「収入が1割増えれば暮らしがラクになるのに」一生幸せになれない人の思考パターン
プレジデントオンライン / 2021年9月4日 11時15分
※本稿は、D・カーネギー『超訳 カーネギー 道は開ける エッセンシャル版』(弓場隆訳 ディスカヴァー・トゥエンティワン)の一部を再編集したものです。
■経済状態よりも心の持ち方を改善する
どうしても経済状態を改善できないなら、それに対する心の持ち方を改善すればいい。
他の人たちも自分の経済状態を心配していることを思い出そう。私たちは世間の人たちに後れをとることを心配しているが、その人たちも金持ちの人たちに後れをとることを心配している。そして、金持ちの人たちも大金持ちの人たちに後れをとることを心配している。
つまり、どんなに金持ちになろうと、人間は自分より金持ちの人たちに後れをとることを心配するのだ。
貧しくて、ほしいものが手に入らなくても、心配したり悩んだりする必要はない。貧しいことがどうしても心配な人は、ローマの哲学者セネカの言葉を肝に銘じよう。
「自分が持っているものが不十分だと思うかぎり、たとえ世界を手に入れたとしても心は満たされない」
■貧しくても偉業を成し遂げた人たち
今、あなたはお金に困っていて経済不安を抱えているかもしれない。だが、貧しくても歴史に残る偉業を成し遂げた人たちがいる。
実際、興味深いことに、アメリカ史上最も有名な人たちの中には、経済的に困っていた人たちも含まれている。たとえば、ワシントンとリンカーンは大統領就任式に出席するために借金をして旅費をまかなった。
■お金の使い方を学ぶ
ある婦人雑誌によると、人々の心配の7割までがお金に関することだという。統計学者のジョージ・ギャラップ博士は「大多数の人は収入がたった1割増えればお金の心配がなくなると思い込んでいる」と指摘している。たしかにそういうこともあるが、そうでない場合のほうが圧倒的に多い。
予算のエキスパートであるエルシー・ステープルトン氏に話を聞いた。彼女はファイナンシャルアドバイザーとして貧困層から富裕層までさまざまな階層の人たちの財務の世話を長年にわたってしてきた。
彼女はこう断言している。
「お金がより多くあっても、ほとんどの人は経済不安を解消することができません。実際、収入が増えても支出が増えるだけで、頭痛の種が増えるケースをたくさん見てきました。ほとんどの人の心配の原因は、お金を十分に持っていないことではなく、お金の使い方を知らないことです」
■節約を心がける
私がお金の心配をしない方法を紹介することに対して、多くの読者は「安月給で生活したことがないから、そんな偉そうなことが言えるのだ」と反発するに違いない。
だが、私自身、経済不安を抱えて生きてきた。農場で1日に10時間も重労働をして疲労困憊したものだが、1日の賃金は1ドルどころか、たった5セントだった。
浴室も水道もない家で20年も暮らすことがどういうことか、私はよく知っている。零下15度の寝室で眠ることがどういうことかも知っている。5セントの交通費を節約するために靴の底に穴が開くまで歩き続けることがどういうことかも知っている。
ところが、そんなときでも私は収入の中からわずかなお金を貯めるように工夫した。この経験の結果、経済不安を避けたいなら、企業がコストカットをしているのと同じように予算を組んで節約を心がけなければならないことに気づいた。
■自分のお金の使い方をよく考える
ふだん世話になっている出版社のレオン・シムキン部長は、「不思議なことに、あまりにも多くの人が自分のお金に関してデタラメなことをしやすい」と指摘し、「ある経理担当者は会社のお金に関してはきちんと管理できるのに、自分のお金に関してはとてもいい加減だ」と言った。その経理担当者は家賃や光熱費などのことを考えず、給料をもらうとすぐに衝動買いをするのだそうだ。もし会社がこんなふうに無分別なお金の使い方をしたら、すぐに倒産してしまうだろう。
自分のお金に関しては、自分で事業を営んでいるようなものだ。つまり、自分のお金の使い方を決めるのは、あなたの仕事なのである。
■事実を紙に書きとめる
アーノルド・ベネットが半世紀前にロンドンで小説家になったとき、貧しくて生活に困窮していた。そこで彼は6ペンスごとに自分のお金の使い道を記録することにした。このやり方がたいへん気に入ったので、彼はのちに巨万の富を築いて世界的に名を知られるようになってからも帳簿をつけた。
大富豪のジョン・ロックフェラーも帳簿をつけていた。彼は夜の祈りの前に自分のお金の使い道を細かくチェックしていた。
どうやら私たちも帳簿をつける必要がありそうだ。家計の専門家たちは「少なくとも1カ月、できれば3カ月はすべての支出を正確に把握すべきだ」と主張している。
あなたは自分のお金がどこに消えているかくらい把握していると反論するだろう。たぶんそうかもしれないが、もしそうなら稀有な節約家である。何時間もかけて事実を紙に書きとめると、「ふだん自分はこんなことにお金を使っているのか」と驚くはずだ。
■人間の欲には限りがない
100万ドルを遺産として親族に与えたら、その人は感謝するだろうか?
世界屈指の大富豪として知られる実業家アンドリュー・カーネギーを例にとって検証してみよう。
彼は100万ドルを遺産として親族の男性に与えた。だが、もし生き返って、自分がその男性に罵倒されていることを知ったら衝撃を受けるに違いない。その男性は「生前、あのじいさんは3億ドル余りを慈善団体に寄付したのに、親族である自分にはたった100万ドルしか残してくれなかった」と世間に吹聴して故人をあからさまに非難したのである。
ああ、これが人間というものなのだ。人間の本性は今までもそうだったし、これからもそうだろう。少なくともあなたが生きているあいだは人間の本性は変わりそうにないから、それを受け入れるしかない。
■謙虚に批判を求めて億万長者になった人
あるセールスマンは謙虚に批判を求めた。彼はコルゲート社の営業マンとして石鹸を売り始めたとき、注文が少ししか来なかったので、失業するのではないかと不安になった。
石鹸や値段に問題がないことは明らかだったので、彼は自分に問題があると考えた。説明があいまいだったのか? 熱意が足りなかったのか?
そこで、取引先の仕入れ係に直接質問した。
「私が戻ってきたのは、石鹸を売りつけるためではなく、アドバイスをしてもらうためです。先ほどの説明でよくなかった点を教えてもらえませんか。経験が豊かで実績がある人の意見を聞きたいのです。どうぞ遠慮なく指摘してください」
彼はこうして取引先の信用を得て、的確なアドバイスをしてもらうことができた。その後、どういう展開になったか?
この人物(エドワード・リトル氏)はコルゲート社を世界最大の石鹸会社に発展させた功労者として全米屈指の億万長者になったのである。
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アメリカ・ミズーリ州の農家に次男として生まれる。地元の教育大学を卒業後、セールスマンや俳優などを経て、ビジネスマンを対象に話し方教室を開いて好評を博す。その後、ニューヨークにデール・カーネギー研究所を設立し、累計約45万人の受講生に人間関係の原則などの成人教育をおこなう。代表作の『人を動かす』と『道は開ける』は自己啓発の金字塔であり原点であるとされ、今もなお世界中の人々に読み継がれている。
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(著述家、教育者、実業家 デール・カーネギー)
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