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「日本人はすでに絶滅危惧種になっている」若さを失った日本でこれから起きること

プレジデントオンライン / 2021年9月16日 12時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/lokhin

高齢化が進む日本はこれからどうなるのか。作家・ジャーナリストの河合雅司さんは「国民の“安心・安全”は大きく揺らぐだろう。勤労世代の減少により、警察や自衛隊を含む公務員の不足や食糧難まで考えられる」という――。

※本稿は、河合雅司『世界100年カレンダー 少子高齢化する地球でこれから起きること』(朝日新書)の一部を再編集したものです。

■日本は「人類の高齢化」の先行事例

「人類の高齢化」にはお手本となり得る先行事例がある。それは、他ならぬ日本のことである。

ワシントン大学の研究チームは、2100年までに2017年比で半数未満となるのが23カ国、25〜50%減少が見込まれるところが34カ国と予測しているが、その中でも日本の人口の減り方は凄まじい。2020年の1億2622万7000人(国勢調査)からハイペースで減っていく。国立社会保障・人口問題研究所の「日本の将来推計人口」(2017年)を改めて紹介しておくと、2053年に9924万人となって1億人を下回る。2065年には2020年と比べて3割減の8807万7000人、2100年には同52.7%減の5971万8000人、2115年には5055万5000人にまで落ち込む。

高齢化率についても突出している。2065年に38.4%となって以降、2115年に至るまで総人口が減ってもほぼ変動せずに移行するのだ。国連の推計では世界全体の高齢化率は2100年になっても22.6%だから、2020年の日本の高齢化率28.8%にすら達しないが、2100年にはアルバニアは45.9%、プエルトリコ42.4%、韓国38.3%をはじめ、30%以上となる国は世界中に広がる。

日本国内でいま起こっていることは、やがて世界の多くの国が抱える悩みになるということだ。言い換えるなら、時間をおいて各国で順番に始まっていく。各国は日本に学べば、自国の未来をかなりの高確率で占えるのである。

■社会保障制度の悩みは「財源確保」だけではない

先に、少子高齢化の影響は、社会保障制度にいち早く表れると述べた。勤労世代が少なくなって税収が減る一方で、高齢者向けのサービスを充実させなければならず、政府の支出が増大するためだ。

だが、日本の抱える社会保障制度の悩みは、もはや財源確保策だけにとどまらない。いまでは提供体制の課題のほうが深刻になっている。高齢者の増大は患者数を増やすだけでなく、疾病構造の変化をもたらすためだ。救急医療の充実だけでなく、慢性期疾患に対応できる医薬品の開発や病院や医療・介護スタッフの体制整備をしなければならなくなる。高齢医師の引退や、地域によっては人口減少に伴う患者不足で、医療機関の経営が見通せなくなっているケースも出始めている。

■勤労世代の減少で地方経済縮小、黒字企業の休廃業、食糧難まで…

日本が抱える課題はもはや社会保障制度や医療・介護体制だけでなく、あらゆる分野に及んでいる。勤労世代の急速な減少は人手不足を生み、企業の生産活動を揺るがす。一方で勤労世代は同時に活発な消費者でもあることから、こうした年代の若者が少なくなった地方では地域経済が縮小して企業活動が不活発となり、都市部への人口流出を招くこととなる。その結果、農業までが疲弊して耕作放棄地が拡大を続けており、近い将来、深刻な食料難に陥ることが懸念される。

勤労世代の減少は、“職人技”や営業上の人脈といったビジネス上の“引き継ぎ”を困難にさせる。中小企業では、後継者不足などを理由とした事業承継の断念が過去最多を更新し続けており、黒字企業の休廃業・解散件数が目立つ。

そればかりではない。勤労世代の減少は「社会の若さ」を奪う。競争相手が減ることで切磋琢磨する機会が失われ、イノベーションや芸術・文化が生まれづらい状況が広がる。高齢化した消費者は「長い老後生活」に備えて貯蓄に励むようになり、経済成長を妨げる大きな要因となっている。

■警察官や自衛隊員は不足し、介護離職者は増大する

さらに深刻なのが、警察や自衛隊といった分野を含む公務員の不足だ。生活に密着した行政サービスの維持が困難になると見込まれるエリアが広がり始めている。もし防災や治安に穴が開くようなことになれば、国民の「安全・安心」は大きく揺らぐだろう。医療・介護、電気、水道、郵便といった公的なサービスを担う企業や病院、施設も同じだ。施設網の保守・管理やサービスを担うマンパワーを維持するコストが経営に大きくのしかかってくる。

日本の警察官
写真=iStock.com/akiyoko
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/akiyoko

80代以上の高齢者の増加は、一人暮らしや高齢者のみの世帯を増やしている。買い物や通院といった移動が困難な人が増える一方で、人口減少に伴う需要の減少が公共交通機関の経営に打撃を与えており、日常生活がままならない人や孤独化する人を増やしている。

高齢者世帯の増加は高齢者同士の介護や、勤労世代の夫婦が同時期に2人以上の老親の世話をするといった状況を生み出し、介護離職も増えている。介護離職者の増大は、企業の存続すら危うくする。

認知症や運動機能の衰えた国民の増大は、都市機能の風景を変える。高齢ドライバーによる交通死亡事故が社会問題化しているが、電車やバスの乗降に時間がかかるようになるし、街中の階段や段差は車いすでの移動には不都合だ。バリアフリーの徹底が求められるが、住民の高齢化で地方税収は伸び悩み、こうした事業に充てる予算の確保を難しくしている。

■日本が編み出す対策は、世界の羅針盤になる

これらは日本社会が直面する課題の一端だ。国によって体制や社会の仕組みは異なるのですべてが該当するわけではないだろうが、大なり小なり似たような課題、状況が21世紀中に多くの国で起こることは疑いようがない。

もし、われわれに何百年も生きる寿命があるならば、20世紀末頃から日本で深刻化した少子高齢化が少しずつ各国に広がり、やがて地球を覆うまでになる様子を見て取ることができるだろう。

宇宙から見た地球
写真=iStock.com/imaginima
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日本は「課題先進国」と言われるが、われわれ日本人が悩み、試行錯誤の上に編み出してきた少子高齢社会への対策や、これから経験していく人口減少への対応策は、遅れて経験する各国にとってまさに21世紀以降の世界を歩いていくためのガイドブック、羅針盤の役割を果たすこととなる。

■「過去の少子化」が「新たな少子化」を生み出す

ところで、人口減少が始まった後の世界はどこへと向かうのだろうか。

人口減少の原因については、再三説明をしてきたが、突如として始まるものではない。その前段となる少子化が長く続いたからこそ起きる現象だ。多くの国の歴史を振り返れば、少子化は人々の暮らしが豊かになったことの裏返しという側面もある。

少子化というのは、当初はさまざまな要因が重なって進むが、時代を経ると「過去の少子化新たな少子化を生み出すという構造的な問題に変質する。毎年女児の出生数が少なくなっていくと、20〜30年後には「出産可能な年齢の女性数」が少なくなる状況を生み出す。こうなると1人の女性の出生数が多少増えたとしても、社会全体の出生数は減り続けることとなる。すでに日本はこの状況に陥っており、出生数の下落スピードが加速し始めている。人口が減り始めてから慌てて対策をとろうにも有効な手立てはないというのは、こういうことである。

厄介なのは、平均寿命の延びが人口減少を覆い隠し、あたかも人口が増え続けているように見せかけていることだとも先述した。少子化に対する危機感は人々の間で醸成されづらく、その時々の対策を遅らせていく。人口減少がもたらす影響が目に見えるようになって、多くの人がその深刻な未来に気付いたときには“あとの祭り”なのである。

■「移民受け入れ」はあまりにも無知なアイデア

世界の人口減少に対して、専門家の一部には「移民を受け入れるしかない」といった“迷解決策”を唱える人がいるが、これはあまりにも無知なアイデアだ。

1つの国の単位として考えるならば、移民や外国人労働者を受け入れることで辻褄合わせもできよう。人手不足は解消されるし、マーケットの目減りも穴埋めできる。外国への販路を拡大強化したならば、当座の経済成長を維持することも可能だ。しかしながら、世界規模で少子高齢化が進み、人口減少が進んでいくのである。「世界」という器のサイズが縮む以上、移民などに頼る手法はどこかで限界が訪れる。世界人口の減少には、「逃げ場」はない。

打つ手がない以上、人口は減り始めると加速的に進行していく。少子高齢化が世界で最も深刻な日本を見れば、その恐ろしさが分かる。日本の場合、合計特殊出生率が1975年に1.91となって「2」台を下回って以来、ずっと「1」台が続いている。

■日本人はすでに“絶滅危惧種”になっている

合計特殊出生率は1.99であっても1.00であっても父親と母親という2人の人間から子どもが1人しか生まれていないという意味では同じである。ひと世代替わるたびに人口が半減するということだ。折り紙を半分ずつにたたんでいくことを想像すれば分かりやすい。何度か折りたたんでいくうちに、その表面積は極めて小さくなってしまう。1.99のほうが、1.00よりも紙が半分に折られるスピードがゆっくりということである。

芝生にいる両親と子
写真=iStock.com/Liderina
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日本の人口の縮小の速さを、社人研の「人口統計資料集」(2021年)が出生率、死亡率一定という条件下で機械的な推計を試みているが、日本人はわずか200年後の2220年に1026万8000人となる。現在の東京都の人口よりも少ない水準だ。300年後の2320年には275万1000人にまで減る。これは現在の大阪市とほぼ同じ人数だ。ここまでくると、国家として機能するのか怪しくなる。

その後もどんどん縮んでいき、2900年には1000人、3000年にはついにゼロ人となる。ここまでにならなくとも、日本語を後世に残すことが難しくなろう。それは、日本が世界史から消えるのと同じだ。日本人はすでに“絶滅危惧種”となっているのである。

■「人類滅亡のカウントダウン」が始まる

同様のことが世界規模で始まろうとしているのだ。

河合雅司『世界100年カレンダー 少子高齢化する地球でこれから起きること』(朝日新書)
河合雅司『世界100年カレンダー 少子高齢化する地球でこれから起きること』(朝日新書)

IHMEの研究チームの推計が正しければ、半世紀もすることなく、われわれは人類滅亡へのカウントダウンに立ち会うこととなる。

もちろん、現在この世に生を享けている人々が人類滅亡の目撃者となることはない。100億人に迫る人口が蒸発するように消えることはないからだ。「最後の1人」が登場するにはかなりの年月を必要とする。

われわれが目にするのは、カウントダウン直後の「始まり」の部分である。世界規模で捉えるならば、さしたる変化が表れる段階ではない。

しかしながら、日本を含めていくつもの国が劇的な変化に飲み込まれていく。これらの国々の劇的な変化の真の理由と要因を知っているということは、時代の先を読み解く上で大変に重要だ。

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河合 雅司(かわい・まさし)
作家・ジャーナリスト
1963年、名古屋市生まれ。人口減少対策総合研究所理事長、高知大学客員教授、大正大学客員教授のほか、政策研究大学院大学客員研究員、産経新聞社客員論説委員、厚労省や人事院など政府の有識者会議委員も務める。中央大学卒業。2014年の「ファイザー医学記事賞」大賞をはじめ受賞多数。主な著書にはベストセラーの『未来の年表』『 未来の年表2』『未来の地図帳』(いずれも講談社現代新書)のほか、『日本の少子化 百年の迷走』(新潮選書)などがある。

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(作家・ジャーナリスト 河合 雅司)

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