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仕事のデキる人が「すぐに」という言葉を絶対に使わない理由

プレジデントオンライン / 2021年8月11日 9時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/kieferpix

「仕事がデキる」と評価される人は、どのような話し方をしているのか。営業コンサルタントの浅川智仁氏は「ひとつの言葉でも、自分と相手の頭に浮かぶイメージは違う。仕事のデキる人は、『すぐに』という曖昧な言葉は使わない」という――。

※本稿は、浅川智仁『仕事ができる人は、3分話せばわかる 信頼を勝ち取る「準備・具体性・ストーリー」』(三笠書房)の一部を再編集したものです。

■「1秒後にはコピーに取りかかります」

企業の新人研修などで、参加者に対して、よくこんな質問をします。

「上司から、『この書類のコピーをすぐに頼む』って言われたとします。そう聞いたとき、パッと感覚的に、どれくらいの時間でコピーをして持って行けばいいと思いますか?」

回答は、本当に、人によってまちまちです。

同じ会社の社員でも、「1秒後にはコピーに取りかかります」って答える人もいるし、「自分の仕事のキリがいいところでコピーして、1時間以内には持って行きます」と答える人もいる。

ある企業での研修では、「1時間以内です」って回答する社員のうしろで、その社員の上司が、「あっ、だからコイツ、いつも仕事が遅いんだ……」という顔をしていたこともありました。

1時間とはいわなくても、「すぐにコピー」と頼まれたときに、「1分以内」と思う人と、「5分以内」と思う人の間では、すでに5倍の開きがあります。

この認識のズレが、上司と部下の間にあったとき、悲劇が始まります。

「あれ? ○○さん。『すぐに』って言ったんだけど」
「はい。(5分以内に)すぐにやります」
「(どうしてコピーに行かないのかな?)うん、だから、『すぐに』ね!」
「いや、だから(5分以内に)すぐにやって持って行きます!」

まるでコントですね。

でもこれ、オフィスでは案外よく見かける光景です。

なぜ、こんなことが起きるのでしょうか。

それは、「自分が頭に描いたイメージと、相手が自分の言葉を聞いて頭に浮かべるイメージは、同じものではない」という前提に、両者が立っていないからです。

■頼まれてもトラブルにならない声かけ

悲劇的なのは、「すぐに」の意味するところが曖昧なために、両者がどっちも正しいということ。

「正しさ」と「正しさ」の争いになってしまっているのです。

この悲劇を防ぐには、どうしたらよいのでしょう?

簡単なことです。

「○○さん、この書類のコピー、14時までにもらえる?」

こう頼めばいい。

これなら、老若男女、どんな人同士でも共通の認識ができます。

このように指示できる上司は、できる人です。

一方、たとえ上司が、「すぐにコピーして」って指示してきたとしても、「5分以内で大丈夫ですか?」って確認できる部下も、できる人です。

できる人は、ひとつの言葉でも、お互いの頭に浮かぶイメージは「違っていて当たり前」だと知っているので、相手により正確に伝える工夫や努力を惜しみません。

できる人同士のコミュニケーションでは、お互い、正しい認識を共有できるように注意しているので、ムダなストレスにならないし、認識違いによるトラブルも未然に防げるのです。

■言葉は「定義づけ」して使う

前の項で例に挙げた「すぐに」のほかにも、こんな曖昧な表現があります。

たとえば、「いい本」という表現。人によって、「読みやすくて、わかりやすい本」が「いい本」だったり、「分厚くて難解だけど、人生を変えてくれるような本」が「いい本」だったりします。

「いい会社」という表現も曖昧です。「福利厚生がしっかりしていて、上司がやさしく仕事を教えてくれて、残業もない会社」が「いい会社」という人もいるし、「仕事は厳しいけど、成長できて、自分をプロに仕上げてくれる会社」を「いい会社」という人もいる。

これらの曖昧な表現を「明確なもの」に変えるために、できる人は何をしているかというと、言葉の「定義づけ」をしています。定義づけすることで、物事を明確にして、他人との認識や価値観の違いを調整(チューニング)しているのです。

たとえば、私は、営業の研修の前には、その研修の発注担当者と、「この3時間の研修が終わったとき、受講生たちがどうなっていたら、この研修は成功ですか?」というすり合わせをします。「研修の成功」を定義づけしているわけです。

また、私は、自分の会社へ入社を希望する人には、

「ウチの会社は正直、しんどいよ。僕は、社員の成長のためならプライベートにまで口を出すし、友だちを変えなくちゃならなくなるかもしれない。ただ、入社3~5年後には、信じられないくらい成果を出せる人に成長できるから、自分の人生を変えたいと望むなら、いい会社だよ」

と最初に伝えます。これは、私が考える「いい会社」の定義を伝えているのです。

ですから、もし、入社面接で「浅川社長が考える『会社の成長』の定義を教えてください」と質問する人がいたら、「コイツ、できるな」って身を乗り出しますね。

■「数字の入った話」をする

話を曖昧なままにせず、明確なものに変えたいとき、前項の「定義づけ」とともに有効な手段が「数値化」です。

たとえば、あなたが自分の持ち家を、売りに出したいとします。

そのとき、不動産会社Aの営業パーソンは、あなたにこう言いました。

「この住宅をぜひ、私に売らせてください。私、頑張って売りますから!」

次にやってきた、不動産会社Bの営業パーソンは、あなたに「○○区における、ここ10年の不動産の動き」という資料を見せながらこう言いました。

「たぶん、このご住宅でしたら、3カ月いただければ売れると思います。今、中古物件の買い控えが出ているし、株価の変動もあるので確証はありませんが、それでよろしければ、ぜひ、私にご依頼ください」

さあ、あなたは、A社とB社の営業パーソンの、どちらに自宅の販売を託しますか?

A社の営業パーソンの熱意は買えますが、やはりどう考えても、B社の営業パーソンに依頼するのではないでしょうか。

なぜって、やはり具体的な数字が明示されているから、話に信憑性があります。

■孫正義の「説得力」の作り方

事業家の孫正義さんが、初めてマイクロプロセッサーを見たときの話です。

アメリカにいたときに、何かの雑誌の広告で初めてマイクロプロセッサーの写真を見たのだそうです。孫さんは最初、「何これ? 街の写真?」と思ったそうです。

ところが、次のページの写真で、それが人の指の上に乗っているチップだとわかった。

その広告写真を見たとき、孫さんは感動で泣いてしまったのだそうです。

「人類はなんてことをしたんだ。人間の脳みその替わりを作ってしまった!」

で、その広告を、ずーっとファイルに入れて持っていたそうです。好きなアイドルの写真みたいなものですね。

でも、そこからの孫さんがすごかった。

その小さなチップにできる情報処理能力を考え、チップが人間の脳みそを超えるのは何年先なのかを計算したというのです。

難しいことはよくわかりませんが、人間の脳みそも神経細胞がくっついたり離れたりという二進法で動いています。そこから計算して、パソコンのチップが、脳の神経細胞の数を超える年数を数値化したというのです。

デジタルトランスフォーメーション
写真=iStock.com/metamorworks
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/metamorworks

このエピソードを知ったとき、私は感動しました。

いくら感受性の高い人でも、指の上に乗っているチップの写真に驚いて感動するところどまりだと思うのです。それなのに孫さんは、ロマンを感じて感動したあと、それを数値化した。

ロマンをロマンで終わらせず、自らの手で数値化して、具体的で説得力のあるところまで落としこむ。

ここが、本当にできる人のすごいところです。

できる人は、数字に強い。

そして、物事を数値化して具体化します。

ですから、コミュニケーションで誤解が発生しないし、描く未来もより具体的になるのです。

■思わず注目してしまう「マジックナンバー」の効果

会議中、ひとりの出席者がこう発言したらどう感じますか?

浅川智仁『仕事ができる人は、3分話せばわかる 信頼を勝ち取る「準備・具体性・ストーリー」』(三笠書房)
浅川智仁『仕事ができる人は、3分話せばわかる 信頼を勝ち取る「準備・具体性・ストーリー」』(三笠書房)

「この問題解決のためには、ポイントが3つあります」

「あっ、この人できるな」って思いませんか。

前項でも数字を使うことの大事さをお話ししましたが、できる人は、とくに「マジックナンバー」をうまく使います。

セミナーの最中に、講師に「皆さん、今日はいろいろお話をしていますが、これから言う3つだけは絶対に覚えて帰ってください」って言われたら、「おっ、なんだろう」って、そこだけは集中力マックスで聞きますよね。

できる人は、この「マジックナンバー」が持つ効果をよく知っているんです。

「マジックナンバー」とは、人間の頭に気持ちよく作用する数字のことです。

たとえば、人間は「3」という数字に対して、「安定していてちょうどいい」という感覚を持つといわれています。説得したいとき、理由が2つだと相手は少なく感じるし、4つだと多すぎる。理由は3つなのが、多くも少なくもなくて心地いいんですね。

ですから、私は、「浅川さん、3つ報告があります」なんて言われると、「あっ、この人、できるな」って思ってしまいます。

ちなみに私は、電話営業で「3分、時間をください」と言ってスタートして、最長で4時間もお話をさせていただいたことがあります(笑)。

諸説ありますが、心地よく響くマジックナンバーは、3、5、7、9、13、15、17、21など。意識して使ってみてください。

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浅川 智仁(あさかわ・ともひと)
営業コンサルタント、ライフデザインパートナーズ代表取締役
1978年山梨県生まれ。早稲田大学卒業。グローバル展開をしている能力開発企業で、入社2年で年間トップセールスを獲得したのち、独立。営業コンサルタントとして、1万1000人以上のビジネスパーソンや経営者の成績アップに貢献している。2010年8月には『The Japan Times』が選ぶ『アジアを代表する次世代の経営者100人 2010』に選出。著書に『できる人は、3分話せば好かれる』(三笠書房)、『お金と心を動かす会話術』(かんき出版)、『できるリーダーは、こう話す』(PHP研究所)などがある。

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(営業コンサルタント、ライフデザインパートナーズ代表取締役 浅川 智仁)

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