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人命最優先のコロナ分科会が「ワクチン接種後の死」をろくに原因究明しないお粗末

プレジデントオンライン / 2021年8月18日 12時15分

参院内閣委員会の閉会中審査で挙手する政府の新型コロナ対策分科会の尾身茂会長(中央)=2021年7月29日午前、国会内 - 写真=時事通信フォト

新型コロナワクチンの接種が進むいっぽう、政府や分科会は相変わらず自粛、人流抑制などの旧来型の規制を訴えるばかりだ。精神科医の和田秀樹さんは「彼らは病床逼迫への対策や市民生活の緩和などに対する建設的な提言をほとんど行っていない。累計900人超の“ワクチン接種後の死”もろくに検証していない」という――。

■コロナ陽性者に対する死者数は0.1~0.2%「季節性インフルと同程度」

コロナの感染数の増加がとどまるところを知らず、緊急事態宣言対象地域の拡大も続いている。また各地で病床確保の困難が相つぎ、自宅待機者も増え続けている。ワクチンの接種はおおむね順調に進んでいるようだが、それ以上にデルタ株の感染力が強いため、そのような状況になっていると説明されている。

確かに感染者数は膨大な数であり、重症者数も過去最高を記録した。いっぽう死者数のほうもそれを追うように増えているが、まだ5月のピーク時の10分の1程度だ。陽性者に対する死者数は0.1%から0.2%で推移していて、季節性インフルエンザと変わらなくなった。

ベッドが空きにくい理由のひとつは、感染症法上でのコロナの扱いだ。現状はSARS(重症急性呼吸器症候群)並の「2類」相当とされているが、さまざまな規制内容をみる限り、致死率が極めて高いエボラ出血熱並の「1類」相当の扱いといってよい。最大級の警戒だ。

重症化率・致死率が高い高齢者へのワクチン接種がおおむね終わり、致死率も季節性インフルエンザ並になった。また受けいれ側の医療従事者もほとんどワクチン接種が終わっているので感染しても重症化する危険が以前と比べてはるかに低くなっているのは事実だろう。こうした事実や数字を、政府も国民も今一度冷静に見つめるべきではないか。

そもそも感染症法上の分類は、医療従事者や入院患者への感染とそれによる死亡などに対して対応するものとされる。季節性インフルエンザにしても「5類」相当でも年間3000~6000人が、それが直接死因で亡くなっており、コロナ同様に人工呼吸器を使うこともある。

こうした事情を鑑みれば、コロナも季節性インフルエンザ並の「5類」相当に引き下げれば、少なくとも病床不足その他の問題は解決する可能性が高い、と私は考えている。

なぜ解決するのか。それは、保健所の負担が大幅に減り、患者を一般の開業医で引き受けられ、また通常の病棟への入院もできるようになるからだ。インフルエンザなどでも(義務ではないが)、なるべく別の病気で入院している人と同室にしないなどの対応をしてきたので、それと同様にすればいい。また、同じフロアに入院している患者のワクチン接種が済んでいれば大きな問題も生じない。

■「ワクチン接種後の死亡」をきちんと原因究明していない

私がここで問題にしたいのは、専門家会議がワクチンの接種を進めながら、相変わらず自粛、人流抑制などの旧来型の規制ばかりを訴え、病床逼迫への対策や市民生活の緩和などに対する建設的な提言をほとんど行っていないことだ。

ワクチン
写真=iStock.com/Pornpak Khunatorn
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Pornpak Khunatorn

海外では、この問題に対するさまざまな研究が行われ、市民生活の緩和が行われている。ポルトガルでは、本当にコロナウイルスが怖い病気だったのかという検証のため、コロナで死んだとされた人の真の死因調査の研究が行われている。イスラエルのように3回目のワクチン接種に踏み切った国もある。そして、イギリスやシンガポールのようにほとんどの規制を緩和した国もある。

日本の「専門家」が、欧米より感染者も死者もはるかに少ないのに厳しい規制の勧告を行い続け、「1類」扱いをしているのは、それだけ人命が大切だと考えているからだとされてきたが、それにしてはお粗末な点がある。

実は、ワクチン接種後の死亡に対して、きちんと原因究明を行っているように思えないのだ。ワクチン接種でファイザーは4割、モデルナでは8割もの人が熱発している。それだけでなく7月30日現在、ワクチン接種後の死亡は900人を超えた(7月26日から30日の5日間だけで84人が亡くなっている。これは同じ時期のコロナ死者数より多い)が、一例としてワクチン接種との因果関係が否定できないという評価をしておらず(海外で問題になっている血小板減少がらみの出血死のケースですらそういう評価になっていない)、3例で因果関係が否定されているが、それ以外のすべてのケースが「情報不足等によりワクチンと死亡との因果関係が評価できないもの」とされている。

和田秀樹『これから怖い コロナの副作用!』(ビジネス社)
和田秀樹『これから怖い コロナの副作用!』(ビジネス社)

ワクチン分科会副反応検討部会が開かれるたびにこの数が増えている。「情報不足」ならもっと情報を集めるべきなのに、それをした形跡がないままに「因果関係が評価できない」死亡例が積みあがっている。

本当に人の命が大切なら、当然“ワクチン死”に対しても真剣に向き合い原因の究明をすべきだが、ろくに検討もせずに「因果関係が評価できない」で放置されているのは看過できない。20代の場合、2回接種をした人は現状まだ1割前後だが、すでに4人も亡くなっている。接種を拒む若い世代が多いのも無理はないのだ。

今回のワクチンにして、私はもともと欧米の人と体重も体格も違うのに同じ量でいいのか、という疑問を抱いていた。同じ意見の医師も少なくないが、それについて検討した形跡もない。

■「分科会の専門家は頭が古い」尾身茂会長は適任と言えるのだろうか

専門家たちはいったい何をしているのだろうか。

挙手する尾身会長
挙手する尾身会長=2021年7月29日(写真=時事通信フォト)

私は日本の政策ブレーンの選び方に大きな問題があると見ている。そう断言するのは、上記のような“もたもた”した対応の遅さだけが理由ではない。

率直に言えば、政策ブレーンである専門家たちは、頭が古いのだ。

彼らが現在のポジションに就いたのは、それなりの実力を伴っていると認められたからだろうが、それは現時点での研究能力や勉強量ではなく、「昔の実績」やそれが反映された肩書が大きな影響を与えたと思われる。だが、過去に実績がある人が、現在も実績や結果を出しているかどうかはわからない。専門家といえども、時代遅れの存在となることもある。

実際、海外では当たり前に行われている比較実験のようなものも日本ではほとんど(少なくとも彼らの主導では)行われないなど、ブレーンの発想は総じて古臭いものに映る。

新型コロナウイルス感染症対策分科会の尾身茂会長は、20世紀末に西太平洋地域でのポリオの根絶を達成するなど華々しい実績を持っている。それによってWHOの西太平洋地域の事務局長などに選ばれているが、それは20年以上の前の1998年の話だ。その後も論文を検索してみても総説のようなものは別として研究論文の発表は21世紀になってからは見かけない。

コロナのように新しい病原体に対応するのに、そうした人材が適切なのかどうか。もし、誤った人材が会長の地位に配置されているのであれば、その存在を頼りとする日本は、結果的に他国の進んだ知見を持つ研究者のサル真似をするしかないのではないか。

■引退して20年以上たつ元名選手の評論家が分科会のトップ

こうした首をかしげたくなるような政府や国の対応は今に始まったことではない。

ピンクリボン
写真=iStock.com/Chinnapong
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Chinnapong

アメリカやイギリスが1980年代に実質上、ゆとり教育的な教育をやめ、日本型の初等中等教育を取り入れた教育改革を行ったのに、日本では逆に1998年にゆとり教育といわれる学習指導要領を制定し、2002年から断行された。

なぜ、こんな頓珍漢な事態が起こるのか。

おそらく審議会の委員である教育学部の教授たちが若い頃に留学して、その頃の欧米の教育を理想化し、教授になってからろくに最新の状況を勉強していないから海外の教育改革の流れに気づかなかったのだろう。

そして教育国民会議座長としてこの政策を進めた、ノーベル賞受賞者の江崎玲於奈氏にしても、初等中等教育については経験がなく、彼が学長を務めてきた筑波大学、芝浦工業大学、そして現在所属する横浜薬科大学の教育が特段すぐれているという話は聞かない。

ノーベル賞学者というのは、その分野ですぐれた研究をした人に与えられるもので(しかも通常は20年以上前の研究で)、ほかの分野で優れているという保証はないはずだ。

これに対して、世界一の義務教育と言われるフィンランドでは、3年以上の教員経験がないと国家教育委員会のメンバーになれない。

いい加減、過去の実績はすごいがとても現役の研究者と言えないような人や東大のような一流とされる大学の教授(これだって、教授になってからは雑務に追われてほとんど自分では研究をしない人が多い)を政策ブレーンにするのをやめて、現役の研究者や臨床医、あるいはビジネスパーソンを重用しないと、海外と比べていろいろな点でますます遅れをとるだろう。

海外がバリバリの現役選手のチームなのに、こちらは引退して20年以上たつ元名選手の評論家のチームで戦っているようなものだ。

こうした現象は私の見るところ、医学の世界で顕著だ。大学の教授が人事権を握っているので、新しい理論がスタンダードになるためには、そういう人たちが引退するのを待たないといけない。医師で近藤誠がん研究所の所長である近藤誠先生が乳房温存療法についての海外の論文を紹介してから、それが国内で標準治療になるまでに15年もかかっている。

乳房を全部取らないとがんが再発すると患者に説明してきた権威の外科医たちがメンツを潰されたと怒り、彼らが引退するまで部下たちが忖度し続けたからだ。

私は現在、その近藤先生と対談形式の書籍を作っている。共著者だから言うわけではないが、近藤先生のコロナの病態やワクチンに対する読書量には本当に舌を巻く。

私は「高齢の学者」を問題にしているわけではない。大事なのは、現役かどうかだ。高齢でも現役の学者は世界中にいる。

海外の質の高い雑誌(大学教授などの論文で引用回数が多い雑誌)に掲載される国別のランキングでは中国がトップだ。日本は最近、インドにも抜かれ10位になった。人口が半分もいない韓国にも肉薄されている。

日本において、「昔の名前で出ています」のような学者を頼りにしても大きな問題にならないような時代はとっくに終わっている。当時は、政治家や官僚がそれなりに能力を持ち、同時に民間の研究や開発能力も世界屈指のレベルだったが、今はそれを望むべくもない。

本連載でも述べ続けてきたように、「賢い人でも突如バカになる」ということは珍しくない。今の時代は勉強し続けていないと賢い人が簡単にバカと言われるレベルに転落しかねない時代だ。

ポストワクチンの日本のコロナ対策を含め、日本は古臭い理論にとらわれることなく、新しく多様な意見を積極的に取り入れられるシステムを採用すべきだ。

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和田 秀樹(わだ・ひでき)
国際医療福祉大学大学院教授
アンチエイジングとエグゼクティブカウンセリングに特化した「和田秀樹 こころと体のクリニック」院長。1960年6月7日生まれ。東京大学医学部卒業。『受験は要領』(現在はPHPで文庫化)や『公立・私立中堅校から東大に入る本』(大和書房)ほか著書多数。

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(国際医療福祉大学大学院教授 和田 秀樹)

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