1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 社会
  4. 社会

「自慰行為の動画を送ってよ」児童ポルノ犯がSNSで見つけたターゲットに使う卑劣な手口

プレジデントオンライン / 2021年9月3日 15時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/chameleonseye

SNSを通じて性犯罪に巻き込まれる子供が増えている。児童ポルノ禁止法の被害児童はこの約10年で3倍超になった。多くの手口は、子供たちに「自撮り」を要求するものだ。ライターの高橋ユキさんは「加害者は少しずつ情報を引き出しながら、最後は『親に知らせる』などと脅してくる。親子間で相談できる環境を整えるために、3つのポイントを伝えてほしい」という——。

■自宅に誘い込んで性行為に及ぶ様子を盗撮

近年、刑事裁判を傍聴していると犯罪の形が変わってきたと感じる。特に児童わいせつ事案では、「SNS」と「スマホ」の影響が非常に大きい。

強制性交等罪と児童ポルノ禁止法違反で起訴され、今年千葉地裁で公判が開かれていた富田嵐(公判当時28)は2018年、小学5年生だった男児と学生専用をうたっていたSNSの「ひま部」(現在はサービス終了)で出会った。富田は学生ではなかったが「ひま部」に紛れ込み、男児にコンタクトを取った。

公判で読み上げられた被害児童の調書によれば「母親が買ってくれたタブレットで『ひま部』というアプリを使っていて、被告人と知り合った。途中からLINEに移ってやりとりを続けていると、お互い車に興味があるということが分かった。ラジコンカーを買ってもらうという話になり、会うことになった」という。

富田は男児を自宅に誘い込んで性行為に及ぼうとし、その様子を男児に無断でスマホを使って録画している。

「部屋を見ると、携帯電話が本棚に置いてあったので盗撮に気づき『データを消して』と頼んだ。削除してくれたが、ゴミ箱の中までは確認しなかった」(同調書)

警察から連絡を受けて初めて、男児の母親は被害を知った。

■増加する「児童ポルノ」被害者

警察庁の「令和2年における少年非行、児童虐待及び子供の性被害の状況」によれば、SNSに起因した犯罪被害に遭う児童の数は2011年(1085人)から2019年(2082人)まで、おおむね増加の一途をたどっている。

その中で注目すべきは、児童ポルノ禁止法違反の被害児童数である。2011年(217件)と比べて2019年は約3倍(671件)にも増加しているのだ。

後ろ手に手錠
写真=iStock.com/Bill Oxford
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Bill Oxford

児童ポルノ禁止法では、18歳未満の児童の裸やそれに準じる姿の撮影を児童ポルノの「製造」として禁じ、送付・提供や公開等も禁じている。スマホ内、もしくはクラウドに保存している場合でも処罰の対象だ。具体的には、スマホで18歳未満の児童の裸体を撮影したり、または児童に写真データを送らせるなどすれば、法律違反となりうる。

富田が起こした事件のように、直接対面する事案だけでなく、SNSを介して出会った相手から裸の写真を送るよう求められるケースが昨今、後を絶たない。さらに、入手した児童ポルノ動画像データを、個人で見返すだけではなく、時に高値で販売するケースもある。

強制性交等や強制わいせつ、児童ポルノ禁止法違反などの罪に問われ、現在、横浜地裁で公判が続いている近藤善広被告(逮捕時33)は、複数の女児に性的暴行を加え、その際に撮影していた動画像を所持するだけでなく、6人に販売し約50万円の売り上げを得ていた。

デジタルデバイスを用いた性犯罪はインターネット上にデータが出回ってしまった場合、「デジタルタトゥー」として半永久的に残る。事件が起きたその時だけでなく、それ以降も被害者とその家族らを苦しめる。

■加害者の巧妙な手口

新聞やテレビで報じられるSNSを使った性犯罪はあくまで氷山の一角である。SNSの普及によって、被害者にならないまでも、親の知らぬ間に際どいところを歩いている児童は少なくない。

なぜ被害者たちは見ず知らずの他人と接触し、「自撮り」の画像を送ってしまうのか 。

NPO法人「ぱっぷす」の相談窓口には、累計約1200件の相談の内1~2割ほど児童ポルノに関する相談が寄せられている。相談員の後藤稚菜(わかな)氏によると、中高生が被害に遭うのは次のようなパターンが多いという。

「オンラインゲームやコミュニティサイトなどのSNSで知り合った相手から、最初は普通のやりとりをしながらだんだん親密になっていく。そのうち相手が『どんな制服なの?』などと画像を要求するようになります」

いきなり裸の写真を求めるケースも中にはあるが加害者たちは、写真を要求するまでに、SNSで児童とコミュニケーションを重ね、信頼関係を構築しているケースが多い。時に同性の友人になりすまし、また時には恋人候補のように振る舞い児童を錯覚させる。こうして「相手も信頼できると思っていたから」「自分も相手を気になっていたし、応じていた」と写真を送ってしまう。

教室の机の高さで隠れて携帯電話を操作する女子中学生
写真=iStock.com/kazuma seki
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/kazuma seki

だが、要求は一度では終わらない。これが始まりなのだ。彼らは「下着の画像を送ってよ」「胸の画像だけでいいから」と少しずつ過激になっていくのである。ここで断ると、加害者は次のように言う。

「俺のこと信用できないの?」
「好きなんだったらそのくらいしてくれるよね」
「他の子は送ってくれたのに、なんで君はできないの」

児童はこう言われ「断る自分がおかしいんじゃないか」「断るのは悪いんじゃないか」と思わされてしまうのだ。罪悪感を抱き、渋々写真を送る児童は少なくない。

■児童の心理を操る加害者

「SNSでのやりとりで相手は児童の個人情報をある程度聞き出し、被害者の学校などを把握している場合もある。そのうえ画像も手に入れたとなると、加害者の要求はエスカレートし、児童を脅すようになります」(後藤氏)

「写真を拡散されたくなかったら、自慰行為の動画を送れ」
「君の学校の人にこの写真を送られたくなかったら、裸の写真を送って」

この段階までくると、友人関係もしくは擬似的な恋愛気分は消え失せている。拡散を恐れながら、要求に応じざるを得なくなってしまうのだ。

後藤氏によれば、加害者が被害者を脅すために、被害者本人になりすます手口もあるそうだ。

「被害者の名前でSNSアカウントを作ります。被害者が送ってきた裸の画像にモザイク処理を施したものを用意し、あたかも被害者が自分でさらしているかのような投稿を行う。続いて、『DMをくれた方にはモザイクを外した写真を送ります』といった投稿をするんです。多くの被害者は強い恐怖を感じ、拡散をやめさせるために相手の要求に応えるしかなくなってしまう」(同)

■なぜ児童たちは被害を相談しないのか

児童らは親に言ったら失望される、自分が怒られるだけと思い込み、相談できないケースが多いという。また、「裸の画像のやり取りはいけないことなんじゃないか」という漠然とした認識を持っていても「写真を送った自分が悪く、逮捕されるんじゃないか」と不安を抱き、ふさぎ込んでしまうケースや、警察に相談に行けば「学校にバラされるんじゃないか、内申に響くのでは」と周囲に発覚することを心配し、周囲に話すことなく一人でどうにか対処しようとしてしまう。

その心理を熟知している加害者は、画像の拡散をにおわせるだけでなく、「親に送りつけようか」という脅しを加え、児童たちを追い込んでいくのだ。

■被害を防ぐために行うこと

こうした被害を防ぐため、保護者はどうすればいいのか。

「SNSを利用する際に、画像などの個人情報を見知らぬ他人に流してはいけない」

これが一番有効な方法であるのは間違いない。だが、他人とつながりたいと思うのは人間の本質的な欲求である。さらに児童にとってもスマホは日常生活に不可欠なツールだ。スマホやアプリのフィルタリング機能を使うという方法もあるが、設定を変更されてしまう恐れもある。

大事なのは、親子間で相談できる環境を整えることだ。そのために、まずは以下の3点を子供に伝えてみてほしい。

・ 性的なことに興味があるのは自然なことで、悪いことじゃない。でも性的に嫌なことをされたらそれは性暴力だから、相談していい。
・ 大人は子供を性的な対象として扱うことは許されないこと。
・ 東京都の条例や児童ポルノ禁止法は子供を守る観点から作られており、裸の画像を要求したり送らせる行為は犯罪で、子供は責められる立場にないこと。

上記の3点を伝えるだけでも、親に相談しやすくなり、被害防止になる。実際、「ぱっぷす」でも以上のことを伝えた結果、被害者が納得して、親と一緒に警察に行ったケースがあったという。もし実際に画像を送ってしまったと相談されたとき、こどもは既に自分を十分に責めている。どうか責めずに話を聞いてほしい。

どんな状況でも、困りごとをいつでも相談できる。わが子を守るには、親がそうした「保護者」として存在することがなによりも重要だ。

----------

高橋 ユキ(たかはし・ゆき)
ライター
1974年生まれ、福岡県出身。2005年、女性の裁判傍聴グループ「霞っ子クラブ」を結成。翌年、同名のブログをまとめた書籍を発表。以降、傍聴ライターとして活動。裁判傍聴を中心に事件記事を執筆している。著書に『つけびの村 噂が5人を殺したのか?』(晶文社)、『暴走老人・犯罪劇場』(洋泉社)、『木嶋佳苗 危険な愛の奥義』(徳間書店)など。

----------

(ライター 高橋 ユキ)

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください