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「同じぐらい食べているのになぜかスリムな人」がよく食べている"あるもの"

プレジデントオンライン / 2021年9月1日 15時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/PonyWang

太りやすい人と太りにくい人の違いはどこにあるのか。医師の桐村里紗さんは「痩せ菌と呼ばれる腸内細菌が活躍している腸内環境であれば、太りにくくなる。瘦せ菌は、ある食べ物で増やすことができる」という――。

※本稿は、桐村里紗『腸と森の「土」を育てる 微生物が健康にする人と環境』(光文社新書)の一部を再編集したものです。

■抗体はウイルスが変異してもある程度カバーできる

免疫を適切に働かせて感染症を防御するにも、腸内環境がとても大切です。

人を含む哺乳類の身体で、病原性微生物との最大の接点は、「粘膜」です。喉・鼻・気道・消化器・泌尿器・生殖器・目などを含めて、粘膜は全身で400m2(テニスコート約1.5面分)もの広い面積があります。これは、皮膚表面の200倍です。

コロナ対策としても、ここの守りを固めたいわけです。

粘膜では上皮細胞が防御壁となり、その外側を常在細菌がびっしりと覆い、外敵の侵入を許さないようにしているわけですが、粘膜にはもう一つの立役者がいます。それが、抗体「IgA(免疫グロブリンA)」です。

抗体とは、侵入しようとする病原体にくっついて、無力化する免疫物質です。IgAは、特定のウイルスや細菌だけに反応するのではなく、様々な種類の病原体に、割と幅広く反応できる守備範囲の広さが特徴です。

ですから、たとえば、インフルエンザウイルスや新型コロナウイルスの型が変異しても、ある程度カバーができるのです。

■免疫の要は腸

じつは、全身の粘膜でのIgAの分泌には、2パターンあります。病原体にさらされた局所の粘膜でIgAが分泌される場合だけでなく、腸管を通じて全身で分泌される場合があり、IgAをしっかり作るためには、腸内細菌と腸の周りの免疫細胞の協力関係が欠かせないのです(*1)

食事によって常に外来の病原体や刺激にさらされる腸管は、人の身体にとっては最も防御が必要な最前線です。そのため、腸管には、身体の中で最大の規模の免疫器官が配置されており、「免疫の要は腸」といわれています。

腸管の防御壁の中には、免疫細胞が常に待機している見張り小屋「パイエル板」があります。ここで病原体が感知されると、集結している主要な免疫細胞(樹状細胞、T細胞、B細胞)の連携によって、IgAが作られます。

腸だけにIgAを分泌するのではなく、パイエル板で刺激を受けた免疫細胞(B細胞)が、リンパ管に乗って全身の粘膜に配備され、そこでIgAを分泌する免疫細胞にトランスフォーミングして、IgAを量産して防御を固めます(*2)

IgA分泌に重要な役割を果たしているのが腸内細菌で、セグメント細菌、バクテロイデス属菌、それから乳酸菌やビフィズス菌など各種の共生菌が、この役割を果たしていることが研究されています。

防御壁の外を守る常在細菌と内側を守る免疫細胞は、常に協力関係にあるということなのです。

■腸の状態で血糖値さえ変わってくる

腸内細菌は、生活習慣病にも大いに関わっています。

腸のイラストをおなかに当てている人
写真=iStock.com/LightFieldStudios
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/LightFieldStudios

腸内や口腔内の環境が乱れて慢性炎症が起きると、防御壁の守りが脆弱になり、体内に入ってはいけない細菌が侵入します。すると、免疫細胞は「敵が来た!」と暴れて炎症を起こしますが、これによって、血糖値を下げるホルモンであるインスリンの働きが悪くなり、血糖値を悪化させます。

これが、インスリンが効きづらくなる「インスリン抵抗性」と呼ばれる状態です(*3)

2型糖尿病のリスクが同じようにある人でも、口腔ケアがしっかりできているか否か、また腸内環境の良し悪しによって、血糖値の状態が変わってきます。

またその逆に、2型糖尿病患者において、乳酸菌類をしっかりと日常的に摂取することで腸内環境が回復すると、防御壁が強化されて、血液中に侵入する細菌の量が減少し、慢性炎症が改善することも分かっています(*4)

■同じものを食べてもスリムな理由

肥満にも、常在細菌の働きが関わっています。「同じものを食べているのに、どうしてあの人ってあんなにスリムなの⁉」と羨ましく思うことってありますよね。逆に、「ほとんど食べていないのに、どうしてこんなにすぐ太るのだろう」という場合も。

また遺伝子検査で、「痩せ型」遺伝子を持っている人が肥満であったり、「肥満」遺伝子を持っている人が痩せていたりすることはよくあります。

この要因の一つが、腸内細菌にあると考えられます。

腸内細菌の種類によって、食べ物からどんなエネルギーを抽出できるかは変わってきます。そのため、同じ食べ物を食べても、人によって、糖などのエネルギー源を多く吸収してしまう人がいるのです。

痩せ菌といわれるのが、酪酸菌やアッカーマンシア菌です。

アッカーマンシア菌は、肥満や2型糖尿病の人に少ないのですが、アッカーマンシア・ムシニフィラをサプリメントで3カ月間投与したところ、プラセボを摂取した人に比べ体重が減少した他、総コレステロール値やインスリン感受性も改善したと報告されています(*5)。ただ、増えすぎても良いわけではありません。適度にバランスよくいることが大切です。

アッカーマンシア菌は、保有する人と保有しない人がいますが、酪酸菌はほとんどの人の腸内に常在していますので、こちらはエサを与えて増やすことは可能です。彼らの大好物は、海藻類やりんごやプルーン、こんにゃく、ゴボウ、納豆などに含まれる水溶性食物繊維です。

これらを食べることで腸内細菌が作り出す短鎖脂肪酸が鍵になります。

短鎖脂肪酸は、エネルギー源になる一方で、脂肪細胞に脂肪が取り込まれて肥大化するのを抑え、さらには、脳に直接作用して食欲も抑え、交感神経を刺激して代謝を高めることで、総合的にスリムを維持する方に働きます。

■皮膚も常在細菌に守られている

消化管だけでなく、皮膚の健康にも常在細菌は重要です。目には見えませんが、私たちの皮膚は、全体を共生菌に覆われ、外敵や刺激から守られています。

皮膚は、あからさまに外界と接している境界線です。表皮細胞を防御壁として、その外側は、頭皮から足の裏、耳の穴まで、びっしりと共生菌で覆われています。カビの一種や、毛穴が好きなダニの一種まで棲みついて、ユニークなコミュニティを形成しています。

共生菌である表皮ブドウ球菌やアクネ菌、真菌の一種であるマラセチア菌は、皮脂を分解して、スクワランやグリセリンなどの潤い成分を作り、汗の水分と混ぜて、乳液を作っています。共生菌が正常なバランスであれば、酸を分泌するので、皮膚の環境は弱酸性に保たれているのです。

さらには、天然の抗菌成分を分泌して、共生的な仲間が暮らしやすく、外部の不要な菌を排除する仕組みを作っています。

このコミュニティがうまくいくのは、皮膚が潤っている場合です。

一方で、皮膚は乾燥すると、表皮ブドウ球菌が減り、弱酸性環境が失われてアルカリ性に傾きます。すると、腸内細菌の一種であるプロテオバクテリアなどの菌種や、食中毒の原因菌ともなる黄色ブドウ球菌が増えて、バランスを崩してしまいます。

アトピー性皮膚炎の人の乾燥した皮膚には、黄色ブドウ球菌が増えやすいのですが、この菌は毒素を持つので、炎症を起こし、アトピーを重傷化させてしまいます。

正常な皮膚であれば、天然の抗菌成分が黄色ブドウ球菌の繁殖を抑えているのですが、アトピーの人ではこの抗菌成分の分泌が弱いことも、黄色ブドウ球菌の繁殖を許してしまうことの原因です。

■アルコール消毒は炎症やアレルギーを引き起こすリスクに

慶應義塾大学の研究では、黄色ブドウ球菌の繁殖による皮膚の菌のアンバランス自体が、アトピーを引き起こす原因になっている可能性も指摘されています(*6)

その他にも、広島大学の研究で、アトピーの人が汗で痒みを悪化させる原因は、カビの一種であるマラセチア菌の異常繁殖が一因になっていることも分かっています(*7)

桐村里紗『腸と森の「土」を育てる 微生物が健康にする人と環境』(光文社新書)
桐村里紗『腸と森の「土」を育てる 微生物が健康にする人と環境』(光文社新書)

今や感染防御の目的で、一般生活者も日常的に行うようになった殺菌消毒は、病原性のウイルスだけでなく、皮膚の常在細菌をも死滅させる行為です。

とはいえ、皮膚の常在細菌はしぶといので、表面が殺菌されたとしても、毛穴に残ったものが盛り返し、24時間程度で回復するとされています。ですが、今のように、何かに触るたび、また食事のたびに使用してしまうと、回復の余地がなくなります。

また、アルコールは皮脂を奪い、乾燥を招きますから、アルコール消毒による乾燥によって、常在細菌がアンバランスになるだけでなく、皮膚がひび割れることで、表皮細胞による防御壁を崩していることになります。外来の刺激の侵入を許す行為ですので、炎症やアレルギーを引き起こすリスクになります。

使用する際は、保湿剤入りの物を選んだり、ハンドクリームを塗るなど乾燥予防しましょう。

十分な流水や、殺菌効果のない石鹸を使用した手洗いを行えば、常在細菌バリアは守りながら、その上に付着する病原性微生物を洗い流すことができます。殺菌消毒剤は極力肌には使用せず、どうしても手洗いできない状況で、やむを得ず使用するものと位置付ける方が、健全ではないかと考える今日この頃です。

(*1)『腸内細菌学雑誌』2007年、21巻4号、277~287頁。
(*2)『メディカル免疫学』ロアット、ロブソン、デルヴィス著、小野江和則、上出利光監訳、2006年、西村書店。
(*3)Diabetes Care. 2014 Aug;37(8):2343-50.
(*4)Scientific Reports. 2017 Sep 21;7(1):12115.
(*5)Nature medicine. 2019 Jul;25(7):1096-1103.
(*6)Immunity. 2015 Apr 21;42(4):756-66.
(*7)Journal of Allergy and Clinical Immunology. 2013 Sep;132(3):608-615. e4.

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桐村 里紗(きりむら・りさ)
医師
1980年、岡山県生まれ。2004年愛媛大学医学部医学科卒。内科医・認定産業医。tenrai代表医師。臨床現場において最新の分子整合栄養学やバイオロジカル医療・腸内フローラ研究などをもとにした予防医療、生活習慣病から終末期医療まで幅広く診療経験を積む。生命科学、常在細菌学、意識科学、人文科学、最新の数理学などをもとにヘルスケアの意味を再定義し、食や農業、環境問題への洞察をもとに人と地球全体の健康を実現する「プラネタリーヘルスケア」をはじめ、最新のヘルスケア・ウェルネス情報をさまざまなメディアを通じ発信している。主な著書に『腸と森の「土」を育てる 微生物が健康にする人と環境』『日本人はなぜ臭いと言われるのか 体臭と口臭の科学』(ともに光文社新書)など。

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(医師 桐村 里紗)

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