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「2人に1人が5年以内に亡くなる」早死リスクを高める"絶対に折ってはいけない骨"

プレジデントオンライン / 2021年8月26日 9時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Motortion

健康で長生きするためにはどうすればいいのか。『医者が考案した 骨粗しょう症を防ぐ 1分間骨たたき』(アスコム)を出した整形外科医の中村光伸さんは「転倒による骨折で要介護や寝たきりになる高齢者が多い。健康長寿には丈夫な骨が不可欠だ」という――。

■自覚症状がほとんどない骨粗しょう症の重大リスク

規則正しい生活で若い頃からサイクリングや水泳が趣味、メタボ予防にダイエットにも余念がない。そんな一見健康的に見える人でも、ある恐ろしい病気のリスクが高まっている可能性があります。

しかも最近は、長引く外出自粛生活でさらにリスクが高まっているうえに、自覚症状がほとんどないのが怖いところ。特に次のことに当てはまる人は注意が必要なのですが、その怖い病気とはなんでしょうか。

・若い頃から繰り返しダイエットをしている
・サイクリングや水泳が趣味で、跳んだり走ったりする運動が少ない
・通勤や移動はもっぱら車
・デスクワーク中心で外出が少ない
・日焼け対策で紫外線を浴びないようにしている
・糖質制限している

その病気とは、骨がスカスカになってしまう骨粗しょう症です。

骨粗しょう症は、ちょっとした強度にも耐えられないほど骨がもろくなる病気です。骨粗しょう症は自覚症状がほとんどなく、自分の骨がどんどんもろくなっていることを外見から判断することはできません。

ほとんどの人が知らないうちに症状が進行し、転倒して骨折してはじめて気づくことがよくあります。一般的には高齢者や更年期以降の女性に多いとされていますが、若い年代や男性にとっても実は他人事ではありません。

例えば辻学園栄養専門学校の調査では、20代女性の6人に1人が50代並みの骨密度しかなく、WHOの定義する「骨量減少者」に該当しました。

骨粗しょう症は自覚症状がほとんどない病気で、自分の骨がどんどんもろくなっていることを外見から判断することはできません。あなたやご両親は大丈夫でしょうか?

■「カルシウムだけでは不十分」スポーツ選手でも骨が弱くなりやすい

骨が弱くなる原因の1つは、骨への刺激が少なくなること。

このことがよくわかるのが、米ミズーリ大学のヒントン博士による調査です。20~50代の男性で、週に6時間以上ランニングする人と、自転車に乗る人とを比較したところ、骨粗しょう症予備軍とされる人の割合がランニングでは19%だったのに対して、自転車に乗る人では63%もいました。

また、バスケットボールやバレーボールの競技者と比較すると、水泳選手は骨量が少ないという報告もあります。これもやはり、水中は骨にかかる負荷が少ないためと考えられます。

骨に適度な負荷がかかると、「より強くなろう」として骨づくりが活性化します。骨への刺激が、骨の主成分であるカルシウムの沈着を促進するのです。逆に負荷が少ないと骨は相応の弱さでよいことになり、骨づくりが停滞します。いくらカルシウムを摂取しても骨づくりに活かされません。

■健康や美容に気を使う人は骨の老化を招きやすい

美容の意識が高い人も要注意です。

理由の1つは、日焼け対策で日光を浴びなくなること。紫外線は体内のビタミンD生成を促進します。ビタミンDは、腸のカルシウム吸収率を高める、骨づくりに欠かせない栄養素です。

コロナや熱中症も怖いですが、まったく紫外線を浴びないことはビタミンDの欠乏を招きやすく、骨を弱くする恐れがあるのです。メラニン色素が少ない白人は紫外線を吸収しづらく、ビタミンDの不足しやすく、より骨が弱くなりやすいという調査もあります。

カウンセリングをうける人と骨の写真
写真=iStock.com/SDI Productions
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/SDI Productions

もう1つは、過度なダイエット。特に食事制限によるダイエットは要注意です。

カルシウムやビタミンD、ビタミンKといった栄養素が不足する恐れがあるのはもちろん、女性ホルモンの分泌が減ってしまい、骨を壊すスピードが速まってしまう危険性もあります。また、体重が軽くなりすぎると骨への負荷が弱まってしまうリスクもあるでしょう。

顔の骨量が減ると骨が小さくなり、皮があまることでシワやたるみの原因にもなります。美容のためにやっていることが結局は骨の老化を招き、美を損なってしまっては本末転倒です。

■女性は60歳を過ぎたら全員“骨粗しょう症予備軍”

骨量のピークは、なんと20歳前後。一般的に男女とも20歳前後で、一生のうちで最も骨量の多い「最大骨量」に達します。

ピークを迎えた後は、40歳頃までは一定の骨量を維持し続けますが、その後は加齢とともに骨づくりのスピードが衰え、男性も女性も徐々に骨量が減少していきます。

20歳までは骨の貯金期間のようなもの。骨の貯金が少ない人ほど、加齢などで骨量が減りはじめたときに、より早い段階で骨粗しょう症のレベルにまで落ち込んでしまう可能性があるのです。

骨量が増えるのは20歳まで。40歳からはどんどん落ちる。
骨量が増えるのは20歳まで。40歳からはどんどん落ちる。

女性の場合は、閉経を迎えて50歳頃から、急速に骨量が減少します。これは、閉経により卵巣の働きが低下して女性ホルモンの分泌量が一気に減少することで、骨を壊すスピードが加速するからです。

女性ホルモンの一種であるエストロゲンには、骨吸収をゆるやかにして骨からカルシウムが流出するのを抑制する働きがあります。

閉経後10年間で女性の骨量は15~20%も減少するといわれ、60代の女性の多くが若い頃の80%前後まで骨量が低下します。そして骨粗しょう症、または、骨粗しょう症予備軍の仲間入りをしてしまうのです。

また、若い頃と比べると腸でのカルシウムの吸収が悪くなることも、骨がもろくなる原因になります。

■「背骨は要注意」骨折しやすい“4大部位”

からだのなかで折れやすいところは、次の4大骨折部位です。

●背中や腰(脊椎椎体)
●手首(橈骨遠位端)
●腕の付け根(上腕骨近位端)
●足の付け根(大腿骨近位部)

特に、知らないうちに折れてしまう背中や腰、骨折すると大ごとになりやすい足の付け根は要注意です。

もっとも多いのが背骨の骨折。背骨の骨折がやっかいなのは、気づかないうちに折れていることです。

背骨は、椎骨という小さな骨が積み重なってできています。椎骨の要となるのが椎体という部分です。骨粗しょう症になると、この椎体の内部がスカスカに変質してもろくなり、からだの重みや骨同士がぶつかりあうときの衝撃で押しつぶされて変形してしまいます。

知らないうちにグシャっとつぶれる。これが、骨粗しょう症による「椎体圧迫骨折」です。椎体圧迫骨折を起こした人は、その後の5年間の生存率が約80%というデータがあります。約5人に1人は5年以内に亡くなってしまうということです(Tsuboi M.et al,J Bone Joint Surg Br.2007.89.461-466.)。

■「2人に1人が5年以内に死亡」太ももの骨折で高まる早死リスク

背骨の次に多いのが、足の付け根、大腿骨近位部の骨折です。

先ほど、背骨の骨折の5年生存率は約80%と紹介しましたが、大腿骨の骨折はそれよりも低く約50%。2人に1人は5年以内に亡くなるということです。

大腿骨近位部骨折の発生患者数(全国)
出典=日本整形外科学会等の報告より
椎体骨折・大腿骨近位部骨折による生命予後への影響
出典=三重大学医学部大学院医学系研究科整形外科 資料より作成 Tsuboi M.et al,J Bone Joint Surg Br.2007.89.461-466.

太ももの付け根の骨折も、背骨の骨折と同じように、高齢者にとっては死に至る怪我になります。というのは、太ももの付け根を骨折すると、要介護生活につながるリスクが圧倒的に高くなるからです。

大腿骨を骨折すると、治るまで歩けなくなります。長期入院すれば身体機能も衰えるため、骨折部分の完治に加え、骨折前のからだに戻すには相当な時間がかかります。

現実的には、骨折前のからだに戻せる人は全体の50%程度といわれています。日本人の死因第1位はがんですが、より骨折が怖いのは骨折が治らず、そのまま寝たきり生活がはじまる恐れがある点にあると言えます。

さらに寝たきりの状態が続けば、介護費用を払い続けるリスクも高くなります。たった一度の骨折が、貧困生活の入り口になるリスクも十分に考えられるのです。

■骨の健康維持には「骨たたき」と日光浴

骨量のピークは20歳前後ですが、何歳になっても丈夫な骨を維持することはできます。そのためには、まず適度な刺激を与えることです。

実は骨も、骨代謝という新陳代謝を繰り返し、日々新しい骨に生まれ変わっています。仕組みの詳細は本で解説していますが、簡単に言うと、この骨が生まれ変わるタイミングで細胞から「もっと丈夫な骨を作れ」という指令が出ると、骨が強くなります。骨の主成分であるカルシウムが骨に沈着するのを促進するのです。

中村光伸『医者が考案した 骨粗しょう症を防ぐ 1分間骨たたき』(アスコム)
中村光伸『医者が考案した 骨粗しょう症を防ぐ 1分間骨たたき』(アスコム)

この「もっと丈夫に」という指令のスイッチを入れるのが、骨への刺激です。

刺激といっても激しい運動をする必要はなく、軽いウォーキングなどを地道に続けることが大事です。それも難しいという人のために、本では骨を自分でたたいて強くする「骨たたき」を推奨しています。

もう1つは、適度な日光浴です。

紫外線をまったく浴びないと、ビタミンDの生成が十分に行われません。もちろん食事でビタミンDを摂取することもできますが、日光浴で済むのであればそのほうが簡単です。

紫外線を浴びるというと抵抗がある人も多いと思いますが、長時間浴びる必要はありません。ビタミンDを合成するには、顔や、ひじから手までの部分を15分くらい日光に当てるだけで十分です。

新型コロナウイルスの蔓延によって、私たちは外出自粛を余儀なくされています。特に高齢者は外出するリスクも高いのですが、巣篭もり生活で骨が弱くなり、自宅で転倒して骨折、そのまま寝たきりになるというケースは十分に想定されます。あなた自身はもちろん、高齢の親が心配な方は、自宅でできる骨たたきなどの運動をぜひ勧めてみてください。

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中村 光伸(なかむら・こうしん)
整形外科医
光伸メディカルクリニック院長。医学博士。整形外科医の知見から、骨の仕組み、体の動かし方を活かした骨トレーニングを提唱する骨の専門医。近年、注目を集める若返りホルモン「オステオカルシン」の研究を進め、骨の強化と全身の機能回復を両立する「骨たたき」を考案。日本整形外科学会認定医。日本体育協会公認スポーツドクター。日本抗加齢学会認定医。著書に『医者が考案した 骨粗しょう症を防ぐ 1分間骨たたき』(アスコム)がある。

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(整形外科医 中村 光伸)

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