「デリバリーを10分以内に」店舗数1位のドミノ・ピザがまだまだ出店を続けるワケ
プレジデントオンライン / 2021年9月10日 12時15分
■2019年に店舗数で業界トップに
ドミノ・ピザが、店舗数を大幅に増やしている。2010年から10年間で店舗数を3倍にし、2019年には業界トップの店舗数に躍り出た。さらにはユニークかつ話題性のある商品やキャンペーンを行うことで新規の顧客開拓に成功している。躍進の理由として、「常にハングリー精神を持って取り組んできたから」とライリーさんは言う。
「私たちが掲げる『Hungry To Be Better(よくすることにハングリー)』というコンセプトのように、お客さまにとっての最善の注文方法やカスタマー体験を考え、ドミノ・ピザのブランド価値を届けるために挑戦し続けてきました。昨日より今日、今日より明日良くなることを意識し、高品質のピザを提供してきた結果だと考えています」
■ハングリーを体現するカルチャーが根付いている
他社と差別化している点については「野心的かつ向上心を絶やさないマインドを持って、お客さまのニーズに寄り添い続けてきた」ことだと強調する。
「ドミノ・ピザには、冒頭で述べた『ハングリー』を体現するカルチャーが根付いています。お客さまファーストの精神で、何が今求められているのか、どうしたら幸せになるのかを考えています。具体的に差別化を図っていることは、お客さまニーズに合わせた価格帯の商品ラインナップを充実させていること、アクセスしやすい立地への出店、お持ち帰り3分・デリバリー10分を目指す『PROJECT 3TEN(プロジェクト・スリーテン)』が挙げられるでしょう。一方で、他社に模倣される可能性もあるため、直近では『無料ピザで地域支援(Feed the Need)』という、地域の保育施設、学童保育施設、介護施設、医療機関などで働く方々にピザを届けることで、地域コミュニティーの活性化を目指す取り組みも始めています」
■ピザを「機会食」から「普段食」へ
さらにドミノ・ピザが、長年にわたって業界の常識を覆してきたことも大きい。
1枚で4種類の味を楽しめる「クワトロ・ピザ」や、Webから注文を受け付けるECサイトの導入、モバイルから簡単に注文できるアプリ「Domino’s App」の展開など、他社に先駆けた打ち出しを行ってきたことで、独自のポジションを確立させてきた。
ライリーさんは「業界の主導権を握り、時代の変遷に合わせてお客さまが求めるピザの需要喚起を促してきた」と話す。
「ピザといえばゴールデンウィークや誕生日パーティー、クリスマスなどの『機会食』として注文するのが定番でした。でも、これだとオケージョンシーンが限定されてしまい、競合他社とのシェアの奪い合いになるのは目に見えています。そこで、ピザを季節や特別な日にだけ食べる『機会食』から、普段の生活のなかで日常的に食べる『普段食』として浸透させていく必要があると考えています。特に、昨年からのコロナ禍でデリバリー&テイクアウト需要が増えたのを機に、お客さまのライフスタイルに合わせた商品の展開や、普段から注文しやすい価格設定などを行ってきました」
■最低注文金額を撤廃、単身世帯の需要に応える
コロナ禍における飲食店の時短営業や在宅勤務の常態化で、消費者志向の変化も生じている。
テイクアウトやデリバリーといった中食の利用が活況となるなか、ドミノ・ピザは「新しい生活様式に伴う顧客ニーズに応える施策を行っている」と説明する。
「コロナ禍で変わったのは、ファミリー層だけではなく単身世帯のお客さまも、ピザを注文する機会が増えたことです。外出しづらい社会情勢ということもあり、デリバリーニーズは業界全体で高まったと言えます。しかし、従来ではピザをデリバリーする際に最低注文金額が決められていて、これが単身世帯のハードルとなっていたのです。
そこで昨年5月から『デリバリー最低注文金額の撤廃』を行い、値段を気にすることなく、気軽にピザを注文できる環境を整えました。さらに、8月からは『Drop & Go(ドロップアンドゴー)』という置き配サービスを始め、いつでも好きな時にピザが受け取れる仕組みを導入しました」
■「ピザ×日本食」の商品投入で多様なニーズを取り込む
また、消費者のニーズが多様化するなか、今年5月には和風の味わいが楽しめる「クワトロ・ニッポン」と“ピザ×日本食”の新感覚が味わえる「ピザライスボウル」を発売した。
「単身世帯含め、幅広い層へアプローチするためには、商品やサービスの内容を常にアップデートしていかなければならない」とライリーさんは語る。
「単にピザの味や素材にこだわり、サービスを充実させるだけではなく、お客さまのリアルな声に応え、心から満足する体験を創出していく必要があります。今回発売した『クワトロ・ニッポン』も、和風の味を好まれるお客さまから『自分に合うピザを選びにくい』という意見があったのを参考に、日本人になじみのある明太マヨソースや北海道産チーズなどの具材をそろえ、和風味をひとつのピザで楽しめるよう工夫しました。
さらに在宅勤務中のランチや、自炊する時間が取れない単身世帯に向けた『ピザライスボウル』は、おひとりで食べるのにちょうど良いボリュームに仕上げたのが特徴です。1年がかりでの開発でしたが、『ごはんでピザを味わえる』という新しい食体験が非常に好評いただいており、お客さまの裾野が着実に広がっていると感じています」
■「なかなかYesをもらえない」徹底したSNS施策
ドミノ・ピザらしさは、SNSを駆使したキャンペーンでも随所に感じ取ることができる。
激辛ロシアンルーレットを楽しめるキャンペーン「#ドミノハロウィンルーレット」や、最高チーズ責任者(CCO)を一般公募する「#ドミノチーズ100万」、最近では数あるピザのなかで自分好みのものを選べる「マトリクス型のピザチャート図」が反響を呼んだ。
こういったユニークで、エンタメ性に富んだ施策を行う背景には「ピザはカジュアルで日常に花を添えるものだからこそ、ワクワクするようなコミュニケーションを意識している」からだという。
「単なる広告やキャンペーンの実施にならないよう、特にSNSを活用する場合は『メディアのヘッドラインを飾れるくらい』のインパクトが出せるように創意工夫しています。ユーザーと双方向のコミュニケーションが図れるよう意識し、楽しい要素を盛り込むのはもちろん、話題性のある切り口を考えて毎回行っているのです。
チームの部下からは『企画のアイデアを考えても、Yesをなかなかもらえない』という声も上がりますが、それはお客さまが求めていることを正確にくみ取り、施策に反映させられるよう努めているから。中途半端では終わりたくないので、常に貪欲にチャレンジしていく気持ちを持っています」
■全国でNo.1になるために、1500店舗を目指す
今年6月に国内800店舗を達成したドミノ・ピザは、将来的に全国1500店舗を目標にしているという。
トッド・ライリーさんは「さらに成長機会を増やすべく、既存の首都圏で展開するビジネス基盤を拡充しながら、地域ごとに出店攻勢をかけることで小商圏化を進めていきたい」と意気込む。
「ピザを食べるオケージョンを広げていく意味では、やはり店舗数を増やすことが重要になってきます。アクセスのしやすい立地やお客さまから出店の要望をいただいている地域へ積極的に店舗を広げ、全国各地でドミノ・ピザがNo.1になれるように画策していきたいと思っています」
■地域で一番愛されるようなブランドに育てる
さらなる店舗拡大に加え、出店先でのブランド認知向上ができるように今後も挑戦していくそうだ。
「一番大切なのは『ピザを注文するならドミノ・ピザ』と言ってもらえるように、お客さまの認知度を高めることです。私が現職に着任して以来、ドミノ・ピザのブランドバリューを高めることに注力してきました。これからも魅力的な価格の提案やピザの品質などを高めるとともに、ファミリー層から単身世帯まであらゆるニーズに応え、ピザが普段食として認知されるよう尽力していきたいですね。また、地域コミュニティーへの還元として『無料ピザで地域支援』の取り組みを継続していき、地域で一番愛されるようなブランドに育てていければと思っています」
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フリーライター
1986年生まれ。ビジネス、ライフスタイル、エンタメ、カルチャーなど興味関心の湧く分野を中心に執筆活動を行う。社会のA面B面、メジャーからアンダーまで足を運び、現場で知ることを大切にしている。
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(フリーライター 古田島 大介)
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