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「地元では予約がとれない」ワクチン難民の30代男性が大手町の大規模接種にたどり着くまで

プレジデントオンライン / 2021年8月21日 9時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Yuki MIYAKE

感染拡大を受け、政府は早期のワクチン接種を国民に呼びかけている。作家の濱田浩一郎さんは「東京23区に住む私は、予約を取りたくても取れないのが現状。約1カ月かけて、何度も挑戦して、ようやく大手町の大規模接種会場の予約を取ることができた」という――。

■「何としても予約したい」

これまで新型コロナウイルスのワクチン接種の予約には苦戦を強いられてきた。私は、反ワクチン論者でもないし、注射が極端に怖いわけではなかった。できるだけ「早く打ちたい」と考えていた。よって、大規模会場の接種予約をしようとしたのだが、予約ができない状態が長く続いたのだ。

大規模接種会場だけではない。自治体接種の予約も困難を極めた。私が住む自治体(東京23区内)も「60歳から64歳の方」「基礎疾患を有する方」を「高齢者に次ぐ接種順位」としていたこともあり、私の年代(30代後半)の者は、予約は7月末からとなった。「大規模が無理なら、自治体接種だ」ということで「何としても予約したい」という思いで、その日に臨んだ。

予約受付開始の午前9時には、パソコン前に座り、臨戦態勢に。そして9時になるや、すぐさま、予約サイトに入り、接種券番号を入力した。しかし、大規模接種会場の予約サイトとはサイトの入力方法が異なったところもあり、戸惑ってしまう。

特に希望する接種会場を選ぶ時に、どこのボタンを押して次にいけば良いのかに迷ってしまい、時間をとられてしまった。「やっとできた」と思い、予約できる画面に入ると、既に8月はバツ印で埋まっていた。つまり、先客に予約されてしまったのだ。

遅かったか……。期待が高まっていただけに、悔しい思いがこみ上げてきた。大事なゲームに負けたような、そんな気分であった。

あの時、接種会場選びに戸惑わなければ、と自分を責めた。だが、もう後の祭りである。自治体がダメなら「病院・クリニックでの個別接種はどうだ」と10以上の病院のホームページにいっても、ワクチンの供給不足のため「新規予約は中止しています」のオンパレードだった。こうなれば、また、大規模接種会場の予約に頼るしかないと思い直し、私は再び、東京・大手町の大規模接種会場の予約に挑戦するのである。

■争奪戦と化すワクチン予約

私は既に7月ごろから、毎週1回の受付日には大規模接種会場の予約サイトにいき、予約を試みていた。しかし、受付時間の18時にサイトにいっても、混雑しているようで、ある時には「待合室」なる所に通されて、パソコン画面が切り替わったと思うと「受付は終了しました」との文字が毎度のように現れた。

所持するWi-Fiの速度が遅いのが予約できない理由と考え、時にはチェーン店カフェにいき、カフェのWi-Fiを使い、予約しようともした。これは妻からの助言である。ところが、予約受付時間の18時に受付サイトにいっても、結果は家と変わらなかった。大規模接種会場は、全国から接種者を受け付けているので、予約争奪戦になっているものと思われた。人気歌手のコンサートチケットを入手するのと同じくらい困難という声もある。

■5分前に予約サイトに入ってみたら……

このまま、ワクチンを打つのは後回しになってしまうのか。そうした思いが募っていく日々。東京の1日の感染者数も増える一方。そうした中の8月2日月曜日、大規模接種会場の予約受付が18時から開始との報があった。

「おそらく今回もダメだろう」との思いが強かったが、何もしないよりはましだと思い、予約に挑んだ。いつもは18時になる直前に入っていたのだが、同じことをしていてもダメだと感じ、5分前に入ってみたのだ。

カフェでスマートフォンを持つ手のクローズアップ
写真=iStock.com/anyaberkut
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/anyaberkut

すると、いつものように「混雑しています。画面をそのままにしてお待ちください。しばらくすると画面が切り替わります」との表示が現れた。あぁ。またダメか。どうせまた、しばらくしたら、画面が切り替わっても、「受付は終了しました」の文字が出るに違いないと早くも落胆。

しかし、18時を3分ほど過ぎた時であったろうか。画面が切り替わったかと思うと、予約受付の画面が現れたのだ。これは! と思い、急いで予約を試みた。そして、冒頭に記したように、8月7日に予約できたのだ。

■いつもと違うやり方が勝因

これまで失敗続きだった接種予約が、なぜ今回は可能だったのか。

これはあくまで私の推測ではあるのだが、予約開始時間の18時の5分ほど前に、予約サイトに入ったことだと思う。もしこれが、18時ちょうどに入っていたら、いつもと同じ結末をたどった可能性が高い。

あとは、スマホで予約したことも功を奏したかもしれない。パソコンで予約を試みることも多かったが、そうするとどうしても文字入力の速度が下がったように思う。スマホのほうが素早く文字入力できた。

当日はたまたま予約の受付枠が拡大されたため、予約できたのかもしれないが、18時の数分前にサイトに入ったことが大きな勝因だったと感じる。これが裏技と呼べるかどうかは分からないが、いつもとは違う手法で予約できたことが事実だ。ネットで「ワクチン 予約 裏技」で検索してもなかなかヒットしなかったので、この小稿が少しでも読者のお役に立てたなら幸いである。

■期待と不安のワクチン接種当日

さて、ワクチン接種当日。空は晴れ間と雲が交じり合い、それは私の心中の期待と不安を象徴しているかのようであった。接種の時間は9時。遅れては大変と6時には起き出し、朝食を食べ、7時過ぎには家を出た。

東京駅の丸の内南口を出ると、スタッフと思われる女性が大規模接種会場に行くバス停の案内パネルを持っていた。それを見つつ、はとバスが発着する場所に向かう。南口から1分とかからない距離だ。そこから、大手町にある自衛隊東京大規模接種センターに向かう直通バスが出ているのだ。乗車する前には、女性スタッフに消毒をしてもらい、乗り込む。

バスの運転手さんは「おはようございます」と明るく、気さくな感じだ。7時45分出発。周りを見回すと、20代の若者から50、60代と思われる中高年までさまざまな人が乗っている。私を含めて十数人といったところだろうか。

運転手さんから「安全運転に気を付ける」「安全のためにシートベルトを」のアナウンスがあったあとバスは出発。はとバスの発着場から出たこともあり、観光と錯覚してしまいそうになった。バスは皇居周辺を通っていく。南北朝時代の武将・楠木正成の銅像の横を過ぎ、二重橋を前に見てバスは進む。途中、東京五輪開催中のためであろうか、道路が封鎖され、警官が厳重警備していた箇所もあった。

■ユニークなスタッフに緊張が解ける

出発から12分で大規模接種センターに到着。渋滞はなく、大幅な遅延もなく、まずは一安心だ。バスから降りるとスタッフに誘導され、会場に向かう。4分ほど歩くと会場前に着く。私の接種時間は9時からであり、早く着き過ぎたようだ。近くにいたスタッフさんに「早く着いたので、外で待っていたほうが良いでしょうか?」と尋ねると、「早く打ってくれることもあるので、どうぞ中へ」との答えが。

受付書類を提示し、建物の中に入る。建物の部屋の中には、椅子が並べられており、その椅子には黄、緑、青、ピンクの札が付けられていた。指定された色札の椅子に座るのだ。ちなみに私は黄色だった。人と人との距離は1メートルくらいだろうか。しかし、座ったと思ったら1分も経たないうちに、起立して別の部屋に誘導される。

その途中、年配の自衛官と思われる女性がいて「さぁ、これから大変ですよ。立ったと思ったら座ったり。座ったと思ったら立ったり。何度も繰り返します。大変、大変」とユニークな声音で人々を誘導するのに出会う。ちょっとした漫談を聞いているようだ。緊張していた人はここで少し緊張が解けるかもしれない。

その後は、女性自衛官の言っていたとおりになった。いくつかの部屋に通され、椅子に座り、またすぐに別の部屋に移動する。

エレベーターに乗ることもあり、その時には「壁に向かい乗ってください」のアナウンスが。おそらく、密室で人と人とが向き合うことによって起こる感染リスクを下げるためだろう。

■爪楊枝を刺した以上の痛み

さて、そしてある部屋に入ったところで、看護師さんからの「これまでワクチン接種をして気分が悪くなったことはありませんか」「今日の体調はどうですか」との質問を受ける。この質問はそれからも医師、そしてワクチン接種直前の合計3回受けることになる。そしていよいよワクチン接種である。

ワクチンをバイアルから注射器で吸う医師の手
写真=iStock.com/recep-bg
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/recep-bg

「注射は痛くないよ」と聞いていたので、余裕綽綽(よゆうしゃくしゃく)だったのだが、いざ針が入っていくと意外に痛かった。もちろん、飛び上がるほどではないが、爪楊枝を刺した以上の痛みは十分あった。

痛いといった顔をしたのであろう、終わってから医療従事者の方に「痛かったでしょう。ごめんなさいね」と言われた。打ち終わると、今度は2回目接種予約をする。モデルナワクチンの2回目の接種は4週間後だ。

予約が終わると、ショック症状が起きないかを見るため部屋で待機する。私の場合は15分間だった。これまでにワクチン接種で気分が悪くなった経験がある人は30分待機するようだ。

待機時間が過ぎ、会場の外に出る。8時40分には、東京駅直通バスに乗車できた。会場に入ってからわずか数十分。促されるままに、あれよあれよという間に時は過ぎていった。まるで白昼夢を見ているようであった。

しかし、当然、ワクチン接種作業は現実である。日々、接種会場で勤務する自衛隊、医療従事者、スタッフの皆様には感謝と敬意を捧げたい。

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濱田 浩一郎(はまだ・こういちろう)
作家
1983年生まれ、兵庫県相生市出身。歴史学者、作家、評論家。姫路日ノ本短期大学・姫路獨協大学講師を経て、現在は大阪観光大学観光学研究所客員研究員。著書に『播磨赤松一族』(新人物往来社)、『超口語訳 方丈記』(彩図社文庫)、『日本人はこうして戦争をしてきた』(青林堂)、『昔とはここまで違う!歴史教科書の新常識』(彩図社)など。近著は『北条義時 鎌倉幕府を乗っ取った武将の真実』(星海社新書)。

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(作家 濱田 浩一郎)

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