「もし仕事相手と意見が対立したら」三流は沈黙、二流は妥協、では一流は?
プレジデントオンライン / 2021年8月28日 10時15分
※本稿は、桐生稔『説明の一流、二流、三流』(明日香出版社)の一部を再編集したものです。
■三流は知らない“説得力のある話し方”の鉄則
PREP法をご存じでしょうか?
説得力のある話の流れとして、ビジネス業界では超有名なフレームです。Point(結論)→Reason(理由)→Example(具体例)→Point(結論)の順番で話すと、言いたいことが明確になり、説得力が増すというものです。
例えば、ダイエットをしたいと思っている人に伝える場合。
Point(結論):ダイエットには、さばの水煮がおすすめです。
Reason(理由):なぜなら、低糖質で高タンパク質だからです。
Example(具体例):さばの水煮は、糖質が0.6グラムとほぼゼロで、タンパク質は30グラムと超豊富。タンパク質は筋肉のもとになるので、代謝が上がり痩せやすくなります。しかも缶詰なら安くてどこでも買えて、1缶でお腹がいっぱいになります。
Point(結論):だからダイエットにはうってつけです。ぜひ、さばの水煮をおすすめします。
PREPの流れで話すと、結論が明確で、理由もあり、具体例もあってイメージもしやすいです。
しかし、一流はさらに上をいきます。相手によってPREPの流れを変えるのです。
■二流はフレームを使い、一流は躊躇なく“順番”を変える
例えば、ある営業マンが、「営業エリアを限定したい」と上司に提案したとします。PREPの流れを忠実に行うとこうなります。
Point(結論):私の営業エリアは、新宿区に限定したいと思います。
Reason(理由):なぜなら営業効率がいいからです。
Example(具体例):新宿区に限定すれば、1日5件訪問できます。今のままでは3件が限界です。
Point(結論):だから私の営業エリアは新宿区に限定したいと思います。
結論が明確で、言いたいことが整理されていて、説得力がありそうです。ただ、上司によっては、いきなり、「営業エリアを限定したいと思います」なんて結論から話したら、「そんなこと言ってないでもっと営業しろ」と言うかもしれません。
そこで、順番を変えてExample(具体例)→Reason(理由)→Point(結論)の流れで話します。
Example(具体例):たくさん営業できる方法を模索してまして、例えば新宿区に限定すれば1日5件訪問できます。今のままだと最大で3件です。
Reason(理由):地域を限定すれば、もっと営業効率が上がりそうです。
Point(結論):なので、営業エリアを新宿区に限定したいと思いますが、いかがでしょうか?
前述の言い方が直球なのに対して、後述は少しマイルドになったと思います。
PREP法はビジネス界の王道として知られていますが、相手に伝わることが目的なら、躊躇なく流れを変える。既成の枠に囚われないのが一流の発想です。
■「協力を仰ぎたい」三流は“やること”を説明する
会社の長期計画を実現する、新しいプロジェクトを立ち上げる、社内のルールを変更する、地域の催し物を開催する。これらを実現するのに、1人では何もできません。
だからこそ、各関係者に説明し、協力を仰ぎます。では、協力してもらうには何から伝えるべきか?
その答えは「目的」です。つまり「何のためにそれをするのか?」へのアンサーです。何の理由もなく、突然「今日の午後までにこの企画書仕上げといて」と言ったら、相手のモチベーションは下がります。さらに「つべこべ言わず指示に従え」なんて言ったら、反発も生まれます。やはり目的を伝えることが大切です。
![会話をしながら歩く人たち](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/8/b/670/img_8b4b7c15e92b5a09a966782038dc33cc425721.jpg)
では、目的を伝えれば、みんなが動いてくれるでしょうか? おそらく、そううまくはいきません。
例えば、社長が会社を創業した目的、理念、ビジョン、ミッションといったものを社員に伝えても、どうも社員に響いていない、自発的に行動しようとしない。笛吹けど踊らずということがよくあります。
また、何かを説明する際、「いつも目的から話すようにしているのに、なかなか動いてもらえない……」という声もいただきます。
目的を伝えても動いてもらえない。この現象が起こる理由はたった1つ。それは、「目的と個人の関係性が薄い」、これが原因です。
■二流は目的を説明し、一流は“目的”だけで終わらせない
いくら、もっともらしい目的を語っても、それが個人にどう影響するのかが、イメージできないと、人は本気で動きません。
例えば、「業界に革新を起こすため、プロジェクトを立ち上げました」と言っても、それが実現されると自分に何が起こるのかが紐づかないと、やる気に火は灯りません。
そのプロジェクトが実現されると、「多くのスキルが身につく」「たくさんの方から感謝される」「生活が豊かになる」「歴史に名を刻むことができる」といった個人のメリットへの紐づけが必要です。
よく、人の心を動かすプレゼンテーションとして取り上げられるのが、スティーブ・ジョブズ。ジョブズは、なぜ聴衆の心を捉えたのか? それは、自分に関係があるからです。
![2010年、「iPhone4」を発表するスティーブ・ジョブズ。](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/b/5/670/img_b5c02d3016522ee9915e1450ea2d981d385071.jpg)
例えばiPhoneのプレゼンなら、「自分がiPhoneを使ったら、何が実現できるか」「どんな未来が待っているか」、聴衆はワクワクしました。個人の生活にドンピシャで紐づいた瞬間です。
目的は単体では機能しません。目的と個人の関係性が強くなったとき、はじめて熱狂が生まれます。
実現したいことを説明するときは、
・目的=何のためにそれをするのか?
・個人への関係性=それを実現すると自分に何が起こるか?
この2つがバチッと合った瞬間、聞き手に覚醒が起こり、爆発的に動きだすときがやってきます。
■「意見が対立したら」三流は沈黙する
仕事をしていると、意見が合わず、対立することも結構ありますよね。
結論からいきます。対立したら、ファクトで勝負してください。ここで言うファクトとは事実。つまり実際にあった出来事や数字です。
白熊が白いのは事実です。『鬼滅の刃』がヒットしているのは誰が見ても明らかです。興行収入が400億円となり、『千と千尋の神隠し』を超え歴代1位となりました。
仕事でも、「なんとなく売れそうです」と言うのと、「1000人に実際に使ってみていただいたところ、80%の人がすぐに欲しいと回答しました」では、説得力がまったく違います。やはり、ファクトに勝るものはありません。
最近noteというブログ版SNSが爆発的な伸びを見せています。これを社内で活用したいと思ったときに、「自社でもnoteを使って発信していきましょう。なぜなら流行っているからです」これでは、納得してもらえません。
ファクトベースで語るとこうなります。
「ここ1年で、LINEのユーザー数は7900万人から8200万人に増加しました。Facebookは2900万人から2600万人と下降気味。Instagramは2900万人から3300万人と上昇傾向です。そして、ここ1年、1000万人から6000万人に爆発的に伸びたSNSがあります。それがnoteです。多くの方にアプローチすることが可能になります。ぜひ自社でも活用したいと思いますが、いかがでしょうか?」
■二流は妥協し、一流は事実を積み上げる
一流の人が説得力が高いのは、多くのファクトを積み上げて、説明しているからです。
よく報道番組に出演されている2ちゃんねる創業者のひろゆきさん、橋下徹さん、東国原英夫さんなどのコメントを吟味すると、ほとんどファクトベースで持論が展開されていることに気づきます。非常に説得力があり、番組にひっぱりだこです。
![桐生稔『説明の一流、二流、三流』(明日香出版社)](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/1/6/200/img_168b2b06a8b212c0f5c31e2502b8c0c1250425.jpg)
話を戻します。意見が対立したら、やるべきことは2つ。
1つ目は、あなたのファクトを明確にする。
◯◯と主張するのは、
・◯◯という調査結果がでたからです。
・◯◯という数字をもとに算出しています。
・◯◯商事の◯◯さんが◯◯と言っていたからです。
事実をもとに論陣を張ります。
2つ目は、相手のファクトを確認する。
逆に、相手はどういったファクトを持っているのか?
ストレートに聞くと相手の気に障ることもあるので、「もし差し支えなければ、そうおっしゃる理由をもう少し具体的に教えていただいてもよろしいでしょうか?」「勉強不足で申し訳ありません。そういうデータがでていたりするのでしょうか?」と聞くと、角が立ちにくいです。
一流は、違うものは違うと言える腹があります。それはファクトを握っているからです。
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モチベーション&コミュニケーション代表取締役
1978年生まれ。新潟県出身。2017年、「伝わる話し方」を教育する株式会社モチベーション&コミュニケーションを設立。日本能力開発推進協会メンタル心理カウンセラー、日本能力開発推進協会上級心理カウンセラー、一般社団法人日本声診断協会音声心理士。著書に『10秒でズバッと伝わる話し方』(扶桑社)、『雑談の一流、二流、三流』(明日香出版)がある。
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(モチベーション&コミュニケーション代表取締役 桐生 稔)
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