかったわけじゃないですか。それが、この今の時間で、家族との相談のテーブルに乗せようと思ってくださった。これは営業の奇跡です。出会いのご縁です。もう決める決めないなんてどうでもいい。今日、そこまで思っていただいたことにすごく興奮しています。ぜひ、聞かせてください。なんでやってみたいと思ったんですか?」
「いや~だって、こんなにエネルギーを持ってしゃべってくれる人はあんまりいないし、なんか電話営業なのに、自分の話を、家族や友人にするよりもしちゃってるし。そういう自分の拠り所にできる人が、いてもいいのかなって思ったんですよね」
「いや~うれしいです。ほかにはどうですか?」
「たしかに、この教材でコミュニケーション能力が上がるなら、これからの人生にとって絶対にいいし、一生モノのノウハウだから、金額は張るけど、一生使えるという意味で言えば、そんなに高くないのかなって」
「ありがとうございます。ほかにはどうですか?」……
このように感謝しながら、相手の心の火が消えないように「決心の薪」をくべ続けていると、お客さまも「家族に相談しなくてもいいかな……」と思い始めるのです。
■誰とも「命の時間」のやり取りをしている
相手が自分と会ってくれているとき、あるいは電話で話を聞いてくれているとき、そのこと自体に感謝できる人は、次のような考え方を根底に持っています。
![ビジネスマン](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/d/a/670/img_dae557acb96580a16d19ba7d39f364a8739975.jpg)
「相手は今、自分のために、貴重な命の時間を使ってくれている!」
「今、この瞬間、私にとって一番大切な人は、目の前にいるあなたです」という、有名な思想家の言葉があります。その考え方と同じです。
子どもの頃にテレビアニメ『まんが日本昔ばなし』で、次のような場面を観ました。
子どもがお寺のお堂に入って行くと、なかは真っ暗で、そこに何本もの火のついたロウソクが立っている。子どもがお坊さんに、「このロウソクは何?」って聞くと、
「このロウソクは、それぞれが人の命だ。まだ長いのは子どもの命。短くて、今にも消えそうなのは、もうすぐ死ぬ人の命だ」
とお坊さんは答えました。
当時の私には、この「命のロウソク」という考え方に強烈な衝撃を受けたのです。
今もお客さまと話をしているとき、「相手に命のロウソクの時間を使っていただいている」というイメージが浮かびます。命のロウソクを何ミリかいただいているとなると……。もう、感謝しないわけにはいきません。
相手の命のロウソクをムダにするのは失礼ですし、僕も自分のロウソクをムダにしたくありません。だから、やっぱり、できる人は、時間のコスト意識が強い。
相手の時間をいただくことに対して、シビアに考えることが、相手への感謝にもつながるのだと思います。
■感謝には「優先順位」をつけていい
できる人は、どうしてそこまで相手に感謝することができるのか――。
![浅川智仁『仕事ができる人は、3分話せばわかる 信頼を勝ち取る「準備・具体性・ストーリー」』(三笠書房)](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/a/3/200/img_a3eaa8e5de5284018c1ea3988935ec9a166673.jpg)
でも、正直なところ、自分とかかわりのある全員に対して、等しく熱量を持って感謝で応えていたら、ちょっと大変ですよね。
若い頃、彼女から「あなたは誰に対してもやさしすぎる」と言われてフラれた、知人の男性がいます。もし、私が当時の彼にアドバイスをするとしたら、こう言ったと思います。
「感謝には、優先順位をつけていい!」
たとえば、私は、星の数ほどある会社のなかから、私の会社を選んで入社してくれた社員全員に、感謝しています。彼らのためなら、命の時間を惜しみなく差し出せます。
でも、ふだん、自分となんの関係もない人がいきなり、「相談に乗ってほしい」とやってきても、社員にするのと同じ熱量では対応できません。
感謝の度合いは、相手からの「感情のエネルギー」の熱量に比例させていい。
感謝の度合いには、えこひいきがあってしかるべきなんです。
その意味では、お客さまは、私と私の会社を信じて対価を払ってくださっている。その信頼とご恩を考えると、どんなに感謝しても足りないくらいです。
だからこそ、命がけでコミュニケーションし、全力で感謝して、信頼にお応えする。
セミナーでも、熱心に質問してくださる方に対しては、こちらも全力で応えます。
それが、礼儀であり、感謝の基本だと思っているからです。
■「ありがとう」の総数がそのまま数字につながる
かつて、むさぼるように本を読んでいたとき、次のような言葉に出会いました。
「お金というのは、『ありがとう』の総和である」
お金のなかった学生の私は、「どうやったら稼げるのだろう?」と常に考えていました。だから、「ああ、そういうことか!」と納得したのを覚えています。
前に「実際に仕事をして、その結果としてお金が移動するけれど、その前には『感謝の気持ち』という感情の見返りがある」というお話をしましたよね。
ですから、私は今でも、研修では、「売上というのは、『ありがとう』の質と量の総和です」とお伝えしています。
できる人、稼ぐ人というのは、たくさんの人から、心のこもった「ありがとう」をもらっています。それが、結果として売上という対価になっているのです。
そして、もうひとつ大切なことは、目の前で「ありがとう」と言ってくれる人の、うしろにいる人たちからも「ありがとう」を言ってもらえるように意識すること。彼らのぶんまで意識すると、もらえる「ありがとう」の数も必然的に増えますよね。
「ありがとう」の数が増えると、売上も増えます。
知人のフリーランスの方は、「1日に3回は、『ありがとう』と言ってもらうこと」を目標にしているそうです。その方を見ていると、次々とまわりから仕事が入ってきている。やはり、「お金は『ありがとう』の総和」というのは、正しいようです。
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営業コンサルタント、ライフデザインパートナーズ代表取締役
1978年山梨県生まれ。早稲田大学卒業。グローバル展開をしている能力開発企業で、入社2年で年間トップセールスを獲得したのち、独立。営業コンサルタントとして、1万1000人以上のビジネスパーソンや経営者の成績アップに貢献している。2010年8月には『The Japan Times』が選ぶ『アジアを代表する次世代の経営者100人 2010』に選出。著書に『できる人は、3分話せば好かれる』(三笠書房)、『お金と心を動かす会話術』(かんき出版)、『できるリーダーは、こう話す』(PHP研究所)などがある。
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(営業コンサルタント、ライフデザインパートナーズ代表取締役 浅川 智仁)
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