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「だからムダな会議がちっとも減らない」日本企業に決定的に欠けている"ある概念"

プレジデントオンライン / 2021年9月4日 10時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Yagi-Studio

なぜ日本人の働き方は“非効率”といわれるのか。『「疑う」からはじめる。これからの時代を生き抜く思考・行動の源泉』(アスコム)を出した元マイクロソフト業務執行役員の澤円さんは「日本企業には『時間は借り物』という概念が決定的に欠けている」という――。

■日本の労働生産性がぶっちぎりで最下位、その原因は……

近年よく目にするキーワードのひとつが、「働き方改革」です。世界的に見て、日本企業の生産性が非常に低いことは紛(まぎ)れもない事実なので、改革が必要なのはたしかかもしれません。

ビジネスパーソンなら、「日本人の働き方は非効率だ」というニュースやビジネス雑誌の記事を目にしたことがあると思います。

公益財団法人日本生産性本部「労働生産性の国際比較 2020」によると、2019年の日本の時間当たり労働生産性は米国の6割の水準で、OECD加盟37カ国中21位。主要先進7カ国では1970年以降、最下位が続いています。

日本の就業者1人あたりの労働生産性はOECD加盟37カ国中でも26位で、1970年以降最も低い結果となりました。おそらく公表されている数値だけで計算されているので、サービス残業なども含めれば実情はもっと悪いことも十分に考えられます。ちなみこちらもG7のなかで最下位と、不名誉な記録は更新中です。

なぜこんなことになるのか。僕はいつも、日本人は「決める会議」ができないことが原因のひとつではないかと感じています。

■「過去」に時間を使うのは無駄である

「日本企業には無駄な会議が多い」とはむかしから言われていることですが、いつになっても改善されません。なぜか。それは、「会議でしたほうがいいこと」を理解していないからだと僕は考えています。

会議の話をする前に、結果を出せるビジネスパーソンの共通点について確認しておきましょう。それは、「未来志向」を持っていること。過去に学ぶ必要はありますが、過去の出来事そのものが変わることはありません。過去に起きたことに一生懸命に時間を使うのは、とてつもなく無駄なことなのです。

「過去のことに時間を使わないためには、どうすればいいだろう?」
「未来を良くするためには、どうすればいいだろう?」

デキるビジネスパーソンは、常にこのように考えながら行動しています。

さて、会議の話に戻りましょう。あなたの会社の会議は「未来志向」になっているでしょうか。

■対面でやるべきは、報連相の「相」の部分

あなたの会社の会議では、こんなことが起きていませんか?

・議題のなかに、事務的な「報告」や「連絡」が入っている
・「報告」のためのレポート作成に膨大な作業が発生している
・目上の人に「報告」や「連絡」をするのは、もっぱら会議の場だ

ビジネスパーソンにとって、おなじみの言葉「報連相(ほうれんそう)」。報連相のなかで、未来に関係するのは「相談」だけです。「報告」と「連絡」は、すでに起きたことについての話ですから、つまり、過去のことがらです。

会議とは、みんなが同じ時間、同じ場所に集まって話をすること。各人がそれぞれの仕事を中断し、会議室まで移動して、対面で話しているのが、過去の話(報告、連絡)だとしたら、はっきりいって時間の無駄です。

■会議で話し合うべきは未来の話の「相談」

前述したデキるビジネスパーソンのマインドセットを思い出してください。

「過去のことに時間を使わないためには、どうすればいいだろう?」
「未来を良くするためには、どうすればいいだろう?」

生産性の高い会議のあり方が、なんとなく見えてくるはずです。

まず、「報告」や「連絡」はITツールを用いて自動化したり、効率化したりしましょう。データなどの「見ればわかる」ものを、わざわざ会議の時間を使って報告したり(させたり)するのは、時間の浪費以外のなにものでもありません。データはリアルタイムで共有しておけばよいし、連絡はチャットで十分です。

会議でやるべきは未来の話、つまり「相談」です。未来を最大限に良くするために、これからどうするか、次の一手は何をすべきかを話し合うのは、楽しい。楽しい仕事なら、参加している全員が高いモチベーションで臨めるはずです。

会議中の様子
写真=iStock.com/recep-bg
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/recep-bg

会社の生産性をあげたいのであれば、会議はゆううつで面倒で退屈であってはいけない。「未来志向」の会議とは本来、楽しいものなのですから。

■日本企業に決定的に欠けている「時間は借り物」という概念

たとえば会議のとき、「僕にはこんなアイデアがあるのだけど、みんなの意見を聞かせてほしいんだ」と伝えれば、集まるみんなの目的がクリアになって、「ところでなんのためにここにいるんだっけ?」とはならないはずですよね。

でも実際は、「よくわからないけど、とりあえず集まった」というようなシチュエーションが多くありませんか。そうなると、結局はいちばん偉い人が気持ち良く話すだけの時間になってしまいます。

時間を自分の都合だけで浪費させるのは、それこそ時間泥棒です。時間は有限で、もっとも貴重な資源だからです。

外資系の企業と比べて、日本企業に欠けているのは「時間は借り物」という概念かもしれません。欧米の企業では、1時間の予定のミーティングが45分で終わったとすると、《15 minutes back to you.》と言って会議を解散します。

つまり、「1時間借りていたけど45分で終わったから、15分返すね」ということです。この「返す」という表現が、時間に対する考え方を端的に示していると思います。

もちろん、なんでも欧米流にしようということではありません。僕が言いたいのは、このような時間の概念を持てるかどうかがとても重要だということです。

「時間を借りる」という感覚があれば、目的のない会議に人を集めようなんて思うはずがありません。ましてや、自分が気持ち良く話すためだけに会議を招集するなど愚の骨頂ではありませんか。

■コミュニケーションの重要性は今までと変わらない

かつて電話やファクスや手紙でやっていたことが、テクノロジーの進歩とともにメールやSNSやチャットに変わってきたわけですが、別に前者がなくなったわけではありません。その有用性によって「位置づけ」が変わっただけです。

澤円『「疑う」からはじめる。これからの時代を生き抜く思考・行動の源泉』(アスコム)
澤円『「疑う」からはじめる。これからの時代を生き抜く思考・行動の源泉』(アスコム)

新型コロナウイルスの感染拡大以降、いきなりオンライン会議が導入されたりして、とまどっている人も多いでしょう。会議も同じです。人と直接会ったり対面の場面を設定したりする前提が、新型コロナウイルスによって強烈に否定されたものの、対面のコミュニケーションの重要性が失われたわけではありません。

そこで僕からの提案です。これからは意識的に「時間がもっとも大切なもの」と思って人とコミュニケーションしてみてください。みんなが未来のことに時間を使うためには、どうすればいいのかを考え続けてください。

急激に変化していく時代です。自分の働く価値を再定義するために、未来のことにどれだけの時間が割けるのかを突き詰めること。「生産性の高い時間の使い方」とはなにか、働く者一人ひとりが自分自身に問いかける必要があります。

会議ひとつとっても、やり方をアップデートすればこんなに楽しくなります。まずは、あたりまえだと思って漠然とやり過ごしてきたルールや習慣をいちど疑ってみるところからスタートしてみてください。

長年なじんできたルールや習慣を変えるのは難しいと感じるかもしれません。本書には、いままで見えなかった問題の見つけ方と解決策、生産性をあげるマインドのあり方、ビジネスでのモチベーションを保つためのアイデアなどをたっぷり紹介しています。みなさんの価値観のアップデートをたすけるヒントになれば幸いです。

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澤 円(さわ・まどか)
圓窓 代表取締役
1969年生まれ。立教大学経済学部卒業後、生命保険会社のIT子会社を経て、1997年にマイクロソフト(現・日本マイクロソフト)に入社。情報共有系コンサルタント、プリセールスSE、競合対策専門営業チームマネージャー、クラウドプラットフォーム営業本部長などを歴任。2019年より現職。著書に、『外資系エリートのシンプルな伝え方』(KADOKAWA)、『マイクロソフト伝説マネジャーの世界No.1 プレゼン術』(ダイヤモンド社)、伊藤羊一氏との共著『未来を創るプレゼン 最高の「表現力」と「伝え方」』(プレジデント社)などがある。 Twitter:madoka510 Facebook:Madoka Sawa

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(圓窓 代表取締役 澤 円)

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