「60点家事・育児の夫を許せず自爆ブーメラン」ワンオペ地獄に転げ落ちる妻の自業自得
プレジデントオンライン / 2021年8月27日 11時15分
※本稿は、尾石晴『ワーママはるのライフシフト習慣術』(フォレスト出版)の一部を再編集したものです。
■ワーママ必須スキル「属人化防止術」を使いこなす
育児は、3種の労働を一度にこなす重労働
「駅につき深呼吸してママになる」(「第1回 オリックス 働くパパママ川柳」入賞作品)。ケアする側のコンディション調整や、帰宅して「これから」を想像させる一句ですよね。
正直、育児は体力勝負。私は本音では「仕事より疲れる」と思っています(小声)。
では、なぜ疲れるのでしょうか?
育児を労働の種類で分類してみます。
労働には「頭脳労働」「肉体労働」「感情労働」があります。育児を保育士業務と見なせば、「感情労働」になります。頭脳労働や肉体労働はわかるけれど、「感情労働って何?」と思いますよね。
感情労働とは、「相手の精神を特別な状態に導くために、自分の感情を誘発、抑圧することを職務にする、精神と感情の協調が必要な労働」(社会学者A・R・ホックシールド)とされています。保育士以外にも、看護師や介護従事者なども含まれます。
育児はまさにこれです。「感情労働は向き不向きがある」と言われており、向かない場合は、職業を変えたほうがいいとまで言われています(自分の感情を抑圧しすぎると、うつ病などの発症のリスクがあるため)。
子どもを持った親たちは皆、この感情労働に従事するのと同じ状態になります。仕事と違って「今日はお休みします」なんてわけにいきません。さらに、寝不足でどんなに体がきつくても、子どもをお風呂に入れたり寝かしつけなども待っていますし(肉体労働)、子どもの成長のために細かな食事づくりや、成長でのこだわり(頭脳労働)把握や対応も同時に行なっています。
■「属人化防止力」を身につけよう
共働き家庭で育児だけなく、仕事もしているのですから、疲れないわけがありません。ましてやその負担を1人で担っている「ワンオペ育児」をしている人は本当に頑張っているはず。では、「頑張り過ぎている」と認識したら、まず最初にやってほしいことがあります。
それは、「属人化防止力」を身につけることです。
「属人化」とは何か?
会社において「あの人に聞かないと問題がわからない、解決しない」なんてケースはありませんか? または、「社内で、自分がなかなか休みが取れないのは、代わりにできる人がいない」と、情報や仕事がブラックボックス化している会社があったりします。
すると、その人がいないと組織が回らないようになってしまいます。その人が何かの拍子で辞めてしまうと、大きな損失になるし、情報を隠してしまったりすると、コンプライアンス問題に発展してしまいます。
![尾石晴『ワーママはるのライフシフト習慣術』(フォレスト出版)](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/2/d/200/img_2d13648119d43392028adcc90bc38229240765.jpg)
これが、「属人化」状態に陥っているケースです。
最近の企業は、できるだけ特定の人に対して仕事がつく「属人化」を防ぐように仕組みを変えたり、システムを変えたりするように変化しています。
実は、この流れはワーキングマザーにとっては追い風です。
なぜならワーキングマザーは、突発的な出来事(子どもの病気や欠席など)で仕事に穴を開ける可能性があるため、日頃から属人化をしないように意識して仕事を開示したり、仕組みをつくっている人が多くいるからです。自分がいなくても、仕事の資料はどこにあって、進捗はどこでわかるか、誰が対応するかが日々明確になっています。この属人化防止の采配ができる能力は、家庭だけでなく企業において「重要な能力」として求められています。
■家庭でも役立つ「属人化防止」のコツ
組織やチームに大きなリスクを与える可能性がある「属人化」問題。起こってしまう理由は、大きく3つあります。
① 業務がマニュアル化されていない、他のメンバーに共有する時間や仕組みがない。
② 専門的である、担当者にしかわからない感覚的マネジメントが存在する(行動のように管理できない)。
③ 独占することで、自分がその業務で必要不可欠な存在になる。
属人化をさせないスキルは、家庭で必要とされる能力の大事な1つになります。
家事育児において、夫婦の役割にアンバランスが生まれるのは、どちらかに「属人化した業務」が発生しているからです。
![冷蔵庫の中身をチェックし、献立を考える女性](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/b/6/250/img_b6acfcf4972984abc0bddd30e70072ac195880.jpg)
料理や掃除程度だったら、さすがにもう「ママじゃないとダメ」なんてことは、共働き家庭においては少なくなっていると思いますが(そうでない場合は、夫との話し合いが急務です)、作業だけでなく、物の収納や手配においては、まだまだ「○○じゃないとわからない=属人化」が存在しているご家庭は多いでしょう。
「薬は、ママじゃないとわからない」
「食材の注文や冷蔵庫の中身の補充もママじゃないとわからない」
「ベビーシッターの手配、準備物がわからない」
などなど。
育児は感情労働です。どうしても「寝かしつけはママじゃないとダメ」「着替えもママじゃないとダメ」など、子どもが小さいうちは存在します。これは「感覚的マネジメント」と呼ばれます。行動と違って、その担当者にしかわからない対応です。
しかし、育児の「ママがいい」を優先させてやる分、他の家事やさまざまな手配など、家庭を円滑に生かすための作業に関しては、夫婦2人で属人化させずに、どちらがやってもどうにかなる状況をつくることが重要です。
実際、職場だけでなく家庭内でも、「ママがいなくてもOK」の家庭ほど、何がどこにあるのか、パパでもママでもベビーシッターさんにもわかるようになっており(普段わかりにくい、薬、ビニール袋のストックなど)、属人化されてない仕組みができあがっています。
■「属人化防止術」をうまく回すには?
普段から「そのタスク」をやっている回数が多い人は、経験に伴うこだわりが出てきたり、完成度のハードルが上がるので、満足のいくポイントまで行なってもらおうと思うと、依頼する相手(夫婦どちらか)と喧嘩になる可能性もあります。
属人化を防止するコツは、相手に完璧を求めないことです。6割程度でいいので、どちらがやっても、とりあえず生活に支障がないレベルの合格ラインになっているか、また誰が見てもすぐに理解できる仕組みになっているかが大きなポイントです。
例えば、「体温計はいつもキッチンの電子レンジの上」など、具体的な場所が紐づいているとわかりやすいですよね。「ほら、あの場所、あの引き出し」ではなく、モノの住所になるように、わかりやすく箱を置く、ラベルを貼るなどして、誰が見ても(祖父母やシッターさんなど他人が見ても)わかるようにしておけばOKです。
![赤ちゃんにミルクをあげる夫婦](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/1/6/670/img_16f0e692dec69a5bee3e47e2d8643c81231029.jpg)
「お互いがその作業をカバーできるところまで、属人化を防止すること」が合格ラインになります
■「感覚的マネジメント」と「行動マネジメント」を使い分ける
感覚的マネジメントに関しては、本人にしかわからない「お世話相手特有のこだわり」があります。
例えば、子どもの対応はわかりやすい一例です。お母さんと座るときは右側、お父さんとは左、ベビーシッターさんがいるときはまた違うケースがあったりします。
これはどうしても「人に合わせて行動を変える」ため、属人化しやすくなってしまいます。
そうさせないためには、「これは感覚的マネジメント」だと割り切ります。マニュアルをつくったりせず、「子どもといる時間」を区切りにして、その時間の行動責任を全部、お世話する相手に渡してしまったほうがいいマネジメントスタイルになります。
逆に「行動マネジメント」に関しては、「ここまでやったら、ゴール達成」というように、マニュアル作成と、項目まで行動を細分化して示してあげたほうが、相手は動きやすくなります。
属人化防止のためには、「行動マネジメント」はマニュアル化し、「感覚的マネジメント」は、担当者(夫やシッターさんなど)に経験を通じて「その人の感覚」を培ってもらうのです。つまり、「感覚的マネジメント」では、こちらが「こうして、ああして」と口を挟さまないほうがうまくいきます。
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Voicyパーソナリティ
外資系メーカーに16年勤務し、うち6年は管理職として活躍。長時間労働が当たり前の中、「分解思考」で時間を捻出。ワンオペ育児をこなしながら残業0時間を達成し、チームを社内表彰に導く。その傍ら、発信業・不動産賃貸業・ヨガインストラクター、メンタルオーガナイザー、ライフオーガナイザーなど、会社員以外での収入経路を次々と確保。2020年4月に会社員を卒業。音声メディア「voicy」では1000万回再生超えを記録し、トップパーソナリティとして活躍中。2020年にはヨガスタジオ「ポスパムfukuokaスタジオ」を立ち上げ、代表を務める。2児の母。著書に『やめる時間術 24時間を自由に使えないすべての人へ』(実業之日本社)がある。ツイッター:@wa_mamaharuインスタグラム:@waamamaharu
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(Voicyパーソナリティ 尾石 晴)
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