「どんな不安もスーッとラクになる」日本代表主将が口癖にしていた"意外な6文字"
プレジデントオンライン / 2021年9月4日 9時15分
※本稿は、柳田将洋『努力の習慣化』(KADOKAWA)の一部を再編集したものです。
■①不安の実態を整理する
誰にでも不安はあります。僕が考える不安とは、「現時点でわからないことを知ろうとしていることで感じるストレス」を指します。
不安を減らす第一歩は、いつ不安というストレスを感じているのか、それに対して自分は何をしようとしているのか、それを明確にして整理することです。もちろん、バレーボールをする中で多少の不安を感じることもありますが、大きな不安を抱えながらプレーをすることはあまりありません。
たとえば、来季の契約に対する不安や、次の試合でいいプレーができるのかという不安は、自分で払拭できます。きちんと練習をすればいいだけですし、今できることをひとつひとつやっていくしかありません。
ただし、周囲から聞こえてくる話で、「これは意味のない不安だな」と感じることもあります。コロナ禍になってからよく耳にしたのは、「東京オリンピックはやるの?」ということでした。東京オリンピックに関しては、自分が開催するかしないかに関わることはできません。思い悩んだり、エネルギーをかけたりしたところで力は及ばないのですから、無益な労力になってしまいます。このように、不安は、大概自分の力が及ばないことなのです。
スポーツの世界では「チームの不安要素」という言い方がありますが、これは実際には不安ではありません。ウィークポイントをなぜか不安要素と言い換えているだけで、ウィークポイントである以上改善の余地があります。
ストレスを溜めるのは、自分に影響を及ぼす毒のようなもの。下手をすると、不安なことだけを考えて一日過ごしていたりすることもあるのではないでしょうか。そんな時は、冷静になって、問題点、自分で改善できること、できないことを整理する。そうすれば、ストレスを感じる必要がなかったなということが意外に多かったりします。
■②他人に期待しないで、自分が動けばいい
まわりを動かそうとしても動かないことってありますよね。勝手に相手に期待して、期待通りに動かないと失望してしまう……。だいたいの場合は思った通りには動いてくれないのだから、他人に期待しないで、自分が動けばいい。自分が一生懸命にやっていれば、仲間が動いてくれることもあります。
相手にベクトルが向いた状態で過剰に期待していると、思い通りにいかない時にストレスを溜めてしまいます。逆に、常にベクトルが自分に向いていれば、相手が仮に自分の思った通りに動かなくても、「そういう時もあるよね」「大丈夫、大丈夫」という気持ちで相手に接することができますし、次のステップにも踏み出せると思います。他人に期待しすぎてしまうと、その分現実とのギャップがストレスになり、自分を苦しめます。
たとえば海外に行く前の僕は、自分がどうスパイクを打つのかにフォーカスできていませんでした。それなのにトスを上げる選手には「こういうトスが欲しい」と伝えもせず「うまくいくよ」とばかり言っていたのです。表面上はうまくいっていましたが、実際のプレーでは結果につながらず、そのことは僕にとって悩みのタネでした。要するに、自分のプレーにフォーカスしていなかったのです。
その心のクセに気づいて修正して以降は決定率も上がり、いいトスをもらったら「ありがとう」と言うようになりました。
■③他人の評価を気にしない
何かに挑戦する時に「失敗したらまわりに笑われるのでは?」と怖くなったら、それは自分にフォーカスできていないのかもしれません。
僕自身、海外に挑戦する時は不安も当然あったのですが、「つらくて帰ってきたらまわりはどう評価するかわからないけれど、評価されることを求めて海外に行くわけではない」「自分なりに頑張ればいいだけで、他人からの評価は、それはそれで別の話」と、ある人から言われて心が軽くなったのを覚えています。
「帰ってきても逃げているわけではないんだ」と思えたことで、肩の力が抜けた状態で海外にチャレンジすることができました。「自分がどうするのか」ということだけに集中すれば、余計なストレスは感じにくくなります。
■④「きつい」という言葉を口にしない
僕は、国内ではVプレミアリーグのサントリーサンバーズ、海外ではドイツ・ブンデスリーガ1部のバレーボール・ビソンズ・ビュールとユナイテッド・バレーズ、ポーランド・プラスリーガのクプルム・ルビンでプレーしてきたほか、日本代表のキャプテンも務めました。
どのチームにいるときでも、僕には心がけてきたことがあります。それは仲間に苦しんでいるところを見せないということです。練習中に「きつーい」くらいは言ったりしますが、本質的にきつい時は言わない。「本当にもうダメ」なんて絶対に口にしません。
チームが勝てない状況が続くと、苦しくてみんなが下を向いてしまいますよね。大事なのはそこで一緒になって下を向かないこと。ネガティブな気持ちをみんなで共有したところで、状況がよくなるわけではありません。
試合に負けてしまって、「もうバレーボールのことなんて考えたくない」という日こそ、人と話をする機会を作っています。
日本人は、負けたら自粛したり、部屋にこもっておとなしくしていたりと、悪いことを引きずる傾向があります。考え方は人それぞれですが、僕としては、どんちゃん騒ぎをするわけではありませんし、少しでも話して次のことを考えやすくしたいのです。
■⑤何があっても「しかたがない」
負けた時は自分のせいだと思っている選手が多くて、僕自身もそう思ってしまいます。だからこそ、一人にならず、誰かと話せる環境を作る。コミュニケーションを取る機会があれば、それだけでメンタル的にプラスに持っていけるのです。
福澤達哉選手(元パナソニックパンサーズのバレーボール選手)をはじめとする先輩たちとごはんに行った時に相談することもあっても、「苦しいんです」と吐露するのは気恥ずかしいので、自分で消化することが多い。逆に他の人の話を聞くことで、自分の考えを整理できたり、消化できたりすることがあります。なぜか、人の話が自分のつらさを紛らわしてくれることもあるのです。
基本的には、つらいことがあっても「しかたがない」の6文字で終わってしまいます。
怪我をした時もそうでした。ポーランドで足首を骨折、だったら日本に帰ろうと、すぐに切り替えられました。怪我をした直後に日本代表のドクターにかけ合って、データを診てもらう手はずを整えて、MRIをとったらすぐにデータを送りました。ドクターの診断は全治2カ月。2カ月後にはシーズンが終わってしまうので、帰国して治療できるようクラブを説得、日本に帰る手はずを整えました。
怪我をしてからここまでで1週間弱。苦しさに身を任せて沈み込むのではなく、「怪我はしかたがないから次」とすぐに心を切り替えることができたからこそ、スピード感を持って決断や交渉ができたのだと思います。
■⑥ミスは必ず起こるもの
僕は「ミスは起こるもの」と認識しています。決してミスをすることを肯定しているわけではなく、ミスを受け入れて、次に進むという意味を込めているのです。「ミスは起こるもの」と思っていないと気持ちが持ちません。
ミスを受け入れられる人は、メンタルが強い。逆に試合中にミスを引きずっている人は、それが表情に出て、次のプレーに思いきりがなくなってしまいます。ミスに引きずられてしまう人は、「ミスが起きた時の心の準備ができていない」ということです。
成功した数字、言い換えればミスをしなかった数字は常に計算されていて、バレーボールにとって欠かせない要素ではあるのですが、コートに立つ選手は試合中に数字を気にするべきではないのです。
あくまで試合後に気にするものであって、プレー中に数字のことが頭をよぎってフォームが崩れたり、ミスが出たり、プレースタイルが変わってしまったり、と影響を受けていては実力を発揮できません。数字を気にしすぎて、数字を悪くしては、本末転倒です。
ベストなプレーをするためには、「ミスをしたかどうかは気にしないで、いつも通りプレーするだけ」というところに気持ちを持っていければいいのです。ダメならダメで次に集中できるよう、冷静に考える。引きずらないようにする。そうすれば、どんな状況にも対応できるようになります。
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バレーボール選手
1992年東京都生まれ。東洋高校では主将として全国高校選抜優勝大会で優勝。慶応大学在学中に日本代表に名を連ね、2014年にサントリーサンバーズに入団。2017年にプロ転向を表明すると、ヨーロッパにわたりドイツ、ポーランドのリーグでプレー。2018年、日本代表キャプテンに就任。2020年にはサントリーサンバーズに復帰した。チームの14年ぶりの優勝を経験し、自身もベスト6を受賞。(プロフィール画像 ©AMUSE)
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(バレーボール選手 柳田 将洋)
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