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「すべての親は真似するべき」ヒカキンの親が絶対にやらなかった"あること"

プレジデントオンライン / 2021年8月23日 15時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/ozgurdonmaz

いまの子供たちが憧れる「偉人」たちは、どんな子供時代をすごしていたのか。教育プランナーの小川凜一さんは「いま活躍している人を取材すると、欠点やコンプレックスを強みに変えた人が多い。だから、親は欠点や挫折への捉え方を変えるべきだ」という。著書『キラリモンスター ちょっと変わった偉人伝』(大和書房)から一部を紹介しよう――。

■「欠点」から生まれたYouTube界の絶対王者

「正解がない時代」と言われています。いま目の当たりにしている世界的なパンデミックでは、「昨日の常識は、今日の非常識」というように、状況が刻一刻と変化しています。このように変化が激しい時代に、親は子どもをどのように育てたらいいのでしょうか。

私はそれを知りたくて、いまの時代に活躍している15人の“偉人”を取材し、『キラリモンスター ちょっと変わった偉人伝』(大和書房)にまとめました。YouTubeクリエイターのHIKAKINさんや「かいけつゾロリ」シリーズの作者である原ゆたかさん、お笑い芸人の渡辺直美さん、連続起業家の家入一真さんなど、子どもにとっても憧れのロールモデルといえる方たち。その人たちを取材すると、ある共通点を見つけました。

それは、今成功を作り出した力も、子どもの時はネガティブに捉えられていたということです。

HIKAKINさんは、子どもの時からチームプレーが苦手という欠点があったと話します。なんでも自分が納得できるまでやらないと次に進めず、周りに歩調を合わせられない子どもでした。

親からすると「周りとちゃんと協力しなさい」「協調性がないと社会で通用しないよ」などと言ってしまいそうなところです。しかし、HIKAKINさんは「小さい時から、親に否定や反対をされたことは一つもなかった」と振り返ります。

HIKAKINさん
HIKAKINさん(写真提供=©UUUM)

そして、日本人として初めてYouTubeクリエイターという仕事を確立します。企画・撮影・編集を自分たちで行うこの仕事は、納得できるまで行いたいHIKAKINさんにとってはまさに天職。一見“ノリ”で作っているように見える動画も、人気動画の共通点を徹底的に洗い出し、一挙一動に至るまで計算し尽くされています。

デビューから10年、求道者とも言えるほどの執念で、投稿とデータの分析を続けているからこそ、パイオニアであり、絶対王者であり続けているのです。

もし子どもの時、「こだわらずに協調性を持ちなさい」と親から“欠点”を矯正されていたら、この成功はなかったかもしれません。カリスマ教師の井本陽久さんもやろうとしたことを親から否定されることはほとんどなかったと話します。

■親世代の成功体験が才能を阻む

逆に「いい成績をとって、いい大学へ行き、いい会社へ就職する」といった親世代の成功ルートの呪縛が強いと、本人がやりたいことに出合うまでに時間がかかり、遠回りになってしまうこともあります。

バーチャルイベントマンの動く城のフィオさんは、ギネス認定もされた世界最大のVRイベント『バーチャルマーケット』の発起人です。VR空間で出会った仲間を楽しませたいと、最初は一人でイベントを企画し、今では100万人以上が訪れるイベントとなりました。現在、VR空間でキャラクターに着せる服や住む家を売買できる「バーチャル経済圏」をつくり、その中だけで収入を得て暮らしていけるもうひとつの世界づくりに取り組んでいます。

そんなフィオさんは、子どもの時から有名大学、有名企業への道を親から強く言われていました。本当はゲームデザイナーになりたいという夢があったのですが、自分の思いより親を優先し、親が望んだレールをひた走り、約束通りに有名企業に入ることとなります。しかし、30歳のときに内因性うつ病(遺伝や体質による、脳の機能障害が原因の一部と言われる外的要因のないうつ病)を発症。電車に乗るだけで、パニックで気絶をしてしまうような状況で、二人の息子と妻がいながら、外に出られないという状況に長く苦しむことになります。

そこから抜け出せたきっかけは、ひきこもり生活のなかでVRに出合ったことでした。ゲームクリエイターに憧れていたことも思い出し、VR空間で遊ぶ方法を考えるようになり、現在日本が世界に誇れる、新時代の文化を作り出すに至りました。

フィオさん
動く城のフィオさん

ご自身の経験を振り返り、フィオさんは子どもに次のようにアドバイスしています。

「大人はあなたを導いてくれる存在ですが、完璧というわけではありません。時にまちがったことも言うし、言葉をそのまま受け取るべきではない時もあります。だから、言われたことを、もう一度『どういう意味で言ったんだろう』『両親はこう言っているけど私はどうしたいのかな』と、自分の考えで見つめ直してみてください。あなたの人生を決めるのは、他の誰かではなく、あなた自身なのですから」

親として子どもにいろいろ言いたくなるのは当たり前のことです。しかし、正解がない時代だからこそ、大人も間違う。そんな風にある意味開き直ってしまって、最後の判断を子どもに委ねていくようにすれば、親も子も気持ちがラクになるのではないでしょうか。

■子ども時代の挫折体験が社会ニーズ発見につながる

フィオさんは、VR空間にバーチャル経済圏をつくろうとされているわけですが、これは病気でひきこもりの生活を送るようになったからです。このようなニーズや発想は、普通に暮らしていたら、なかなか気づけないものです。

いまの時代は、「正解を出す人」よりも「問題を見つけられる人」が求められているといわれています。こう考えると、欠点や変だと言われてしまう問題を抱えた経験のある人こそ、問題を見つけやすいぶん、活躍しやすい時代が来ているのではないでしょうか。

連続起業家として、当時日本最年少で上場を実現した家入一真さんもまた、学生時代ひきこもりを経験した一人です。学校や職場に馴染めない中で、すでにある集団に入っていくのが苦手なら、自分自身で居場所を作り出せば良いことに気づき、起業の考えに至り、才能を発揮することになりました。

家入さん
家入さん

「世の中から孤独をなくしたい」と活動する、ロボット開発者の吉藤オリィさんもフィオさん同様につらく悩んだ時期があった人です。

吉藤さんは、小学生時代の入院をきっかけに、周りと馴染めず不登校となってしまいます。学校にいけないつらさ、そして何より誰かに助けてもらうばかりで、自分は何も返せないという苦しさを味わいました。

その中で、両親の応募したロボットコンテストからロボット作りにのめりこみ、コンテストで出会ったロボット開発者に師事したいと、高校から学校に復帰。車椅子などの開発で大きく成功しますが、自分が本当に一番作りたいものは何なのか考えた時、不登校時代の辛い体験がよぎります。

不登校だった自分に必要だった、コミュニケーションの本質は何かを振り返り、遠く離れたところからでも仕事をしたりイベントに参加したりできる、分身ロボット「OriHime」の開発に至ります。孤独だったコンプレックスを強みに転換し、今では寝たきりでもロボットを通して働ける、分身ロボットカフェDAWNで、動けない人でも自宅から働いたり、人の役に立ったりできる機会を作り出しています。

吉藤さん
吉藤さん(写真提供=(株)オリィ研究所)

吉藤オリイさんは子どもたちにこうメッセージを送ります。

「学校に行けなくて孤独に過ごしていた時、世の中が正しくて、自分の方が間違っていると思っていました。世の中は完璧だから、そこに合わない自分の方が悪い、と。でも、大人になって気づいたのは、世の中はまだ不完全で、未完成だということ。たとえば車椅子は道を動きにくいし、社会の仕組みも整っていない。だから絶対の正解なんてないし、当り前と言われることが変わることもあります」

■欠点もキャラ化して愛でよう

ひきこもりや不登校のような、これまでの日本ならネガティブにとらえられていたような経験も、活躍のきっかけになる時代です。だからこそ、親は子どもの欠点や挫折の中にある可能性に目を向けてほしいと思っています。

そのことを伝えたくて、欠点や個性をモンスター化して愛でようと提案しているのが『キラリモンスター ちょっと変わった偉人伝』(大和書房)です。「変わっている」という言葉は、日本ではネガティブに使われがちです。「個性的」ということも、変であることのフォローのように聞こえてくることもあります。しかし、「レア」だと考えればどうでしょうか。ゲームのレアモンスターのように、自分の個性を珍しく貴重なものだと受け取ることができれば、価値や真価に目が行くのではないでしょうか。

小川凜一『キラリモンスター ちょっと変わった偉人伝』(大和書房)
小川凜一『キラリモンスター ちょっと変わった偉人伝』(大和書房)

好きなゲームや漫画のキャラクターを想像してみてください。きっと、「完璧だから」好きなのではなく、欠点も含めて好きなのではないでしょうか。

自分の人生を、自分が主役のロールプレイングだと捉えてみれば、自分の欠点も愛すべき個性に、先行きの見えない未来も、波乱万丈のストーリーに見えてくるのではないでしょうか。ここで紹介した輝く大人たちは、欠点にも見えた自分らしさを磨き、望む道を選んで進化させていくことで今の活躍に繋げていきました。

人生に正解がなければ、歩む道に正解もない。だからこそ、自分らしさ、自分の好きなものが人生の最大の指針になるのではないでしょうか。

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小川 凜一(おがわ・りんいち)
プランナー・教育企画者
大学で教員免許を取得。2019年『こども六法』(弘文堂)の出版をプロデュース、累計発行部数69万部のベストセラーとなる。2021年、コロナ禍で文化祭ができなかった学生たちのために「全国オンライン学生祭」を開催。全国から500名以上の学生が参加、多数の著名人も出演する大規模イベントとなった。現在は、本書及び『こども六法』のデザイナーである妻の砂田智香と、夫婦でLUCK(ラック)株式会社を設立し、子どもたちが学ぶ機会をクリエイティブで支援する活動を行っている。

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(プランナー・教育企画者 小川 凜一)

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