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「不衛生なのに100歳まで生きられる」長寿の少数民族がよく食べている"ある料理"

プレジデントオンライン / 2021年8月28日 11時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/tonyzhao120

健康で長生きするためには何を食べるべきか。京都大学名誉教授の家森幸男さんは「長寿地域に共通していたのは、塩と脂を摂らない食生活。香辛料で味付けした羊肉や、加工した大豆などが長寿の秘訣だろう」という――。(第1回)

※本稿は、家森幸男『遺伝子が喜ぶ「奇跡の令和食」』(集英社インターナショナル)の一部を再編集したものです。

■短命地域に共通する「脂と塩」という組み合わせ

シルクロードの秘境・新疆(しんきょう)ウイグル自治区は中国の西端にあり、ウイグル族、カザフ族、モンゴル族など実にさまざまな民族が暮らしています。ここには1987年から2年にわたって調査に訪れました。

この地区はひじょうに興味深いことに、長寿地域と短命地域がはっきりと分かれているのです。まず長寿者が多いのはトルファン、ホータンといった、ウイグル族がすんでいる地域です。

ウイグルの人々はムスリムで、イスラム教を信じています。逆に短命なのはカザフ族の多いアルタイ地方。こちらはアルタイ山脈の山奥の村です。

アルタイ地方の方から行きましょう。ここではカザフ族が遊牧生活をしています。食事は主に羊の肉です。肉自体はもちろんですが、脂身の部分もそのまま食べたり、料理に使ったりなどして大量に摂取しています。

また羊のミルクや、ミルクから作ったバターやチーズも食べられていました。一方で野菜や果物はほとんど食べません。住む場所をつぎつぎと変える遊牧生活では野菜の栽培ができないという事情があるうえに、「野菜は羊の食べる草であって人間の食べるものではない」と考えられているからです。

さらに問題はお茶です。誰もがバターや塩をたっぷり入れた「バター茶」を常飲しているのです。ここにもブラジルの短命地域であるカンポグランデと同じ「脂と塩」という組み合わせがありました。この結果、ここの人たちは血圧が高く、きわめて短命でした。

50代で脳卒中になるケースも少なくなく、そもそも60代以上の人をあまり見かけませんでした。

■オアシス都市で食べられている「世界最高の絶品長寿食」

アルタイと対照的だったのがトルファンやホータン。どちらも砂漠の中のオアシス都市です。ここの人たちはオアシスの豊富な水を利用して野菜や果物を栽培していました。

私たちが訪れたときは、ウリやスイカ、アンズ、ブドウなど多種多様の野菜や果物が市場に並んでいます。さまざまな野菜料理が食卓に並ぶ中、特に野菜と羊の肉を炊き合わせた「ボロー」という炊き込みご飯は実にすばらしいものでした。

伝統的な中央アジアのピラフ
写真=iStock.com/satura86
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/satura86

炭水化物、たんぱく質、食物繊維、カロテンなどの抗酸化栄養素がこの1品でいっぺんに取れるのです。しかも、これがまたひじょうにおいしい。世界最高と呼びたいほどの絶品長寿食でした。

さらにボローと一緒に食べる羊料理「シシカバブ」がまたいいのです。肉の脂を落とす焼き方をしており、味付けはカレー味の香辛料。これだと塩は少なくてすみます。

またここの人たちもお茶をよく飲みますが、塩やバターは入れません。「酢乳」と呼ばれるヨーグルトもよく飲まれていました。はたしてここの人たちの健診結果はというと、予想をはるかに上回るほどのすばらしいものでした。

50代の前半で高血圧、高脂血症、肥満は当時の日本より確実に少ないのです。衛生状態さえ良ければ日本をしのぐ長寿地域になっていたはずです。実際に100歳以上の高齢者が元気はつらつと暮らしているのが印象的でした。

アルタイの人々の食生活のポイント
・主食の羊肉を脂身もそのまま大量に摂取
・野菜や果物をほとんど摂らない
・塩入りのバター茶を大量に飲む
トルファン、ホータンの人々の食生活のポイント
・野菜や果物を豊富に摂取している
・脂を落とす調理法で肉を食べている
・ヨーグルト、塩やバターの入らないお茶を飲んでいる

■中国南西部の長寿地域で主食になっている大豆

中国の南西部に位置する貴州省の首都・貴陽。昔からここは、長寿地域として知られているところです。脳卒中や心臓死が少ないばかりでなく、がんの発生率も少ないといわれていました。心臓死とは心筋梗塞など心臓病による死亡のことです。

しかし私たちが調査を開始したときは、データも統計もなく、その理由はわかっていませんでした。中国の研究者から「長生きの人が多い理由をぜひ調べてほしい」と頼まれて調査に出かけることになりました。

この地域はほぼ全体が高原地帯です。飛行機で降り立った瞬間、「主食は米ではないだろうな」と思いました。というのも土地がカルスト台地で、山肌には石灰岩の白い地層がいたるところに見られたのです。これでは稲作や畑作には向きません。

予想通り、現地の人が主食として食べていたのが大豆やとうもろこしでした。特に大豆は豆腐、厚揚げ、納豆、乾燥させた保存食、チーズのようなものまで、ありとあらゆる種類の加工品があるのです。

またすばらしいのは山菜の活用でした。野生のシソの葉を裏庭から取って来て煮込んで食べるのです。シソは抗酸化力が高い植物ですから、動脈硬化を防ぎます。

地質の関係で、畑のない分、こうして自生している山菜で野菜の栄養分を補っているのです。

■健康寿命を延ばすカテキンの力

驚いたのは現地の人の歯です。

みんな真っ黒な歯をしているのですが、虫歯ではありません。というよりも虫歯はひじょうに少ないのです。また50代で残っている歯の数を調べると、日本人の50代より多いことがわかりました。

実は貴陽のある貴州省はお隣の雲南省と並ぶお茶の産地です。現地の人は毎日多量に黒茶(プアール茶)を飲んでいます。歯が黒いのは虫歯のせいではなく、お茶のしぶ、つまりカテキンによる着色だったのです。

カテキンは歯を強くするだけでなく、動脈硬化を防ぎ、認知症の発症を減らす効果があります。貴陽が長寿地域なのはお茶の効用もあるのだと思いました。

家森幸男『遺伝子が喜ぶ「奇跡の令和食」』(集英社インターナショナル)
家森幸男『遺伝子が喜ぶ「奇跡の令和食」』(集英社インターナショナル)

貴陽をはじめ、そのほかの長寿地域ではとにかくお年寄りが元気です。みなさん毎日の生活を楽しんでいるのには感心させられました。

野菜を食べ、ヨーグルトを飲んでいますから、快食快便です。そうしたらおいしいものがおいしく食べられて毎日楽しいですよね。しかもこうした地域は日本と違って大家族です。お年寄りを中心に食卓を囲み、おしゃべりや歌を楽しみながらゆっくりお酒を飲んだり、食事をしていました。

年長者として尊敬され、大切にされている高齢者は生き生きしていました。

そうした姿を見るにつけ、長生きのためには身体の栄養だけでなく、心の栄養も大事であることを痛感します。

貴陽の人々の食生活のポイント
・大豆、とうもろこしを主食としてふんだんに食べている
・畑のない分、山菜を利用
・お茶を大量に飲む

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家森 幸男(やもり・ゆきお)
京都大学名誉教授
1937年生まれ。京都出身。67年京都大学大学院医学研究科博士課程修了。病理学専攻。米国国立医学研究所客員研究員、京都大学医学部助教授、島根医科大学教授、京都大学大学院人間・環境学研究科教授などを経て現職。NPO法人世界健康フロンティア研究会理事長。上原賞・岡本賞・日本高血圧学会特別功労賞受賞、瑞宝中綬章受章。科学技術庁長官賞、日本脳卒中学会賞、米国心臓学会高血圧賞、日本循環器学会賞、ベルツ賞、杉田玄白賞、紫綬褒章受賞。著書に『世界一長寿な都市はどこにある?』(岩波書店)、『ついに突きとめた究極の長寿食』(洋泉社)、共著に『健康長寿の食べ方 早死にする食べ方』(海竜社)など多数。

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(京都大学名誉教授 家森 幸男)

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