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「東大合格"圏外校"から逆転突破する子vs難関校から合格を逃す子」親の決定的な違い

プレジデントオンライン / 2021年8月18日 11時15分

ドラゴン桜「一発逆転」プロジェクト&東大カルペ・ディエム『ドラゴン桜「一発逆転」の育て方』(プレジデント社)

東大合格者数ランキングの常連校とは無縁の高校から合格を勝ち取る生徒がいる。『ドラゴン桜 「一発逆転」の育て方』(プレジデント社)にはそんな事例が紹介されている。イラストレーターの辛酸なめ子さんは「登場する10人の家庭の共通点は、親が子どもを全面的に肯定し信頼し応援している点。また、子どもは親の所有物ではなく神様から預かった存在といった姿勢もある」という――。

■東大合格者数ランキング“圏外”から合格を勝ち取る生徒の共通点

書店に行ったら、東京大学関連の書籍が目立つところに面陳されていました。

『ドラゴン桜に学ぶ「東大メンタル」』
『東大生が選んだ勉強法』
『東大生を育てる親は家の中で何をしているのか?』
『東大思考』
『東大ノートのつくり方』

「東大」をタイトルに掲げている本は次々と出ていて好調そうです。やはり「東大」というジャンルは強力なキラーコンテンツなのでしょうか。うらやましさが募りつつ、売れている一冊を拝読してみました。

『ドラゴン桜 「一発逆転」の育て方』(プレジデント社)は、東大合格者ランキング常連校とは無縁の環境で、孤軍奮闘して合格を勝ち取った10人の学生と、その親御さんにインタビューした本。東大は、地元でも有名な神童が進学するイメージですが、気合いと信じる力と、親の応援があればワンチャンあるのでしょうか?

■誰が見ても東大合格にはほど遠かった子たちの「変身」

この本を企画編集したメンバーで、自身も「一発逆転東大生」の西岡壱誠さん(経済学部4年)と岡崎拓実さん(東大OB)の2人が本の中で対談し、分析していました。

「一発逆転東大生とは、不登校、成績低迷、通っている学校や家庭の状況など、高校1年生の段階で、誰が見ても東大合格にはほど遠かった子たち」とのことで、そんななか「自分でスイッチを入れて前に進んだ結果、逆転合格を手にした」のが「ドラゴン桜的な東大生」だそうです。

2人によれば、こうした一発逆転合格の子は、人から勉強させられるのではなく「自ら東大合格という高い壁を設定」し、世間体にとらわれず、いろんなことにチャレンジできるポテンシャルの持ち主だとか。親も「勉強しなさい」などとプレッシャーをかけず、ポジティブな気持ちで応援して、子どもの夢を否定しない、という傾向もあるそうです。

「難関校出身東大生」よりも「一発逆転東大生」のほうが夢や希望を感じるのは気のせいでしょうか。進学校の中で劣等生だった身からすると、「ドラゴン桜的な東大生」は親との関係を含め、風通しがよくて自由な空気に感じられます。

「難関校出身東大生」の場合、中学受験などでかなりの額を投資され、親や親族の期待を一身に背負っているので、できて当たり前となりがち。そもそも両親も高学歴ということは多く、劣等生の気持ちはわかりません。テストの点がよくても褒められることはほとんどありません。むしろ少しでも成績が悪くなるとピリついた空気に……。

■「神様から預かった子だと思っています」

不肖私の場合は、女子学院に受かって通っていたものの、中3くらいから成績が低下し、名門大からいい会社に就職することを期待していた親からは失望され、さらに美術大学に行きたいと言い出してからは、激しい反対を受けて、攻防の結果、完全に見放されて透明人間化したように家の中でアンタッチャブルな存在になっていきました。学歴至上主義者の祖母が急に乱心して「どうしても美術がやりたいなら、東大に行って美術部に入ればいいじゃない!」と言ってきたこともありましたが、すでに成績は東大合格などかなわない域でした……。

辛酸なめ子『女子高礼賛』(中公新書ラクレ)
辛酸なめ子『女子高礼賛』(中公新書ラクレ)

東大合格者数ランキングに入ってくる有名な私立中高の生徒の家庭は、基本的に経済的な余裕があるので、大学受験のために少人数向けの科目ごとの塾に通うなどして、受験のスキルを高めていきます。経済的に無理して難関校に入ると、財力の壁を感じることも……。

難関校で直面する試練はほかにもあります。それは、とくに努力しなくても成績がいい天才型の同級生の存在です。塾に行かなくても成績はトップで、独学で東大に受かってしまう人もいたりして、凡人としてはコンプレックスが刺激されます。

先日も、知人の息子さんが御三家の男子校から、予備校に一切行かないで東大に受かった話を聞いて衝撃を受けました。その息子さんは3歳の頃から計算がスイスイできて「天才かもしれない……」と思ったお父さん。小学校で大手塾サピックスの入室テストを受けさせたらいきなり一番上のクラスに。難なく御三家の中学に受かり、大学受験では親の心配をよそに「東大に行くから」と断言し、有言実行。東大の理1に合格し、今はベンチャー企業を立ち上げているとか。

「できる子どもは勝手にやっちゃうんです。無理矢理勉強させるのはよくない。放っておけば勝手にできるんです」と、世の父母が羨望の念を抱きそうなお言葉が。「親からすると、神様から預かった子だと思っています」と、天才ぶりを称えていました。

親に失望されてばかりだった子の立場からしても、一度でいいから「神様から預かった子」なんて言われてみたかったです……。勝手に勉強をしたくならなかった自分は、そこまでだったということでしょう。

■親が親族に頭を下げお金を借りて、カードローンも使って予備校代捻出

では、この本に出てくる「一発逆転東大生」たちはどうでしょうか。彼らも御三家などの名門校出身ではないものの「勝手に勉強する」タイプが多いように感じます。親や先生から言われて受験勉強するというよりも、高校生のころから使命感や目的意識を持つなど、意識の高さを垣間見ることができます。親御さんたちは、仮に成績が悪くても子どもを否定せず、信頼し、やりたいことを自由にやらせつつ、適宜背中を押してあげているのもポイントです。

例えば、現在東大文学部4年のFさん(男性)の場合、父と母の実家は共に夜逃げ経験ありで、世帯年収は300万円という東大受験には不利な状況でした。でも、「昔からちょっと無理な状況を跳ね返す逆転が好きなんです」と、チャレンジ精神を発動したFさん。参考書を買って自分で勉強しますが、高3の夏まで部活(吹奏楽)に明け暮れていたこともあり現役では不合格。親が親族に頭を下げてお金を借りて、カードローンも使って予備校代を捻出し、一浪して晴れて東大生になれたそうです。世間を騒がせ続ける某K室さんにお知らせしたいエピソードです。

Fさんの受験勉強を支えたのは、家族の間で、お互いを褒め合う習慣。ポジティブシンキングな母親主導で何かとあれば「すごいね~」「あんたやるね~」と、褒めることで息子の成績を伸ばしました。できて当然、という難関校の子どもの家庭ではなかなか見られない習慣かもしれません。

■なんで東大合格実績がほとんどない中堅の学校の子が東大へ?

若くして使命感が芽生えたMさん(女性、文科3類2年)のエピソードも心に残りました。都内の中堅私立中高の生徒会の役員の選挙に立候補。「生徒自身が物事に主体的に取り組める空気をもっと作りたい」という、イノベーティブな使命感を持っていました。生徒会活動に励んだMさんは、全国の高校の生徒会活動で優れているものを選出する「日本生徒会大賞2019」に応募し受賞。さらに個人の部で「日本生徒会大賞奨励賞」を受賞し、その経歴をもとに東大の推薦入試に挑みます。

今の時代、東大には推薦入試制度という魅力的な枠があることをこの本で知りました。推薦というと一般受験より入学しやすいような印象もありますが、簡単ではありません。Mさんは事前審査のため約70ページの論文を提出し、面接でプレゼンテーション。生徒会長という要職で培われたリーダーシップや発言力が生かされたことでしょう。そんなMさんの背中をいつも押してくれていたのは母親でした。Mさんは、この成功体験をもとに政治家になりそうなポテンシャルを感じます。

東大赤門
写真=iStock.com/ranmaru_
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/ranmaru_

Kさん(女性、理科2類1年)のエピソードも印象的でした。東大を受験する人がほとんどいない都内の女子中高に進学。家庭はそれほど裕福ではなかったようですが、Kさんがやりたいことはなんでもチャレンジさせてくれた家庭環境だったそうです。その陰で母親が指輪や貴金属やバッグをこっそり売ってお金に換えていた、というエピソードに胸が熱くなりました。

私の場合、「あなたの学費にいくらお金を使ったと思っているの⁉ お母さんはもうずっと服を買っていないのよ」などとよく責められていたことを思い出します。そう言われて萎縮し、ますます不調のスパイラルにハマっていったような……。

■「あなたなら大丈夫」「(ウチの子は)信じるに値する子」

子どもを伸ばすのは、親の全面的な肯定と信頼と応援だと、この本を読んで実感しました。獣医になりたいという夢を抱いたKさんに、東大進学という選択肢を示したのも母親でした。Kさんは高校内では珍しい東大志望者としてアウェー感を覚え、友人と疎遠になりながらも、「あなたなら大丈夫」という母の言葉を支えにします。そして、見事に現役合格。母親はKさんのことを「信じるに値する子」と表現していました。こんな言葉、親から一度でも聞けたら、私も少しはがんばれたかもしれません……。

女子大学付属中高という、内部進学者がほとんどのお嬢様学校から東大に進学したSさん(女性、農学部3年)の母親も、娘を後方支援し続けました。「母は人と違うことをしたい私に『人と同じである必要はない』と言い続けてくれました」と、Sさんは語り、両親への尊敬と感謝を表明しています。家族関係がよいと家の空気に影響して、勉強もはかどりそうです。

■「子供は天からの授かり物、神様の元へ返さなければならない」

最難関の東大理科3類に、他大の医学部に通いながら仮面浪人して5回の挑戦で合格したYさん(2年)の母親の言葉も心に残りました。

「18歳までは子供は天からの授かり物であるので大切に育て、成人すれば神様の元へ返さなければならないと思っていますので、息子の望んだ人生であれば、どんなことでも否定せずに応援しようと思っています」

子どもは親の所有物ではなく、一人の人間として尊敬し、神様から預かった存在、くらいに思うと、子どもは才能を伸ばしていけるのでしょうか。いわゆる「ギフテッド」です。

東大合格者数ランキング“圏外校”から合格した一発逆転組の親御さんのこうした考え方は前述の御三家から東大に行った天才肌の息子さんの父親の話ともリンクします。親が子を信頼し、神の分身だと信じることで、子はそれに導かれ神レベルに頭がよくなるのかもしれません。

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辛酸 なめ子(しんさん・なめこ)
漫画家/コラムニスト
武蔵野美術大学短期大学部デザイン学科卒。雑誌連載、執筆活動の合間を縫ってテレビ出演も。

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(漫画家/コラムニスト 辛酸 なめ子)

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