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「1億円では全く足りない」40歳で早期リタイアするには本当はいくら必要か

プレジデントオンライン / 2021年9月21日 8時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/AlbertPego

若いうちにリタイアする「FIRE」という生き方が注目されています。ファイナンシャルプランナーの井戸美枝さんは「早くにリタイアすると老後の年金はもちろん、障害年金や遺族年金も減ります。そうしたデメリットや運用益が出せないという最悪の事態も想定しておく必要がある」といいます――。

■「FIRE」に必要なお金

定年を待たず、早期に仕事を引退して、ゆっくり暮らす。そんなライフスタイルに憧れる人から注目されているのが、経済的自立と早期リタイアを意味するFIRE(Financial Independence, Retire Early)です。

従来の早期リタイアが貯蓄や退職金などを取り崩しながら生活していくのを基本とするのに対し、FIREは投資で得る収益で生きていく、という違いがあります。資産を取り崩していけば次第に資産は減っていきますが、FIREは資産を運用し、その収益で生活するため、資産を大きく目減りさせないというのが特徴です(値下がりによって資産が減る可能性はあります)。

とはいえ、生活できるほどの運用益を得るには、まとまった額の元手が必要です。必要な元手の目安は年間支出の25倍とされており、年間300万円で生活するなら7500万円、年間400万円必要なら1億円となります。

運用利回りも重要です。FIREでは年4%を目安としており、7500万円を年4%で運用すると年間で300万円、1億円では同400万円の運用益を得ることができます。

年間支出の25倍の資産と、年利4%というのが、FIREのキーワードです。

■毎年いくらずつ貯めていく必要があるか

では、7500万円、1億円という資産を築くことはできるでしょうか。

たとえば、25歳から45歳までの20年間で7500万円を貯めるには、年4%の利回りでは年245万円、年3%では年間274万円のペースで貯める必要があります。

すでにまとまった資金がある人、収入が高い人など、「頑張ればいけそう」と思う人もいるかもしれません。しかし、20代~40代といえば、人生においてさまざまなイベントがある時期です。キャリアアップをめざす人も多いでしょうし、MBAなど自己投資をする人も多いと思います。住宅購入や子育てにもお金がかかります。人生のキラキラした時期には、人生を充実させるためにお金を使う、というのが大切なこと。FIREのために貯蓄に全力投球するというのは現実的ではないかもしれません。

■50代半ばのFIREを目標に

それでもFIREをめざすのであれば、50代半ばを目標にするといいのではないでしょうか。会社でのポジションもある程度決まり、役職定年で給与も下がる時期で、キャリアアップに励まない、という選択肢もあります(もちろん、新たな分野に踏み出すことも十分可能)。教育費もある程度のめどが立ち、資金に余裕があれば、準備が整っていると考えられます。

50代半ばでFIREといえる? と思うかもしれませんが、90歳まで生きるとすれば30年以上残っています。

年金と書かれた瓶の背景に、上向きと下向きの矢印
写真=iStock.com/takasuu
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/takasuu

■40歳でリタイアすると年金額は50万円以上少なくなる

リタイアする時期が早いと、年金額にも影響がでます。

会社員は厚生年金に加入していますが、リタイアすると、60歳まで国民年金に加入することになります。多くの場合、保険料の負担は軽くなりますが、厚生年金に長く加入した場合より、将来受け取る年金額は少なくなります。

実際にどの程度の差が生じるでしょうか。平均標準報酬月額32万円(生涯の平均年収384万円)で試算しました。結果は以下のとおりです。

リタイアする年齢ともらえる年金

今や65歳まで働くのは当たり前になっていますが、65歳まで働いて厚生年金に加入すれば65歳から169万円の年金が受け取れるのに対して、50歳でリタイアすると30万円以上、40歳でリタイアすると50万円以上も年金額が少なくなるのです。

これが生涯続くのですから、その差は大きいと言えます。

平均的な会社員においては、「現役を長く続けること」がスタンダードになりつつあります。65歳以降も働いて、70歳まで厚生年金に加入し、合わせて公的年金の受け取り開始を遅らせる(繰り下げる)と年金の額もより増えます。

もう1つ知っておきたいのは、早期リタイアして厚生年金から国民年金だけになると、遺族年金や障害年金の厚生年金分も減る、ということです。

遺族年金とは、加入者が死亡したあと、配偶者や18歳未満の子どもなど一定の条件を満たす遺族に支給されるものです。障害年金は、加入者が障害を負った場合に、障害の度合いに応じて支給されます。いずれも、国民年金のみより、厚生年金の上乗せがある方が、給付が手厚くなります。

早期リタイアによる、こうしたデメリットは、あまり知られていないかもしれません。

■運用益が出ない最悪の場合を考えておく

前述のとおり、FIREは資産の運用益で生活するものですが、十分な資産がない場合、または高い年利回りが得られない場合は、資産を取り崩すことになります。

また、確実に4%の運用ができるわけではありませんし、株式などには値動きがあり、運用で得られる収益には波がありますから、ある程度の余裕は持っておかなければなりません。

では、運用益をあてにせず、資産を取り崩す場合はどうでしょうか。

1年間の生活費が310万円として、90歳まで生きるとしましょう。リタイアしてから年金を受け取るまでの年数(40歳でリタイアなら25年)は年310万円、65~90歳までの25年間は年金との差額が必要という前提で試算しました。必要額は以下のとおりです。

FIREに必要なお金

この金額は基本的な生活費であり、ほかに介護や医療のためのお金、自宅のリフォーム費用なども見込んでおかなければなりません。それを自助努力と退職金で賄えるかが、早期リタイアができるかどうかの目安といえます。

■いざというときのための「稼ぐ力」は必要

「FIREに興味がある」という人は、なぜ興味があるのかを考えてみましょう。

仕事から離れて悠々自適で暮らしたいから?

たくさん稼げなくても、自分がしたいことに時間を使いたいから?

たしかに、ある程度の資産を築けば会社に縛られなくても済みますし、収入の多寡よりしたいことを優先するなど、選択肢が広がります。そのためには、iDeCoやつみたてNISAを使って、効率よくお金を貯めていくことが重要です。

もう1つ重要なのは、稼ぐ力を身に付けておくことです。

会社を辞めても、ほかの方法で稼げるだけのキャリア、人脈(人的資本)を持っておく。そうすれば、好きなことで、ストレスがない程度に働く、ということができます。ある程度の資産が用意できていれば、労働収入への依存度を下げられますから、完全なリタイアではなくとも、ほどほどに働くセミリタイアという生き方が可能となるでしょう。FIREを実現したあと、やっぱり少し働く、といった軌道修正もしやすいはずです。

大切なのは、メリット・デメリットを十分に理解したうえで、キャリアを選択すること。多様な生き方があっていい。そして、お金やスキルがあれば、その選択肢が広がることは間違いありません。

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井戸 美枝(いど・みえ)
ファイナンシャル・プランナー(CFP認定者)
関西大学卒業。社会保険労務士。国民年金基金連合会理事(非常勤)。『大図解 届け出だけでもらえるお金』(プレジデント社)、『一般論はもういいので、私の老後のお金「答え」をください』(日経BP社)、『残念な介護 楽になる介護』(日経プレミアシリーズ)、『私がお金で困らないためには今から何をすればいいですか?』(日本実業出版社)など著書多数。

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(ファイナンシャル・プランナー(CFP認定者) 井戸 美枝)

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