「500ミリリットルに角砂糖14個分」糖質依存を引き起こす"危険な飲み物"をどうしても飲みたくなるワケ
プレジデントオンライン / 2021年8月30日 11時15分
※本稿は、牧田善二『医者が教えるダイエット 最強の教科書 20万人を診てわかった医学的に正しいやせ方』(ダイヤモンド社)の一部を再編集したものです。
■人間の脳はリバウンドするようにできている
ダイエットにはリバウンドがつきものです。多くの人がダイエットに挑んではリバウンドし、そのたびにかえって太るということを繰り返しています。
それにしても、なぜリバウンドしてしまうのでしょうか。
その答えは、「人間の脳は、ダイエットに失敗してリバウンドするようにできているから」です。
その仕組みについて、簡単に説明しましょう。
私たちの命を繫ぐためには、エネルギーが必要です。そして、エネルギー源となるのは炭水化物(糖質)です。だから、人類は生まれながらにして「炭水化物を摂取するように」プログラミングされています。
しばらく炭水化物を摂らないでいると、血糖値が下がってイライラしてきます。このとき、脳の指令によって猛烈に炭水化物を食べたくなります。
そして、食べれば脳の「報酬系」が働き、ドーパミンというホルモンが出て幸せを感じるようになっています。
「ああ、美味しい。幸せ」と。
この幸福感を得たくて、人類はせっせと炭水化物を食べ、エネルギー枯渇を防ぎ、命を繫いできたのです。
ただ、ここで忘れてはならないのは、そうしたプログラムが完成したのは、はるか昔の旧石器時代だということです。
■旧石器時代にできた「脳が幸せを感じる仕組み」
旧石器時代には農耕の技術はなく、人々は狩猟や採集で食べ物を得ていました。そこには、エネルギーとなる炭水化物はあまり含まれておらず、それゆえに、いくら食べても食べ過ぎにはなりませんでした。そういう時代が数百万年も続きました。
ところが、約1万~2万年前に農耕生活が開始され、小麦などの炭水化物を栽培し、かつ保存ができるようになりました。
それでも、「潤沢に」と言うにはほど遠かったでしょう。一部の特権階級を除いては飢えとの闘いが続いていたはずですから、やはり過剰なほどの炭水化物は摂れなかったはずです。だから、一般人は肥満とは無縁でした。
しかしながら、現代社会は「いくらでも摂れる」状態です。しかも、炭水化物はほかの食品に比べて安価です。さらに、糖質制限など行おうものなら、脳から「なにをやっているんだ。早く炭水化物を食べなさい」という指令がどんどん出されます。それに従って食べれば、「ああ、やっぱり美味しい。幸せ」となります。
ちなみに、薬物依存の人が、ダメだとわかっていながら薬物に手を出すのは、「ハイになりたいから」ではありません。薬物が切れた苦しい状態から抜けて、正常なレベルまで調子を取り戻したいからです。
極端な肥満者の場合、これと同じ状況で、糖質を摂らないと落ち着かずに憂鬱に感じられ、そこから脱出したくて食べてしまうという、ひどい依存症に陥っているのです。
こういう状況だから、リバウンドしてしまうのも当然です。
■糖質を“買っている”のではなく、“買わされている”
加えて、現代社会は、脳の報酬系によるドーパミンの分泌が極端になり、糖質依存症へ突き進む条件が揃っています。
過去の私の著書でも何度か述べていますが、今は多くの食べ物が工業製品となっています。
食品メーカーにとって最も理想的なビジネスは、消費者が何度もリピート購入してくれる商品をつくりだすことです。
そのためには、世の中に糖質依存症を増やすのが手っ取り早いのです。
たとえば、コーラはその典型です。コカコーラは、1886年に薬剤師のペンバートンが発明しました。当初はコカインを含むコカの葉の成分が含まれていましたが、さすがにそれは取り除かれ、今のコカコーラは「カラメルE-150d」という色素と企業秘密の香料を加えたただの砂糖水です。原材料費も安く、とても効率的なビジネスモデルです。
もっとも、私はコカコーラを非難したいわけではありません。企業として利益を追求するのは当たり前のことですし、それはコカコーラに限ったことではありません。
安価でお腹いっぱいになるピザや菓子パン。
冷凍で使いやすい餃子、焼きそば、うどん。
コーンシロップをたっぷり入れた清涼飲料水。
小麦粉やジャガイモからつくられるスナック菓子。
これらは、消費者が喜んで繰り返し買ってくれるから、スーパーやコンビニでも売られているわけです。
なぜ、繰り返し買ってしまうのかについて、「美味しいから」というのは表面的な解釈で、正しくは「糖質依存症になっているから」です。
■瞬間的に血糖値上昇を引き起こす「危険な飲み物」
つまらないことで糖質を摂ってしまう習慣の筆頭が、ちょっと一休みしたいときの缶コーヒー、清涼飲料水、エナジードリンクなどです。
たとえば、500㎖のコーラは57g(角砂糖14個分)の砂糖が入っています。概して炭酸飲料は糖質含有量が多いのですが、炭酸の爽やかさや、酸味料などによってそれがごまかされてしまうのです。
ポカリスエットのようなスポーツ飲料もしかりです。とくに夏は熱中症予防のためにスポーツ飲料をよく飲む人がいますが、水で十分です。
こうした飲料は、液体であるために胃での消化を必要とせず、すぐに小腸で吸収され、あっという間に血中にブドウ糖が溢れます。結果、血糖値スパイク(急激に血糖値が上昇すること)を起こし、糖尿病にもかかりやすくなります。
まずは、こうしたものを一切やめ、水かお茶に変えましょう。
コーヒーや紅茶を飲むときに、砂糖を入れるのはやめましょう。
スーパーに行くときは、あらかじめ買うものを決め、それだけを購入するようにしましょう。さもないと、つい糖質たっぷりのものを買ってしまいます。
■今すぐやめるべき習慣
たいした用もないのに、コンビニに立ち寄るのはやめましょう。寄ればつい、スイーツコーナーに足を運んでしまうでしょう。
そして、美味しそうな新商品を見たら、脳は「早くそれを買って食べろ」と指令を出します。
普段から、身の周りに甘いものや炭水化物を置かないことも大事です。お菓子やカップ麺の買い置きはやめましょう。
要するに、ダイエットは自分の脳との闘いです。「糖質を摂れ」という脳の指令を、いかに聞かずに済むかという工夫が必要なのです。
できれば周囲に、「糖質制限でダイエットする」と宣言しましょう。そうすれば、出張のお土産のお菓子もパスできるはずです。
ダイエットで大事なのは「続ける」こと。時間がかかることを前提とし、途中で失敗してもくよくよせず、また続ければいいのです。
こうして、焦らずに糖質摂取量を減らしていけば、あなたは確実にやせることができます。
■どうしたらリバウンドを避けられるのか?
太っていた人がやせてとてもきれいになり、周囲を驚かせることがありますね。
でも、彼らはたいてい、再び周囲を驚かせます。「あれだけ苦労してやせたのに、なんでまた戻ってしまったの」と。おそらく、本人も残念でたまらないはずです。
我慢して我慢してやせたのに、そのすべてを水の泡にしてしまうのは、一時的に体重は落としたかも知れないけれど、糖質依存症に陥った脳を治していないからです。
糖質依存に限りませんが、中毒症状から抜け出そうと思ったら一時的ではダメ。完全に抑えることが必須です。
つまり、リバウンドしないダイエットには「完全に抑えたか」の見極めが必須で、それにかかる時間をきちんと把握することが求められます。
脳は、とても緻密な器官であると同時に、変化には時間がかかります。
2009年にイギリスで行われた研究では、脳が新しい習慣を受け入れるまでに平均66日かかることがわかっています。
どんな習慣であるにしろ、「1週間で身につく」とか「1カ月で結果が出る」などとうたっているものは全部ウソなのです。
とくに、ダイエットは短期集中は失敗します。糖質中毒はコカイン中毒の8倍、依存性が高いという報告がなされています。
この現実を踏まえない限り、リバウンドしないダイエットは無理。正しい知識のもと、きちんと必要なプロセスを踏んだ人だけが成功します。
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AGE牧田クリニック院長
1979年、北海道大学医学部卒業。地域医療に従事した後、ニューヨークのロックフェラー大学医生化学講座などで、糖尿病合併症の原因として注目されているAGEの研究を約5年間行う。この間、血中AGEの測定法を世界で初めて開発し、「The New England Journal of Medicine」「Science」「THE LANCET」等のトップジャーナルにAGEに関する論文を筆頭著者として発表。1996年より北海道大学医学部講師、2000年より久留米大学医学部教授を歴任。 2003年より、糖尿病をはじめとする生活習慣病、肥満治療のための「AGE牧田クリニック」を東京・銀座で開業。世界アンチエイジング学会に所属し、エイジングケアやダイエットの分野でも活躍、これまでに延べ20万人以上の患者を診ている。 著書に『医者が教える食事術 最強の教科書』(ダイヤモンド社)、『糖質オフのやせる作おき』(新星出版社)、『糖尿病専門医にまかせなさい』(文春文庫)、『日本人の9割が誤解している糖質制限』(ベスト新書)、『人間ドックの9割は間違い』(幻冬舎新書)他、多数。 雑誌、テレビにも出演多数。
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(AGE牧田クリニック院長 牧田 善二)
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