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「なぜ朝カレーは体によくて、夜ラーメンはダメなのか」時間栄養学でわかった人体の不思議

プレジデントオンライン / 2021年9月8日 15時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/taa22・KPS

「朝カレー」と「夜ラーメン」、健康的に優れているのはどちらだろうか。早稲田大学先進理工学研究科の柴田重信教授は「『時間栄養学』という研究分野がある。それによると、朝カレーのほうが健康的には優れている。ただし、夜ラーメンにも健康を害さない食べ方がある」という――。

※本稿は、柴田重信『食べる時間でこんなに変わる 時間栄養学入門 体内時計が左右する肥満、老化、生活習慣病』(ブルーバックス)の一部を再編集したものです。

■朝食にはインスリンの分泌を促しやすいものを食べるといい

本格的な時間栄養学の話に入る前に、身近な食べ物を例に、摂る時間と体の反応について簡単に解説してみたいと思います。そこに体内時計という、体の機能が関係しています。体内時計とは24時間より少し長い周期を持つ、時間を司るしくみです。

身近な食べ物としてあげたいのは、まずはカレーです。カレーは、子供から大人まで、大好きな食事メニューです。子供の頃、余分に作られ一晩寝かされたカレーを朝食べたときには、何ともいえないくらいおいしかったと記憶しています。また、かなり前の話ですが、人気スポーツ選手が朝カレーを食していると話題になり、「朝カレー」という言葉を一時よく耳にしました。

一方、「深夜のラーメン」もなかなか魅力的な響きでしょう。残業、あるいは、お酒の後の締めのラーメンにはそそられるものがあります。

この2つのメニューに共通していることは、いずれも朝や夜という時刻を述べていることです。

これが時間栄養学につながることであり、ここではその視点で、朝カレーと夜ラーメン、どちらが健康的に優れているか、そしてその根拠を述べてみたいと思います。

カレーは一般的にご飯にカレールーをかけたものですから、そのご飯について、まず朝食で摂ると体にどう作用するかという点について考えてみましょう。ご飯のデンプン質が消化されるとブドウ糖(グルコース)に分解されます。このブドウ糖が血糖値にかかわるインスリンの分泌を引き起こします。もともと24時間より長い体内時計の周期は、油断していると夜の方に引きずられがちなのですが、朝ごはんにインスリンの分泌を促しやすいものを食べると、体内時計に「朝ですよ」と教えることに大いに役立つのです。

■香辛料で活動開始の準備が整う

香辛料はどうでしょうか。唐辛子成分のキャプサイシンは、体内時計の時計遺伝子の発現に影響を及ぼすことが知られています。黄色成分のウコンなど、体内時計との関係がよくわかっていないものも多いのですが、キャプサイシンが豊富な辛いカレーを食べると汗をかくことからわかるように、香辛料は交感神経を興奮させます。

ちなみに交感神経とは、副交感神経と共に、全身の臓器や血管などをコントロールする自律神経です。交感神経は、活動時や緊張状態で活発になり、副交感神経は、夜やリラックスしているときに優位になります。朝カレーでは、副交感神経が主に働いていた夜から朝にかけて交感神経が働くように変わっていく時間帯となるので、香辛料で交感神経が活発になることは、血圧を上げ、脳を活性化させ、体温を上げるなど、活動開始の準備状態を導くのに大いに役立ちます。

また、食事で体が温まる「食事誘発性熱産生」というしくみがあり、体温が上昇します。この熱産生は、同じ食事を夕方に摂ったときより朝に摂った方が大きく出現します。つまり朝食では体温を上げるためにカロリー消費が起こり、抗肥満効果が期待できるのです。また、食事内容によって食事誘発性熱産生の量が違うことがわかっており、研究結果から、熱産生はタンパク質を摂ったときが大きく、次に炭水化物で、脂質の関与は小さいと考えられています。

テーブルの上の食器
写真=iStock.com/t_kimura
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/t_kimura

以上のことから、朝カレーは朝食としてまったく問題なくおすすめの食事といえます。さらに、朝は体温を上げるためにも、タンパク質の摂取を推奨したいので、肉カレーや豆カレーなどにするとより良いかもしれません。

■やみつきになる「深夜」と「ラーメン」の関係

一方、夜遅めに食べるラーメンはどうでしょう。

カレーのところで、朝食を摂るとデンプン質が分解しブドウ糖となり、ブドウ糖がインスリンの分泌を促進させることを述べました。このインスリンの働きについては後述しますが、インスリンによって24時間より長い周期の体内時計は30分程度前進し、24時間周期に合うようになるのです。

では、夜という時間帯の食事は体内時計を前進させるか、変化させないか、あるいは遅らせるか、どれでしょうか。

正解は体内時計を遅らせる、となります。そのため体内時計の夜型化を引き起こすのです。すなわち、夜食を摂る行為が体内時計の夜型化を引き起こし、体内時計が夜型になっていると夜食を食べたい誘惑を起こし……というように、夜型化の連鎖を引き起こす可能性があります。

■脂肪を増やし腎臓にも負荷をかける

次にラーメンそのものについて考えてみましょう。あるカップラーメンの栄養表示を見ると、一食(100g)当たり、カロリー(445kcal)、炭水化物(63g)、脂質(17g)、タンパク質(10g)で、塩分は(5.6g)と、タンパク質以外の栄養素はすべてたっぷり入っていました。

要するに、タンパク質以外は一食分に相当するので、これを夜食として食べると1日4食となってしまいます。

まずカロリーについて考えると、入眠前のあまりエネルギーを必要としない時間帯にこれだけの食事を摂ると脂肪としての貯蓄に回るだけになってしまいます。すなわち肥満の原因になるというわけです。

柴田重信『食べる時間でこんなに変わる 時間栄養学入門 体内時計が左右する肥満、老化、生活習慣病』(ブルーバックス)
柴田重信『食べる時間でこんなに変わる 時間栄養学入門 体内時計が左右する肥満、老化、生活習慣病』(ブルーバックス)

また、高血糖の状態が睡眠時まで持続するので睡眠の妨げになりますし、この持続的な高血糖は血管に負荷をかけたり脂肪合成に結びついたりしてしまいます。塩分も一食当たりでは相当多く、腎臓の働きが落ちてくる夜間に高塩分を摂ると、より腎臓に負荷がかかります。

ここまで読めば、夜食のラーメンは、健康に良くないのは自明の理となりますが、どうしても食べたくなったときに、何か良い方法はあるでしょうか。

提案したいのは、全量を少なめにして、チャーシューは豚バラ肉ではなく脂肪分が少ない豚モモ肉にすることです。また遅い時間が魅力的なのはわかりますが、やはりできるだけ早い時間帯に食すべきでしょう。スープは、飲み干すと脂肪分と塩分の摂りすぎとなるので、必ず残しましょう。

最近は、こんにゃくや、おから麺などが登場してきており、夜食としてのラーメンは、そういった低カロリーラーメンの積極的利用をおすすめします。

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柴田 重信(しばた・しげのぶ)
早稲田大学先進理工学研究科教授
1953年生まれ。1976年九州大学薬学部薬学科卒業。1981年同大大学院薬学研究科博士課程修了。薬学博士。早稲田大学人間科学部教授などを経て、2003年より現職。日本時間栄養学会会長などを務める。監修書『食べる時間を変えれば健康になる』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、共著書『Q&Aですらすらわかる体内時計健康法 時間栄養学・時間運動学・時間睡眠学から解く健康』(杏林書院)など多数。

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(早稲田大学先進理工学研究科教授 柴田 重信)

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