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「12時間も会議をしたのに結論が出ない…」そんなときに真っ先にやるべきこと

プレジデントオンライン / 2021年9月9日 9時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/ALotOfPeople

長時間の会議を重ねたのに結論が出ない。そんなときはどうすればいのか。経営コンサルタントの高橋輝行さんは「会議を重ねて考えを深めてしまうと、進む方向が間違っていたとしても突き進もうとして戻ることができなくなる。怪しいと感じたら原因となるところまで戻ったほうがいい」という――。

※本稿は、高橋輝行『メンバーの頭を動かし顧客を創造する 会議の強化書』(あさ出版)の一部を再編集したものです。

■会議は何のために行うのか

そもそも会議とは何のために行うのでしょうか? みなさんはそんなことを考えたことがありますか?

会社を立ち上げる時には、創業者は「こんなことに困っている人が、こんなふうに幸せになるといいな」や「こんなことをして、こういう人を笑顔にしたい」といったピュアな想いと、「きちんと儲けを出して、従業員を雇い、新しいことに挑戦できる会社にしよう」という絵姿を頭の中で膨らませ、その世界観の実現のためにいろいろな人の頭脳を借りて新しい価値を創り出します。

そうすることで、新しい顧客が生まれ、会社は収益を上げ、事業は安定し、従業員はやりがいと収入を得て仕事を続ける。そんな好循環が生まれます。しかし、新しい顧客を生み出せなければ、事業は続かず働くこともできません。

つまり会議とは、顧客を創造し、儲けを得るために行われるものなのです。また、会議は顧客を創造したい人にとっては想いを叶える「ツール」であり、参加者にとっては頭を使って新しい価値を実現する「場」であると言えます。

■人の頭脳を借りるための工夫

私たち人間は、イメージできないものは絶対に実現できません。スポーツ選手がイメージトレーニングを行う理由もそこにあります。顧客の創造も同様に、顧客や提供する価値、実現すべき目標を具体的にイメージできなければ実現することはありません。

高橋輝行『メンバーの頭を動かし顧客を創造する 会議の強化書』(あさ出版)
高橋輝行『メンバーの頭を動かし顧客を創造する 会議の強化書』(あさ出版)

これらを一人で考え実行するには限界があります。

そこで、いろいろな人の頭脳を借りることになるわけですが、それには

1:顧客を創造する適切な「頭の使い方」
2:実現するイメージを創造する「ディスカッションのやり方」
3:目標を実現するための「会議の進め方」

を理解していることが必須です。

顧客を創造する組織にするには、もちろん個人の努力も大切ですが、それ以上に組織に成果を上げさせる役割である経営層やマネジャーが1〜3をうまく操り、社員の「脳力」を高め行動を加速させていくことがポイントです。

ここでは、そのために注意したほうがいい、ディスカッションのポイントを、事例を交えながら6つあげておきます。

(1)盛り上がりすぎて進むべき方向を見失わない

ある会議で、参加者は積極的に発言し、活発なディスカッションが行われていました。ただ、盛り上がりすぎて話が脱線している点が私は気がかりでしたが、会議の進行役は特に気にせず意見に耳を傾けていました。ひとしきり話が終わると、参加者の一人は「あれ? 何を話していたのかわからなくなりました」と言い出し、全員「どうしよう?」という表情になりました。

私は「みなさんは想定顧客について話していて、結論として30代社会人男性をメインターゲットにするイメージですね。では、次は提供価値について話しませんか」と伝えると、みな納得した表情になり、ディスカッションは前に進みました。

イメージが膨らみ始めると、参加者は楽しくなって頭に浮かんだことをつい口にしてしまいます。好き勝手に話をしていると、今何を話しているのかわからなくなり、ディスカッションで進む方向を見失います。

そうならないよう、アイデアが出揃ったタイミングを見計らって話していたことをまとめ、次に進むべき方向性を示します。

ポイントは、(1)話をしていた内容を振り返り、(2)結論をひと言にまとめ、(3)次に考える要素を提案することで、イメージの共通認識を作り次に考えるべきことへ思考を誘導します。

【図表1】目線を合わせる
出所=『メンバーの頭を動かし顧客を創造する 会議の強化書』

■どんな人でも意見が採用されれば嬉しい

(2)頭ごなしに否定しない

ある会議で、若手社員が「こんな考えはどうでしょう」と提案したところ、同席していた社長は「そんなアイデア使えないよ」と言い、その場は静まり返りました。

社長は「もっといい意見はないのか」と言いましたが、誰も考えを話そうとしません。

さらに社長は「自分はこうしたほうがいいと思っていた」と自信ありげに言いました。それに対してある従業員が「それは難しいと思います」と発言したところ、社長は「君はいつもそんなんだからダメなんだ」と激怒しました。

上司がいくら「好きなように意見をしてもいい」と言っても、役職が下から上の人へ考えを伝えるのは多少なりとも緊張するものです。それを乗り越えて考えを伝えても、頭ごなしに否定されてしまうとそれ以降はもう何も言えなくなります。

逆に、役職が上から下の人へ伝える時も同様です。下の人からの意見に耳を傾けず、自分の考えを押し通そうとすると意見は出なくなります。

そうならないよう相手の考えを頭ごなしに否定せず、いったん受け止めて使えそうな考えを探し出すようにします。

例えば、考えの一部を切り取り「その考えのこの部分は面白いね」や、考えた理由を尋ねて「その発想は使えそうだ」といった具合です。どんな人でも、自分の考えが一部でも採用されると単純に嬉しいものです。

【図表2】頭ごなしに否定しない
出所=『メンバーの頭を動かし顧客を創造する 会議の強化書』
(3)「多分、大丈夫」のままで進行しない

ある商品企画の会議で、製造方法を考えるディスカッションをしていた時のことです。同席していた製造部門のリーダーは「これまで似たような商品を作ったことがあるので、多分技術的に大丈夫だと思います」と答えました。

商品は決まり、サンプルを作ろうとしたところ、製造部門のリーダーは「自社の製造ラインではできないことがわかりました」と申し訳なさそうに話しました。

結局、商品は大本から考え直すことになり、そのリーダーはプロジェクトから外れることになりました。

ディスカッションでは、参加者が持つ知識や経験を組み合わせて、素案から仮説を作り上げます。これは、職人が集まる建設現場に似ていますが、その職人が建物を建てる時に「ここの工事はこんなもので、多分大丈夫だろう」と手を抜いたらどうなるでしょう。

ディスカッションでも同様で、一部でも手を抜いてしまうとこれまで積み上げてきたイメージが全て水の泡になることがあります。

もし自信のない部分があれば、手を抜かず必ず確認し、必要であれば議題に挙げるようにしましょう。

【図表3】思い込みのまま進めない
出所=『メンバーの頭を動かし顧客を創造する 会議の強化書』

■アイデアも時間もムダにしていないか

(4)「アイデア」を垂れ流さない

ある新商品の販売会議で、小売店への採用が進まないことが問題に挙げられていました。一人の営業から「今は商品の顧客認知を広げる段階であることから、採用に時間がかかる大きなチェーン店ばかり狙わず、小さい規模の店にも足を運び1店舗でも多くの店に採用されることを目指しませんか」と提案がありましたが他の営業はそのアイデアに対して誰も反応しませんでした。

私はそういう考えもあると思い、「そのような活動もできるのであればやってみませんか?」と言い、「他の営業の方も提案できそうな店舗はありますか?」と聞くと、数名の営業から具体的な店名が出てきたので、「それじゃ、当たってみましょう」と伝えました。そして、商品を提案した先には全て採用されました。

せっかく新しいアイデアが出ても、それを使わなければ全く意味がありません。逆に言えば、アイデアは使うことで価値が生まれます。

私はムダなアイデアはないと思っています。

アイデアを価値に変えるのも変えないのもその人次第です。出てきたアイデアはそのままにしたり、流したりすることなく、取り込んで使うイメージを膨らませましょう。

【図表4】アイデアとは使うためにある
出所=『メンバーの頭を動かし顧客を創造する 会議の強化書』
(5)イメージが湧かないのにいつまでも続けない

ある企業で商品イメージを固める会議に参加した時のことです。会議中、私は社長に呼ばれ席を外しました。1時間後に会議室の前を通ると、まだ会議は続いていました。

私が「商品イメージは固まりましたか」とメンバーへ声をかけると、「なかなかイメージが膨らまず悩んでいました」と答えました。

私が「その原因を話し合いましたか」と聞くと、「いいえ、それは話していません」と言うので、「みなさんの頭の中にイメージができていないと思うので、今日は会議を終え、数日でそれぞれイメージを膨らませた上で会議を再開しませんか」と提案しました。

メンバーはほっとした表情で「誰かそう言い出してくれないかと思っていました」と話しました。

私が広告会社でしていたクリエイティブ会議は3時間、4時間になることは当たり前でした。他のチームでは12時間も会議をしていたなんて話を聞いたことがあります。

その時の経験から、今ではイメージが出てこなければ、さっさと会議を終わらせるようにしています。頭の中にイメージがないのに、いくら粘っても湧いてきません。

そのような状態をいつまでも続けるのは時間のムダです。必要なのは、欲しいイメージの方向性に沿ったインプットです。

そのような時は、会議で「次の会議でイメージを固めるために、こういう方向のイメージを膨らませてきてください」と伝え、それぞれネットの検索や参考になりそうな資料を読む、街を歩いてヒントを見つける、人と話して想像を膨らませる、ノートにイメージを描くといった作業をしてもらうよう提案しています。

【図表5】イメージが膨らまない時
出所=『メンバーの頭を動かし顧客を創造する 会議の強化書』

■時には“捨てる”勇気も必要になる

(6)「方向性が怪しい」と思ったら後戻りする

ある会社で新商品の企画会議が行われていました。社長発案で企画の具体化が進められていましたが、顧客ニーズ、製造、価格などでクリアすべき問題が発生していました。しかし企画メンバーは、社長発案の商品化に全力で動いていました。

私は途中から企画会議に参加しましたが、本当にこの商品でいいのか疑問に思い社長に「想い」を確かめてみると、この商品は理想のイメージではないことがわかりました。そこで、さらにイメージを聞き出すと全く別の商品であることがわかり、企画メンバーから「それなら実現できそうだ」と意見が出ました。

私は「今から企画する商品の方向を変えませんか」と伝えると、社長含めて全員の合意を得られました。後で企画リーダーから「このタイミングで商品の方向性を変えられるとは思ってもみませんでした」と言われました。

会議を重ねて考えを深めてしまうと、進む方向が間違っていたとしても突き進もうとして戻ることができなくなります。

いわゆる「コンコルド効果」と呼ばれるもので、時間やお金を費やしてしまうと、損失が出るとわかっていてもやめられない状態に陥ります。全員がこのような状態にある時に戻ることを提案するのは勇気がいることですが、怪しいと感じたら原因となるところまで戻りましょう。

先の例で言えば、「この商品で実現しようとする世界観」のイメージを聞き出しながら、その世界観と作るべき商品のズレを見つけ出しました。

【図表6】「怪しいな」と思ったら…
出所=『メンバーの頭を動かし顧客を創造する 会議の強化書』

■会議の落とし穴に注意する

今回あげた6つのポイントは個別企業の話ではなく、私が多くの企業のさまざまな会議で見てきた“やってしまいがちな落とし穴”です。

時代が大きく変化し、新しい価値や顧客の創造が求められる今こそ、会議をうまく使い、メンバーの頭を強く動かし、「どこにも負けない」「何よりも強い」商品・事業を生み出していきましょう。

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高橋 輝行(たかはし・てるゆき)
経営コンサルタント
1973年、東京都生まれ。東京大学大学院理学系研究科を修了後、博報堂にて教育エンタメ系企業の広告・PR・ブランディングを実施。その後、ベンチャー企業を経て経営共創基盤(IGPI)でぴあの経営再建を主導。2010年KANDO株式会社を創業。桜美林大学大学院MBAプログラム非常勤講師、デジタルハリウッド大学メディアサイエンス研究所客員研究員。著書に『ビジネスを変える! 一流の打ち合わせ力』(飛鳥新社)、『頭の悪い伝え方 頭のいい伝え方』(アスコム)、『メンバーの頭を動かし顧客を創造する 会議の強化書』(あさ出版)他。

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(経営コンサルタント 高橋 輝行)

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