"家事も仕事も子育ても完璧"そんな理想の家で育った子ほど「自信がない」と呟くワケ
プレジデントオンライン / 2021年9月6日 9時15分
※本稿は、小川大介『子どもが笑顔で動き出す 本当に伝わる言葉がけ』(すばる舎)の一部を再編集したものです。
■自信がなく、不安を抱えている親はたくさんいる
頑張り屋さんな親御さんほど、「子どもにちゃんとさせなくちゃ!」「親としてちゃんとしなきゃ!」と思ってしまうもの。
この章では、親御さんたちが「ちゃんとしなきゃ」と思ってしまうことを卒業する「ちゃん卒」子育てについてお話をしていきます。
まずは、親御さんたちの不安を解消し、自信を持って子育てに向き合っていただけるよう、次の2つのテーマを軸にしたお話をしていきたいと思います。
①「今の自分にOKを出す」=「ありのままの自分を認める」
②「私が頑張らなくては」と一人で抱え込まない
言葉がけをテーマにした本で、わざわざ親の話に1つの章を割く理由は、ご自身で気づいている・いないはともかく、それだけ自信がなく、不安を抱えている親御さんがたくさんいらっしゃるからです。
親御さんが子どもとうまく関われずに衝突していたり、情報に振り回されて疲弊していたりするのは、多くが親御さんの自信のなさから来ていると感じています。
親御さんが自分に自信を持つというのは、幸せな子育てをするための土台です。そこが揺らいでいると、いくら言葉がけのコツを学んだところで、その効果が十分に発揮されません。この章を通じて、「『完璧な親』になろうとしなくていい」ということに気づいていただけたら幸いです。
■「立派な子どもは立派な親の下に育つ」は幻想
第4章の最後で、親御さんが自信を持つことの大切さをお話ししましたが、親子のよい関わりのためには、親御さんが等身大の自分に自信を持つことが大事です。
ここで最初にお伝えしたいのは、立派な子どもが育つのは、立派な親の下という幻想を捨てましょう、ということです。親は少々欠点があるくらいのほうが子どもが伸びやすいと、経験から感じています。
これはなぜかと言うと、親が完璧だと、家の中に隙がなくなるからです。
たとえば家はいつもきれいに整えられていて、洗濯物にはアイロンがかけられ、ピシッとたたまれている。食事の時間には栄養バランスのいい手作りのおかずが何品も並ぶ。もちろん仕事もバリバリしているうえ、いつも笑顔で子どもの話をよく聞き、勉強を見てやり、空いた時間には自分のスキルアップのための勉強を欠かさない……。
こんなご両親は、一見素晴らしいように見えるかもしれませんが、子どもにしてみれば「こうならねばならない」というプレッシャーを押し付けてくる息苦しい人たちでもあります。常に「こうあるべき」という「正解」が示されているので、本人が自分で考えて意思決定をする余地がありません。
親の側も、自分たちが頑張っているわけですから、子どもにも同じように頑張ることを求めてしまいます。その結果、子どもの自信が育ちにくくなってしまうのです。
■ぐだぐだしている父親は「勉強しろ」とは言えない
逆に、家の中に隙があれば、子どもは自分の頭で考える余地が生まれます。
たとえば、仕事はきちんとしているものの、毎日飲んで帰ってきて家でぐだぐだしている父親がいたとしましょう。
ぐだぐだしながら息子に「今日は何してた?」と聞いて、息子が「ドラマ見てた」と答えたら、その父親は「ああ、そうか」となるわけです。自分はぐだぐだしているのに、息子に「ドラマなんて見てないで勉強しろ」とは言えませんからね。
この父親が息子に「やることやったのか?」と聞けば、息子はこんな隙だらけの父親に対し「お父さんのほうこそどうなの?」などと言い返すこともできるわけです。
ちなみにこれはわが家の日常です(※コロナ前の話です)。自己弁護ではありませんが、親に隙があると、家の中で「正解」ばかりを示されないので、判断力が育ちやすくなると私は思います。
■「いい親」を目指せば目指すほど負のサイクルに陥る
家の中を「正解」だらけにしないためには、親御さん自身が、「今の自分はダメだ」という気持ちを捨てることです。
いわゆる「いい親」を目指そうとすると、次のような負のサイクルに陥ってしまうことがあります。
「いい親」を目指そう!
→「今の自分がダメだ」と思う
→「正解」らしきものを取り入れて、よりよい親になろうと頑張る
→子どもにも「正解」を求めたくなる
→子どもへの押しつけが起こり、話を聞けなくなる
→子どもを理解できなくなる……
「今のままではダメだ」と思いがちな親御さんは、100のうちすでに90できているのに、それよりも、うまくいかない10のほうを問題視してしまう傾向があるようです。
そんな頑張り屋の親御さんは自分が「変わらなきゃ」と思えば思うほど、無意識のうちに子どものことも変えようとしてしまいがちです。
でも、子どもを変えようとすれば衝突が起こりますし、仮にそれがうまくいったとしても、それはその子の本来の姿ではありません。
自分らしさを無理やりねじ曲げられると、その子が本来持っている“よさ”が伸びませんし、自信を持つことも難しくなってしまいます。
だからこそ、親自身が「色々足りない部分もあるけれど、今の自分でいいよね」というマインドを持つことがとても大切なのです。
■子どもは「すごい親」を求めてはいない
親子関係をややこしくしている原因の1つに、親御さんが「完璧な親」になろうとしてしまうことがあります。よりよい親になろうと頑張れば頑張るほど、自分が誰だかわからなくなり、どんどんうまくいかなくなっていくという状況です。
子どもは別に、自分の親にすごい人になってほしいわけではありません。もちろん、たまには「どうせなら、かっこいいパパがよかった」とか、「○○ちゃんのママは料理が上手でいいな」と口にすることもありますが、それは思いつき程度の発言です。
本当はどの子も自分の親がそこにそのままいてくれさえすれば、それ以上はあまり求めていないのです。
ですから、基本的に「いい親にならねば」という方向の努力は必要ありません。学ぼうとすることは悪いことではありませんが、いい親であろうと頑張った結果、子どもの本来の姿が見えなくなるとしたら本末転倒です。
自分の頑張りが「いい頑張り」かどうかは、次の質問でチェックしてみてください。
□ 頑張った結果、お子さんのことがよくわかるようになりましたか?
□ 頑張った結果、親御さんに自信はつきましたか?
この2つの答えがイエスなら、そのまま頑張っていただいて大丈夫です。
どちらか、もしくは両方ノーだったら、その頑張りは今すぐやめましょう。
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教育家・見守る子育て研究所所長
京都大学法学部を卒業後、中学受験個別塾を創設。コーチングと学習タイプ分析を融合した独自ノウハウで受験学習、幼児からの能力育成、子育て支援で実績を重ねる。執筆、講演、教育系企業への助言など幅広く活躍中。6000回の面談で培った洞察力と的確な助言が評判。著書に、『頭のいい子の親がやっている「見守る」子育て』・『自分で学べる子の親がやっている「見守る」子育て』(KADOKAWA)、『頭がいい子の家のリビングには必ず「辞書」「地図」「図鑑」がある』・『子どもが笑顔で動き出す 本当に伝わる言葉がけ』(すばる舎)、『1日3分! 頭がよくなる子どもとの遊びかた』(大和書房)など多数。 Instagram/中学受験情報局「かしこい塾の使い方」
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(教育家・見守る子育て研究所所長 小川 大介)
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