転職活動の書類審査をパスする人が「職務経歴書」に必ず書いている"経歴以外"の要素
プレジデントオンライン / 2021年8月20日 11時15分
中堅消費財メーカーに新卒で入社し現在18年目。マーケティング部で働いています。最近になって転職を考え始め、ある中堅ネット企業に応募したいと思っています。でも、転職活動をするのが初めてということもあり、職務経歴書に何をどう書いたらいいのかがよくわかりません。
どうすれば採用担当者の目に留まりやすいのか、また書くべきこと、書くべきでないことなど、ポイントがありましたら教えてください。(40歳・メーカー勤務)
■経験を積んだ人には「キャリア式」がお勧め
職務経歴書は履歴書と違って特に決まった型がないため、どう書くべきか悩む人も多いことでしょう。確かに書式は自由で書くべき内容も人それぞれですが、目的はどんな場合でも同じ。採用担当者に「この人に会ってみたい」と思ってもらうことです。
それをかなえるためにはどうすればいいのでしょうか。まず枚数は、できれば3~4枚程度に収めるのがいいと言われています。職務経歴書はキャリアを重ねた人ほど長くなりがちですが、どんなに長くても5枚までにしたいところ。それ以上になると、採用担当者にくどい印象を与えてしまう可能性があります。
書き方には、これまでの経歴を時系列に並べていく「編年体式」、経歴をスキルや職務内容別にまとめた「キャリア式」と、大きく2つあります。
私は、転職経験が多い人やキャリアが長い人には「キャリア式」をお勧めしています。職務経歴書は履歴書とセットで出すものなので、編年体式で書くと、どうしても内容がかぶってくるからです。
また、キャリア式はどんなスキルをどのように磨いてきたか、それらをどう生かして成長してきたかがわかりやすく、経歴全体に一貫性を持たせられるという効果もあります。どちらの書式も、今は少し検索すればさまざまなフォーマットが見つかりますから、その中から自分に合ったものを選んで使ってみてほしいと思います。
■自己PRに活用するコツ
いちばんのポイントは、末尾に自分のアピールポイントを付け加えておくこと。「職務経歴書には、キャリア以外の余計なことを書いてはいけないのではないか」と思うかもしれませんが、書式は自由ですから、この書類を自己PRに使わない手はありません。
具体的には、最終ページの3分の1程度を使って、「自己PR」や「志望動機」などのタイトルをつけた一文を書くといいでしょう。ただし、転職の自己PRや志望動機は、新卒の就活の時のものとは違います。「もし入社したら、私は貴社にこう貢献できます」という内容を、できるだけ具体的に書いていきます。
これを書くには、志望先の企業がどんな事業課題を抱えているか、どんな人材を求めているかなどを想像する必要があります。ニュースや企業サイトなどで情報を集め、志望先のニーズをしっかり想像した上で、そこに自分の経験やスキルをどう生かせるかをまとめていくのです。
採用担当者は、応募者の経歴を逐一知りたいわけではありません。いちばん知りたいのは、「入社したら自社でどう活躍してくれそうか」ということで、職務経歴書はそれを類推するための資料でしかないのです。
■経験や実績の「裏づけ集」と考えて
転職を希望する人の中には、職務経歴書を転職活動における主役のように思っている人も少なくありません。でも、私の経験から言えば、「私はこういう経歴を持っているので採用してください」という意識で書かれた職務経歴書は、採用担当者の心には響きにくいことが多いようです。
ここはひとつ考え方を変えて、「私は貴社にこう貢献できます、なぜならこういう経験があるからです」という意識で書くようにしてみましょう。職務経歴書は、あなたの経験や実績を示す“裏づけ集”だと考えるのです。
では、「こう貢献できます」を末尾に書くとして、それを裏づける「こういう経験があります」の部分はどのように書けばいいか。これは「ビフォーアフター形式」を意識しながら書くと伝わりやすいのではと思います。
「ビフォー」には、自社やプロジェクトが抱えていた課題を、「アフター」にはその課題を、自分がどう解決しどんな結果を出したかなどを、具体的な数字を入れながら書きます。そしてビフォーとアフターの間に、解決に向けてどんな手を打ったか、自分がどんな役割を果たしたかなどを書き込んでいくのです。
■伝えたいことを「松竹梅」にレベル分けする
こうした職務経歴書なら、採用担当者は「この人は何ができる人なのか」を類推しやすくなります。こんな商品をつくった、上司から高い評価を得たというようなおおざっぱな書き方では、プロジェクトでの役割や貢献度がいまひとつ伝わりません。ビフォーアフターを意識しながら、ぜひ具体的に書くよう心がけてほしいと思います。
とはいえ、あまり長くなるのは避けたいもの。40代の方の経歴を3〜4枚程度に収めるには、かなりはしょらなくてはなりませんが、その際には、伝えるべきことまで削ってしまわないように注意してください。
まずは自分が伝えたいことを書き出し、それらを松竹梅にレベル分けしてみてはどうでしょうか。一つひとつ に自分なりに重みづけをして優先順位を決め、職務経歴書と面接のどちらで伝えるかを仕分けていくのです。
その際には、志望先の企業のニーズや、ライバルとなる他の応募者の傾向も想像するよう心がけましょう。このあたりは企業によって変わってくるでしょうから、A社で「梅」にしていた事柄をB社では「松」に持ってくるなど、柔軟な対応も必要です。
■1つのパターンで押し通さない
転職活動では、自分をPRできる機会は限られています。限られた紙面や面接時間の中で自分の経験をどう編集しどう伝えるか、これはとても重要なポイントです。
年齢を重ねた人は若い人より経歴は長くなりますが、採用担当者が職務経歴書の精査にかける時間や面接時間まで長くなるわけではありません。「伝えるべきことが多いのに不利だ」と感じるかもしれませんが、ここは経験からくる編集力や想像力の見せどころでもあります。
繰り返しになりますが、職務経歴書は、単に自分の経歴を伝えるためのものではありません。「私はこういう経歴を持っているので採用してください」という考え方で書かないことです。経歴を、「貴社にどう貢献できるか」の裏づけとして上手に語っていただきたいと思います。
志望先のニーズや、他の応募者(つまり競争相手)を想像できる人は、相手企業に合わせて何パターンもの職務経歴書をつくることも少なくありません。1つのパターンで押し通すのではなく、相手企業や採用担当者の目線に立って柔軟な対応を。想像力をもって実績や経験をきちんと伝えることができれば、採用担当者の目に留まる確率も高まるはずです。
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転職コンサルタント、ルーセントドアーズ代表取締役
1988年、リクルート入社。2006~13年まで転職サイト「リクナビNEXT」編集長。2014年ルーセントドアーズを設立、成長企業のための「社長の右腕」次世代リーダー採用支援サービスを開始。35歳からの転職支援サービス「Career Release 40」、ミドル・シニア世代のためのキャリア相談特化型サービス「CanWill」を運営している。著書に『転職に向いている人 転職してはいけない人』『35歳からの後悔しない転職ノート』『採用100年史から読む 人材業界の未来シナリオ』など。
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(転職コンサルタント、ルーセントドアーズ代表取締役 黒田 真行 構成=辻村 洋子)
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