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「家事育児を丸投げし家庭内にヒビを入れる」確信犯的"フリーライド夫"の生態

プレジデントオンライン / 2021年8月25日 11時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/takasuu

共働き夫婦で家事・育児をどう分担すればうまくいくのか。元外資系メーカー管理職で2児を育てながら文筆業やヨガスタジオ経営などをしている尾石晴さんは「夫婦どちら一方のみが家事・育児を担い、仕事のキャリア形成できない状態は、パートナーはその人のリソース(時間、お金、意志力など)にフリーライド(タダ乗り)しているということになります」という――。

※本稿は、尾石晴『ワーママはるのライフシフト習慣術』(フォレスト出版)の一部を再編集したものです。

■仕事も100%、家事も100%なんて、誰もできない。だから…

共働き夫婦の苦悩とは?

共働きで子どもを育てていると、とにかく日々の「時間がないこと」にビックリします。

結婚当初は、大人2人でお互い仕事に打ち込んできた家庭でも、1人でも「子ども」という存在があると、成人するまでの間に、大きくリソース(時間、お金、意志力など)を使うようになります。夫婦は協力し合い、家事育児のリソース配分をやりくりしていかなければいけません。

子どもはかわいい。夫婦でバランス良く分担、とわかっていても、共働きの30、40代だと、仕事では中堅どころ。会社からも一番期待もされ、多忙な時期だったりするため、なかなか仕事のアクセルを緩めるのが難しかったりします。

特に、日本型企業で働いている男性社員が夫だった場合、長時間労働が前提として成り立っているケースが多くあります。子育てのため、妻の仕事のために早く帰りたいとか、仕事の予定を変更するのは難しかったり、夫のその後のキャリアに響いたり……。

「そんな会社は今後は成り立たない」なんて巷では言われますが、「じゃあ、転職しよう」と、いきなり会社を辞めるわけにもいきません。そうすると誰が家事育児を担うのか? もう1人の親である妻側が請け負わざるを得ない事態になります。

すると、いくら夫婦で話し合ったとしても、妻側のキャリアもある上に、「なんで私ばっかり」となってしまいますよね。

なんで、私があなたのキャリアのために「私の仕事を犠牲にしなければいけないの?」「2人の子どもなのに、私だけが面倒見ているの?」「私だけが家事やってるの?」と、どんどん黒い感情が湧いてきます。特に家事や育児は「何かを達成」する行為ではなく、快適な「平常状態」を維持するためのもの。仕事とは種目が違うのです。 しかも、育児は長距離走です。会社のプロジェクトと違って、1年で終わりといったゴールも見えないのです。

■家庭内のフリーライドが、家庭内にヒビを入れる

「フリーライド」という言葉があります。「タダ乗り」を意味します。利益は享受するが、そのために必要なコストは出さないことと定義されてます。

例えば、「自治会の掃除はいっさい手伝わないのに、お祭りはちゃっかり出る」「会社のみんなで購入している置き菓子を、お金を払ってないのに食べる」など、自分はペイはしないのに恩恵に与ろうとする行為をフリーライドと呼んだりします。

最近では、働き方にも使われます。長時間労働や仕事優先の働き方を社員に強いる「夫側の企業」は、「妻側の企業」にフリーライドをしているという使われ方をします。

例えば、保育園から子どもが発熱をしたと連絡があった場合、仕事を切り上げてお迎え行くのは誰でしょうか? 夫婦平等に振り分けて、お迎えに行っている家庭もあると思いますが、まだまだ日本の現状では妻側のお迎えが多いのです。となると、妻側の企業は常に「子持ちの女性社員は、子どもの体調不良になると抜けてしまう」ことを念頭に入れて、仕事のシフトや業務内容を組む必要が出てきます。逆に、夫側の企業は、急な社員の休みによる損失を伴うケースがほぼありません。そうすると、夫側の企業は、妻側の企業の人事制度や福利厚生にフリーライドしていることになります。

尾石晴『ワーママはるのライフシフト習慣術』(フォレスト出版)
尾石晴『ワーママはるのライフシフト習慣術』(フォレスト出版)

これを家庭内に置き換えると、夫婦どちらかが家事育児をずっと担って、本来やりたいキャリア形成や仕事ができないのは、相手側のリソースにフリーライドしていることになります。本来は親として、夫婦としてやるべき家事育児を、もう1人のパートナーに負担させているのです。

これが続くと、どうなるか? 相手側のキャリアはなかなか形成できませんし、パートナーとしての役割を家庭内で果たしていないことになります。

不満を感じたほうから見限られて離婚となったり(離婚は3組に1組の時代です)、子育てがひと段落ついて、これから夫婦2人と言うところで、「あなたのせいで、私はあきらめてばっかりだった」と、キャリア形成できなかったことをずっと不満に持たれてしまう可能性もあります。

■夫婦は共同経営者である──「ファミリーキャリア」のススメ

お互いの人生やリソースにフリーライドして成り立つキャリアは、健全な夫婦関係を築けません。短期的には乗り切れても、長期で考えたときに必ずどちらかに不満が残ります。

そこで大事になってくるのは、お互いのキャリアを短期目線で見ない、長期目線で共有することです。その前提として、家事も育児も仕事もすべてを100%、どれも100点満点にこなすのは無理であると、2人で認識することです。

この文章を読まれているような共働き世代のワーキングマザーは、幼少期から努力してきた方が多いでしょう。困難も努力したり工夫したりして乗り越えてきたがんばり屋さんが多いはずです。

しかし、妻、母、会社員の三足のわらじを履き始めると、1日24時間しかない中で、どれも満足いくまでやることは無理だと気がつきます。それでも「私が頑張れば」と努力をしてしまう。

会社には毎日8時間近くも拘束されている。夫は多忙。核家族化で頼れるのは夫婦だけ。そんな生活になると、どうやったって仕事も家事育児も完璧にこなすのは無理になります。

すると、どうなるのか? パートナーに対して腹が立ったり、会社に対してなんとなく申し訳なさや不満を感じてしまうようになります。

そんな負のサイクルを脱するために、ぜひおすすめしたい考え方があります。それは、夫婦は「共同経営者」であり、夫と妻で「家族会社」を経営しているという発想です。

そこで長期の経営目標として、お互いのキャリア構築のタイミングを長期事業計画として立てていくことをおすすめします。

例えば、「子どもが小さいうちは大変だとわかっているけど、年齢的にどうしても仕事のアクセルを緩めたくない」と夫が言うのであれば、「じゃあ、あなたが(夫が)アクセルを踏むのは今のタイミングね」と家族として支える話をします。次に、「私がアクセルを踏むのは、子どもが小学校に上がったタイミングにしたい」など、お互いのキャリアビジョンを話し合うのです。

子供が包丁を使うのを手を添えて手伝う父親
写真=iStock.com/Yagi-Studio
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Yagi-Studio

短期の目線で見てしまうと、「家事育児をやっているか、やってないか」「夫ばっかりが好きなように仕事している、していない」といった、今の話にフォーカスしがちになります。

しかし、長期目線でお互いのキャリアのアクセルの踏みどころを、夫婦で調整し合って、家族を運営していくほうが、健全なキャリア形成が行なえるのです。

実際、わが家も長男が小学校1年生ぐらいまでは、私がアクセルを踏み切れないキャリア形成をしてきました。子育てのために今のポジションから降りたり、転勤を断ったりもしています。結果的には、私はその間にさまざまな複数の副業をして、他に仕事の目処が立ったので、キャリアチェンジしています。今はチェンジした分、チャレンジにアクセルを踏むときが増えたので、その間の子育ては夫に任せています。これからは私がアクセルを踏む順番だと、夫に話しています。

■夫婦でお互いのキャリアビジョンを知る

「そんなにうまくいかないよ! 夫が『先に俺がアクセルを踏む』と決めていても、数年経ったら『もっと忙しくなっちゃったから、ごめん』って言われるのでは」と心配している方もいるでしょう。

でもよく考えてみてください。

夫婦は「家族の共同プロジェクト」を回すパートナーです。共同経営者なのに、妻のキャリアを形成できない上に、フリーライドする夫が、あなたにとってベストなパートナーでしょうか?

私は離婚を勧めているのではありません。ただそれを、あなたがきっと(渋々でも)「(夫の選択に)イエス」と言うであろうと、きっとパートナーはわかっていて話をしているのではないかと思います。

その場合は、別の夫婦間問題が裏に隠れている可能性が高いので、最初の「お互いのキャリアに対してどう思っているか」、そのために「長期目線でどう役割を担っていくか」の話し合いを長めにしてみることをおすすめします。

余談ですが、私がかつて在籍していた外資系企業の社長(今は、代わってしまいましたが)は、子どもが3人いて、奥さまも企業人でした。いわゆるエリート中のエリートで、海外転勤も何カ国目のエリートです。その社長ですら、誰の助けも借りずに「家事育児」を夫婦だけで100%やるのは無理だと言っていました。

カラフルな掃除道具と、ソファにぐったりと横たわる男性
写真=iStock.com/Ivan-balvan
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Ivan-balvan

「妻がキャリアのアクセルを踏んでいるときは、僕がキャリア形成を少し緩やかにして、子ども3人の送迎をしたり勉強を見たりしていたよ。逆に、僕が欧州でキャリア形成をしているときは、妻が子どもを見ていた。こんなふうに夫婦の長いキャリアを見て、キャリアのアクセルを踏む場所を、お互いで調整し合って乗り切っていけばいいんじゃないか」

と社員の前で話していた姿が、私の心に今でも残っています。

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尾石 晴(おいし・はる)
Voicyパーソナリティ
外資系メーカーに16年勤務し、うち6年は管理職として活躍。長時間労働が当たり前の中、「分解思考」で時間を捻出。ワンオペ育児をこなしながら残業0時間を達成し、チームを社内表彰に導く。その傍ら、発信業・不動産賃貸業・ヨガインストラクター、メンタルオーガナイザー、ライフオーガナイザーなど、会社員以外での収入経路を次々と確保。2020年4月に会社員を卒業。音声メディア「voicy」では1000万回再生超えを記録し、トップパーソナリティとして活躍中。2020年にはヨガスタジオ「ポスパムfukuokaスタジオ」を立ち上げ、代表を務める。2児の母。著書に『やめる時間術 24時間を自由に使えないすべての人へ』(実業之日本社)がある。ツイッター:@wa_mamaharuインスタグラム:@waamamaharu

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(Voicyパーソナリティ 尾石 晴)

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