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「自民党は苦手だけど"民主党政権"は絶対イヤ」野党の支持率が一向に上がらない3つの原因

プレジデントオンライン / 2021年9月12日 10時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/oasis2me

■菅政権の低支持率のさらに下をいく野党支持率

9月3日、菅義偉首相が自民党臨時役員会で、党総裁選に立候補しないことを表明した。この結果、世間の関心事は次期自民党総裁の行方に集中している。マスコミは毎日、「岸田文雄前政調会長だ」「河野太郎行政改革相が支持を伸ばしている」などと報じている。こうしたなかで危機感を募らせているのが立憲民主党などの野党陣営である。

立憲民主党は菅政権の失政批判で、次期衆院選で議席を伸ばそうとしていたが、菅首相の退陣表明でシナリオが崩壊した。全国紙の政治部記者は「自民党は総裁選を盛り上げて、新総裁に“疑似政権交代”をさせることで、国民の注目と支持を再び集めようとしている」と解説する。

そもそも菅首相の支持率がどれだけ下がっても、野党の支持率は上がっていない。菅首相退任表明前の朝日新聞の世論調査(8月7、8日実施)によると、菅政権の支持率は28%と発足以来最低となったが、政党支持率では与党の自民党が32%でトップ。野党第一党である立憲民主党の支持率はわずか6%だった。

なぜ、野党の支持率は上がらないのか。3つの問題点から掘り下げてみたい。

■立憲民主党の立候補予定者は衆議院議席の過半数に満たない

1つ目の問題点は「候補者不足」だ。

小選挙区制で政権交代を目指すには、全選挙区への候補者擁立が望ましい。ところが衆議院の289選挙区のうち、立憲民主党の9月初め時点の立候補予定者数は約210人にとどまっている。

前出の政治部記者は「候補者を掘り起こしは重要です。新しい候補者を擁立すれば、それだけでニュースになり、党の存在感をPRできる。なにより候補者の数が増えれば、比例票の積み上げになる」と話す。

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写真=iStock.com/imacoconut
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/imacoconut

■「はなから自民党と闘うつもりがない」

政権交代の起きた2009年の総選挙では、当時の野党・民主党の選挙対策を取り仕切っていた小沢一郎氏の強い方針で、全選挙区での候補者擁立を目指した。結果として民主党は、連立を組むことになる国民新党、社民党の現職や候補者のいる選挙区を除き、ほぼ全ての選挙区での擁立を達成した。

二大政党制のもと小選挙区制度で選挙を行うと“風次第”でオセロゲームのような地滑り的な大勝が起こる。2009年がまさにその典型であり、民主党は衆議院全体の議席480議席のうち308議席を占めた。119議席にとどまった自民党の2.6倍の議席を獲得し、政権交代を成し遂げたのだ。

ある政治アナリストは「どれだけの候補者数を擁立しているのかは、その政党が政権を本気で奪取する気概があるかのバロメーターになります。いまの立憲民主党は、はなから自民党と五分に闘うつもりがないということなのだと思います」と冷ややかに見る。

■年々弱まっていく支持母体に頼らざるを得ない体質

2つ目の問題は「旧・民主党との違いがみえない」である。

立憲民主党の最大の支援団体となっているのが、日本最大の労働組合の中央組織・連合だ。連合は官公労などの総評系と民間産別などの同盟系などの流れを統一した労組組織。旧・民主党の支持母体としても知られ、民主党が政権交代を果たした2009年選挙では約700万人が加盟する連合の組織票が大きな力になった。

ところが、自民党に政権が戻ってから連合の影響力は年々低下している。旧・民主党が分裂したことで連合も立憲民主党、国民民主党などに支持政党が分散していることに加え、組織力も低落傾向にあり、思うような組織票を出せなくなっている。

■マスコミ批判の一方で発信ツールは記者クラブ

野党関係者はこう分析する。

「かつて郵便局や農協の組織票を基盤としてきた自民党も、スタイルの変化を意識しており、発信力のある政治家を重視するようになりました。SNSに強い河野太郎氏はその典型例です。一方、立憲民主党はいわゆる大マスコミ批判をしつつも、内心では大マスコミが大好き。例えば、枝野代表が重視するのはいまだに記者クラブ向けの発信ばかりです」

カンファレンス用マイク
写真=iStock.com/RichLegg
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/RichLegg

自民党と立憲民主党の公式サイトを見比べてみると、その一端が垣間見える。自民党の政策ページは図表を駆使したわかりやすいものとなっているが、立憲民主党の政策ページはテキストの羅列なのだ。自民党が国民に直接PRすることを考えているのに対し、立憲民主党はマスコミの記者にさえ理解してもらえばいいと考えているのだろう。SNSの活用も歴然とした差がある。Twitteのフォロワー数では、河野太郎氏が239万人なのに対し、枝野幸男氏は17万人と10倍以上の差がある。

総選挙の切り札として、立憲民主党は強固な組織票を持つ共産党との野党共闘を実現する見込みだが、多くの国民は「党利党略」としか評価しないだろう。

また、執行部の布陣も旧・民主党と代わり映えがしない。枝野代表、福山哲郎幹事長、蓮舫代表代行という顔ぶれを見て、「新しさ」を感じるのは難しい。野党担当記者は「立憲民主党の党勢回復には、民主党政権のマイナスイメージをどう払拭するか、にかかっているのに、いまだに新しいイメージを打ち出せていない」と指摘する。

■与党批判が世間から白い目で見られるワケ

3つ目の問題が「ブーメラン批判」だ。

これは、勢いよく与党批判をしたのに、それと同時に身内の不祥事が明らかになり謝罪する、というものだ。旧・民主党からの悪しき伝統ともいえる。

例えば昨年4月、大学生への支援をめぐり、立憲民主党の蓮舫副代表(当時)は参院予算委員会で「生活も成り立たない。学校を辞めたら高卒になる」などと発言したことで、SNS上で「学歴差別」などの批判が噴出。蓮舫氏は「言葉がすぎました」と謝罪に追い込まれた。

与党議員の失言を厳しく追及する一方で、身内の失言には甘い。今年5月には衆院議員の本多平直氏が党の会合で成人と中学生の性行為を肯定する発言をして問題となったが、当初、立憲民主党は本多氏の議員名の公表すら拒むという対応を取った。

野党担当記者は「本多氏の発言問題は立憲民主党の支持層にとっては容認しがたいものだったはずです。ところが本多氏が枝野幸男代表の元秘書だったこともあってか、党はなかなか処分に踏み切れなかったのです」と説明する。

党は7月になって党員資格停止1年とする処分方針を出したが、本多氏が離党したことで処分は見送られた。まさに、「他人に厳しく、身内に甘い」というお友達体質を露わにしてしまったのだ。

■明らかに「ズレている」枝野内閣の7つの政策

枝野代表は9月7日に記者会見を開き、次期衆院選で政権交代を実現した場合、「枝野内閣」の初閣議で直ちに決定する7項目の政策を発表した。

記者会見する立憲民主党の枝野幸男代表
写真=時事通信フォト
記者会見する立憲民主党の枝野幸男代表=2021年9月7日、東京・永田町の衆院議員会館 - 写真=時事通信フォト

このうち4項目は、日本学術会議に任命拒否された6人の任命、赤木ファイル関連文書の公開など「与党批判」の内容だった。前出の野党担当記者は「記者の間でも『ズレている』と驚きの声が上がりました。あくまで敵失から人気を得ようとする考えが変わらないことにガッカリしたという声も上がっています」と明かす。

8日には立憲民主党、共産党、社民党、れいわ新選組の野党4党などが共通政策として脱原発や消費税減税を盛り込んだ内容を公表した。事業創造大学院国際公共政策研究所上席研究員の渡瀬裕哉氏は「国民ではなく、一部の支援者しかみていない」と語る。

「消費税減税を謳っていますが、枝野氏の公表した『初閣議の7政策』に消費税減税は入っていません。それは消費税減税にずっと及び腰だからで、本気でやる気はない。立憲民主党が目を向けているのは労組や公務員といった支援者ばかりだから、その政策はつねに内向き。国民を見てないのだから支持率が上がらないのも当然なのです」

■今の立憲民主党に足りていない重要なもの

自民党が消費税減税を言い出せない以上、野党が消費税減税をより強く主張すれば「選挙の争点になり得る」と渡瀬氏は指摘する。つまり争点が明確であれば、選挙では選択肢になり得るということだ。立憲民主党に足りていないのは、与党との差別化を図るための明確な「対立軸」作りだといえよう。

立憲民主党の支持率が伸びない大きな理由は、その「暗さ」にあるといえるだろう。与党批判だけを原動力にしてきた後ろ向きの姿勢が、党の暗い雰囲気を醸成する要因にもなっている。立憲民主党が常に「野党第一党という現状に満足しているように見える」(政治部記者)と評されるのも、その姿勢があまりに“内向き”だからだろう。

健全な民主主義には、存在感のある野党が欠かせない。改めて、野党第一党としての奮起を期待したい。

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赤石 晋一郎(あかいし・しんいちろう)
ジャーナリスト
1970年生まれ。南アフリカ・ヨハネスブルグで育つ。「FRIDAY」や「週刊文春」の記者を経て、2019年にジャーナリストとして独立。日韓関係、人物ルポ、政治・事件、スポーツなど幅広い分野で記事執筆を行う。著書に『韓国人、韓国を叱る 日韓歴史問題の新証言者たち』(小学館新書)、『完落ち 警視庁捜査一課「取調室」秘録』(文藝春秋)など。

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(ジャーナリスト 赤石 晋一郎)

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