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「小中学生の自殺が過去最悪ペース」コロナ禍だからこそ親が絶対に見逃してはいけないサイン

プレジデントオンライン / 2021年9月1日 18時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/maroke

今年7月までに自殺した小中学生や高校生は272人と、年間で過去最多となった去年の同じ時期を上回るペースで増えている。文教大学教授で小児科医の成田奈緒子さんは「コロナ禍によるライフスタイルの変化が影響している恐れがある。感染予防に気を取られるあまり、子どもの精神衛生をおろそかにしてはいけない。外出する機会をつくったほうがいい」という――。

■中学生の24%、小学校高学年生の15%が鬱状態

新型コロナウイルス感染症が蔓延する中、世界全体を覆う不安は長期化しています。その中でも子どもを育てる親御さんの不安は格別だと思います。

自分と家族はこの先も安全に過ごせるのか。デルタ株では子どもへの感染も増えています。新学期が始まり、学校で感染することを心配される親御さんも多いでしょう。しかし、小児科医としてはマスク着用や手洗い、換気などの感染予防対策には気を配りながらも、あまり神経質になりすぎず、普段通りの生活を大切にしてほしいと願っています。

それというのも、今年7月までの子どもの自殺が、年間で過去最多となった去年の同じ時期を上回るペースで増えているからです。厚生労働省の月次報告(暫定値)によると、今年7月までに自殺した子どもは272人(小学生7人、中学生75人、高校生190人)で、去年の同じ時期の241人を上回っています。

発達途上の子どもには、「からだとこころのバランスが常に保たれていること」がとても大事です。昨年から続くコロナ禍で、子どもたちはこのバランスがゆがんだ生活を長く強いられています。大人には思いもよらないささいなことがきっかけで、衝動的な行動を起こす可能性があり、非常に注意が必要な状態と言えるのです。

定期的に「コロナ×子どもアンケート」を実施している国立成育医療センターの今年2月の報告によると、中学生の24%、小学4~6年生の15%に中等度のうつ傾向が見られています。

■自律神経の乱れが心の健康を脅かす

この報告の中で、ここ一週間のうちに「寝つきが悪い、途中で目が覚める。あるいは寝すぎる」と答えた中学生は49%、小学生は40%、「あまり食欲がない、体重が減る、あるいは食べ過ぎる」と答えた中学生は29%、小学生は28%に上っています。これらはからだとこころのバランスが崩れて、うつになりかかっているサイン。ほかにも、「すぐに疲れたという」「腹痛や下痢、便秘が多い」「肩こりや腰痛を訴える」「笑顔や発言が少ない」「反応が鈍い」「すぐに怒る」「イライラしている」など、子どもたちに変わった様子がないか、サインを見逃さないように気をつけてほしいと思います。

からだとこころのバランスの崩れというのは、内臓の働きや心の安定を司る自律神経の乱れによって引き起こされます。子どもの心身を健康に育むには、自律神経が整う暮らしを心がけることがとても大切なのですが、コロナ禍によるライフスタイルの変化が悪影響を与えています。

こうした悪影響を最小限にとどめるにはどうすればいいのでしょうか。今回は、小児科学・脳科学・そして心理学の観点で不安にさいなまれる親子を長く診てきた立場から、親がやってしまいがちな5つのNG行動についてお伝えします。

■NG行為1「朝寝坊・夜更かしのライフスタイル」

夏休みの期間は、つい朝寝坊・夜更かしをさせてしまったという家庭も多いかもしれません。自粛生活のなかでゲーム・スマホざんまいになってしまっり、親もなんとなく不安で眠れなくて夜更かししてしまうなど、睡眠が乱れてしまってはいないでしょうか。

暗い部屋でタブレットを見ている女の子
写真=iStock.com/golfcphoto
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/golfcphoto

小学生9時間、中高生8時間、大人は7時間。この睡眠時間をできる限り、守ってほしいと思います。ただし、夜更かしが習慣化している子や不安が高い子は、早く寝かそうとしても寝付けないことが多いので、まずは「早起き」を徹底しましょう。学校のある日はできれば6時前に起床して、朝日を浴びて体を動かしましょう。

睡眠のリズムを整えることが大事な理由は、人間の脳は「夜眠る」ことで心身の機能が回復し、昨日の記憶がリセットされるからです。知識の固着はもちろんのこと、不安や悩みも眠ることでリセット可能です。また、朝日を浴びると安心をつくる脳内物質セロトニンがたくさん分泌されて不安を下げやすくなります。親子で朝散歩、お勧めです。

■NG行為2「テレビがついたままの食事」

親子とも忙しく、食事を家族一緒に食べる機会が少なくなっていないでしょうか。ニュースが気になるからと食事中は必ずテレビがついていて、家族の会話がないということがあるかもしれません。

できる限り、1日1食は家族で食卓を囲む(理想的には朝ごはん)ことをしてほしいと思います。食事中のテレビはできる限り消す。そして、栄養バランスを考えて、子どもの好きな食べ物ばかりではなく、嫌いな食べ物も一応食卓に並べてください。

食事は本来、五感(味覚・聴覚・視覚・嗅覚・触覚)がフルに刺激され、子どもの脳の発達には最も役立つ生活活動です。これを家庭生活の中で大切にすることは、子どものからだとこころのバランスを健全に保つことに最も重要であると言っても過言ではありません。

テレビは強い視覚と聴覚の刺激であり、子どもの脳の発達を阻害します。そして何より、大切な家族の会話を奪います。おいしいご飯を食べて家族全員とりあえず不安から解放されているとき、子どもは本当に困っていること、悩んでいることを話しやすくなります。大人からみるとささいな悩みでも、子どもにとっては「聞いてもらえた」というだけで心が軽くなるきっかけになります。

■NG行為3「家の中にひきこもっている」

コロナ感染が怖いので休みの日もできるだけ家の中で過ごす。親もリモートワークなので在宅が多い。暑いので一日クーラーをかけて過ごすというライフスタイルになっていませんか。

親も子も1日1回は屋外に出るということしてほしいと思います。

子どもは自律神経も未発達です。自分の体を環境に左右されず常に良い調子に整える自律神経を鍛えることを目標にするなら、気温や気圧の変化を刺激として脳に伝えなければなりません。外出できないのなら、せめて朝晩の涼しい時間帯などは、クーラーを止めて汗をたくさんかかせる習慣をつけましょう。できれば、人のあまり集まっていない場所を選んで1日10分でもいいので外散歩をすることをお勧めします。また、お風呂もシャワーだけでなく、時には湯船にしっかりつかって汗をかかせることも大事です。

自律神経はストレス受容体やセロトニン、睡眠、食欲、呼吸など脳の重要な働きと密接に関係するので、自律神経が鍛えられた脳は睡眠も食欲も良好で、不安を減らすことができます。

■NG行為4「正しいことを伝えすぎる」

子どもの間違った行動や言動に対して正論を伝えすぎるのも良くありません。「おかあさんはこうしたらいいと思う」などアドバイスしすぎに注意しましょう。

居間で息子を叱る母親
写真=iStock.com/takasuu
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/takasuu

ただ、「聴く」に徹して、「オウム返し」をしてください。そして、子どもが何を考え、どう行動するかを見守ってあげてください。

多くの子どもは、親御さんなど周りの大人に「認めてほしい」「わかってほしい」と思っています。それは、言い換えると「信頼してほしい」ということにもなります。

自分で決断して行った行動に対して「こうしなきゃダメじゃない」と正論を返されると、子どもはどんどん自信を失います。大人は先が見通せるし、子どもが失敗するのを見たくないため、良かれと思って正しいことを伝えがちですが、時には「信頼して行動させる」ことが大事です。

「学校休みたいな」と子どもが口にしたときに「学校を休むと勉強についていけなくなって困るのは自分よ。行きなさい」は正論です。言いたくなる気持ちはわかりますが、そこはぐっと我慢して、まずは「そうか、学校に行きたくないか」とオウム返しをしてみましょう。

多くの子どもは、「学校は行かなくてはいけない場所」と十分わかっています。それでも「行きたくない」と口にする気持ちをそのままオウム返しされるだけで、「認めてくれた」「聴いてくれた」と思えます。そうすると、どうして行きたくないのかその理由を話し出す子どもも多いのです。子ども自身が何を不安に感じ、何を考え、どう行動したいのかをきちんと言葉で聞き取れる家庭の環境は、自殺予防に必須です。ぜひ、そのような時間を1日1回は持ちましょう。特に朝ごはんの時間がお勧めです。

■NG行為5「自分の不安を打ち消そうとする」

コロナ禍による生活スタイルの変化や在宅が長期化する状況でついイライラして、子どもに言葉きつく当たってしまうこともあるでしょう。それに対して子どもも攻撃的な態度や言動で返してくるので、またイライラが募ってしまうという悪循環に陥りがちです。

「自分は不安なんだ」という気持ちを受け止め、許してあげましょう。そのうえで、まずは子どもから切り離して自分の不安を解消するリラクゼーションに努めましょう。リラックスできたら、笑顔で子どもと触れ合ってください。

成田 奈緒子『子どもにいいこと大全』(主婦の友社)
成田 奈緒子『子どもにいいこと大全』(主婦の友社)

不安と攻撃性は表裏一体なので、イライラしているとき、つい言葉が荒くなるときには多くの場合高い不安状態にあります。その状態で子どもに接すると子どもも不安が高まり、それが攻撃性になって表れます。これが子どものからだとこころのバランスが崩れた状態なので、慢性化すると良くありません。このような悪循環になったときには、まずは大人が「今は不安のキャッチボール状態になっているのだな」と気づきましょう。

そして、いったん子どもから離れて、自分の不安を解消することに努めましょう。もちろんコロナ禍の不安をなくすことは簡単にはできませんが、例えばマッサージを受ける、大好きな歌手の歌を聞く、深呼吸をする、友人と電話で話す、ストレッチをする、おいしいものを食べる……など、今の状況でできることを探して、自分への手当てを行いましょう。

人間は、リラックスすると自律神経の副交感神経が優位になって、自然に筋肉の緊張が取れて柔らかい体になります。その状態に戻してから、再度子どもに向き合い、笑顔を見せて子どもの体に触れましょう。子どもにとっても最大のリラクゼーションは親御さんの笑顔と柔らかい体でのスキンシップです。不安のキャッチボールを安心のキャッチボールに変えていけば、子どものからだとこころのバランスも整いやすくなります。

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成田 奈緒子(なりた・なおこ)
文教大学教育学部 教授、小児科医
医学博士。公認心理士師。会員制ワークショップ「子育て科学アクシス」代表。神戸大学医学部卒。著書に『子どもが幸せになる「正しい睡眠」』(産業編集センター)、『早起きリズムで脳を育てる』(芽ばえ社)『子どもにいいこと大全』(主婦の友社)などがある。

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(文教大学教育学部 教授、小児科医 成田 奈緒子)

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