「肉と焼酎に特化した自治体が日本一に」ふるさと納税 人気自治体ランキング トップ500
プレジデントオンライン / 2021年8月20日 10時15分
■寄付金額、件数、人数いずれも記録更新
都道府県、市区町村を合わせた計1788地方団体を対象にした総務省の調査では、2020年度のふるさと納税受入額は約6725億円だった(前年度比1.4倍)。2018年度の約5127億円を約1600億円上回り、過去最高を更新。受入件数も約3489万件と、制度が始まった2008年から12年連続で最多を更新した。
ふるさと納税は、全国の自治体に寄付をした際に、2000円を引いた金額が原則として所得税と住民税から控除される仕組み。2016年には「ワンストップ特例制度」が導入され、ある一定の条件を満たせば確定申告を行わなくても住民税の控除が受けられるようになり、より気軽に利用できるようになった。総務省によると、2020年1~12月の1年間に制度を利用して住民税の控除を受けた人は過去最多の552万人。前年と比べて約140万人増え、右肩上がりが続いている。
一方、利用者の増加に伴う競争の激化で、より多額の寄附を集めるために還元率が高い返礼品や、地元の産業に関係のない返礼品をPRする自治体が続出し、問題となった。2019年6月からは、返礼品は「調達価格が寄付額の3割以下」「地場産品」などの基準を守る自治体のみ参加できる制度に移行した。
プレジデントオンラインでは、総務省が発表した2020年度の「各自治体のふるさと納税受入額及び受入件数」を基に、「ふるさと納税受入額が多い自治体」の500位までのランキングを作成した。
■宮崎県都城市が4年ぶりにトップ返り咲き
20年度の1位は135億円の宮崎県都城市だった。上位ランキングの常連で、2015、16年度は2年連続で1位だった。売りは宮崎牛やブランド豚「高城の里」。新制度で返礼品は地場産品に限られることになったが、前年の106億円から135億円と受入額を伸ばした。
都城市ふるさと産業推進局の担当者は「もともと都城産にこだわってきたので新制度の影響は特にありませんでした」と話す。
「都城市では何が特産なのかを明確にPRするため、2014年から返礼品は『肉と焼酎』を前面に打ち出しています。2021年4月時点の返礼品約980品目のうち、豚肉や牛肉、鶏肉は約350品目、焼酎は約150品目を占めています。新型コロナ感染拡大で観光業や飲食業が打撃を受ける中、ふるさと納税は非常に貴重な存在。地元経済への恩恵は非常に大きいです」
また担当者は、寄付額の伸びの背景にコロナ禍の巣ごもり需要があったと分析する。
「最初の緊急事態宣言が出た2020年4~5月は、新規層を中心に一気に寄付件数が増えました。年末も海産物が人気で、普段は食べられないものを自宅で楽しむ人が多かったのだと思います」
■2~4位は海産物が人気の北海道3市町
2位、3位、4位はいずれも北海道の自治体が並んだ。2位は133億円の紋別市。前年の77億円から2倍近くに増えた。紋別市ふるさと納税係の担当者は「返礼品の種類やバリエーションを増やすなどの地道な努力が実を結んだ結果だと思います」と話す。
「『オホーツク産ホタテ玉冷大(1kg)』や『本ズワイガニしゃぶしゃぶセット(1kg)』が人気でした。寄付者の皆さまから『コロナが収束したら遊びに行きます!』や『早く紋別行きたい、待っててね!』などの暖かいメッセージをいただいています。紋別市の『ファン』になっていただけるよう、これからも尽力して参ります」
3位は125億円の根室市。人気の返礼品は「いくら醤油漬(小分け)80g×4P」「エゾバフンウニ塩水パック60~70g×2P」。老舗の水産業者の商品や、「根室海鮮市場直送」の商品が目立った。
4位は97億円の白糠町。人気の返礼品は「エンペラーサーモン(1kg)」「白糠酪恵舎チーズセット(3種類×2組)」だった。
5位は82億円の宮崎県都農町。人気の返礼品は「うなぎ蒲焼3尾(計600g以上)」や「宮崎県産若鶏もも肉 総重量3kg」だった。
トップ50には北海道が6自治体、九州が18自治体と、首都圏から遠く離れた自治体が目立つ。コロナ禍で遠出できない状況が長引き、「旅欲」を発散している人も多いのかもしれない。都道府県別の合計受入額をみても、1位の北海道が975億円と、前年度の660億円から大幅に増加。2位鹿児島県の398億円、3位宮崎県の365億円に圧倒的な差を付けている。
■2019年度トップだった大阪府泉佐野市は…
2019年度は184億円で1位だった泉佐野市は、22億円で52位に沈んだ。泉佐野市は新制度から当初除外されたことを巡り、国と裁判沙汰に。2020年6月に最高裁で逆転勝訴し、制度に復帰できたのは7月末だった。泉佐野市ふるさと創生課の担当者は「はじめのうちは地場産品の泉州タオルのみを掲載しており、本格的に返礼品をそろえたのは9~10月になってからです」と説明する。
2020年11月からは独自のクラウドファンディング型ふるさと納税をスタート。寄付によって市内で新しい地場産品をつくる事業者を誘致する仕組みで、20年度は「氷温熟成牛プロジェクト」など9件すべてでプロジェクト化が決まった。担当者は「地場産品に限られた今のルール下では、海産物などに恵まれた自治体が上位に並びますが、目立った返礼品がなく苦しい自治体には新たに地場産品をつくり出す工夫が必要だと思います」と話す。
■返礼品目当てではない高額寄付も
トップ500のうち、1件当たりの受入額が高かったのは沖縄県(140位)の89万7108円。長野県軽井沢町(435位)の67万8685円、東京都練馬区(490位)の42万7919円が続く。全国平均の1万9276円と比べると高額だが、沖縄県税務課によると、2019年10月の火災で焼損した那覇市の首里城の復興支援に対して多額の寄付が集まっているためという。
また、軽井沢町はこれまで返礼品を用意しておらず、地元の学校を応援したい人などから純粋な寄付を募ってきた。しかし「軽井沢」のブランド力向上を目的に、今秋から初めて返礼品を導入する予定だ。
なお、全自治体で1件当たりの受入額が最も高かったのは、「八丈島産くさや食べ比べ」や「パッションフルーツ尽くしセット」が人気の東京都八丈町(516位)。121件で約3億円、1件当たりは251万と全国でとびぬけて高い。要因を八丈町の担当者に聞くと、「特に高額返礼品を用意しているわけではありません。大変ありがたいことに八丈町が好きという方がお1人、毎年高額な寄付をしてくださっているためです」とのことだった。
(プレジデントオンライン編集部 図版作成=大橋昭一)
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