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仕事がデキる人と結果が出ない人を分ける「計画前」の"ある行動"

プレジデントオンライン / 2021年9月8日 9時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/wachira khurimon

人の心を動かせる人は、どんな思考法をしているのか。『ドラゴン桜』や『宇宙兄弟』を生み出した編集者の佐渡島庸平さんは「いい観察が行われると問いが生まれ、問いから仮説が生まれ、また新しい観察が始まる。その繰り返しで対象への解像度を上げることができる」という――。

※本稿は、佐渡島庸平『観察力の鍛え方』(SB新書)の一部を再編集したものです。

■人は「メガネ」をかけてしか対象を見られない

観察をしようとするとき、「認知バイアス」「身体・感情」「(時空間の)コンテクスト」が観察を邪魔する。僕はそれらをまとめて、「メガネ」と呼んでいる。人は「メガネ」をかけてしか対象を観られないのであれば、そのメガネを意識的にかけかえればいい。

その「意識的なメガネ」というのが「仮説」だ。

観察とは、仮説と対象のズレを見る行為だ。古代ギリシアの哲学者ゼノンが提示したパラドックス、「アキレスと亀」の中で、俊足の英雄・アキレスはどんなに頑張っても一生、亀に追いつけない。アキレスがその地点に着いたときに、亀はそこからほんの少し進んでいるからだ。このように仮説と対象はぴたりと一致することがない。限りなく近づくけれど、仮説と対象はどこまでもズレている。

いい観察が行われると、問いが生まれ、その問いから仮説が生まれる。そして、次の新しい観察が始まる。その繰り返しによって、対象への解像度は上がっていく。

ニュートンが、リンゴの落下から万有引力を導き出したというエピソードを、なぜ僕は伝説などではなく、真実だと思えるのかの理由もここにある。

■偉大な発見の「はじめの一歩」はシンプルな問いではないか

はじめは、「なぜリンゴは地面に落ちるのだろう?」という子どもでも思いつきそうなとてもシンプルな問いが生まれる。そこから「地面がリンゴをひっぱっているのでは?」というラフな仮説になり、観察が始まる。さらに観察は新たな問いを生み出し、仮説がどんどん更新される。そして最終的には「万有引力の法則」という世紀の発見へとつながったのだと僕は想像する。

人類の偉大な発見の「はじめの一歩」は、本当にシンプルな問いだったのだと思う。いきなり偉大な問いを見つけて、人生をかけて取り組むのだと思うと、多くの人は自分の手元には、そんな問いがないと絶望することになる。そうではなく、誰にでも思いつくようなありふれた問いを、仮説と観察によって、研ぎ澄ましていくのだ。

■思考を動かすサイクルは「仮説→観察→問い」

僕は自著『ぼくらの仮説が世界をつくる』で、仮説から思考を始めることを主張した。最近では、安斎勇樹さん・塩瀬隆之さんの『問いのデザイン』がベストセラーになった。タイトルの通り、どのようにすれば良い問いをデザインできるのかについて書かれた良書だ。「問い・仮説・観察」の3つがグルグル回っている。

どこを起点にすると思考が動き続けるか。

そう考えたときに、安斎さんらは、「問い」だと思ったのだろう。本書では、「仮説」を起点とすると、サイクルが回り続けると仮定し、話を進める。正直、起点はどこであってもいい。このサイクルが回らなかったり、止まってしまったりしたときに、どうやって揺さぶりをかけ、動かすのか。その手段はたくさんあったほうがいい。

僕が、仮説からサイクルを始めるほうがいいと考えるようになったきっかけは、「行動サイクル」にヒントを得たからだ。

観察(思考)のサイクル
画像=『観察力の鍛え方』

■熱量を高めるには「振り返り」から始めること

具体的に行動を起こすときには行動サイクルというものがある。行動サイクルとは、全ての行動は「計画」→「実行」→「振り返り」のプロセスを踏むことになるというものだ。

通常このサイクルでは、「計画」を起点にすることが多いのだが、どうも計画倒れになりやすい。計画から始めると、行動の熱量が上がらないことが多い。

どうすれば行動の熱量が高まるのだろうと試していたときに、「振り返り」を起点にすると行動の熱量が高まり、自分ごととして「計画」を立てやすくなると感じた。

この行動サイクルの「振り返り」に当たるものが、観察(思考)サイクルでは「仮説」だ。とにかく雑にでもいいから、仮説を立てる。そうすると、仮説を検証したいという欲望が生まれ、熱量のある観察が始まる。

行動のサイクル
画像=『観察力の鍛え方』

■ネットがない時代のほうが、遠くまで観察できていた

仮説は、観察を始めるときの最強の道具になる。

現代はたくさんの道具がある。その道具に振り回されると、人は観察ではなく「観測」を行ってしまう。観測をすると、データという手触りのあるものが手に入る。それで、何かを得た気持ちになり、安心してしまう。インターネットをはじめとした道具など何もなくても、仮説だけを頼りに世の中を見ていた人たちのほうが、ずっと遠くまで観察できているように思う。

佐渡島庸平『観察力の鍛え方』(SB新書)
佐渡島庸平『観察力の鍛え方』(SB新書)

たとえば、2500年ほど前の古代ギリシア。ギリシア人たちは、「火・空気・水・土」で世の中が構成されていると考え、その仮説にもとづいて、世界を観察し、思考を深めた。そして、観察を続ける中で、四元素という仮説自体もアップデートされていった。中国でも同じだ。五行は「木・火・土・金・水」の5つから世の中が構成されているという仮説だ。

西洋でも東洋でも、大胆な仮説があり、その仮説をもとに世界が観察された。様々な観察が起きたおかげで、仮説がアップデートされた。ニュートンの万有引力の法則も同じだ。

たくさんの情報と道具が現代社会にはあふれている。そういうものを全て一度手放し、仮説だけを武器にする。それが観察力を磨く方法だ。

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佐渡島 庸平(さどしま・ようへい)
コルク社長、編集者
1979年生まれ。中学時代を南アフリカ共和国で過ごし、灘高校に進学。2002年に東京大学文学部を卒業後、講談社に入社し、「モーニング」編集部で井上雄彦『バガボンド』、 安野モヨコ『さくらん』のサブ担当を務める。03年に三田紀房『ドラゴン桜』を立ち上げ。 小山宙哉『宇宙兄弟』もTVアニメ、映画実写化を実現する。伊坂幸太郎『モダンタイムス』、平野啓一郎『空白を満たしなさい』など小説も担当。12年10月、講談社を退社し、クリエイターのエージェント会社・コルクを創業。『宇宙兄弟』『インベスターZ』『テンプリズム』『修羅の都』『オチビサン』『マチネの終わりに』『本心』などを担当。インターネット時代のエンターテインメントのあり方を模索し続けている。コルクスタジオで、新人マンガ家たちと縦スクロールで、全世界で読まれるマンガの制作に挑戦中。

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(コルク社長、編集者 佐渡島 庸平)

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