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「AIが突き止めた意外な真実」なぜ"トップ5%のリーダー"は歩くのが遅いのか

プレジデントオンライン / 2021年9月23日 9時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Nattakorn Maneerat

各企業で「トップ5%」の評価を受けるリーダーたちに共通する“意外な要素”を明らかにした『AI分析でわかった トップ5%リーダーの習慣』が話題だ。調査・分析を主導したクロスリバー代表の越川慎司氏は「彼らは社内で変人と言われるくらいに、周囲と違った行動をすることがあります。しかし、最も変わっていたのは、性格や言動ではありませんでした」と語る。AIが解き明かした驚きの実態とは——。(第2回/全2回)

※本稿は、越川慎司『AI分析でわかった トップ5%リーダーの習慣』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)の一部を再編集したものです。

■【習慣①】59%は「歩くのが遅い」

2020年1~3月期にかけて、5社に協力してもらい、オフィスに定点カメラを設置して「トップ5%リーダーの習慣」について調査しました。

デスク上はもちろん、人の流れが活発なフロアの出入り口付近、オープンスペースにwebカメラを設置して、人々が働いている様子を録画しました。そこで明らかになったのは、移動するスピードの違いです。

厳密に移動速度を測ったわけではなく、目視ではありますが、5%リーダーの59%が明らかに、平均的なスピードに比べてゆっくり移動していました

「人事評価トップ5%社員」はせっかちで、歩くスピードは一般社員より速いという傾向がありました。そこで、「5%リーダー」もやはり歩くスピードが速いのかと思いきや、まったく違いました。

また、一般の管理職で他者よりゆっくり歩く人は38%でしたから、5%リーダーは管理職の中でも相対的にゆっくり歩いているといえます。

5%リーダーに直接ヒアリングしたところ、どうも自覚はないようです。しかし、別のアンケート調査で、「意図的に時間と気持ちの余裕をつくるようにしている」と答える人が58%いたので、それが歩くスピードに反映している可能性が考えられます。

■5%リーダーは階段で移動する

5%リーダーは、自分が仕切る会議が時間内に終わることを厳守していました。会議中に時間を確認する回数は一般の管理職より2.8倍多く、予定より早く終わることもありました。

会議改革にも取り組み、「60分の定例会議を45分に設定」「意思決定の会議は参加者数を絞る」など、社内会議の量と質を改善しようとしていました。そうした取り組みを行う5%リーダーは、一般管理職の3倍以上でした。

面白いことに、5%リーダーはエレベーターをあえて使わず、階段で移動する人が多いのです。階段を速く駆け上がる一方、オフィスフロアや廊下はゆっくり歩いています。

眉間にしわを寄せてフロアを急いで移動する上司より、余裕をもってゆっくり歩いている上司のほうが、「今ちょっといいですか?」と声をかけやすいですよね。

5%リーダーは、メンバーから気軽に声をかけられることをよしとしていますから、「あえてゆっくり歩いて」話しかけられる間を作っているのかもしれません。

■【習慣②】58%が「話が短い」

ヒアリングと、5%リーダーの1対1ミーティングの様子を分析した結果、5%リーダーの58%は、発言数が多い半面、発言時間は短いことがわかりました。

相手に話をさせるように、しっかり聞く姿勢にあることも特徴的でした。ミーティングでは、5%リーダーよりチームメンバーのほうが長く話していたくらいです。

「丁寧に話せば確実に相手に伝えることができる」と勘違いする管理職は多くいます。しかし、事細かに説明しても、相手がそれを聞く気にならなければ伝わりません。

そこで、5%リーダーは、説明する際もコンパクトに小気味よく話します。さらに、「伝わること」を目指す5%リーダーは、話したあとで相手の反応をしっかり確認していました。

■5%リーダーは「最初の一言」に魂を込める

会議終了から1時間後、「どのパートが最も記憶に残っているか?」を調べました。7516人に質問を投げかけたところ、答えは「最後の5分」でした。

人間は1時間で約7割の情報を忘れるといわれます。「最後のパート」が記憶に残っているのは当然のことでしょう。

一方、2番目に記憶に残っているパートを聞くと、69%の人が「会議の冒頭」と答えました。記憶力からすると最後のパート、印象に残るのは冒頭部分。とくに最初の一言は、インパクトが残りやすいことがわかりました。

ということは、リーダーは会議の冒頭と最後にエネルギーを注ぎ込めば、メンバーにインパクトを残しやすいといえます。

5%リーダーは、この法則を無意識に理解していて、最初の一瞬にエネルギーを注ぎ込みます。しかも、事実や事象を淡々と説明するのではなく、事実から導き出された気づきや、その事象からもたらされる参加者のメリットとデメリットについて説明していました。

■1対1コミュニケーションを双方向にする工夫

5%リーダーが「コンパクトに話す」ことは、メンバーとの1対1のミーティングでも同様です。

一般の管理職は、1対1ミーティングで自分が話すのは7割、メンバーに話させるのが残り3割ぐらいでした。

一方、5%リーダーはメンバーに興味・関心を持ち、コンパクトな質問で相手に気持ちよく、そして長く話させます。ミーティング時間の平均67%を、メンバーに話をさせているのが特徴的でした。

5%リーダーは、メンバーに自分自身のことを考えさせる時間を作って、その気づきや学びを思う存分話してもらうことを狙っています。

「どうですか?」と冒頭で一方的に聞くことはありません。自分の経験や感想を軽く話してから、「たとえば私は◯◯ですが、あなたはどうですか?」と質問し、メンバーが答えやすい流れを作っていました。

答えやすい空気作りと、自発的に話す機会を多く与えること。こうした工夫をして、メンバーにたくさん話させ、双方向の対話へと変換させていました。

コーヒーを飲む人たち
写真=iStock.com/ArthurHidden
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/ArthurHidden

■【習慣③】48%が「メンバーにかなわない」と思っている

プレーヤーとして優秀な人が、リーダーの素養があるわけではありません。プレーヤー個人として成果を残すことと、チーム全体の目標を達成することは、実現方法も必要なスキルも異なります。

5%リーダーの48%は「自分がメンバー全員の能力を上回っている必要はない」と答えています。現場のメンバーが自分で考えて自走する組織を目指すうえで、リーダーがすべてを担って動く必要はないと考えているのです。

実際、現場や顧客、市場の近くで業務を行うメンバーのほうが外部の変化を受け取りやすいといえますから、役割分担をしたほうが目標達成に近づきます。

また、5%リーダーは、業務遂行能力を高めることを諦めています。自分の業務処理能力を高めることより、メンバーの能力を高めるために、チーム全体の調整をすることが自分の責務だと思っています。

仮に加入したばかりのメンバーがいた場合、その人は業務知識や業務処理能力がほかのメンバーより劣る場合もあるでしょう。しかし5%リーダーは、全メンバーに何らかのタレント(才能)があると信じているので、ほかのメンバーとは異なる才能を見つけ出し、それをチーム内で際立たせています。

■普通の管理職は75%が「自分のほうが優れている」と考えている

一方、一般の管理職は、「メンバーにはかなわないと思っていますか」という質問に対して「いいえ」と答える人が75%でした。確かに能力としては上回っている部分もありますが、そういったそぶりや言動をすれば、現場のメンバーが遠ざかっていくことは容易に想像できます。

メンバーとフラットな関係を構築することを目指す5%リーダーは、能力の優劣という基準を持ちません。メンバーにも自分にも得手不得手があるという前提で、役割分担しながら同じ方向に向けて切磋琢磨していこうとしています。

これこそが、トップ5%リーダーが目指す「共感・共創」の関係です。

■【習慣④】65%が「思い切った決断をしない」

管理職になれば、現場のメンバーとは異なり、多くのことを決めなければなりません。人員配置や予算管理、他部門との連携や根回し、経営陣への説明など、次々に決定していかないと物事が前に進みません。

5%リーダーは確実に意思決定をします。

実現可能性や投資効果、インパクトや重要性など、複数の評価軸を複合的に組み合わせ、ブレない信念を持って決断します。調査で集めた8000時間におよぶオンライン会議の録画記録を見ると、一般の管理職と5%リーダーの違いは顕著でした。条件は異なるものの、5%リーダーの決定数は約25%多かったのです。しかも、さまざまな案件に対して即座に意思決定をしていきます。

たとえば、同一のクライアント企業で同じ職責の管理職で、同じ案件の意思決定のスピードを測ったところ、5%リーダーは他の管理職に比べて意識決定スピードが約1.3倍速いことがわかりました。1.3倍は誤差のように思えるかもしれませんが、積み重なれば現場の待ち時間が少なくなり、効率が高まります。

■「やめる決断」と「受けない決断」が重要

これまでやっていたことをやめる決断や、重要性が低いためタスクを受けないといった決断をすれば、現場のメンバーへの負荷は大幅に減ります。このことを5%リーダーはよく理解しています。

そのため、「進むぞ!」と決断するのと同時に、「代わりにこっちは止める」というトレードオフをしています。「やる覚悟」と「やめる覚悟」を持っているのが5%リーダーの特徴といってよいでしょう。

しかも、彼らは一か八かの思い切った決断をしません。

5%リーダーへの度重なるヒアリングを通じて、意思決定は早いものの、「少しでも望みがあればそれに賭ける」といった博打的な決め方をしないことがわかりました。成功確率を上げようとするより、失敗確率を下げようとしているのです。

変化の激しい時代には、成功テンプレートをそのままマネするのではなく、過去に失敗したケースの発生原因を掘り下げて把握し、同じ失敗を回避することが結果的に成功に近づくと、5%リーダーは理解しています。そのため、失敗確率を下げられるようなオプションを選ぶ傾向にあるのです。

それは「逃げ」ではありません。何もしないでただ待つより、積極的に挑戦し、失敗確率を下げて前へ進めば、成功に近づくことができると理解している5%リーダーが多いといえます。

「失敗確率を下げる」と発言をしたのは、5%リーダーで291人、一般の管理職は4人でした。成功例を真似することに注力している一般の管理職は891人、5%リーダーは3人でした。

歩いている人たち
写真=iStock.com/Eoneren
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Eoneren

成功例を真似して成功を目指す一般の管理職と、失敗例をもとに発生原因を追求し同じミスを起こさないように失敗確率を下げていく5%リーダー。成果を出し続けているのは5%リーダーですから、失敗確率を下げていく戦術の有効性がわかります。

■【習慣⑤】67%が「情報」より「感情」を共有する

5%リーダーの特徴は、仕事そのものよりも「仕事をしている人」に強く関心を持っていることです。

メンバー個々の能力や価値観に強い関心があり、メンバーのベクトルを1つにして組織の目標を達成しようとするのが5%リーダーです。

突出した成果を出し続ける5%リーダーは、一見ドライに感じられる面もあるかもしれません。しかし、実際に話を聞いてみると、人付き合いはウエットで、宴会や会社行事では率先して盛り上げる人が多くいました。

メンバーに対して興味・関心を持つことは、人間関係を構築するうえで有利に働きます。

人間同士のことなので、もちろん「合う・合わない」はあります。「好き・嫌い」もあるでしょう。しかし、相性を超えて、メンバーの「できること・できないこと」に関心を持ち、ほかのメンバーの「できること・できないこと」を組み合わせることで、最大限の効果を引き出そうとしています。

そのため、5%リーダーはまず、メンバーを把握するために対話の頻度と、相手に話してもらう時間を増やします。

メンバーとの対話では、単純に結果を共有してもらうだけではインサイトを得ることができないので、その結果が導き出された原因を掘り下げていきます。

チーム全体で成果を出し続けるためには、心理的要因も重要であることを5%リーダーは理解しています。匿名のwebアンケートで、5%リーダーの67%が「情報よりも感情共有を重視する」と答えていました。一般の管理者の約20倍です。

■5%リーダーはメンバーの感情に寄り添う

withコロナで心理的安全性(好きなことを話しても安全であるという心理状態)を確保することが重要だと理解した管理職は多かったでしょう。

withコロナになってからテレワークが本格的に開始され、5%リーダーは真っ先に感情共有の仕組みを整え、メンバーの感情に寄り添っていました。

会議を減らして会話を増やし、1対1の対話の時間も増やしました。チームミーティングの開始直後は、仕事から離れて無邪気に雑談をしていました。

時にメンバーが不合理な不平不満を言うこともあるでしょう。自分ではコントロールできないことに対して愚痴を言い続けるメンバーもいるでしょう。愚痴の大半は解決しようのないことです。しかし、メンバーのその感情が生み出されたメカニズムを、リーダーが理解しようとすることは大切です。

メンバーは、一生懸命頑張ったけれども結果に至らないのは自分のせいだと自責することもあるでしょう。うまくいったのはほかの人のおかげなのに、自分の手柄にしようとすることもあるでしょう。失敗を他責にすることもあるでしょう。

5%リーダーは、そうしたメンバーの感情に寄り添いながら、問題の発生メカニズムを一緒に考えていこうとしています。そうすることで、不平不満・愚痴が論理思考へと転化し、ネガティブなサイクルから抜け出そうとしていたのです。

■「自走式のチーム」を作る極意

解決策を伝えても、相手に受け入れる準備が整っていなければ、何も伝わりません。

まずは対話を重ねて信頼関係を構築し、どんなフィードバックでも受け入れてもらえるような関係を作ります。一方的に伝えてしまうと、メンバーは自分で考えずに「ただ言われた通りにやる人材」になってしまいます。

越川慎司『AI分析でわかった トップ5%リーダーの習慣』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)
越川慎司『AI分析でわかった トップ5%リーダーの習慣』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)

自分たちで考え、変化にしなやかに対応する必要がある今の時代は、自主的に行動するメンバーを育てないといけません。リーダーは一緒に考えて一緒に行動をするという協力体制を構築していく必要があります。

その協力体制に必要なのが、共感から始まる信頼関係です。

一見遠回りのようですが、チーム目標に向かいベクトルを1つにして、失敗しても他責にするようなネガティブな行動を抑え、内省しながら行動を変容させていく……。

5%リーダーは、このようにして成果を出し続ける健全なチームを作っていたのです。

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越川 慎司(こしかわ・しんじ)
株式会社クロスリバー代表、株式会社キャスター執行役員
元マイクロソフト役員。国内および外資系通信会社に勤務し、2005年に米マイクロソフト本社に入社。2017年にクロスリバーを設立し、メンバー全員が週休3日・完全リモートワーク・複業を実践、800社以上の働き方改革の実行支援やオンライン研修を提供。オンライン講座は約2万人が受講し満足度は98%を越える。著書に『AI分析でわかったトップ5%リーダーの習慣』、『AI分析でわかったトップ5%社員の習慣』(共にディスカヴァー・トゥエンティワン)など16冊がある。

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(株式会社クロスリバー代表、株式会社キャスター執行役員 越川 慎司)

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