「インデックスはアクティブに勝る」あのバフェットが妻への遺言書に記した"意外なアドバイス"
プレジデントオンライン / 2021年9月5日 10時15分
ネブラスカ州オマハで開催された2019年の年次株主総会に到着して報道陣に語りかけているバークシャー・ハサウェイのCEOであるウォーレン・バフェット氏=2019年5月4日 - 写真=AFP/時事通信フォト
※本稿は、北村慶『金融のプロが実はやっている 最もシンプルで賢い投資の結論』(朝日新聞出版)の一部を再編集したものです。
■筆者が500万円の利益を得た投資信託とは
金融庁のホームページには、2021年6月現在、長期の資産形成に向いた投資信託192本(ETFを除く)の一覧が載っています。
その内訳は、「アクティブ運用」と言われる種類の投資信託が19本、「インデックス運用」に属する投資信託が173本です。
前者の「アクティブ(積極的)運用」では、市場の平均――国内株式であれば、日経平均やTOPIX(東証株価指数)の値動き――以上の高い運用利回りを目指して、積極的に銘柄選定を行い、株価の先行きが期待できる銘柄に投資します。
後者の「インデックス運用」は、日経平均やTOPIXといったインデックス(指標)通りの運用を目指します。つまり、市場平均並みの運用成績で良い、という考え方であり、「パッシブ(消極的)運用」とも呼ばれます。
筆者が13年間投資し6%の利回りと500万円の利益をもたらした「eMAXISバランス(8資産均等型)」はインデックス運用を行う投資信託です。
また、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)は、アクティブ運用とインデックス運用を併用していますが、年々、インデックス運用の比率を高めており、2021年3月末時点では82.7%がインデックス運用です。
その理由は、運用にかかるコスト・手数料を勘案すると、インデックス運用の方がアクティブ運用よりもパフォーマンス(運用成績)が良いから、です。
もう少し詳しく見てみましょう。
■アクティブ運用は運用手数料が高くなるが…
「アクティブ運用」では、プロのファンド・マネージャーが、他の運用者に勝ち、市場の平均利回り(インデックス)を上回る運用成績を目指して、積極的な運用を行います。
![株式市場](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/4/c/670/img_4c4840abcf2affa5758e9568d222f7471084850.jpg)
従って、「アクティブ運用」では、これらのインデックスに勝ったか負けたかがポイントになり、ファンド・マネージャーたちのボーナスなどの処遇もこのインデックス対比の運用成績で評価されることになります。
この「アクティブ運用」ですが、高給のアナリストやファンド・マネージャーがさまざまな分析を行い運用するわけですから、当然に運用手数料も高くなります。
投資家としては、当然にその成果を期待するわけです。
ところが、実際の運用成績を見てみると、日本では、アクティブ運用を行っている株式投信の大半は、インデックス(TOPIXや日経平均)を下回るリターンしか上げてられていない、という事実が浮かび上がります。
アメリカでも、約8割のアクティブ型の株式投信のパフォーマンス(運用成績)がS&P500インデックス(米国の主要500銘柄の平均利回りを表す指標)を下回る、との報告もあります。
■「パッシブ運用」の方が得
さらに、多くの研究結果が、「アクティブ運用」の高い運用手数料を勘案すれば、「アクティブ運用」により得られる超過収益率(市場平均を上回る収益)が限定的であることから、「パッシブ運用」の方が得だ、ということを示唆しています。
よく考えてみれば、次のような自明の理に気づきます。
「市場には多くの参加者がおり、それぞれが独自の運用スタイルで売買している。
アクティブ運用者には、儲けることのできた勝者もいれば、損をした敗者も常に存在する。
それらのすべての投資家の売買を合計したものが、市場平均(インデックス)である。
アクティブ投資家が行う売買には、銘柄の調査・分析などのコストがかかる。
従って、アクティブ投資が市場平均に追随するインデックス投資に勝つことは容易ではない」
■バークシャー・ハサウェイは市場の2倍近いリターンを50年間出し続けた
もちろん、比較的長期にわたってインデックスを上回る実績を持つアクティブ投信も一定程度存在しますし、すべてのアクティブ運用に意味がない、ということではありません。
![北村慶『金融のプロが実はやっている 最もシンプルで賢い投資の結論』(朝日新聞出版)](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/5/7/200/img_57aa1f7efc209e6605278bebb7113886323929.jpg)
例えば、“投資の神様”ウォーレン・バフェット氏が運営する投資会社バークシャー・ハサウェイの運用成績を見てみましょう。
1965年からの50年間、米国を代表する株価指数であるS&P500の年間平均利回りは9.9%でした。アメリカ経済は、不況やベトナム戦争、テロとの戦いなどを経ながらも、成長を続け、株価も長い目で見れば年率10%近く上昇しました。
これに対し、バフェット氏は、自分で分析して選んだ少数の銘柄に集中投資することで、これを大きく上回る成果を出しているのです。
50年間の年間平均リターン(複利)は、驚異の19.4%。
市場(S&P500)の2倍近いリターンを50年間という長期にわたって出し続けてきたのです。
バークシャー・ハサウェイのこの期間の累積リターンは、75万1113%。
50年前に10万円投資していれば、7511倍の7億5111万円になった計算です。
■“投資の神様”バフェットが妻に遺言した投資法
こうして、市場に対して勝ち続け、「賢人」と呼ばれるバフェット氏ですが、実は、普通の市民に対しては、次のようなアドバイスをしているのです。
「ここで私が皆さんにアドバイスすることは、私が妻に宛てて残している遺言書に記したある指示と基本的に同じことです。
資金の10%を短期国債に、90%を非常に低コストのS&P500インデックス投信に回すのです。
この運用方針による長期的な成果は、年金基金、機関投資家、個人を問わず、高額な手数料の運用者を雇っている多くの投資家が達成するものよりも優れたものになる、と私は信じています」(同氏が経営するバークシャー・ハサウェイ社の過去の「株主への手紙」から筆者が要約)
“神様”からのこのアドバイスは、多額の手数料を取るヘッジファンド(アクティブ運用の一種)に対する批判という文脈で語られていますが、バフェット氏がインデックス投信の推奨者であることは間違いありません。“投資の神様”と称されるバフェット氏は、市場平均に勝ち続けることの難しさを知っているからこそ、普通の市民にはインデックス投信を勧めているのです。
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東証一部上場企業CFO
慶應義塾大学卒業。ペンシルベニア大学経営大学院(ウォートン・スクール)留学。日本証券アナリスト協会検定会員、ファイナンシャル・プランナー一級技能士(国家資格)。ヨーロッパではプロジェクト・ファイナンスに、アメリカでは投資ファンドに携わる。その後、日米欧のクロスボーダーM&A業務及びコーポレート・アドバイザリー業務に従事し、大手グローバル金融機関勤務を経て現在にいたる。
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(東証一部上場企業CFO 北村 慶)
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