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「子供の7割にストレス反応」夏休みに子供を追い詰める在宅親の"ある言動"

プレジデントオンライン / 2021年8月15日 9時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/JGalione

コロナ禍で2回目の夏休みシーズンがやってきた。在宅勤務をしている親もいるだろう。産業医の武神健之さんは「コロナ禍でストレスを抱える子供が増えている。その要因が一緒に過ごしている大人の場合がある」と指摘する――。

■「学校生活」の存在感が浮き彫りになった

昨年4月の1回目の緊急事態宣言から1年以上たち、コロナ禍での2回目の夏休みとなりました。緊急事態宣言やまん延防止等重点措置の対象となっている地域もあり、昨年同様ステイホームで過ごすのか、ワクチン接種などもあり、より多くの人が移動するのか、いろいろな行動様式が予想されます。

私はコロナ禍で1000人以上の働く人との産業医面談を通じて、大人がストレスを抱えていることは日々感じてきました。では、その大人に育てられている子供たちのストレス度合いは、どのようなものでしょうか。

多くの子供にとって、コロナ禍はそれまで当たり前であった学校生活が、どれだけ大きな存在であったかを改めて浮き彫りにしたと思います。学校は、単に学習機会の提供を保障するという役割のみならず、年相応の全人的な発達や成長を保障する役割、他者と安全安心につながることができる居場所(セーフティーネット)として、心身の健康を保障する役割も持っていることが再認識されました。

■何らかのストレス反応を示す子供は70%以上

昨年から5回実施された国立成育医療研究センターのアンケートによると、コロナ禍で何らかのストレス反応を呈している子供は72~75%(第1~3回調査より)。そして、小学4~6年生の15%、中学生の24%、高校生の30%に、中等度以上のうつ症状があるそうです(第4回)。

直近の第5回調査では、先生や大人への話しかけやすさ・相談しやすさに対して、51%がコロナによって(とても/すこし)『減った』と回答しています。子供たちの生活の質を考える上での身体的健康については、全年齢群で以前の調査時よりも低く、精神的健康については、中高生で以前の調査時よりも低い結果でした。

また、この調査では、保護者の62%がこころに何らかの負担を感じており(第1回)、保護者の29%に中等度以上のうつ症状があることもわかりました(第4回調査)。

■最初に「心身が疲れやすくなる子」が多い

大人に比べ、子供にとってのストレスとはどのような特徴があり、どんな症状を呈するのでしょうか?

学校
写真=iStock.com/recep-bg
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/recep-bg

子供もしんどいことやつらいこと、いやなことや疲れることが続くと、ストレスを感じます。それを上手に解消できずに感じ続けると、症状がでるのは大人と同じですが、まずは心身が疲れやすくなるのが子供に多い傾向です。疲れた自分を引きずりやすいのですが、どうしてこんなに疲れを引きずるのか、つらいのかを自分ではなかなかわかりません。ストレスによる反応だとしても、そのことをなかなか認められなかったり、他人に相談できなかったりする特徴があります。

また、子供のストレス症状は、人間関係やコミュニケーションに現れることが多くあります。遊ぶ友達が変わったり、急に乱暴になったり、挨拶をしなくなったりと、周囲との関わり方が変わります。

■大人の何気ない発言で子供が殻にこもってしまう

学校(または保育園や幼稚園)生活の変化以外にも、子供にはさまざまなストレス要因があります。最も大きい要因は、一緒に過ごしている大人たちでしょう。

コロナ禍で感染予防のため大人が常に緊張状態にあること、趣味や気分転換ができない大人自身がストレスを溜めていること、その他あらゆる新常態に対応、適応し切れていない大人たちの態度が、子供たちの目にどのように映っているか考えたことはあるでしょうか。

大人が何気なく発する後ろ向きな発言や自暴自棄的な発言、会社の決定や逆らえない上司への文句を言っている姿を見聞きするたびに、子供たちは「自分が悪い」「いい子にしなくては」「自分は文句を言ってはいけない」と感じ、心が殻にこもってしまうのです。

■「娘がひきこもりがち」50代ベテラン女性社員の相談

今年の1月に産業医面談にきたAさんは、勤続20年以上の50代ベテラン女性でした。高校2年生になる次女が部屋に引きこもりがちで、昼夜逆転生活をしている。最近は遅刻や欠席もあり、学校生活や大学受験を思うと心配だという相談でした。

面談
写真=iStock.com/fizkes
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/fizkes

Aさんは、職歴の長さからも、社内でそれなりの地位にあります。人間関係のストレスにはさほど晒されないポジションにあり、昨年の人事評価も上々で、仕事に関してはメンタル不調になる原因はなさそうでした。が、最近は娘に関することで漠然とした不安に急に襲われ、仕事が手につかなくなることもあり、さらに動悸を感じることや睡眠障害が現れてきているようでした。

産業医面談では、まず娘さんについてカウンセリングを主体とした治療を受けることを提案し、Aさんにも医療受診と定期的な産業医面談を提案しました。また、娘さんがカウンセリングを受けた後は、嫌がらない範囲でどのような話をしたのか、いつでも聞かせてほしいと娘さんに伝えるようにお願いしました。そして、娘さんから話があった時は、アドバイスはせずに黙って聞くことに徹すること、最後には「話してくれてありがとう、応援したい、何かできることがあれば言ってほしい、またいつでも話を聞かせてほしい」とだけ伝え、自分の意見等は絶対に言わないことを約束してもらいました。

■実は在宅勤務でストレスを抱えていたAさん

その後数カ月間、Aさんは毎月産業医面談に来てくれました。そこで分かったことは、Aさん自身、コロナ禍での在宅勤務にかなりストレスを感じていることでした。

人と話すことが好きなAさんは、職場で日常的にしていた同僚たちとの雑談が無いことに寂しさを感じていました。また、部下への指示もメール等のテキストベースとなり、ニュアンスが伝わりきらないもどかしさや、部下の仕事ぶりや部門としての進捗状況を一見して把握できないことに不満があったようです。知らず知らずのうちにイライラした表情や乱暴な口調になっていたことを、最近、仲のいい同僚に指摘されたとのことでした。

■母親のイライラした姿に戸惑っていた娘

そして、娘さんはコロナ禍になり、母親が昼間も家にいる生活に戸惑いを感じたそうです。母親のイライラしている姿をみると、自分の家なのに自分はここにいてはいけない気持ちになったことや、きつい口調が聞こえると、自分が叱られているように感じ、次第に学業に身が入らなくなったとのことでした。母親が寝ている夜間に学校の課題などをこなすようになったため、生活リズムが崩れてしまったそうです。

Aさんは子供の告白にショックを受けたものの、在宅勤務で自分がストレスを感じていることは気づいていたので、その内容を素直に受け入れることができました。今はなるべく出社勤務をすることを意識しており、次第にお子さんも調子を戻し始めているとのことでした。

オフィス
写真=iStock.com/kokouu
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/kokouu

■「解決しなければ」と思う必要はない

子供のストレスの原因がわかったとき、大人はどう対処すればいいのでしょうか。実は必ずしもその原因を解決しなければならないわけではありません。

大切なことは、子供がストレスを感じていることに気がつくことです。そして、ぜひ「気がついていること」を伝えてあげてください。

もし、子供が話をしたくなさそうであれば、気がついていることや応援していることを伝えるだけでもいいと思います。しばらく様子を見てから、また声をかけてあげましょう。

話をしたそうであれば、ぜひ、何にどのようなストレスを感じているのかを聞いてあげてください。原因を解決できなくても、問題を知ることで子供のストレスの半分は解決すると私は考えます。

コロナ禍で子供が感じているストレスは、大人が解決できることばかりではありません。誰にも簡単に解決できないからこそ、ストレスなのです。まずはそのことを受け入れましょう。

子供のストレス原因を解決しなければならないと思うと、なにか答えを出さねばならないと考え、判断に迷いが生じます。そうやって大人が不安定になってしまうと、「守られている」という子供の安心感を失わせ、ストレスへとつながってしまいます。まずは、気付き、話をきく、解決できなくても何が問題なのかを知ってください。繰り返しますが、大人が気づくだけで、子供のストレスは半減します。

■過干渉を控えることで、ストレス耐性の高い大人に育つ

では、残りの半分のストレスはどうしたらよいのでしょうか?

年齢にもよりますが、大きい子供ほど、ストレスには自分自身でも対処対応しなければいけないと思います。これこそが、学校の授業やテストでは身につかないけれど、大人になるために必要な学びです。

そして、子供の発達年齢に応じて、自主性を応援し、過干渉を控えることができる親に育てられた子供は、ストレス耐性の高い大人に育つことでしょう。

何よりも大切なことは、大人自身が自分のストレスマネジメントを行い、自己肯定感を高めることです。コロナ禍の不安やストレスでイライラしてしまったり、気分が落ち込んでしまったりする大人もいる中で、自分に近い大人が上手に対処できているという姿を子供にみてもらうことが大切です。大人の関わり方次第で、ストレスに強い大人になるための心は育まれます。

コロナ禍が1年以上続き、子供たちがさまざまなストレスや課題を抱える中、今、大人たちがしっかりと対応する必要があると考えます。この夏休みが、少しでもその機会になればと願ってやみません。

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武神 健之(たけがみ・けんじ)
医師
医学博士、日本医師会認定産業医。一般社団法人日本ストレスチェック協会代表理事。ドイツ銀行グループ、BNPパリバ、ムーディーズ、ソシエテジェネラル、アウディジャパン、BMWジャパン、テンプル大学日本校、アプラス、アドビージャパン、Wework Japanといった大手外資系企業を中心に、年間1000件以上の健康相談やストレス・メンタルヘルス相談を実施。働く人の「こころとからだ」の健康管理を手伝う。2014年6月には、一般社団法人日本ストレスチェック協会を設立し、「不安とストレスに上手に対処するための技術」、「落ち込まないための手法」などを説いている。著書に、『職場のストレスが消える コミュニケーションの教科書』や『不安やストレスに悩まされない人が身につけている7つの習慣』『外資系エリート1万人をみてきた産業医が教える メンタルが強い人の習慣』などがある。公式サイト

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(医師 武神 健之)

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