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「サイゼ、吉野家、コメダ」このうちコロナ禍でも業績好調なチェーンはどれか?

プレジデントオンライン / 2021年9月10日 12時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/IJdema

コロナ禍で飲食業が苦戦している。ただ、その中でも高い営業利益率を維持している企業もある。「大手町のランダムウォーカー」として活動している福代和也さんは「たとえばサイゼリヤ、吉野家HD、コメダHDの3社のうち1社だけ業績好調な企業がある。その理由はビジネスモデルの違いにある。決算書を読み比べれば、それがわかる」という――。(第1回)

■専門知識がなくても直観的に決算書が理解できる「会計クイズ」

みなさんは「決算書」を読んだことがあるでしょうか?

おそらく読んだことがない人がほとんどではないでしょうか。「決算書」と聞くと難しい専門用語や、何桁なのかも分からない数字が並んでいて眺めるだけで疲れてしまうという人もいるかもしれません。

ですが、決算書が読めるようになることで得られるメリットは少なくありません。

決算書を読む力が身につくと、企業が公式に発信している決算資料という一次情報にアクセスできるようになり、株式投資はもちろん、就職や営業にも役に立つ企業の詳細情報を得ることができます。

とはいうものの、決算書を普通に読もうとすれば専門的な会計知識を身につけなければならず、学習にはかなりの根気が必要です。そのうえ、実際に知識を身につけたとしても、決算書を自然に読めるようになるには実践的な訓練が必要です。

私も、公認会計士の試験に合格してからすぐに決算書を読みこなせるようになったわけではありません。公認会計士試験に受かるほどの知識があったとしても、決算書をすぐに読めるようになるわけではないのです。

そこで本稿では、専門知識がなくても直観的に決算書を理解できる「会計クイズ」を使って「決算書の読み方」を、実際の飲食業の事例を通して解説していきます。

コロナ環境で苦戦を強いられている飲食業ですが、中にはそんな環境をものともせず、高い収益を生み出している飲食業も存在しています。

それではさっそく会計クイズをはじめていきましょう。

■苦戦する飲食業界で稼いでいるのはどこか

それでは問題です。

コロナ環境下で飲食業が全体的に苦戦していますが、中には非常に高い営業利益率を維持している企業も存在します。

この高い営業利益率を維持している企業は下記の3つの企業のうち、どの企業でしょうか?(各社共に2020年度の年次決算数値を利用)

・イタリアンレストランを展開するサイゼリヤ
・「吉野家」をはじめとした牛丼チェーンを展開する吉野家HD(ホールディングス)
・喫茶店「コメダ珈琲店」を展開するコメダHD

唯一黒字決算の企業は? の図表
図表=筆者作成

■高い利益率を維持しているコメダHD

それでは正解の発表です。正解は喫茶店「コメダ珈琲店」を展開するコメダHDでした。

コメダHDは、コロナ影響を受けた2021年2月決算でも、営業利益率19%と非常に高い利益率を維持しています。多くの飲食業が苦戦する中、どうしてコメダHDはこれほど高い収益性を維持することができるのかを解説していきます。

唯一黒字を維持するコメダホールディングスの図表
図表=筆者作成

まずは、コロナの影響の有無を確認するため、コロナ前後の売上高の推移を確認していきます。

コメダHDのコロナがはやる前の2020年2月決算の売上高は312億円で、コロナがはやった今期の2021年2月決算の売上高は288億円でした。売上高は前期に比べて約7.6%も減少しており、減少の一番の理由はコロナの影響による客数の落ち込みとのことです。

飲食業の売上高の変数は「客数」と「客単価」の掛け算であり、緊急事態宣言や蔓延防止策による臨時休業や時短営業は「客数」に大きな影響を与えます。コメダ珈琲店も多くの店舗で休業や時短営業という措置を取ったことから、客数が例年に比べ減少してしまっています。

従って、高収益を維持しているコメダHDも、コロナの影響をしっかり受けていることがわかります。

売上高の前当期比:コメダHDの図表
図表=筆者作成

■コメダ珈琲店のほとんどがフランチャイズ店舗

コロナの影響を受けているにもかかわらず、どうして営業利益率19%という高収益を維持することができたのでしょうか? その答えはコメダHDのビジネスモデルにあります。

コメダHDの売上高の内訳を確認すると、主な収入源は「卸売り収入」ということがわかります。それでは、コメダHDは誰に対して卸販売をしているのでしょうか?

その答えはフランチャイズ店舗です。実はコメダ珈琲店の大半はフランチャイズによる出店が中心であり、コメダHDは自社でほとんど直営店を保有していません。コメダHDのグループ全体数の914店舗のうち、自社で保有している直営店はわずか50店舗程度です。

従って、出店の大半はフランチャイズ店舗であり、このフランチャイズに対して商品を卸売りするというビジネスがコメダHDのメインの収入源となっています。つまり、コメダHDのメインの販売先は、われわれ一般消費者ではなく、一般消費者に対して商品を販売するフランチャイズ店舗となります。

コメダHDの出店形態
図表=筆者作成
コメダHDの売上高内訳
図表=筆者作成

■コメダの高収益を支えている“仕組み”

コメダHDがフランチャイズに対して卸売りを行うビジネスを展開していることを解説しましたが、どうして高収益を維持することができたのでしょうか? その答えは低い損益分岐点に理由がありました。

コメダHDは自社で店舗を保有せず、フランチャイズ出店が中心の出店形態を採用しています。従って、賃料や人件費、水道光熱費の負担が、直営中心の飲食業態よりも圧倒的に低くなります。

コメダHDの2021年2月期の連結損益計算書を見てもわかる通り、賃料や人件費などが反映される販売費および一般管理費(販管費)の割合はわずか16%と、飲食業態の中でもかなり低い水準となっています。

コメダホールディングスの財務諸表
図表=筆者作成

固定費は販売量に関係無く発生するコストが中心となっているため、臨時休業や時短営業で客数が減少したとしても、変わらずに一定額発生してしまいます。

そのため、直営店が中心の通常の飲食業は、固定費を賄うだけの販売量を維持することができずに赤字に陥ってしまうケースが今回の決算を見ていても少なくないです。

一方、コメダHDは自社で直営店をほとんど保有しないため、固定費が非常に低いという特徴があります。固定費が少ない程、損益分岐点が低くなり、売上高が減少しても黒字を維持することが可能となります。

損益分岐点:イメージ図
図表=筆者作成

■決算書が理解できればビジネスの仕組みが見えてくる

コメダHDがコロナ環境下でも高い利益率を維持することができた一番の原因は、損益分岐点の低さにありました。

一見するとコロナの影響を受けていないと思われがちですが、売上高の減少を見るにしっかりコロナの影響は受けています。コロナの影響を受けつつも、それでも高収益を維持することができるビジネスモデルがコメダHDの大きな強みとなっていることが決算書を通じて読み取ることができます。

このように決算書を読み解く力をつけることで、日常生活ではなかなか気付くことができないビジネスの仕組みを深く理解することができるようになります。この記事を通じて1人でも多くの方に決算書を読む面白さが伝わりますと幸いです。

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福代 和也(ふくよ・かずや)
大手町のランダムウォーカー、Funda 代表取締役
学習意欲の高い個人や企業研修向けに、数字でビジネスを考える思考を身に付けるWEBアプリを提供しています。著書『世界一楽しい決算書の読み方』は発売開始1年間で20万部突破。TwitterやInstagramにて「#会計クイズ」を発信中。SNSトータルフォロワー数は約15万人。 https://www.funda.jp

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(大手町のランダムウォーカー、Funda 代表取締役 福代 和也)

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