「驚きの効果」利益率3割の超優良企業が年1回開催する“コスト削減キャンペーン”の中身
プレジデントオンライン / 2021年9月19日 11時15分
※本稿は木下勝寿『売上最小化、利益最大化の法則──利益率29%経営の秘密』(ダイヤモンド社)の一部を再編集したものです。
■月間150万円、年間1800万円のコストを削減した秘策
利益を上げるには、売上を上げるよりコスト削減のほうが早い。
当社はもともとコスト意識が高いほうだと思うが、あることを始めてから一気に意識が高まった。
それは「コスト削減キャンペーン」である。年一回、管理職(決裁者)7、8人が集まって「コスト削減委員会」を組織し、聖域なしでコスト削減の議論を行う。
当社は100億円の売上で利益は29億円。つまり、71億円の支払いがあるのだ。年間71億円、いろいろな経費を払っている。そこで年一回、一つひとつの支払いを全部見直している。支払台帳を管理職が見直し、削減できそうな経費をリストアップする。
たとえば、物流部門では、月に約15万件出荷している。
一件一件の梱包物には、納品書、定期購入案内、商品説明リーフレットなど、様々なものが同梱されている。1枚10円の同封物が2種類あったとき、合体させて1枚にし、一件につき10円の注文連動費を削減した。このとき事前に「合体させて問題ないか」を議論した。
■経費が利益に結びついているかが重要
強引なコストカットが目的ではない。経費が利益に結びついているかを考えることが重要だ。一枚10円のチラシを入れた価値を、様々な角度でシミュレーションしながら徹底的に議論したが、「合体させることで問題が起きるかどうかは、やってみなければわからない」という結論になった。
「この2枚を1枚に合体させ、1年経って問題あるなら戻そう」これで月間約150万円、年間1800万円程度のコスト削減になった。また、注文に関する説明書とFAX注文用紙を合体させ、5円のコスト削減を図ったこともある。
FAXによる注文数を調べると、近年はほとんどなかった。だが、完全にFAXによる注文を受けつけなくなると機会ロスになるので、注文の説明書の裏側につけた。5円減るだけで、年間900万円もが減った。1年後に問題の有無を検証するが、今まで元に戻した施策はない。
■「応接室の花は2万円の赤字」仮説を検証する
社内で応接室の花について議論したこともある。
花には月1万円のリース代を支払っている。
「なぜ花を置いているのだろうか」
「花があると心地いいからだろう」
「誰の心地よさがどのように会社のメリットとつながっているのだろうか」
などと考える。
すると、「採用面接で応接室を使うので、内定を出したときの受諾率が上がるかもしれない」といった仮説が出てきた。
「何%くらい上がると思う?」
「仮に1%上がるとすると、年間採用経費はいくらだ?」
「年間採用経費は1000万円。内定受諾率が1%上昇すれば、10万円分、効率化される」
「この花は年間10万円の価値を提供しているけれど、コストは月1万円だから年間12万円。ということは、2万円の赤字だ」
「では、他にこの花が役立っていることはないか」
と深掘りする。
答えが完全にわかることはなくても、一つひとつ仮説を立て、投資効果を検証する癖をつける。何も考えず、なんとなくやり続けるのが一番いけない。
■雑巾と使い捨て掃除用ペーパー、どっちがコスト削減?
前述の同封物は注文連動費の削減につながり、花は運営費の削減につながった。
ABC(activity based costing)と運営費を同時に削減したのが次の例だ。
当社には週一回、社員の自主清掃の時間がある。最初は雑巾で掃除をしていた。自分の身の回り、共有部分を雑巾で拭く。これが「コスト削減委員会」の協議事項に上がった。「雑巾で掃除すると、掃除後の洗う時間、干す場所の家賃がかかり無駄ではないか。使い捨ての掃除用ペーパータオルのほうがコスト削減できるのではないか」
そこで両者を比較した。雑巾を使用した場合は、掃除後に洗う時間に対する人件費がかかる。その時間で利益に貢献する別の仕事ができるだろう。
洗った雑巾が乾くまで干しているスペースの家賃がかかる。これは社屋の面積に占める割合、月間家賃に占める時間から算出できた。もしその時間、そのスペースに雑巾がなければ、もっと利益に貢献できる使い方ができるかもしれない。
掃除用ペーパータオルは、一人が一回何枚使用するか、1か月では何枚使用するかでコストが計算できる。結局、後者のほうが安いとわかり、雑巾からペーパータオルに変えた。
■定期的な仕入れ先見直しで1億円のコストカット
他にも、仕入れ先の見直しは原価削減につながる。
だから定期的に行っている。規模が小さいときに取引を始めた仕入れ先は、小ロットが前提の高い単価であることが多い。そのまま発注数が増えると、支払いが高額になる。そこで見積りを取り直したり、仕入れ先を見直したりすることで、1億円程度の原価の削減ができることがある。
また、決済手数料は大きな注文連動費だ。
年間100億円の売上に対して実は莫大な決済手数料がかかっている。
2~3%とすると、カード決済手数料を年間2~3億円払っている。それを交渉し、0.1%減っただけでも、1000万円の注文連動費の削減になる。
このように様々なコスト削減策を考え、年間1~3億円のコスト削減アイデアが出る。
■「コスト削減キャンペーン」の真の狙い
コスト削減キャンペーンを経験すると、社員のコスト意識が高くなる。
無駄な発注が極端に減る。
決裁者は、新しくコストをかける稟議申請が回ってきたとき、「これに経費を使ったら、今年のコスト削減キャンペーンの議題に上がるのではないか」とすぐ頭に浮かぶようになる。
同時に、毎年様々なコスト削減手法を経験しているので、
「この施策は、こうすることで経費をかけずにできないか」
「この施策とこの施策を同時に行うことで、半分のコストでできないか」
「この施策の費用対効果はどう考えているのか」
など、稟議のたびに、コスト削減キャンペーンレベルで判断できるようになる。
一度、コスト削減キャンペーンに本気で関わった管理職は、適切な決裁をするようになる。その姿勢により、全部署にコスト意識が伝わっていく。このようにして徹底して無駄金を使わない組織ができるのだ。この話を友人の経営者との情報交換や講演などでよく話す。そして多くの経営者が自社で実施したことで絶大な効果があったことを報告してくれる。この「コスト削減キャンペーン」は、ぜひ今すぐやってほしい。
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北の達人コーポレーション社長
1968年、神戸生まれ。リクルート勤務後、2000年に北海道特産品販売サイト「北海道・しーおー・じぇいぴー」を立ち上げる。2002年、北海道・シー・オー・ジェイピーを設立(2009年に株式会社北の達人コーポレーションに商号変更)。「びっくりするほどよい商品ができたときにしか発売しない」という高品質の健康食品・化粧品で絶対に利益が出る通販モデルを確立。「北の快適工房」ブランドで、機能性表示食品「カイテキオリゴ」やギネス世界記録認定・世界売上No.1となった化粧品「ディープパッチシリーズ」などヒットを連発。売上の7割が定期購入で18年連続増収。株価上昇率日本一(2017年、1164%)、社長在任期間中の株価上昇率ランキング日本一(2020年、113.7倍、在任期間8.4年)。
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(北の達人コーポレーション社長 木下 勝寿)
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