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「もし彼女が妊娠しても素直に喜べない」ヒモ歴13年の31歳男性が悩む"バツの悪さ"

プレジデントオンライン / 2021年9月3日 10時15分

「プロヒモ」ことふみくん、3年以上前に今の彼女と沖縄で同棲生活を始めた。 - 筆者提供

1989年生まれのふみくんは、自身は働かず彼女に生活費を負担してもらう「ヒモ」生活を13年間続けている。同棲してから3年以上がたつ今の彼女とは結婚を意識しつつあるが、踏み切れないという。なぜなのか――。

■「彼女との結婚を避けているわけではない」

「学生時代の友人の結婚式に呼ばれんだけど、どうしよう?」

彼女と沖縄で同棲してから3年以上が経過し、2人ともいわゆる“アラサー”になった。今のところ2人の生活自体に大きな変化は訪れていないように思えるものの、年を追うごと彼女のFacebookやTwitterに届く結婚の知らせは格段に増えている。

ある時は晩ご飯の支度をしながら、またある時はベッドでポケモン対戦に興じながら、いつも「本当に友達がたくさんいるよね、ご祝儀代かさんで大変だね」などとお茶を濁しているが、内心ヒヤヒヤである。

それは、僕がヒモ生活を送っているからだ。

結婚の話題を皮切りに「で、ヒモのお前は私とどうするつもり?」と、責め立てられているような気分になり、申し訳なく思ってしまう。

彼女との結婚を避けているわけではない。

僕がヒモであるがゆえ、結婚の選択肢が取りづらいことにバツの悪さを感じてしまうのだ。

■当人同士の合意だけでは、ゴールインは難しい

少し話は逸れるが、僕は「ヒモ」を自称しているものの、他人が捉えやすければ、どのように思われても構わないと思って生きている。

彼女の稼ぎで借りた部屋で暮らしている一方、家事全般は僕の担当なので「主夫」と言われることもあるし、お小遣い稼ぎ程度に執筆業もほそぼそと続けているので「ライター」と呼ばれることもある。

ともあれ、僕は自分自身の社会的な立ち位置に関して、あまり頓着していない。

この考えは彼女との関係性に対しても同じだ。

他人のことなど(気にするフリこそすれ)みんなお互いそこまで深く考えていないのだから、社会の目に2人がどう映っているかなんて二の次だ。

ヨソはヨソ、ウチはウチ。彼女は外で働くことが得意、僕は家事が得意。

一般的な男女の役割を逆転させているものの、コレが両者にとって楽な生活スタイルであるから、毎日を楽しく過ごせている。

話を戻すと、仮に彼女が婚姻関係を望むのであれば、僕は夫でも婿養子でも構わない。手続き自体は簡単なモノである。届けを役所に提出するだけだ。証人も極論、役所に赴く道すがらに出会った通行人2人でオッケーなのだから、その気になれば今日にだって彼女と僕は妻・夫の関係となる。

財産の共同管理や、同棲生活における労働の分担などは既にやっている。結婚したからといって生活自体が大きく変わるわけでもない。微塵もロマンチックではないが、婚姻関係になって呼び方が変わっても僕は僕だし彼女は彼女だ。

問題は、カップルの行き着く先、いわゆる“ゴールイン”と呼ばれる結婚が、実質的に当人同士の合意のみでは完結しないことにある。

社会には理想の「男性像」「女性像」があるからだ。男女が結婚するとなると、それらに照らし合わせて第三者が評価するから話がややこしくなる。

自転車を押すふみくん
筆者提供
自転車は沖縄に来てから出会った友人に貰ったそう。彼女以外にも施しを受ける機会は多い。 - 筆者提供

■結婚に至るまでのプロセス、求められる男性像は強固

システムこそ簡単であるものの、結婚に至るまでの過程には性別に伴った慣習が細かく用意されており、順序を守ることが強調されている。

例えば、片膝を立てて求婚、指輪の入った箱をパカっと開けるのは男性の役割だと教えられてきたし、その指輪にも月収の何カ月分などいろいろな条件があると聞く。

女性からプロポーズを申し込むことだってあるが、その場合は“逆”プロポーズと呼ばれるらしい。なぜなら、男性からプロポーズすることが一般的とされているためである。

さとうきびを手に取るふみくん
筆者提供
買い物をはじめとする家事は彼女でなく、ふみくんの担当。沖縄ならではの食材に驚くことも多い。 - 筆者提供

何より、彼女のご両親へのあいさつに気が重くならない男性などいないだろう。

あいさつとは、彼女の実家で行われる“娘の結婚相手の社会性を測る試験”と言い換えてもいいかもしれない。

家賃や生活費で彼女に依存している僕は、あいさつシーンを妄想するだけで体調が悪くなるほど気が重くなってしまう。

ポン酢を選ぶふみくん
筆者提供
寄生を続けるため、ポン酢ひとつとっても彼女の好みを優先させる。 - 筆者提供

「基本的にはヒモ生活、少しライターもかじっています」

お堅い職業に就く彼女のご両親からは、門前払いされることは確実だ。彼女は彼女で、僕と付き合っていることを両親に怒られてしまうかもしれない。

■「彼女のほうが高給取り」が悩みのタネに

あんまりだ! と思う一方、腑に落ちないこともない。

僕が彼女の父親の立場であっても、そんな甲斐性無しは門前払いするのではないだろうか。あまりに先行きが不透明だ。あいさつしにくるなら、「せめて経済的に自立してからにしろ」と考えるのが一般的だろう。

食材を切るふみくん
料理の画像を毎日Twitterにあげている。ふみくんいわく「作れないモノはない」とのこと。(筆者提供)

事実、彼女の親は娘に彼氏がいることこそ知っているものの、僕のことを詳しく紹介できずにいる。

ヒモは極端な例かもしれないが、このことは僕に限った話でもないだろう。

僕だって全く仕事をしていないわけではないが、「お小遣い稼ぎ」と書いたとおりだ。彼女との年収には大きな差がある。

社会が良しとする男性像から離れていたり、お付き合いしている彼女のほうが高給取りであることにコンプレックスを感じたり。パートナーへの感情とは別のところで、結婚までのステップに頭を悩ませる男性は決して少なくないように思う。

■彼女の親の目線は“男性”の僕が稼いでいるかどうか

言うまでもなく、結婚とは家族の問題である。お付き合いと違い、客観的に納得のゆく理由を説明し、双方の家族に関係性を納得してもらうことが求められる。

ふみくんの作った親子丼
親子丼。味噌汁のネギは彼女の希望。本人はネギは好きではない。(筆者撮影)

結婚を望む男性が、相手の両親に納得してもらうために必要なのは、「将来に見通しのつく職業に就いていること」。ひいては、「継続して稼ぐ経済力があること」。指輪しかり結納金しかり、とどのつまりお金の問題をクリアしなければならないのである。

育児に介護、突然のけが、病気、事故etc.お金のことをよく知らないヒモであっても、家庭を営んで行くことに莫大なお金がかかることくらいは何となく分かっているつもりではいる。

今はほそぼそとでも生活ができているかもしれない。しかし、定職に就いていなければいつ仕事がなくなるかも分からない。

ふみくんの作ったトマトカレー
筆者撮影
トマトカレー。付け合わせはズッキーニのオリーブオイル漬け。目玉焼きも彼女の希望。 - 筆者撮影

僕が家事を担当し、彼女が働いたほうが生産性が上がるという認識を2人の間で持っていたとしても、親にとってみればそんなことはどうでもよい。「男の僕が外で働いているかどうか」こそ重要視されるからだ。

彼女が外で稼ぎ、僕が家事を担うスタイルは、ちょうど僕らの親世代が見聞きしてきた一般家庭像とかけ離れ過ぎている。どう想像したって娘が不幸になる未来ばかりが見えてしまい、納得はいかない。

例えば、マスオが買い物に出掛け、波平はフリーランス。サザエとフネが山川商事に勤務する。うーん。僕とて、やっぱり想像しにくい。

アニメに限った話でなく、「女性が外で稼ぎ男性が家を守る」前例が少なすぎる。そりゃ、ご両親の不安も納得だ。

従来の家庭像に沿い、安定した収入を得る男性と一緒になってもらうことこそ、娘が幸せになる最善策に思えてしまうことも無理はない。

■両性の合意だけでは、後ろめたさが残ってしまうかもしれない

とは言え、慣習は慣習にすぎない。憲法では「婚姻は、両性の合意のみに基いて成立」するとされている。「親の目なんか気にせず、2人がいいなら結婚すればいいじゃん」と思われる方も多いだろう。

ふみくんの作った塩焼きそば
塩焼きそば。彼女が肉を好むため、隙あらば野菜を料理に入れる。(筆者撮影)

先述のとおり、煩わしいプロセスだって無視することもできる。だが、彼女も僕だけの彼女ではない。彼女が家族や友人などに対して後ろめたさを残すのであれば、それはそれで考えモノだ。

彼女がアンニュイな気持ちを持つようになれば、生活が楽しいモノでなくなってしまうだろう。両者が楽しくない毎日など僕としても不本意だ。

「なら定職につけ、お前の自業自得だ」と、言われてしまえばグゥの音もでない。だが、僕と彼女の性別が逆だったら話は変わってきたかもしれないし、彼女も要らぬことにヤキモキする必要もなかったかもしれない。

冒頭にも書いたとおり、僕も彼女もアラサーだ。彼女が子供を残したい希望を持ったとしても、不安は年齢を重ねるごとに募っていく。

もっと言えば、結婚をしなければ“なぜ”結婚をしないのか。結婚したらしたで、“なぜ”ヒモと結婚したのか。これから先、家庭を持たないことに関し、風当たりの強い質問が飛んでくるのは僕でなく、女性である彼女のほうが多いことも目に見えている。

ふみくんの作った回鍋肉とチャーハン
筆者撮影
(左)回鍋肉。中華料理はゴマ油にネギ・生姜・ニンニクを馴染ませることから始めるそう。(右)複数人の女性を相手にヒモ生活をしてきたふみくん。ガスとヒーターではチャーハン作りのコツも違うそう。 - 筆者撮影

■子供が生まれたら「理想の父親像」も押し付けられる

加えて、出産の問題もある。

今のところは2人とも「そんな未来もあるかもね」くらいの認識であるものの、将来的には彼女が子供を残したくなることだってあるだろう。出産適齢期という言葉があるとおり、年齢を重ねるごとに不安は募ってゆくと思う。

出産や育児で国からいくらか手当てが支給されると聞くが、彼女が産休と育休をとれば、家に入るお金が減額されることに変わりはない。

仮に、僕がライターの仕事を増やして金銭面をクリアしたとしよう。これまでの家事に加え、育児の大部分を僕が担当することや、ママ友の輪に入っていくことは問題ないように思う。

カキフライと蕎麦
筆者撮影
惣菜コーナーのカキフライと蕎麦、一見奇妙な組み合わせも彼女の希望。 - 筆者撮影

だが、それでも気がかりなことは多い。子供や僕たちの両親はどう思うだろう。子供が生まれてからは、男性像や女性像に加え、今度は「父親像」「母親像」を求められるのではないだろうか。僕は男性が育児に不向きなんて毛ほども思っちゃいないが、今の日本でイメージされる「父親像」は、育児に専念するよりも外でバリバリ働き妻子を養う男性なのではないだろうか。

僕と彼女との間で合意がとれても、結婚や出産においては、彼女の大切な人たちの納得を得ないと彼女のヤキモキを取り払うことができない。

万が一、今、彼女に妊娠が発覚したとしても素直に「おめでた」と喜べない。それは、僕が外で働いていないからにほかならない。

■男性が家事を担ってもいいじゃないか

もとより、ここまで好き勝手生きてきたヒモが、家庭を持とうなどおこがましい話なのかもしれないし、もちろん今は結婚だけがゴールインというワケでもないだろう。

しかし、僕が外で働かない男性であるばかりに、世間に一番納得してもらいやすい同棲の形、結婚の選択肢が取りづらいのは確かだ。

これからは男性が家事でサポートをする。そんなカップルがいてもいいように思うし、外で働かない男性に結婚する権利がないのかと聞かれれば、そんなこともないだろう。

ふみくんの作ったパスタ
筆者撮影
彼女いわく、ふみくんはパスタを作るときに毎回「乳化作業」の大切さを説くらしい。 - 筆者撮影

しかし、2人を取り囲む全員の納得を得るには、まだ時間がかかるのかもしれない。

仮に、僕が彼女の両親へのあいさつを求められたのならどうするか……。

今思いつく最善策は、コレまでのヒモ生活で培ったハッタリを駆使し、彼女の両親に取り入って彼女の両親と仲良くなる。コレしかない。

少なくとも、今から就職して外で働く選択肢を取るよりも、彼女のご両親にかわいがられる存在になることのほうがずっと現実味がある。仲良くなれば理解だって後からついてくるかもしれない。

ふみくんの作ったサラダ
筆者撮影
友人宅で作ったアボカドとカニカマのサラダ。酒を飲む人と飲まない人でも作る料理を分ける。 - 筆者撮影

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ふみくん(ふみくん)
プロヒモ
1989年生まれ。本業プロヒモ、副業ライター。早稲田大学人間科学部卒。在学中からこれまで一度も会社勤めをせず、10年以上10人の女性に家事を施しヒモとして生活を送ってきた。現在は沖縄の家で南国暮らしを満喫中。日刊SPA! にてヒモ生活が取りあげられ、注目をあびる。

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(プロヒモ ふみくん)

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