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「ピンピンコロリには"貯筋"が大事」健康で長生きするために鍛えるべき"3つの筋肉"

プレジデントオンライン / 2021年8月21日 9時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/kazuma seki

健康に長生きをするにはどうすればいいのか。医師で、順天堂大学大学院医学研究科特任教授の齋田良知さんは「介護や寝たきりになるのを防ぐには筋力を維持することが重要だ。3つの筋肉を鍛えれば健康寿命は延びる」という――。(聞き手・構成=医療・健康コミュニケーター高橋誠)(前編/全2回)

■筋力低下で死亡率が3倍になる

人は誰でも年齢を重ねるごとに筋力が衰えます。男女ともに20歳をピークに筋力は緩やかに低下します。

運動をしたくても膝や腰、肩の慢性の痛みがつらい人。
ケガをきっかけにスポーツをやめてしまった人。
若い頃からこれといった運動をしないまま中高年を迎えてしまった人。
長年の不摂生で太ってしまった人。
コロナ自粛でしばらくジム通いを中断している人。

このような方々に対し、私は「今からでも遅くはありません。あきらめないで!」とお願いしたいです。人それぞれ体力や心身の状態は違えども、筋力を増やすことに「時すでに遅し」ということはありません。

なぜ筋肉を鍛える必要があるのでしょうか? 2021年に欧州の医学雑誌(※1)に掲載された興味深い研究結果があります。

この研究では、45万人ものイギリス人(40~70歳、女性24万人、男性20万人)を10年間追跡し、筋力、歩行速度、生活習慣などが寿命に及ぼす影響を調査しています。

この期間中に亡くなった男性は6783人、女性は3808人でした。男性は女性よりも死亡率が高く、また筋力が弱く、歩行が遅く、生活習慣が悪い男性は、筋力が強く、歩行が早く、生活習慣が良い男性よりも10年後の死亡率が約3倍も高いということが判明しました。

この研究結果から、筋力を維持・強化することの重要性がよくわかるとともに、裏を返せば、トレーニングにより筋力を増強させることにより、寿命が延びるということを示しています。

(※1)Zaccardi F, Franks PW, Dudbridge F, Davies MJ, Khunti K, Yates T. Mortality risk comparing walking pace to handgrip strength and a healthy lifestyle: A UK Biobank study. Eur J Prev Cardiol. 2021 Jul 10;28(7):704-712. doi: 10.1177/2047487319885041. PMID: 34247229.

■健康で長生きするには“筋肉貯金”が欠かせない

筋肉の役割と効用はたくさんあります。日常生活やスポーツでの体の動きが良くなる。ケガをしにくくなる。基礎代謝がアップし太りにくい体質になる。骨や内臓を衝撃から守る。

高齢を迎えても元気に買い物や食事に出かけられる。好きなスポーツを楽しめる。老後の寝たきりを予防し、要介護になって施設で何年も暮らすリスクを避けられる……筋力アップは良いこと尽くしなのです。

「筋肉は裏切らない」とは言い得て妙で、お金の貯金ならぬ筋肉の「貯筋」は、未来のあなたを支える心強い財産になるはずです。

筋肉を衰えさせないためには、機能的な筋トレを行うことが一番です。

見せるための筋肉ではなく、実質的に運動機能を高めるための筋肉を強化するのです。コロナ感染が拡大し自宅にいる時間を活用し、貯筋習慣を始めるチャンスです。1日1~2回、5~10分間の貯筋習慣を始めませんか。

■40代以上が鍛えるべき3つの「F」筋肉

健康で長生きするために鍛えるべき筋肉は3つの「F」と覚えておいてください。

「腹筋(Fukkin)」「太もも(Futomomo)」「ふくらはぎ(Fukurahagi)」

の3カ所のFの筋肉です。この3つのFの筋肉は油断すると衰えやすく、元気に趣味や旅行、運動を続けるための要ともいえる筋肉です。

腹筋は老化によって衰えるスピードが速い筋肉です。

腹筋が衰えると骨盤の位置が変わってきて、それにより腰痛が出たり股関節が詰まったりします。股関節が詰まると、それをかばおうとして太もも、膝、ふくらはぎ、足首に連鎖的に痛みが走ることもあります。

身体はつながっています。腹筋の強化は、健康的なバランスの良い身体を作り、腰痛予防にも直結します。

■「腹筋の貯筋①」齋田流・寝ながらできる腹式呼吸

私と理学療法士たちのチームが患者さんにお勧めしているのが腹式呼吸です。毎日習慣にすることによって腹筋のインナーマッスルが鍛えられます。

しかも、あなたがポッコリお腹でも、腰痛をお持ちでも大丈夫。腹筋に意識を向けて呼吸するだけなので、誰にでも簡単にできます。昔ながらの我慢、根性のきつい腹筋とは対極のメソッドです。

提供=齋田良知さん
・あおむけに寝転びます。
・背筋を伸ばして、鼻からゆっくり息を吸い込みます(3~5秒)。
・丹田(おへその下)に空気を貯めていくイメージでお腹をふくらませます。
・口からゆっくり息を吐き出します(10秒以上)。
・お腹をへこましながら、体の中の悪いものをすべて出しきるようにゆっくり息を吐きます。
・吸うときの倍以上の時間をかけるつもりで吐きます。
・吐くときに丹田を強く意識します。
提供=齋田良知さん
・このやり方でうまく意識できない場合は、腰と床の間に手を滑り込ませて、その手を押し潰すように意識してトレーニングしてみましょう。

*1セット10~15回行いましょう。
*足を椅子などの高い場所に乗せ、お尻の下に座布団やクッションを敷くと、より簡単で自然に深い呼吸になります。
*あおむけの腹式呼吸をマスターしたら、次に座って、さらには立ったまま、同じ方法で腹筋の貯筋ができます。

■「腹筋の貯筋②」齋田流・寝ながらできるヒップリフト

もう1つのお勧めはお尻を持ち上げるヒップリフトです。丹田を意識するだけで腹筋の貯筋、腰痛予防、その他筋力(腰背部、臀部、ハムストリング)の改善、膝・股関節の安定性向上に効果があります。寝ながらできるので、とても簡単です。

提供=齋田良知さん
・あおむけに寝ます。
・両膝を立て、腕を体の横に置きます。
・足幅は腰幅くらいに広げます。
・息を吐きながら身体と足が平行になるところまで、ゆっくりお尻を持ち上げます。
・5~10秒間キープします。
・お尻に力を入れるのがポイントです。
・丹田にも強く意識を持ちます。

*1セット10~15回行いましょう。
*腰をそらせ過ぎないようにしましょう。
*お腹を薄く引き締めた状態でお尻を持ち上げましょう。
*丹田への意識は、きついズボンのチャックを上げる時にキュッとへこませるお腹の意識です。
*身体に痛みが生じた場合速やかに中止し、理学療法士、医師などに相談してください。

昔ながらの、あおむけの姿勢で上半身を起こす古典的な腹筋も良いのですが、自己流の誤ったフォームで行うと首や腰など身体の他の部分を痛めてしまいますのでご注意ください。また、あおむけになり両手で頭の後ろで組み、おへそをのぞき込み、お腹に少し力を入れる「クランチ」も立派な腹筋トレーニングになります。

■毎日の少しの努力が健康寿命を延ばす

中高年になってお金の貯えがあっても身体がうまく動かないと旅行やスポーツを心から楽しめません。これは多くの患者さんを診ていて強く感じていることです。

お金と違って借りることができない筋肉は、毎日の運動で貯えるしかありません。日々の努力でみるみる貯筋は増えます。最終的に自分自身の一生モノの財産になってくれます。

「私の人生、好きに生きるんだ! 早死にしてもいい! 75歳で十分」という方もいらっしゃいます。医療が進歩しているため、そう簡単には死ねません。

健康寿命を平均寿命にできるだけ近づけ、日常生活はもちろん、趣味や旅行、スポーツライフを快適に楽しく過ごす。そんなポジティブな生き方を送ってほしいと私は願っています。

次回は、健康寿命を延ばすために鍛えるべき3つのFの筋肉の残りの2つ、太ももとふくらはぎの貯筋の方法をご紹介します。(後編に続く)

※参考:公益社団法人 日本理学療法士協会ホームページ 理学療法ハンドブック
理学療法ハンドブック|理学療法士を知る|公益社団法人 日本理学療法士協会

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齋田 良知(さいた・よしとも)
順天堂大学大学院医学研究科スポーツ医学・再生医療講座 特任教授
順天堂大学大学院医学研究科スポーツ医学・再生医療講座特任教授、整形外科・スポーツ診療科准教授、日本スポーツ外傷・障害予防協会代表理事、いわきFCクリニック(福島県いわき市)院長。関節痛やスポーツ外傷の新規治療「多血小板血漿(PRP)」注射を駆使した治療で、地域住民の健康増進とスポーツサイエンスの両輪を追及。中高年者から東京五輪金メダリストなどトップアスリートまで幅広い層から絶大な信頼を得る。かつて医師とプロサッカー選手との二刀流を目指した元アスリート。スポーツドクターとして世界最高峰のプロサッカーリーグ、イタリアACミランに帯同しヨーロッパ式科学的トレーニングや予防医学を体得。順天堂医院(東京お茶の水)にてPRP療法と再生医療「ASC(脂肪由来幹細胞)治療」を実施中。近著に『最強の医師団が教える長生きできる方法』(共著、アスコム)。PRP外来初診予約窓口03-5802-1932 (直通)https://www.juntendosrm.com/

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(順天堂大学大学院医学研究科スポーツ医学・再生医療講座 特任教授 齋田 良知 聞き手・構成=医療・健康コミュニケーター高橋誠)

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