「キレる子」「育てにくい子」が劇的に変わる"4タイプ別"ほめ方叱り方
プレジデントオンライン / 2021年8月28日 13時15分
※本稿は、征矢里沙『モンテッソーリ教育×シュタイナー教育×森のようちえんから学ぶ 子どもの「生きる力」を伸ばす方法』(総合法令出版)の一部を再編集したものです。
■子どもは親と違う個性を持って生まれてくる
自分の子どもでも性格が似ていなくて、戸惑ったことはありませんか。その個性が思いがけないものだと、「誰に似たんだろう」とか「育て方のせいかな」と悩むことがあるかもしれません。
個性は「遺伝」と「育った環境」の2つの影響を受けて形成されます。ただ「遺伝」といっても、遺伝子の組み合わせパターンはとても多く、また「育った環境」といっても、その影響のしかた自体が子どもの個性によって変わってきます。ですから、その子がどんな個性を持っているかは「運」のようなもの。親としてはそれがどんな個性であっても、その子をその子らしく伸ばす、つまり生まれ持った個性を生かして育てることが大切です。
そこで、個性を伸ばしていくためのヒントとして、シュタイナー教育で活用されている「4つの気質」という考え方をご紹介したいと思います。シュタイナー教育とは、ドイツを中心に活躍した哲学者、ルドルフ・シュタイナー(1861~1925年)が提唱した教育方法。「からだ」「こころ」「あたま」の3つをバランス良く育てることを大切にしていて、たとえば、0~7才までは「からだ」を育てる時期なので、文字を教えるなど知育的なことはさせないといった特徴があります。第一次世界大戦後の1919年に最初の学校が設立されて以降、世界中に広がり、現在は世界各国に1800以上の幼児教育施設と1200以上の学校があります。
■個性がわかる「4つの気質」
シュタイナー教育では、人はみな、「怒りんぼう」「ほがらか」「おっとり」「繊細」の4つのタイプの気質を持っていると考えられています。誰もがこの4つすべてを持っているのですが、特に子どもの頃はこのうち、ひとつか2つの気質が強く出やすいと言われています。
どの気質がいい・悪いではなく、それぞれにいいところ、困ったところがあります。子どもにどの気質が強く出ているのかを考え、気質に合わせた対応をすることが大切です。
まずは次ページのチェックリストから、自分の子どもに当てはまるものをチェックしてみてください。チェックが多くついたところが、強めに出ている気質です。
■わが子はどのタイプかチェックしてみよう
□主張が激しく、我が強い
□かんしゃくを起こしやすい
□カッとなると叩いたり蹴ったりしがち
□戦いごっこや勝負が好きで、負けず嫌い
□なんでも白黒をはっきりつけたがる
□早起きで、朝から元気
□目力が強く、人をまっすぐに見る
□いったんやり始めると最後までやり遂げる
【ほがらかタイプ】
□表情がくるくる変わる
□好奇心旺盛ですぐにどこかに行ってしまう
□いつも手足が動いている
□気持ちの切り替えが早い
□人懐っこく、誰とでも気さくに話す
□「◯◯大好き~!」が口癖
□楽天的、楽観的
□すぐに新しいものを欲しがるが、すぐに飽きる
【おっとりタイプ】
□ひとつのことに長い間集中できる
□同じことを何度もくり返したがる
□のんびりひとり遊びをするのが好き
□人に従いやすく、周りと衝突しにくい
□動きや話すスピードがゆっくり
□じっと待つことが苦にならない
□食いしん坊で、よく食べる
□たっぷり眠るのが好きで、ねぼすけ
【繊細タイプ】
□心配性で悲観的
□声をかけても、体がすぐに動かない
□過去のことをびっくりするほど覚えている
□服の着心地が気になってぐずることがある
□耳や鼻がよく、音や香りに敏感
□痛がりで、ちょっとのことでとても痛がる
□予定していた計画を変えるととてもイヤがる
□ルールや決まりごとは几帳面に守る
いかがでしょうか?
よくわからない場合は、ぜひ子どもをじっくり観察したり、ほかの人から見た子どもの様子も聞いたりしながら考えてみてくださいね。
それでは、この4つのタイプの気質について、それぞれの特徴を紹介していきます。また、それぞれの気質に合わせた「褒め方・叱り方」についても解説します。
■「怒りんぼうタイプ」の褒め方・叱り方
この気質が強い子は、怒りっぽくて負けず嫌いです。その分、意志が強くて行動力も抜群です。思うようにいかないと爆発するように怒ってしまうこともありますが、そのエネルギーをうまく生かせば、頼りがいのあるリーダー的存在にもなれます。
【褒め方】
この気質は向上心が強くて、「目標」を達成するのが大好きです。「自分が食べたお皿を運ぶ」「パジャマを自分で着る」など、ちょっとがんばれば達成できる目標を一緒に設定して、できたら褒めてあげることでやる気が出ます。「自分が思うようにやりたい」という気持ちが強いので、途中で口出ししすぎないことが大切です。また、褒めるときは「お皿をすぐに運んでくれてありがとう」などと、具体的によかったところや、感謝の気持ちを伝えると喜びます。
尊敬できる人、目標になる人がいると伸びやすいので、そんな人に出会えるよう、色々な人と出会う機会を作ってあげられるとよいでしょう。
【叱り方】
この気質は、特に小さい頃はつい手が出たり、暴れたりしてしまいがちです。しかし、本人の中ではきちんと理由があるため、怒っているときに叱ってしまうと、火に油を注ぎます。なるべくゆったり構えて、少し時間を置いてあげる必要があります。
落ち着けば人の話も聞けるようになるので、そのタイミングで理由を尋ねましょう。そして、「だから怒っちゃったんだね」と気持ちは認めつつ、「でも、叩いたのはよかったかな?」と、行動を一緒に振り返りながら反省を促す、を地道に繰り返すことが大切です。「自分をコントロールしたい」という気持ちも強いので、怒った理由を理解してもらえれば、いけない行動についてはきちんと反省ができます。
また、エネルギーを持て余すとかんしゃくを起こしやすくなります。外遊びでたくさん体を動かしたり、力仕事をやってもらったりしてエネルギーを発散させてあげましょう。
なお、まじめに反省していても、実際に怒りを抑えられるようになるには時間がかかります。小学校高学年くらいになると怒りをコントロールできる自制心が育ってきます。長い目で見て待ってあげましょう。
■「ほがらかタイプ」の褒め方・叱り方
この気質が強い子は、いつもほがらかで活発です。好奇心旺盛でなんにでも興味を持ち、新しいことをたくさん思いつくアイデアマンです。人と一緒に楽しむのが大好きで、みんなの人気者になることも。ただし、気まぐれで飽きっぽい面もあります。
【褒め方】
この気質は、新しいことを思いつくのが大好きです。いつも面白いことを見つけるので、その度に「すごーい!!」と褒めてあげると、嬉しくてやる気を出します。注目されたり褒められたりするのも好きで、「かっこいい!」「かわいい!」など、ちょっと大げさに褒めても素直に受け取って喜んでくれます。人を褒めることも得意で、親を褒めてくれることもあります。そんなときは笑顔でお礼を言って、褒め返してあげましょう。
大好きな人が側にいると、その人を喜ばせてあげたいという気持ちで伸びていきます。子どもの頃は、親がその「大好きな人」になってあげられるといいですね。
【叱り方】
この気質は、褒められるのが好きな分、叱られたり批判されたりすると、つまらなくなってやる気を失ってしまいます。「これはダメ」ではなく、「こうしたらもっとよくなるよ」という提案だと、前向きに受け止めてくれやすくなります。
謝ってもすぐに忘れてしまいがちなのがほがらかタイプ。愛嬌があって憎めないところもありますが、ダメなことはダメとしっかり伝えましょう。また、大好きな人のためになりたいという気持ちが強いので、「パパ/ママは悲しいな」などと、自分を主語にして気持ちを伝えてみるのもよいでしょう。
色々なものに興味を持つ分、気まぐれで飽きっぽく、ひとつのことを長続きしにくいのが、この気質の特徴です。おもちゃを買っても、すぐに飽きてしまうというときは、気に入ったおもちゃをしばらく隠しておいて、また出してあげると、喜んでまた遊んでくれるので長持ちします。
色々なことに気軽にチャレンジできるので、その中に特に好きなもの、強く興味を示すものもきっとあるはずです。長続きしそうなものを見つけることで、持続力を養うことができれば理想的です。
■「おっとりタイプ」の褒め方・叱り方
この気質が強い子は、いつもおっとり、のんびりして穏やかです。持続力があって、一度なにかに取り組むとずっと続けることができます。人当たりがよく温厚なので、みんなの癒やし役になることも。その一方で、ひとりでも平気なマイペースさもあります。
【褒め方】
この気質は、ひとつのことにじっくり、くり返し取り組むことが大好きです。そのプロセス自体を楽しんでいます。そのため、たとえば積み木で遊んでいる場合、「高く積めたね」と結果を褒めるよりも「積み木を積むのが楽しいんだね」など、やっていることの楽しさに共感してあげたり、プロセスを褒めてあげたりすると安心します。
ただその分、あまり色々な物事に興味を持たないため、やりたいことがなかなか見つからないときもあります。
自分で興味のあることを見つけるより、周りの子が興味を持っていることに興味を示しやすいので、色々なタイプのたくさんの子どもと遊ぶ機会があるといいでしょう。
【叱り方】
この気質は温厚でおおらかなため、素直に言うことを聞いてくれることも多いですが、ペースがゆっくり、のんびりなので、遅く感じてじれったいときもあります。しかし、これは怠けているのではなく、体感時間がゆっくりだからです。
「早く早く!!」と強く急かしたり、早口で叱ったりしていると、心の中に壁を作ってしまい、ますます反応が鈍くなってしまいます。話を聞いて欲しいときは、スキンシップなどを取りながら、意識をしっかりこちらに向けさせ、なるべくゆっくりとした口調で伝えましょう。
ゆっくりでも成長しているので、だんだんと周囲に合わせられるようになります。焦って叱りすぎず、たとえば朝の準備が遅かったら起こす時間を早くしてみるなど、子どものペースに合わせる工夫をしてあげることが大切です。
なお、食いしん坊になりやすい傾向があるため、あまり食べすぎないように気をつけてあげましょう。
■「繊細タイプ」の褒め方・叱り方
この気質が強い子は、とても繊細で鋭い五感や感受性を持っています。色々なことを敏感にとらえる一方で、何事もじっくり考えるため、行動は慎重で控えめです。まじめで誠実な分、思い悩みがちなところもあります。
【褒め方】
この気質は、物事を深く考えることが大好きです。考えすぎて不安になることや、行動できないこともあるので、「いつもよくがんばってるね」と、人一倍たくさん褒めて、安心させてあげるくらいの気持ちで接するとよいでしょう。ただし、嘘やごまかしは見破る鋭さがあるため、「ここの色がとってもきれいに塗れたね」などと、いいところを具体的に褒めてあげることが大切です。
五感に優れていて感受性が豊かな分、痛みや不快感、悲しみや辛さなども人より強く感じます。もし、子どもが落ち込んでいるときは、「それくらい大丈夫だよ」などと軽く流すのではなく、たとえ大げさだと思っても、「すごく辛かったんだね」と親身になって同情し、慰めてあげましょう。
【叱り方】
この気質は、色々なことを敏感に感じ、深く考えるため、悲観的になりやすい特徴があります。ちょっとした言葉も深刻にとらえるため、「そんなことしちゃダメでしょ!」などと強く叱ると、自分の全てが否定されたように思ってしまいます。すると親が思った以上に傷ついて、ますます後ろ向きになったり、必要以上に泣いたり怒ったりしてしまうこともあります。
どうしても注意したいことがあるときは、穏やかな口調で「せっかく素敵な絵を描いているのだから、床じゃなくて机で描こうか」などと、いいところは認めたうえで、改善して欲しい行動を具体的に優しく伝えることが大事です。
まじめで完璧主義なところもあるため、ルールや約束がちゃんとわかれば、自分なりに一生懸命がんばることができます。
また、「自分は世界一不幸だ」などとひとりで思い詰めてしまうところがあります。ネガティブに感じることもあるかもしれませんが、そのこと自体を叱ったり、無理にポシティブにさせようとしたりしてはいけません。
むしろ、人生には悩みや苦しみもたくさんあることを認めてあげることが大切です。そして、実際に辛い出来事を乗り越えた人の体験談などが聞けると、「辛いのは自分だけじゃないんだ」と慰められて、自分の殻を破る力になります。
■「4つの気質」の活用方法
4つの気質は、どれかひとつだけが強く出るとは限らず、2つ以上が組み合わさって出ることもあります。
図表1で隣り合っているタイプは、組み合わさりやすいと言われています。たとえば、アイデアマンで行動力もある子は、ほがらか+怒りんぼうタイプ。人に優しくて感受性が豊かな子は、おっとり+繊細タイプなど。隣同士の場合、2つの気質が混ざり合って出てきます。
ただ、まれに向かい合わせのタイプが組み合わさることもあります。その場合は、2つの気質が交代で出てくると言われています。たとえば、みんなの前では明るく活発だけど、ひとりになると深く考え込むような子は、ほがらか+繊細タイプです。
また、時には3つが組み合わさることもあります。
このように、4つのシンプルなタイプ分けでも、組み合わせ方で色々な性格について考えることができるのが、シュタイナーの気質理論の特徴です。
なお、最初に述べた通り、誰もがこの4つすべての気質を持っているというのが、とても大切なポイントです。強く出ている気質の特徴を知ることは、その子の個性を知るための大きなヒントになりますが、それがその子のすべてではありません。たとえば、本当は優しいところがあるのに、カッとなって怒ってしまうところに隠れてしまっているなど、本来持っている気質のいいところが、強すぎる気質の困ったところに隠れてしまっている場合もあります。
強い気質に合わせた対応をすることで、その気質のいいところを大切にしながら、強すぎて困るところを和らげることができます。すると、本来持っているほかの気質も出てきやすくなります。
いま見えている個性を大切にしながらも、その子の持つ色々な可能性を引き出すことで、その子を本当にその子らしく伸ばすことができます。
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NPO法人いきはぐ理事
1983年、愛知県生まれ。2児の母。慶應義塾大学総合政策学部に入学し、シュタイナー・サドベリー等のオルタナティブ教育を研究。大学卒業後、株式会社リクルートに就職し、2012年に会社を卒業して「NPO法人いきはぐ」を起業。クラウドファンディングで資金を集めて、全国約100ヶ所以上の「生きる力」をはぐくむ学校・園を子連れで取材。主に「生きる力」をはぐくむ子育てや、さまざまなオルタナティブ教育に関する書籍やコラム等の執筆、講演等の活動をしている。幼児と小学生の2人の男児の母としても、日々奮闘中。
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(NPO法人いきはぐ理事 征矢 里沙)
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