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「『部下のやる気』を理由にする人は仕事ができない」AIがあぶり出した残酷な現実

プレジデントオンライン / 2021年9月19日 9時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/GlobalStock

各企業で「トップ5%」の評価を受けるリーダーたちに共通する“意外な要素”を明らかにした『AI分析でわかった トップ5%リーダーの習慣』が話題だ。調査・分析を主導したクロスリバー代表の越川慎司氏は「調査前は、交渉力があってメンバーを力強く引っ張っていく姿をイメージしていましたが、まったく違いました」と語る。AIが解き明かしたその驚きの「答え」とは──。(第1回/全2回)

※本稿は、越川慎司『AI分析でわかった トップ5%リーダーの習慣』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)の一部を再編集したものです。

■AIが丸裸「人事のプロも発見できない」真実

AIの強みは、膨大なデータを瞬時に解析すること、そして人間が見つけ出せないインサイトを教えてくれることです。今回、クライアント企業の3556人の管理職を徹底調査・分析したところ、人事のスペシャリストが発見できなかったトップ5%リーダーの特徴をAIが次々発見してくれました。

その驚きを読者のみなさんに共有しようと1冊にまとめたのが、『AI分析でわかった トップ5%リーダーの習慣』です。

いま、「テレワークだとうまく管理ができない」「コロナで慌ただしい中で成果を出すのは難しい」など、できない口実や愚痴ばかりを言う管理職が増えています。

たしかにこんな大きな変化がやってくるとは誰も思いませんでした。でも、変化に対応できず苦しんでいる上司を見て、メンバーはどう思うでしょうか。

「自分がしっかりと支えなきゃいけない」と立ち上がるメンバーがいたらラッキーです。「上司がダメだとダメな部下が育つ」と言われることもあります。しかし、それは結果論であって、たまたま優秀な素地を備えたメンバーがいたからでしょう。

■「他責型」の人はアウト

成果を出し続ける5%リーダーは、弱音は吐きますが、他責にはしません。アウト・オブ・コントロール(自分では制御できない)なことに不平不満を言っても、それはエネルギーの浪費でしかないからです。また、そんな姿を周囲に見せれば、同調してメンバーのモチベーションが下がってしまいます。

5%リーダーは、インナー・サークル志向です。変わりゆく外部環境の中で、自分がコントロールできるインナー・サークルの中で何をすべきかを考え、すぐに実行します。

また、優秀なメンバーがたまたま出てくることを待つのではなく、出てくるような仕組みを整えます。

5%リーダーは、自らがもたらした結果のすべてが実力だとは思っていません。「運がいい」と口にすることが、5%リーダーは一般の管理職よりも4.3倍多かったのですが、これは、運と実力の差をわきまえている、ともいえるでしょう。

コントロールできないアウト・オブ・コントロールの領域では、ラッキーなことも逆風も起きます。5%リーダーは、逆風下でマイナスのインパクトがないように、しっかり備えを進めています。チーム内でペアを組み、一方が何かあったときに、もう一方が支える仕組みを作っていました。

■「やる気」に依存しない強いチームを

5%リーダーは、エース人材のやり方を水平展開するポリシーがあり、チームの新人はそれを真似すればある程度の成果を出せるようになっています。パフォーマンスを出せないメンバーには、得意を伸ばし、他のメンバーの補完ができるように導きます。

メンバーの強みと弱みを理解し、その掛け合わせでチームの成果を最大化しているのです。

5%リーダーは、やる気があるかないか、ラッキーなことが起きるかどうか、優秀な人材が入ってくるかこないか、といった「不確定要素」に賭けることがありません。やる気がなくても行動を継続する仕組みを作り、偶然の発見を必然にする情報収集をしています。なにより、一個人の能力に大きく依存することを避けています。

変化する環境にもしなやかに適応する5%リーダーは、レジリエンスな人材といえます。バネのように伸び縮みすることで変化に対応し、仮に何か失敗したとしても元に戻ります。

■「言われたことだけやる人」はもういらない

ドラッカーは著書『プロフェッショナルの条件』(上田惇生訳、ダイヤモンド社)で、「リーダーシップとは、組織のミッションを考え抜き、確立することである」と記しています。一方、組織でチームを牽引する管理職をリーダーと称することもあります。

しかし、リーダーシップは管理職だけではなく、「全員が持つべきマインドセット」と「実行力」です。

言われたことだけやる人は、実直で組織に求められやすいかもしれません。しかし、世界の変化が激しくて、“正解の行動”がわからない時代は、「言われたことだけやる人」はむしろ厄介な存在です。

労働時間の上限が規制され、出勤することすら制限されても、成果は出し続けなければなりません。自分でアンテナを高く張って、自発的に動かなければ劣化してしまいます。

どうやったら外部の変化を取り込み、しなやかに生き抜くことができるのか。その1つのヒントが5%リーダーの中にあります。

■そもそもなぜトップ5%なのか?

私は、約20年前に大手通信会社の人事部に配属されてからというもの、一貫して人や働き方に関心を持ち、深く掘り下げてきました。

多くの会社の評価査定はS・A・B・C・Dなどの5段階評価で、上位10%くらいの人が最上位評価Sを得ています。そして、トップ評価の中でも突出した成果を残している、いわゆる「SS級」の方がいます。

SS級の人は、1年だけ突出した成果を上げているのではなく、突出した成果を出し続けています。売上目標を3年連続で120%達成していたり、社内異動をしてもまったく評価を落とすことなく高いパフォーマンスを維持しています。

多くの企業が成果主義のジョブ型雇用にシフトする中で、「人柄」や「上司に好かれる」といった評価基準ではなく、安定して最高評価を受け、社内外から認められる人こそ各社の人事評価トップ5%の人材であり、トップ5%リーダーです。

「WORK」「SMART」と書かれているメモ用紙
写真=iStock.com/Piotrekswat
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Piotrekswat

■暗黙知から可視化されたノウハウへ

テクノロジーの進化により、いまでは働く人々の実像が「見える化」されてきています。

言動や成果物がデジタルデータとして蓄積され、満足度や働きがいなど、感情も数値で見られるようになりました。ITツールを使って容易に1対1の対話(1 on 1ミーティング)ができるようになり、360度フィードバックや、マネージャーフィードバック(上司への意見)も行われるようになりました。

暗黙知だったものがより可視化され、定量的に測ることもできるようなると、パターン化ができます。メールやチャット、電話やオンライン会議などがデジタルデータとして蓄積されます。

そうしたビックデータをAIサービスと専門家で分析すれば、「突出した成果を出し続ける人」の共通点が見出されます。つまり、各社のトップ5%の人とそうでない人の言動の違い、トップ5%社員とトップ5%リーダーの違いも抽出できます。

このデジタルデータの蓄積と分析に注目した弊社は、これまで812社のコンサルティングを通じて、この取り組みに共鳴していただいたクライアント企業25社と、データ収集と実験を行いました。

加えて、コロナ禍(か)以降に起きた変化をふまえて、管理職(リーダー)に着目し、クライアント企業各社の「トップ5%リーダー」1841人、それ以外の管理職1715人を対象に、対面・リモートによるヒアリングやWebアンケートなどで調査を行いました。

未来へ導くリーダーの実像、withコロナでもbeforeコロナ以上に成果を出し続けている人の行動とはいかなるものかに迫ったわけです。

■withコロナの成功パターン

偶然ではありましたが、コロナ前からコロナ禍をまたがって調査を進めることとなり、beforeコロナの「トップ5%社員」と、 withコロナのそれとで、共通点と相違点を確認することもできました。

beforeコロナとwithコロナで大きく異なったのは、コミュニケーション方法でした。

自分が主役の「伝えるコミュニケーション」と異なり、相手が主役の「伝わるコミュニケーション」は、対面のほうがそのテクニックを発揮しやすいといえます。

直接会うことができず、オンライン会議サービスを使っても、相手がビデオをオンにしてくれないケースが多発し、5%リーダーはかなり苦労したようです。

しかし小さな行動実験の積み重ねによって、withコロナの成功パターンを見出していました。この努力や行動実験はbeforeコロナでは必要なかったものです。コロナ禍で新たな課題が発生し、そして5%リーダーは解決したわけです。

厳しい状況下で、5%リーダーが目指していたのは「共感と共創」です。

経済格差が広がり、価値観の二極化が進む中で、「共感と共創」は今後社会の大きなテーマになるでしょう。5%リーダーはいち早く、時代を支配する空気の変化を感じ取り、すでに行動を起こしていました。

同情するのではなく共感し、一方的に提案するのではなく共に考え抜く。早くもそうした行動をチーム内に浸透させ、チームの目標達成へつなげていました。

■効率重視から価値観の一致への転換

beforeコロナにおいて、トップ5%社員は徹底的に効率を重視し、最短距離で目標達成することを目指していました。

withコロナでは、人を巻き込むことが難しくなりました。また、メンバーの価値観の多様化が急速に進みました。その中で5%リーダーは、メンバーと対話を重ね、目指す方向を一致させていました。

コロナ禍でも成果を出し続けるためにメンバーと話し合いながら、チームの意義・目的を明確にし、チームメンバーたちに理解させることに集中していました。一見したところ、効率が悪いように思える地道な活動を行っていたのです。

時間をかけてでもメンバーたちと信頼関係を構築することができれば、さまざまな困難に直面しても心でもつながり続け、協力体制を維持することができると確認したようです。

また、人間関係を構築する際に、「弱くつながる関係」と「強くつながる関係」を切り分けているようにも見えました。メンバーとは心理的安全性を確保しながら、行動目標を設定し共に達成に向かって歩み続けることを意識しています。

■「強いつながり」を「弱いつながり」へ広げる戦術

時に結果が伴わなかったり、価値観のズレが生じたりすることもありますが、5%リーダーは、メンバーから嫌われることを覚悟しており、精神的に強いのです。

ただ、社外へのキーマンや社内のステークホルダーに対しては強い関係を構築するように努めていました。

「オセロの角を押さえるようにキーパーソンと関係を構築して、形勢を有利にしていきたい」「ビジネスで大きなインパクトを生み出すために、要点を抑えたい」という発言が多くありました。献金や賄賂、ご機嫌取りなどといったレベルの話ではなく、ビジネスのツボを押さえようとする「効率志向」からくるものでした。

テレワークが進む中で、「偶然の出会い」に遭遇する機会が少なくなっています。

それでも5%リーダーは影響力のある人とつながり、そこからさらに関係を広げていくことを視野に入れていました。それは、強いつながりを元に、弱いつながりを広げていく戦術のように思えます。

談笑する人たち
写真=iStock.com/bernardbodo
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/bernardbodo

■5%リーダーは「手放す」

5%リーダーは、チームの目標達成のみを考えています。

もちろんリーダー自身の評価を上げることも考えていますが、個人ではなく、チームの目標達成が最優先事項です。個人の目標達成を目指す5%社員とは違い、より大きな組織目標を達成しなければならない5%リーダーは、メンバーの協力が必須です。

もともと業務処理能力が高い社員がリーダーに抜擢(ばってき)されることが多く、自分の能力や頑張りでチームの目標を達成しようとする人は大勢います。

しかし、会社としてもそんなに「甘い目標」を与えるはずがありません。個人で目標達成するのであれば、管理職に昇格させる必要はないのです。会社としては、メンバーを使って、個人では達成できないチーム目標を達成させようとしています。

そのために5%リーダーは、メンバーには必ずタレント(能力)があると信じ、それを引き出すためにどのようにティーチングとコーチングをすべきか考えます。

メンバーに自由と責任を与え、自発的に動いてもらうことで、リーダー自身の管理負荷を減らそうともしています。すべてを完全にマネジメントできないと腹をくくっており、「メンバーのほうが自分より顧客や現場に近い分、より多くの情報に触れて業務スキルが高い」と答える5%リーダーが大勢いました。

つまり、5%リーダーは自分1人では達成できない大きな目標を達成するために、今までやっていた自分の能力や経験を手放しているのです。この上司の「手放す」という行為が実はチームの結束力を生み、それがチーム個々人の自主性を育みます。

メンバー同士が強み・弱みを出し合い、それを掛け合わせて1+1を3や5にするチームを作ろうとしているのです。

■5%リーダーの行動習慣を真似て成果を出す

5%リーダーは量産できるものではありません。しかし、彼らに共通する行動習慣を学び、自社に取り入れることで、確実に「成果を出し続けるリーダー」を育成するための「プラットフォーム」の構築を目指すことは可能です。

また、個人としては自分のリーダーとしてのあり方を、具体的にアップデートするためのきっかけにすることが可能です。

越川慎司『AI分析でわかった トップ5%リーダーの習慣』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)
越川慎司『AI分析でわかった トップ5%リーダーの習慣』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)

一人ひとりの力を結集し、組織として成果を最大化することがすべての企業が目指すべき姿でしょう。

変化が激しい時代に、言われたことだけをやるのではなく、自分たちで考えて自分たちでやる「自走式組織」が求められています。変化を即座に感じ取り、しなやかに行動を変えて意識も一緒に変えていく──。

言うのは簡単ですが、このような人材や組織を作るのには4年も5年もかかります。

しかし、各社の5%リーダーが教えてくれた行動習慣を参考にすれば、進むべき道が見えてきます。少なくとも、失敗確率を下げることができます。無駄な挑戦や効果のない実験をやらなくて済むわけです。

■「知る」より「できるようになる」が重要

これからも変化は続きます。さらに速く、そしてより多く行動実験をしていかなければなりません。

目的は5%リーダーの方法論を「知ること」ではなく、「できるようになること」です。外部の変化に負けず、「成果を出し続ける」ことを必然にしてください。

偶然の出会いを必然にするのは、あなたの行動のみです。さあアウトプットして「変化」を起こしていきましょう。

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越川 慎司(こしかわ・しんじ)
株式会社クロスリバー代表、株式会社キャスター執行役員
元マイクロソフト役員。国内および外資系通信会社に勤務し、2005年に米マイクロソフト本社に入社。2017年にクロスリバーを設立し、メンバー全員が週休3日・完全リモートワーク・複業を実践、800社以上の働き方改革の実行支援やオンライン研修を提供。オンライン講座は約2万人が受講し満足度は98%を越える。著書に『AI分析でわかったトップ5%リーダーの習慣』、『AI分析でわかったトップ5%社員の習慣』(共にディスカヴァー・トゥエンティワン)など16冊がある。

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(株式会社クロスリバー代表、株式会社キャスター執行役員 越川 慎司)

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