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「納車まで2年待ちもザラ」それでもキャンピングカーに乗り換える人が増えている納得の理由

プレジデントオンライン / 2021年8月21日 11時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/GoodLifeStudio

キャンピングカーの市場が拡大している。「車が売れない」といわれる時代に、納車まで2年待ちという車種も続出している。キャンピングカージャーナリストの渡部竜生さんは「ペットと一緒に旅ができて、災害時にも役立つ。アウトドアが好きな人たちだけの乗り物という考え方はもう古い」という――。

■キャンピングカー市場はずっと右肩上がり

「キャンピングカーってはやっているらしいね」という印象を持つ人は多いのではなかろうか。日本RV協会によれば、2020年の国内のキャンピングカー生産台数は7434台、輸入台数は690台である。一般の自動車と比べれば1モデル分の販売台数程度だが、この市場は15年以上にわたり、毎年10%程度で右肩上がりの成長を続けている。

このため需要に生産が追いついていない。一部の輸入車を除けば、キャンピングカーは「受注生産」が普通なので、通常でも契約から納車までは数カ月かかる。これが人気のワンボックスベースの車種では1年半~2年待ちがザラになっている。

納車まで待ちきれず、中古車を探す人も増えている。もともとキャンピングカーは普通車と比べてモデルチェンジが少なく、10年以上たっても価格が落ちにくい。新車市場の人気を受けて中古車市場も活発になっており、人気車種は新車と変わらない価格で取引されている。

一方、キャンピングカーには「大きい」「高い」「使わない」というネガティブなイメージがある。実際、私が乗り始めた20年前にはそう言われた。キャンピングカーショーの会場でも「こんな(高い)もの買って、いつ使うの⁉︎」なんていう夫婦喧嘩を目にしたものである。

しかし、私はこうしたかつてのイメージは「誤解である」と断言できる。順を追って説明しよう。

■普段使いもできる「バンコン」が一番人気

輸入キャンピングカーをはじめとする大型のキャンピングカーは、派手な見た目も相まって、どうしても目立つ。それが強烈なインパクトになり、キャンピングカー=大きいもの、という思い込みにつながっている。しかし実際に「大きい」キャンピングカーは、市場全体のごく一部にすぎない。

一番人気があるのがバンコンと呼ばれる、トヨタ・ハイエースや日産・キャラバンなどのワンボックスバンに架装を施したタイプだ。このサイズは日本でもポピュラーな車格で、「大きい」という人は少ないだろう。さらに、軽自動車ベースのキャンピングカーも増えていて、その中には大人4人が寝られるクルマもある。つまり日本で人気のキャンピングカーは、大きくてもハイエースサイズ程度、小さい場合は軽自動車サイズで、普段使いと兼用できるのだ。

ハイエースやキャラバンなどバンベース、ワンボックス、ミニバンなどをキャンピングカーに架装した「バンコン」。外観は普通のバンと変わらないため、普段使いもしやすい。
写真提供=レクビィ
ハイエースやキャラバンなどバンベース、ワンボックス、ミニバンなどをキャンピングカーに架装した「バンコン」。外観は普通のバンと変わらないため、普段使いもしやすい。 - 写真提供=レクビィ

■軽自動車ベースなら200万円台で手に入る

では価格についてはどうだろうか? キャンピングカーは本当に、一般にイメージされているような「高級品」なのか。確かに、2000万円超の高級車も存在はする。海外に行けば「億円」レベルのものもある。が、現在日本で、もっとも売れている価格帯は500万~600万円クラスだ。

ファミリーカー(ミニバンなど)の購入価格と比較しても、特別高価ということもないと思うが、どうだろうか。人気のミニバンやワンボックスタイプの乗用車でも、オプションにちょっとぜいたくをすれば、すぐに500万円ぐらいにはなる。

その点、キャンピングカーの場合、軽自動車ベースなら200万円台で、普通車(バンやワンボックス)ベースでも、シンプルな装備のモデルであれば300万円台で購入できる。もちろん、完全にフラットになるベッドがあるし、何より、車内で快適に過ごせる工夫(断熱など)があちこちに施された上で、この価格である。

軽自動車ベースの「軽キャンパー」なら200万円台から手に入る。
写真提供=キャンピングカープロショップ フレンドリー
軽自動車ベースの「軽キャンパー」なら200万円台から手に入る。 - 写真提供=キャンピングカープロショップ フレンドリー

上を見ればきりがないほど多様な商品があるのも事実だが、キャンピングカー=高い、とは限らないのだ。

■狭い日本こそキャンピングカーで行くべき場所ばかり

「そんなもの買っても、思ったほど使わないのでは?」という人に、そう思う理由を尋ねてみたことがある。その人は、「長期休暇が取れないから」「アメリカなどと違って日本は狭い。どこへでも交通インフラが整っているから」と言っていた。

たしかに日本の会社には、欧米のような長期休暇はない。が、年間の日曜日と祝祭日数を数えてみると、実は世界でもトップクラスに休日の多い国なのだ。まとまった休みこそ少ないが、ちょいちょいと短い休みがふんだんにある、というわけだ。

その短い休みを利用して遊ぼうと思ったらどうするか。目的地を決め、宿の手配をし、交通手段の時間を調べ、座席の確保に奔走する。もしくは手ごろなツアーを探す。前々からそうした準備をしなければ遊べないだろう。その点、キャンピングカーは単なるマイカーだ。何曜日だろうと何時だろうと、出かけたいと思ったらエンジンをかけるだけだ。

「狭い日本、キャンピングカーなんぞでどこへ行く?」についても反論させてほしい。

確かに日本は狭い。半日も走れば隣の県に出てしまう。だが、その狭い国土に、多彩な文化がギュッと凝縮しているのが、日本である。一山越えれば、そこには違う温泉が湧いている。うどんの出汁の色だって変わる。旬の魚、野菜、果物。宿の豪華な食事ももちろんいいが、地方の名店を食べ歩く旅だって、寝床を持参する旅なら自由自在。一泊二日の短い休日、遠くへ行かなくても十分に、旅気分が味わえるというものだ。

■「究極のインドア遊び」の道具

さらにもう一つ、付け加えたいことがある。キャンピングカーと聞いて反射的に「アウトドア趣味はないし……」と反応する人がいるが、それは大きな誤解ということだ。現に20年も乗っている私は、アウトドアにはまったくと言っていいほど興味がない。私に言わせれば、キャンピングカーとは「究極のインドア遊び」の道具なのだ。

テントを背負って自然に分け入り、川のせせらぎや鳥のさえずりに耳を傾ける。それがアウトドアの楽しみだが、当然、暑さ・寒さもそのまま体感することになる。一方、キャンピングカーは炎天下だろうが氷点下だろうが、室内は適温に調整されて快適そのもの。悪天候だからといって、濡れて震える心配もない。わが家はかみさんがアウトドア派なので、彼女が外で自然と戯れている間、私は涼しい車内で読書三昧、なんていう過ごし方もアリだ。

快適さを求める人は、小型トラックに専用の居室を架装した「キャブコン」がおすすめ。客室部分が広く、寝室空間も独立している。
写真提供=日本特種ボディ
快適さを求める人は、小型トラックに専用の居室を架装した「キャブコン」がおすすめ。客室部分が広く、寝室空間も独立している。 - 写真提供=日本特種ボディ

自然を感じたければキャンプ場へ。温泉巡りや観光旅行がしたければ、街にほど近い場所に停泊場所を求めればいい。キャンピングカー愛好家の間でも、アウトドア派もいれば、シティ派も多い。そもそも、あなたの「家」を持ち運ぶのだから、アウトドア遊びと決めつける必要すらないのである。

■不安が多いシニア世代に選ばれるワケ

キャンピングカー人気が続いている理由。それはずばり、こうした「自由度の高さ」に気づいた人が増えているからである。

宿のチェックイン時間にしばられることもない。渋滞を避けたいなら、人が走らない時間帯を選んで出発すればいい。金曜日の深夜に出発、疲れたらサービスエリアや道の駅で短時間の仮眠。渋滞知らずで、目的地に近づける。せっかくのんびり寝ているのに、宿の朝食の都合で起こされることもない。

気まぐれに目的地を変更するのも(どこかにキャンプ場などを予約していれば別だが)自分次第だ。キャンピングカーがシニア世代に人気があるのもそうした理由からだろう。トイレが近い人は好きなタイミングで休憩できるし、体調に不安がある人はちょっとでも不調があれば、切り上げて帰ればいい。

■「大切な家族」と一緒に旅ができる魅力

キャンピングカーはペット連れの人にも人気がある。

「ペットと泊まれる宿」は少しずつ増えているようだが、出かけたい先にそうそう都合よくあるとは限らない。また、ほとんどの施設が「犬」を想定しているので、その他の動物を飼っている人が利用できる宿はさらに少ない。

解決策として、ペットホテルやペットシッターという手もあるが、お金もかかるし、そもそも大切な家族の一員を置いて出かけることに抵抗を感じる人もいる。その点キャンピングカーなら、一緒に連れて行けるしコストもかからない。

車内にいる犬
写真=iStock.com/photography-wildlife-de
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/photography-wildlife-de

実際、キャンピングカー愛好家にはペット連れの人が多い。私がこれまで見てきただけでも、犬、猫はもちろん、ウサギ、インコ、タカ、フクロウ、カメ、サル、ヘビ……実にさまざまな「大切な家族たち」がいた。ちなみにわが家は猫6匹を連れている。

日本RV協会の調べによれば、35.4%の人が、キャンピングカーで旅をする目的の一つに「ペットを連れていく」を挙げているという。ペットブームとキャンピングカーブームがシンクロしているともいえそうだ。

■災害時には「シェルター」の一面も

さらに「災害時のシェルター」としても使える。地震や台風などの自然災害で一番困るのは電気・水道などのインフラが止まることだ。キャンピングカーは小さくとも、ある程度のインフラを自前で備えている。

避難所などではプライバシーの確保が難しくなるが、キャンピングカーがあれば家族専用の個室をもてる。しかも手足を伸ばして寝られるから、エコノミークラス症候群の心配も少ない。

東日本大震災以降、避難のスタイルもレギュレーション(決まり)も変わりつつある。自治体によって呼び名は異なるが「指定避難所外避難者」という、車や自宅(崩壊の危険がないことが前提)にいても、被災者としての支援が受けられる制度が整備されつつある。

有事の避難の際、「ペットは連れて逃げる」はもはや原則となっている。水もガソリンも常に満タン、バッテリーはフル充電、非常食や救急キットも常備。こうしておけば、愛犬や愛猫と一緒に逃げるときにも安心だ。

「車が売れない」と言われて久しい。これは交通インフラとしての需要がなくなったからではなく、レジャーとしてのクルマに魅力を感じなくなったからではないだろうか。

自動車メーカーも自社製品のオプションに「ベッドキット」を用意するなど、キャンピングカー市場に注目し始めている。マルチに使えて、災害時にも役に立つ、そんなキャンピングカーの人気はまだまだ続くのではないだろうか。

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渡部 竜生(わたなべ・たつお)
キャンピングカージャーナリスト
サラリーマンからフリーライターに転身後、キャンピングカーに出会ってこの道へ。専門誌への執筆のほか、各地キャンピングカーショーでのセミナー講師、テレビ出演も多い。著書に『キャンピングカーって本当にいいもんだよ』(キクロス出版)。YouTubeチャンネル「キャンピングカー坊主めくり」開設。

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(キャンピングカージャーナリスト 渡部 竜生)

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