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社員のコロナ感染でバレる…「いい会社」と「ダメな会社」の決定的な違い

プレジデントオンライン / 2021年9月7日 12時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/kyonntra

社内からコロナ感染者が出たとき、あなたの勤め先はどう対応するだろうか。「いい会社」と「ダメな会社」では、その対応はまったく変わる。船井総合研究所のウェブメディア「社長online」から、関西のある社労士事務所の事例を紹介する――。

■社内で新型コロナ陽性者が出たら……

収束する気配を見せない新型コロナウイルス感染症。感染者数は日々増加の一途をたどっている。このたび、社内で新型コロナウイルスの陽性者が出た会社の内情を取材した。

取材で何度も出てきたのは「“コロナ感染者はわが社も出る”と考え、しっかり準備をしておいて本当によかった」という言葉だ。

社内でコロナ感染者が出たときに押さえておきたいポイントは、以下の3つにまとめられる。

①「コロナ感染は起こりうるもの」と考える
②感染を責めない、とがめない
③その人が抜けても、またオフィスでの業務が不可になっても問題ないよう環境を整備する

■“神対応”ができた社労士事務所の事例

今回取材に応じたのは、関西に本拠地を置く社会保険労務士事務所。社員数は40人程度で、この度2人の陽性者が出た。その経緯は以下のようになる。

船井総合研究所の『社長online』(画像をクリックすると、同サイトにジャンプします)
船井総合研究所の『社長online』(画像をクリックすると、同サイトにジャンプします)

7月30日、ある社員が体調不良を訴え、早退した。社長は「念のためPCR検査を受けるように」と指示をした。そこからすべてが始まった。その会社は、社員から体調が悪いと言われた際は、具合の悪さに関係なく一律でPCR検査を受けてもらうようにしていたという。

7月31日の深夜、PCR検査の結果が出て陽性が判明。まずPCR検査を行った機関から保健所に連絡がいき、そこから会社宛てに連絡がきた。保健所に聞かれたのは「濃厚接触者は誰か」「会社が日々どのような形で仕事をしているか」の事実確認だった。

そして指示がされた。内容は「ほかの社員もPCR検査を受けてください」と「濃厚接触者は14日間自宅待機してください」の主に2つ。会社の代表がその社員の行動を電話で聞いたところ、濃厚接触者はいなかった。

8月1日、その事務所は社員全員を在宅勤務にし、また全員がPCR検査を受けるように指示。すると同日深夜、陽性者がもう1人判明した。

最初の陽性者に濃厚接触者はいなかったものの、8月1日に判明した陽性者は、一緒にランチをした社員がいることがわかった。

放置されている使用済みのマスク
写真=iStock.com/flyparade
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/flyparade

その結果、陽性が判明した社員と一緒にランチをしていた人も、濃厚接触者と認定された。ランチは密というほど窮屈ではなく、席間にゆとりはあったそうだが、距離の問題ではなく、同席の時点で濃厚接触者扱いになっている。

それらの社員の感染経路や、感染の原因となるものについては、特定できなかった。夜に出歩くような人たちでもなく、14日前までの行動を確認しても、原因と考えられるようなものは出てきていない。

「ちゃんと気をつけている人でもコロナに感染する。そのことを思い知らされました」と社労士事務所の代表は語る。

■責めない、とがめない、情報共有を徹底した効果

なお、その会社は「社員の◯◯さんがコロナに感染しました。濃厚接触者は誰です」と全社員に発表している。その社員が職場で不利益を被ることを考慮して、社員名を発表しない企業もある一方で、その会社は伝える形を取った。それには理由がある。

「わが社は、コロナ感染者が出る前から、『もし社内で感染者が出ても、そのことを一切責めない、とがめない』スタンスを取っていました。『もし社内で1人目の陽性者になっても、あなたは悪くない。だから早めに検査、報告をしてください』と、しつこいぐらいに言っていました。検査の費用はすべて会社負担です」(社労士事務所代表)

そのようなスタンスが徹底されていたので、実名が発表されてもその人が偏見を持たれたりするようなことはなかった。

日々感染者が増えている状況で、すでに検査を受けている社員が多々いたので、「検査をしているのだから、誰かが陽性になるかもしれない」という雰囲気が社内にもあった。

「責めない、は社員がもし陽性だったら大騒ぎになるのを恐れて検査を拒んだり、陽性になってもそのことを隠して出勤したりすることを避けるために言っていたことですが、早期発見に繋がって本当によかったです」(社労士事務所代表)

その結果、発表で社内に動揺が広がるなどの悪影響はなかった。

■顧客とも情報を共有、評価する声も

同様に「あの会社はコロナを出したらしい」と風評被害が広がることもなかった。全体的に感染者数が増えている緊急事態宣言下で、いつどこで陽性反応が出てもおかしくない状況にあったことも、会社にとってマイナスに働かなかった部分だろう。

顧客には感染者が出たことも、隠し立てせず話した。

顧客からの反応は「いろんなところで出ていますからね」という感じで、それによる業務への大きなマイナスは生じなかった。むしろ、感染が判明したのはPCR検査を徹底している会社の方針によるものと、評価する声も出ている。

最初の陽性者となった社員は体調不良を訴えていたものの、2人目は無症状で、どちらもその後速やかに回復した。

2人目の陽性反応が出た翌日の8月2日にはオフィスの入居するビル全体、事務所を消毒事業者に依頼し消毒してもらっている。

■“明日から在宅勤務”に一斉シフト

2人の陽性者は軽症、無症状だったが、症状がどこかで出るかもしれないので、その社員が仕事をしてよいかどうかの判断は、慎重に行ったという。

基本の考え方は「仕事は割り振らない」で、その後症状が出ず、社員自身に決して無理がなく、働けるようならば働いてもらうスタンスだ。

マスクをして会話する人たち
写真=iStock.com/JGalione
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/JGalione

全社的な働き方も変更した。会社は消毒を行った日にパソコンを各社員の家に送付し、全社員在宅勤務としている。

「接客業などではないので、オフィスで行う業務を在宅に切り替えてもそう問題はありませんでした。今回の感染者発生の前から、顧客との接触をできるだけ減らすべく、やりとりを基本的にWEB対応にしていたので、影響はほとんどありませんでした。業務についても、このようなことが起こることに備えて週に1回は在宅勤務の形をとっていたので、それを完全移行しただけで、オフィスにいないことの不具合はほとんど生じていません。業務オペレーションはもともと仕組み化していたので、遠隔でもたいして変わりませんでした。ただし、それを事前にしておらず、いきなり対応する必要があった場合、スムーズな移行は難しかったかもしれません」(社労士事務所代表)

■「平時から準備をしておいてよかった」

その後、濃厚接触者以外の社員は8月9日にPCR検査を受けてもらい、陰性であれば8月10日から出勤可能とし、濃厚接触者は8月16日にPCRを受けて陰性であれば出勤を許可した。

「平時から準備をしておいてよかったと、感染者が出て実感しました。以前から早めのPCR検査を社員には指示していたので、検査をすればいつかは無症状でも陽性反応が出る人はいる、その心づもりでいたので、実際に感染者が現れても『ついにそのときが来たか』くらいに思えて、社員にも動揺が広がらずに済みました。在宅勤務についても、週に1回でもリアルタイムで行っていたことがプラスに作用し、『明日から全員在宅』と号令をかけてもスムーズでしたね」

危機を乗り越えた社労士事務所代表の言葉だ。

■やっておいてよかったこと、やっておけばよかったこと

その会社はフル在宅勤務を進めるにあたり、士業のためのシステム「シン・クライアントシステム」で外部からシステムに入る形にし、セキュリティ面の対策を強化。業務にプリンタを使いたい、家でも使えるようにしてほしいという要望が一部社員から上がったそうだが、許可していない。

「基本的にはペーパーレスでの業務運営ができるようにしていましたから、プリンタなしでも業務は可能と判断しました。システムのセキュリティを高めても、プリントアウトされたものから個人情報漏洩の危険があるので、紙を使わない、は大事にしたことです」(社労士事務所代表)

自宅でPCを操作する人
写真=iStock.com/kohei_hara
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/kohei_hara

国がリモートワークを推奨していることもあり、いろいろな業務がデジタル上で手続き可能になっている。その会社のメイン業務の1つ、助成金申請についても押印不要になっていたので、社員は会社に集わなくとも業務を遂行できる形になっていた。

また、もう1つのメイン業務、給与計算については特定の社員が担当するのではなく、ジョブローテーションの形にしていたことで、コロナで働けない人がいてもカバーできるようになっていた。

「これらの変化がなかったら、業務が回っていなかったと思います」

社労士事務所の代表は語る。業務を社員だけでなく派遣社員にお願いしていた分については、コロナで業務に関われる社員が減っても、派遣の人を増やして対応することができた。

■社員を困らせた“紙”と“電話”

日本全体で感染者が増加していたのに伴い、社員同士が外食を一緒にするのは禁止していたものの、社内でのランチは禁止していなかったために、濃厚接触者を出してしまった。それは振り返ると対策しておくべきだったと、代表は語る。

「食事は完全に個食にし、ランチは一切誰かとしてはいけないと徹底しました。私自身、ランチくらいで、と軽く思っていたところがあるので、認識を改めました」

陽性反応の出た社員がたまたま訪問していたクライアントが1社あり、濃厚接触者認定されたので、その会社にはPCR検査を受けてもらっている。幸いにも陰性だったものの、これが陽性反応だった場合、顧客に多大な迷惑をかけるところだった。

「業務の性質上、必ず会わなければならないものではないので、完全外出禁止にしておけば良かったです」。代表が以後の対策をしなければと考えている部分だ。

また、いくつかの業務は紙で処理する工程があり、全社員在宅勤務の足を引っ張った。

顧客に説明することで、フローを変更したり、データに切り替えたりすることができたが、最初からそうしておけばよかったと代表は感じている。

そして地味に困ったのが電話だ。これまではアルバイトが事務所にかかってくる電話を取るようにしていたが、アルバイトには携帯電話を支給していなかったため、転送される電話を社員が受けることになり、電話対応業務に忙殺されることになった。

この機会に電話対応代行会社に依頼したところ、営業など業務に不要な電話が多いことが見える化され、また電話を取ることで業務が中断され、集中が途切れることがなくなったので、費用対効果が高いことを実感したという。

■「コロナ感染者はどの会社でも出る」だからこそ事前の備えを

「社内にコロナ感染者が出たものの、軽症や無症状で済んで本当によかった。クラスターにつながらなかったのは、不幸中の幸いです」

船井総合研究所の『社長online』(画像をクリックすると、同サイトにジャンプします)
船井総合研究所の『社長online』(画像をクリックすると、同サイトにジャンプします)

代表はそう語りながら、今回の件で実務に生じた影響について、感想を述べた。

「1人でも陽性者が出たらこんなにもいろいろ対応しないといけないのか、というのが正直な思いです。陽性反応の出た社員の1人はワクチン1回目の接種を終えていたわけで、ワクチン接種が広がっても感染を防げるわけではないことを考えると、今後もある程度対策をとっておかないと業務が回らなくて困ると、痛感しました。今回、行動に問題なかった社員が感染した事実からして、『コロナ感染はどこにいても起こりうる。防ぎようがない』とよくわかりました。まだ社員の感染が出ていない会社も、対岸の火事と思わないこと、今すぐ全員在宅勤務になっても困らないよう、対策を始めていただきたいというのが、お伝えしたいことです」

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(船井総合研究所 社長online)

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