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「降水確率100%は"大雨"という意味ではない」知れば知るほど面白い天気の6つのトリビア

プレジデントオンライン / 2021年8月14日 9時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Julia_Sudnitskaya

天気の話は「つまらない雑談の典型」といわれることがある。しかし、そう決めつけてしまうのはもったいない。気象庁の研究機関「気象研究所」に勤める雲研究者の荒木健太郎さんは「天気は毎日の生活に密着しており、誰にとっても身近な話題。これからの季節に使える6つのトリビアがある」という――。

※本稿は、荒木健太郎『空のふしぎがすべてわかる! すごすぎる天気の図鑑』(KADOKAWA)の一部を再編集したものです。

■天気の話は決してつまらない話ではない

ビジネスシーンに限らず、たわいもない会話が必要となるシーンに誰もがゲリラ的に出くわします。そういった大人の現場で、場つなぎ的に使われがちなのが天気の話。

もっぱら“雑談のつまらない話の例”として引き合いに出されることが多い天気の話ですが、僕からしてみればまったくの逆。天気ほどおもしろい話はありません。

お互いのことを深く知らず、共通の何かが見つからなかったとしても、どんな相手とも唯一の共通点となりうるのが天気の話。どうしてかといえば、天気は、僕たちの毎日の生活に密着するものであり、老若男女世界共通のものだからです。

今回は、「天気の話=つまらない話」という思い込みを一旦外していただき、大人のみなさんにも天気の話のおもしろさをお伝えしたいと思います。

■①「ゲリラ豪雨」は昔からある現象

突然降る雨のことを近年「ゲリラ豪雨」と呼びますね。ゲリラ豪雨とは、積乱雲による局地的な雨。ゲリラ豪雨と聞くと、いかにも最近起こった危険な現象のように思えますが、じつは昔からある現象で、古くから「通り雨」や「夕立」、「驟雨(しゅうう)」と呼ばれてきたものなのです。

積乱雲の寿命は30分~1時間ほどしかなく、横方向の広がりは、数km~十数kmくらいと意外とミニマムなのも積乱雲の特徴です。この積乱雲が短時間で移動し、真上にやってきたときに突然雨が降り出すのが「ゲリラ豪雨」と呼ばれるもの。ザーッと降り、通り過ぎるとけろりと雨が上がるのはこのせいです。

「ゲリラ」には予測が難しいという意味合いもありますが、レーダーの雨量情報で積乱雲の位置や動きをチェックしておけば、「もうすぐこっちに来そうだな」とわかることがあります。ぜひ空の変化を気にしながらレーダーを上手く使って、「ゲリラ豪雨」を「ただの通り雨」にしましょう。

出典=『空のふしぎがすべてわかる! すごすぎる天気の図鑑』
出典=荒木健太郎『空のふしぎがすべてわかる! すごすぎる天気の図鑑』(KADOKAWA)

■②降水確率100%だとどんな天気になるか

「線状降水帯」というキーワードもよく天気予報で目にするでしょう。線状降水帯は、集中豪雨をもたらす原因となる現象で、積乱雲が連なることで発生します。

ひとつの積乱雲がもたらす雨量は数10mmで、雲が風に流されれば通り雨で終わりますね。しかし、積乱雲が風上側で次々と発生して連なってしまうと話は別。狭い範囲の同じ場所で強い雨が数時間にわたって降り続き、雨量が100~数100mmにもなる集中豪雨が発生します。このとき、線状にのびた雨域や雨雲のまとまりのことを線状降水帯というのです。

ちなみに降水確率100%というのは、必ずしも大雨になるという意味ではありません。降水確率とは予報の対象地域で「その時間に降水量1mm以上の雨か雪が降る確率」のこと。たとえば降水確率30%なら「同じ状況が100回あったときに、およそ30回は1mm以上の雨や雪が降る」という意味になります。

強い雨でも弱い雨でも雨が降りやすければ降水確率は高くなります。大気の状態が不安定なときは、降水確率30%でも積乱雲が発達して狭い範囲で土砂降りの雨になることもあります。

■③虹は半円ではなく、本当は丸い

雨上がりの空にかかる虹。しばしば僕たちに魔法のような絶景を見せてくれる虹ですが、本当は丸いことを知っていますか?

そもそも虹とは、赤から紫までの色が並んだ円弧状の光の帯。太陽の反対側の空で雨が降っているときに見られるものです。レイン・ボー(雨の弓)と呼ばれるように、雨のつぶのなかで光が曲げられ、虹色が生まれているのです。

虹は太陽とちょうど反対側の影のできる位置にあたる「対日点」と呼ばれる点を中心に、円の形をしています。僕たちは地上でその一部を見ているだけ。そのため、日の出・日の入りくらいの虹は半円に近く、太陽が高い位置にあると低い空だけに虹色が見えることがあります。

出典=『空のふしぎがすべてわかる! すごすぎる天気の図鑑』
出典=荒木健太郎『空のふしぎがすべてわかる! すごすぎる天気の図鑑』(KADOKAWA)

雨上がり、高層のたてものや橋の上、飛行機などからは対日点が見えやすく、丸い虹とであうスポットです。雨上がりのタイミングで、こんな雑談ができたらとてもロマンチックですね。

ちなみに、虹は7色のイメージが強いかもしれませんが、ドイツでは5色、台湾の一部では3色など虹の色のわけ方は地域によって異なります。

■④「虹のふもとに行くこと」は絶対にできない

みなさんは、虹のふもとにたどり着きたいと思ったことはありませんか? しかし、残念ながら虹のふもとには永遠にたどりつくことはできません。

空を眺めている場所から見える虹の位置はどこにいても変わらないため、虹をいくら追いかけても虹に近づくことはできません。ふもとに行くことはおろか、虹をくぐったりすることすら絶対にできないのです。

少々専門的になりますが、その仕組みをお話しましょう。

虹が対日点を中心に丸い形をしていることは先ほど前ページでお話した通り。また、虹には主虹(内側が紫で外側が赤い虹のこと)副虹(主虹と色のならびが逆になった虹)という二種類があります。

我々が虹に近づけないことにこの主虹と副虹が大きく関係しています。

ある方向の地平線からちょうど反対側の地平線までを180度としたときの空の見かけ上の大きさを「視角度」と呼ぶのですが、虹が出る際、主虹と副虹はそれぞれ視角度で42度、50度の位置に現れます。

この視角度、どんなに動いてもこの角度を保ち続けます。見える虹の位置はどこにいても変わらないので、いくら追いかけても虹に近づくことはできないというわけです。

ちなみに、虹は太陽と反対側の空で雨が降っているときに現れやすいので、晴れ間が見えるけど局地的に雨が降っている「天気雨」のときが出会うチャンスです。レーダーの雨量情報を使って、雨雲の通り過ぎるタイミングで虹を探してみると、高確率で虹に出会えるようになります。

■⑤「台風情報の予報円=台風の大きさ」ではない

ニュースで目にする台風情報。気象庁から発表されるものですが、あの白い丸の図の正しい読み方は知らない方のほうが多いのではないでしょうか。

まず、台風の進路を表す白い丸のことを予報円といいます。この予報円、なんと台風の大きさを表しているわけではなく、「予報された時刻に台風の中心がある確率が70%の円」を示しています。

出典=荒木健太郎『空のふしぎがすべてわかる! すごすぎる天気の図鑑』(KADOKAWA)
出典=荒木健太郎『空のふしぎがすべてわかる! すごすぎる天気の図鑑』(KADOKAWA)

言い換えると、予報円の外に台風の中心がくる確率が30%もあるということ。つまり、予報円が大きいときほど、台風の進路予報が変わりやすいということになります。白い丸は、台風の威力が大きさとは無関係。予報円が小さければ、高い確率で台風がその進路で進む信ぴょう性が高くなります。

ちなみに、進路予報に出てくる線は、台風の進路そのものではなく、予報円の中心をつないだだけのものです。

■⑥「台風が温帯低気圧になったらもう大丈夫」ではない

台風の季節に、誰かに話したくなる豆知識をもうひとつ。9月など台風の時期にニュースで見る「温帯低気圧」という文字についてのお話です。

台風が温帯低気圧になったらもう大丈夫! ――気象情報を見てそういうイメージを抱く方が多いかもしれません。しかし、じつは台風は、温帯低気圧になってから再び発達することがあります。温帯低気圧に変化したからといってまったく安心はできないのです。

台風は温かい海面からもらう水蒸気などによって発達します。台風は、日本付近まで北上すると海面の水温が下がるので、海からもらう水蒸気が減り、衰弱していきます。北から寒気の影響が加わると、寒気と暖気の境目で前線を伴う温帯低気圧に変わります。

また、台風と温帯低気圧の違いは、その構造や発達するメカニズムだけで、中心気圧や風の強さでは区別しません。温帯低気圧は上空の西風や気圧の谷(気圧の低い部分)などの影響で発達し、台風から温帯低気圧になってからさらに発達することもよくあるのです。

出典=荒木健太郎『空のふしぎがすべてわかる! すごすぎる天気の図鑑』(KADOKAWA)
出典=荒木健太郎『空のふしぎがすべてわかる! すごすぎる天気の図鑑』(KADOKAWA)

ちなみに、台風や豪雨によって気象庁が臨時記者会見をするときはマジでヤバいと思ってください。

気象庁は大規模な災害が予想されるときやすでに発生していてもおかしくないときに特別警報を発表します。特別警報はこれまでに経験したことのないような異常事態で発表されるもので命の危険にかかわる危険な状況。もし、自分の地域がふくまれていたら本気で備えて事前に安全確保をしましょう。

■大人も子どもも楽しめる天気のおもしろさ

荒木健太郎『空のふしぎがすべてわかる! すごすぎる天気の図鑑』(KADOKAWA)
荒木健太郎『空のふしぎがすべてわかる! すごすぎる天気の図鑑』(KADOKAWA)

身近なものほどその良さはあまり知られていないもの――。まさにここがポイントで、毎日明日の天気を気にする割には、そのおもしろさについて詳しい人は正直少ないのが現状です。だからこそ、「いい天気ですね」以上の話を僕たちはおもしろく感じるのでしょう。

子どもの知的好奇心を満たすだけではなく、大人も楽しめる天気の話。今回お話したことの中にすでに知っていることもあれば、初耳のこともあったと思います。それはお子さんにとっても同じこと。「知りたい!」「おもしろい!」「誰かに話したい!」という好奇心が刺激されたら、きっと誰でも楽しい時間を過ごせるはずです。

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荒木 健太郎(あらき・けんたろう)
雲研究者、気象庁気象研究所研究官、学術博士
1984年生まれ。慶應義塾大学経済学部を経て気象庁気象大学校卒業。専門は雲科学・気象学。防災・減災のために災害をもたらす雲のしくみを研究している。映画『天気の子』(新海誠監督)気象監修、NHK『おかえりモネ』気象資料提供。著書に『雲を愛する技術』(光文社)、『世界でいちばん素敵な雲の教室』(三才ブックス)、『雲の中では何が起こっているのか』(ベレ出版)、『せきらんうんのいっしょう』(ジャムハウス)など多数。

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(雲研究者、気象庁気象研究所研究官、学術博士 荒木 健太郎)

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