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「配偶者のパート年収はいくらにするべきか」税理士が教える"パートの4つの壁"

プレジデントオンライン / 2021年9月7日 9時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/kazuma seki

配偶者がパートで働いている場合、その所得によって扶養控除額は変わる。税理士の梅田泰宏さんは「パートタイム労働には4つの壁がある。これを知らないと、せっかくたくさん稼いでも家計としては損をする可能性がある」という――。

※本稿は、梅田泰宏『知らない人だけが損している「給与明細」のカラクリ』(青春新書)の一部を再編集したものです。

■配偶者特別控除があっても重要な「103万円の壁」

入社14年目の会社員、高橋さんは妻と2人暮らし。妻はパート勤めで年間150万円を少し超えた収入がある。この場合、妻は健康保険料や雇用保険料などの社会保険を支払う必要があり、40歳になったら介護保険料も引かれるようになる。一方、配偶者の給与収入が201万6000円未満なので「配偶者特別控除」の対象となり、高橋さんは年末調整で36万円の所得控除を受けられる。

――結局、妻のパートってどれくらいがお得なんですか?

それはなかなか難しい問題なんですよ。まずは配偶者の「パートタイム労働の壁」を把握しておきましょうね。配偶者のパートタイム労働には、扶養控除などを受ける上でいくつかの「壁」があります。

――ああ、なんか聞いたことあります。意味がわかっていませんが……。

まず、あまり有名じゃない「100万円の壁」。100万円を超えると、個人住民税が発生します。ただし、年間7000円とかなので、あまり縛られる必要はないでしょう。

次はとても有名な「103万円の壁」。これは、扶養者の所得から配偶者控除38万円を差し引ける上限です。ですから、とても重要な壁だったのですが、現在ではそれほどでもなくなってきました。なぜだかわかりますよね?

――はい。配偶者特別控除ができたから。

そのとおりです。配偶者特別控除が150万円まで同じ38万円の所得控除をカバーしてくれるようになったため、まるで現在の「ベルリンの壁」のように、意識しなくてもよくなりました。ただし、いまだに重要な壁であるケースも多いです。

■安易に超えてはならない「130万円の壁」

――どういうことですか?

高橋さんの会社もそうですよ。この103万円の壁を下回っていることを根拠に「家族手当」を出しているケースがあるからです。年末調整の申告を参照して、手当を決めているというわけです。

――そうでした。うちの社の場合は月1万5000円。大きいです。

それと、103万円を超えると奥さん自身に所得税が発生します。1000円未満切り捨てなので、正確に言うと103万1000円からですね。ちなみにその場合、1000円の5%なので所得税の年額は50円です。それでも納税義務が発生するわけです。

――なるほど。次の壁はいくらでしょうか?

はい、もっとも高くそびえ立つのが「130万円の壁」です。これは安易に超えてはならない壁なんです。

壁をこえるイメージ
写真=iStock.com/z_wei
※画像はイメージです - 写真=iStock.com/z_wei

■この壁を超えると手取りが年間18万円超減る

――どうしてですか?

それまでは夫の社会保険に入ることができたのですが、年収130万円以上の人は自分で社会保険に入らないといけなくなるからです。条件によって上下しますが、だいたい年間18万6000円くらいの支出になります(130万円以下でも、1週間の所定労働時間が20時間以上の継続雇用の場合は、雇用保険の加入義務が発生。年間3000円程度)。

――たとえば129万9999円から1円増えるだけで……。

はい、その1円増えることによって、手取りが年間で18万6000円も減ってしまうという恐ろしい壁なのです。ここには通勤手当も含まれます。

でも、少しだけいいこともあって、まず妻は社会保険料控除が使えるようになるので、自分が支払う税金が安くなります。それから、年金の掛金がプラスされるため、妻が将来受け取る年金が多くなります。とはいえ、いずれも「少し」という程度であり、社会保険料の出費を穴埋めできるようなものではありません。

■130万円を突き抜けるくらい稼がないと損

――なるほど。ではこの壁を超えるときは……。

はい、130万円を少し超えるくらいでなく、突き抜けるくらい稼がないと、損になってしまうのです。ここで注意しなくてはならないのが、「大企業なら、この壁が106万円まで下がる」というルールです。

――なんですかそれは?

パート勤務先の従業員数が501人以上の場合は、2016年から130万円ではなく106万円からになったんです(2022年からは101人以上の企業にも適用)。

――ほかにも「壁」はありますか?

まあ、あるといえばありますが、最大はなんといっても130万円。次は150万ですが、これは配偶者特別控除「満額38万円」の壁です。これを超えると夫が控除できる額が少しずつ減っていき、201万6000円を超えると配偶者特別控除は受けられなくなります。

■130万円より125万円稼いだ方が家計収入は高い

さて、このような壁があるということを把握した上で、高橋さんのご夫婦を例にシミュレーションしてみましょう。奥さんの収入が100万円、125万円、130万円、150万円超(151万円)、180万円の場合、夫婦の総収入がどうなるか? ちょっと計算してみますと……ざっと、こんな感じです(図表1)。

高橋家の場合、妻の年間のパート収入は130万円より125万円に抑えた方が家計の総収入としてはお得になる
高橋家の場合、妻の年間のパート収入は130万円より125万円に抑えた方が家計の総収入としてはお得になる

――奥さんが年125万円稼いだケースと130万円稼いだケースでは、125万円のほうが家計の総収入が高くなっちゃうんですね。

そうですね。あくまで高橋さんの収入や控除にもとづいた家計シミュレーションですけれど、125万円と比べて5万円多く働いても、家計の総収入としては10万円以上減ってしまうことになります。

――130万円に達すると厳しいんですね。

150万円超(151万円)奥さんが稼いでも、125万円の時とあまり大差ないですね(4万円弱)。これがもっと大きく振り切って180万円まで行くと、ずいぶんと家計収入は増えることになります。

――たしかに。

■女性も稼いでほしいという制度に変わってきている

近年、どんどん制度が変わってきていて、傾向としては女性も働いてほしい、稼いでほしいというものになっています。この傾向はますます進んでいくと思います。……というよりも、ここまでの言葉使いを全部改めないといけないかもしれませんね。

外出する妻を見送る夫と子
写真=iStock.com/SDI Productions
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/SDI Productions

――どういうことですか?

梅田泰宏『知らない人だけが損している「給与明細」のカラクリ』(青春新書)
梅田泰宏『知らない人だけが損している「給与明細」のカラクリ』(青春新書)

なんのためらいもなく、「主婦パート」という言葉を使ったり、夫婦のうちメインの稼ぎ手が夫で、妻はパートでサブの稼ぎ手という前提で語ったりしてきましたが、必ずしもそう決めつけることはないわけです。

欧米では子どもが生まれたあと、女性の仕事を優先させ、男性が家事育児をおもに担当することも珍しいことではありません。もちろん日本でもトップセールスの女性とか、女性管理職、女性経営者……まったく珍しいことではなくなっています。「主夫」を選択する男性がいたって何も問題ありませんよね。

――そのとおりですね。

若い人たちの価値観や考え方は変わってきていますので、今後は日本でもそうしたケースが増えていくでしょうね。

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梅田 泰宏(うめだ・やすひろ)
公認会計士/税理士
1954年、東京都生まれ。77年中央大学商学部卒。監査法人中央会計事務所(現・みすず監査法人)を経て、83年梅田公認会計士事務所を設立。2004年、企業へのワンストップサービスを実現する、社会保険労務士、司法書士との合同事務所「キャッスルロック・パートナーズ」を設立。06年には税務部門を税理士法人として分離して新スタート。現在、約250社の企業ならびに外資系現地法人に対し、財務指導から税務業務まで幅広くサポートしている。

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(公認会計士/税理士 梅田 泰宏)

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