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「ウチは余裕があるから」年収1800万晩婚夫婦が"お金に困った"本当の理由

プレジデントオンライン / 2021年9月28日 12時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/JenAphotographer

平均初婚年齢が上昇している。晩婚にはどんなリスクがあるのか。ファイナンシャルプランナーの高山一恵さんは「晩婚の場合、大きな金額が必要になるライフイベントが人生の後半にやってくる。今は余裕があるからと油断しないほうがいい」という――。

※この連載「高山一恵のお金の細道」では、高山さんのもとに寄せられた相談内容をもとに、お金との付き合い方をレクチャーしていきます。相談者のプライバシーに考慮して、事実関係の一部を変更しています。あらかじめご了承ください。

金城さん(仮名/38歳→54歳)のケース
本人 16年前:会社員 年収800万円→現在:専業主婦
夫 16年前:会社員 年収1000万円→現在:会社員(まもなく定年退職)年収500万円+退職金1500万円
子供 高校(私立)1年生
住まい 16年前:賃貸マンション(家賃12万円 ※管理費等込)→現在:賃貸マンション(家賃20万円 ※管理費等込)

■妻は38歳、夫は48歳で結婚

2019年(※)の平均初婚年齢は、夫が31.2歳、妻が29.6歳。1975年には夫が25.7歳、妻が24.7歳だったので、着実に「晩婚化」が進行していると言えるでしょう。初婚年齢と共に出産年齢も上昇し、結婚した女性が第一子を産んだ平均年齢は30.7歳となっています。

お金の面で「晩婚化・晩産化」を見た場合にも、気をつけたい点がいくつか存在します。今回は16年ぶりに私のもとへ駆け込んできた金城さん夫婦(仮名)のSOSから、その問題点を考えてみたいと思います。

※内閣府「令和3年版 少子化社会対策白書 全体版」

田村未知子さん(仮名)は38歳の時、48歳の金城聡さん(仮名)と結婚しました。未知子さんは外資系コンサル業界で管理職として働いており、16年前の当時の年収は800万円。夫の聡さんもメーカー勤めの管理職で、1000万近い年収がありました。

バリキャリとして働いていた未知子さんでしたが、結婚を機に退職。連日の深夜残業や仕事へのプレッシャーに疲れきっていた彼女にとって、「結婚」は仕事を辞めるいいきっかけだったそうです。

年齢的なこともあり、金城さん夫婦は結婚後すぐに子作りを開始。高齢妊娠というリスクを乗り越えて無事に子供を出産できました。これは晩産ご夫婦に通じる点かもしれませんが、お子さんを「孫」のように愛で、猫可愛がりする方が多い気がします。金城さん夫婦もまさにそうで、幸せ全開といったご様子でした。

■妻は退職していたが、子供は小学校から私立を希望

初めてお会いしたのは、未知子さんが妊娠中のタイミングです。すでに子どもの教育に並々ならぬ情熱を抱いていて、教育プランでのご相談でした。彼女は仕事を辞めていたので、世帯年収は聡さんの年収である1000万円。小学校から私立も視野に入れたいということでしたので、お稽古ごとにあまりお金をかけすぎず、月3万円くらいまでに抑えて、メリハリをつけてやっていきましょう、というお話しをしました。

それから月日は流れ、16年ほど経った最近、未知子さんが再び私のもとにご相談にこられたのです。高校一年生になったお子さんは大学附属の有名私立に通っているそうで、教育ママとしての役目も一段落したようでした。

そんな彼女が、とても言いにくそうにぽつりぽつりと語りだしたのが、まさに「教育費」の話でした。

■「教育移住」で月の家賃が8万円アップ

結婚当初、東京都下の賃貸マンションで暮らしていた金城夫婦は、「教育移住」として都心の2LDKのマンションに移り住んでいました。それまでの家賃は12万円でしたが、引っ越してから10年以上、毎月20万円の家賃が発生していたのです。

この時点ですでに、私が16年前に作成した80歳までのキャッシュフロー表からは大きく外れていたことになります。

このマンションを選んだのは、日本屈指のエリート公立小学校への進学を狙ったからでした。受験に落ちた場合のセーフティーネットと考えたそうです。

実際、金城さんのお子さんは小学校受験を見送って名門公立小学校に進学。中学受験という道をたどりました。

「教育移住」自体、珍しいものではありません。板橋区から文京区といった都内間での引っ越しだけでなく、県外から東京に移住してくる方もいますが、いずれも都心部への引っ越しとなるので、それまでより住居費が大幅に高くなります。加えて、塾代や学費といった純粋な教育費もかかりますので、教育移住は慎重に必要経費を見積もる必要があるビッグプロジェクトと言えます。

ただ金城さん夫婦の場合、バリキャリ同士の晩婚夫婦だったゆえ、互いに1000万円ずつの貯金もあり、手取りにすると毎月60万円ほどの収入もあったので、20万円の住居費でも当面は問題なかったのでしょう。

■水泳、英会話、ピアノ…習い事だけで月10万

しかし問題はここからです。

未知子さんは子供が幼稚園に入ると早速、習い事を始めさせました。水泳、英会話、ピアノ……等々、あらゆるジャンルの習い事にチャレンジし、専業主婦の未知子さんは日々、教室から教室へと送迎で忙しく過ごしていたそうです。

スイミング
写真=iStock.com/flyingv43
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/flyingv43

なかには1回40分、週1回で月2万円という高額な教室もあり、「習い事だけで毎月10万円になっていた」と、今にも消え入りそうな声で話してくれました。たしかにこの金額は、かつての私のアドバイスからはかけ離れたものでしたから、未知子さんはずっと相談しづらかったのでしょう。

そうして小学校4年生になると、中学受験に向けて本格的に塾に通い出しました。その分、お稽古ごとの比率はガクッと下がったものの、5年生になると塾にプラスして家庭教師もつけるように。

以前もお伝えしましたが、「お受験」は、財布を握っている親が熱くなってしまうと、かなり危ないことになります。子供の頑張りを見れば、親が応援したくなるのは自然なこと。しかも、目の前に使えるお金があればなおのこと、歯止めをかけるのは難しいのです。

■私立進学の目安は「毎月8~10万円を捻出できるか」

未知子さんは冗談めかすように、「塾と家庭教師でこの頃は毎月2、30万円は使ってたかな。いまだに怖くて集計できてないんですよー(笑)」と話していました。なかなか金額を言いたがらなかったところを見ると、実際にはもっとつぎ込んでいたのかもしれません。

だとすれば、小学校5年生から中学合格までの約2年の間、住居費と塾・家庭教師代だけで手取り60万円の大半が消えていたことになります。結果的に金城夫婦は貯金を切り崩すようになりました。

そうしてお子さんは無事に大学附属の私立中高一貫校に合格します。私立の場合、家計から毎月8~10万円を教育費として捻出できるかどうかが、ひとつ進学を考える際の目安になってきます。

私自身、年収1000万円、住居費12万円という中で金城夫婦のキャッシュフローを作成した際には、小学校から私立に入れても問題はないだろうと考えていました。しかし実際には幼稚園から住居費が毎月20万円に大幅アップし、お稽古ごとに毎月10万円。さらに小学校高学年の時には塾代と家庭教師代で月30万円を費やしていたのですから、火の車になるのも当然だと思います。

奨学金
写真=iStock.com/marchmeena29
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/marchmeena29

■「たった一人の大黒柱」夫の定年でいよいよピンチに

未知子さんもきっとどこかで、今の状況の危うさをうっすら感じていたのだと思います。だからこそ、ずっと私に会いにくかったのでしょう。そんな中で今回、未知子さんが意を決して来てくださったのは来年、夫が65歳で定年を迎えるからでした。

当たり前ですが、アドバイスを守っていただけなかったとしても、決して私は怒りません。その時その時に応じて、できる最善のご提案をするだけです。ただ、大きな金額が動く場合は早めにご相談にきていただけると、選択肢を多く用意することができ、無理のないライフプランを提案できるのかなと思っています。

そういった意味で、たった一人の大黒柱が来年定年を迎える金城さん夫婦の場合、ご提案できる選択肢は非常に少なくなってしまいました。

まずは、住居費を今すぐダウンサイジングしてもらうようにしました。金城さんは持ち家がないため、老後も賃貸を続けることを考えると、これは急務です。ただお子さんの通学があるため今すぐ都心から離れることは難しく、家賃15万円くらいのところになりそうだということでした。

ただ不幸中の幸いにも聡さんには1500万円ほどの退職金が出るそうなので、当座は問題ないと思います。しかし、お子さんが独り立ちするまでまだ10年ほど時間がありますし、妻の未知子さんもまだ54歳です。このままでは老後資金を退職金一本に頼らざるを得ませんが、未知子さんが働きに出て聡さんも再就職できれば、不測の事態にも備えられます。未知子さんには、お金を増やすアクションを今からでも少しずつ考えてほしい、とお願いしました。

■晩婚夫婦はライフイベントが人生の後半に集中する

晩婚の場合、マイホーム購入や子供の大学資金・老後費用の捻出といった、大きな金額が必要となるライフイベントが人生の後半にまとまってやってきます。ただみなさん、それまでにキャリアや財産をある程度築いてきていることもあり、金城さん夫婦のように油断してしまう傾向があるようです。

そして今は50代から賃金が減少傾向にあります。役職につくと残業代がなくなり、昇進したにもかかわらず給料が下がったという話もよく聞きますが、年齢・キャリアと給料が比例しない一例でしょう。また役職手当よりも現場でガチガチに残業していた方が儲かるというのは、日本型雇用の歪みにも見えます。

20代で結婚して子供を作ると金銭的に大変なことも多いかもしれませんが、40代中盤で子育てが終わるので、大きな費用がひとつ減ります。それに40代なら、「これから働けばなんとかなる」という余力・体力も残っている可能性が高いですよね。

一方で晩婚・晩産の場合、体力が落ち、収入が伸び悩む中で、支出はどんどんアップしていく。そのことを十分考慮した上で、キャッシュフローを考えておくことが大切です。ただアドバンテージとして、結婚・出産までに培ってきた資産やキャリア、人脈もあるでしょう。そこを大事にして、運用や資金配分、キャリア形成を考えながら、先細りに備える計画をしていただきたいと思います。

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高山 一恵(たかやま・かずえ)
Money&You 取締役/ファイナンシャルプランナー(CFPR)、1級FP技能士
慶應義塾大学卒業。2005年に女性向けFPオフィス、エフピーウーマンを設立。10年間取締役を務めたのち、現職へ。全国で講演・執筆活動・相談業務を行い女性の人生に不可欠なお金の知識を伝えている。著書は『はじめてのNISA&iDeCo』(成美堂出版)、『やってみたらこんなにおトク! 税制優遇のおいしいいただき方』(きんざい)など多数。FP Cafe運営者。

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(Money&You 取締役/ファイナンシャルプランナー(CFPR)、1級FP技能士 高山 一恵 構成=小泉なつみ)

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