1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 経済
  4. ビジネス

堀江貴文「西野亮廣の『えんとつ町のプペル』が大成功したたった一つの理由」

プレジデントオンライン / 2021年9月17日 15時15分

画像=映画『えんとつ町のプペル』の公式サイトより

ビジネスで成功できる人とできない人の違いは何か。実業家の堀江貴文さんは「僕の知り合いで成功している人は、みんな図々しいくらい周囲を巻きこみ、独自のルールで大きなビジネスを回している。その代表例は西野亮廣くんだろう」という――。

※本稿は、堀江貴文『破戒のススメ』(実務教育出版)の一部を再編集したものです。

■海外に行けないので、日本の地方の再発掘をしている

2020年の春を最後に、海外に出ていない。1年以上パスポートを使った旅をしていないのは、20代で海外旅行に出て以来初めてだ。それまではビジネスや遊びで、多いときは毎週海外へ飛んでいた。現在でも行こうと思えば行けなくはないけれど、隔離期間など感染対策ルールが厳しく、行動を縛られる。自由に動けないのなら、海外に行ってもつまらない。ワクチン接種が進むのを待つしかない。

海外に行けない代わりというわけではないが、国内の地方出張を、毎日のように繰り返している。コロナ禍の前から、本州以外にも足しげく出向いていたけれど、せっかくの機会なので、日本の地方の再発掘に力を入れている。

僕は2018年に、時間を節約するための移動手段として、ホンダジェットをシェアで購入した。プライベートジェット機を買ったことで、国内移動のスピードは格段に上がった。午後に函館でゴルフした後、札幌で晩ご飯を食べることもできる。車なら4時間かかるが、飛行機なら20分だ。国内なら、だいたいの地方空港の間を、タクシーとさほど変わらない使い方で利用できる。本当に便利だ。

ホンダジェットのおかげで北は北海道、南は沖縄まで、散歩の足を延ばすような感覚で訪れ、魅力を再発見できている。

■利権構造がないから外資の流入が進んだ

近年、急速に価値を上げている地方の一つが、北海道のニセコだ。スノーボードを楽しむのに、1シーズンで何回も行っている。とにかく雪質が素晴らしい。世界でも屈指のパウダースノーを楽しめる雪質の良さが、海外のスキーヤーたちに知られたのが20年ほど前。平地に上質な粉雪が積もるニセコは、世界でも極めてレアな場所らしい。やがて、世界に知られるスキーリゾート地へと発展していった。

実業家の堀江貴文さん
撮影=柚木大介
実業家の堀江貴文さん - 撮影=柚木大介

外国人の移住や外資系の投資が進み、ニセコの地価は高騰した。2016年には標準地の地価公示値上がり率が19.7%を記録した。これは当時の全国トップだ。

かつてニセコは、北海道の中でも打ち棄てられていた「陸の孤島」だった。そのため地元の利権構造とは無関係で、海外からの投資がスムーズに参入できたのだ。パークハイアットニセコなど、海外富裕層向けの設備も増えた。寂れていたからこそ再興のチャンスをとらえられた、痛快な例だろう。

街にはスキーシーズン以外にも、海外のお金持ちが集まるようになり、近年は面白い人たちが交流を深める、東アジアの新しいサロン的な役割も果たしている。コロナ禍で外国人たちはぱったりと途絶えてしまったが、広いゲレンデを独占して、パウダースノーを好き放題に楽しめるチャンスといえる。ニセコへスキーに出かけSNSで発信すれば、世界のスキー愛好家がフォローしてくれる可能性がある。

いずれ、外国人客は戻ってくる。不要不急が避けられているいまこそ、世界に見つけられた地方都市の魅力を、体感してみる好機だろう。

■地方に眠っている大きなポテンシャル

ニセコ以外にも、世界に向けてアピールできる地方の観光都市は少なくない。

徳島の阿波踊りや、九州の五島列島のリゾート開発、宮古島のダイビングなど、地方に昔から続いている観光業が、広く海外で知られ関心を集めている。

中でも、グルメの力は見逃せない。肉に魚に野菜、寿司に鍋にラーメン……。日本ほど、都会だけでなく全国各地にうなるほど美味しい名産グルメが存在している国は、めったにない。世界中を旅した僕が言うのだから間違いない。「小麦の奴隷」や、長野県東御市八重原で田植えから製造した純米大吟醸「想定外」「想定内」など、グルメの力を活かした地方発信のビジネスを、僕らも手がけている。

まだまだ地方には、ポテンシャルが眠っていると感じる。ニセコのように埃をかぶっているだけで、適切な手入れと投資を行えば、成長を遂げる都市はいくつもある。

僕たちの宇宙事業が根づいたことで、「ロケットの町」として全国区の知名度を得た、北海道の大樹町も成功例だ。辺鄙な地方の町ではいまこそ、不要不急に求められるヒットの法則が、発掘されるのを待っている。

■ロケット事業の成功は優秀な人材のおかげ

コロナ禍のビジネスで苦労する要素の一つが、人材集めだ。

対面での面接はなかなか難しいし、人からの紹介も、さかんには行えない。JALなど大手企業のいくつかは、2021年度から従業員の新規採用を見送っている。業績の上向きがしばらく期待できない業種では、仕方ない部分もあるだろう。

企業はすでに、多くの死活問題を抱えてしまっている。人集め自体が不要不急とされる現在の風潮は、とりわけ厳しいだろう。成長戦略において、人材確保は資金集めと並ぶか、それ以上に重要なタスクだ。優れた人材が得られれば、事業プランの成功は半ば保証されたようなものだからだ。

僕が起業した当初から成功を重ねられたのは、国内トップクラスのプログラマーだった小飼弾さんほか、各分野の若き才能をスカウトできたことが大きい。いま手がけている事業でも、ゼロ高顧問の成毛眞さん(元マイクロソフト日本法人社長)や佐渡島庸平さん(コルク代表)など、著名な実業家を顧問に招き好調な運営を実現できている。

インターステラテクノロジズ代表取締役の稲川貴大くんは、東工大の学生時代に大手メーカー・ニコンへの就職が決まっていたが、僕のスカウトにより、ロケット開発の道へ進んだ。彼は能力の高さはもちろん、若いエンジニアたちを引きつける不思議な人望があった。ロケット事業の現在の成功は、彼なくしてありえなかっただろう。

■「人材集め」こそコロナ禍以降の重要な生き残り戦略

こんな時代だからこそ、人知の力がより見直されている。テクノロジーの知識も大切だが、マンパワーによって打破できる場面は多い。僕もいろんな知り合いのビジネスで、絶体絶命のピンチに追い詰められながら、スタッフの強烈なマンパワーで苦境を覆した例を目の当たりにしてきた。人集めを怠けてはいけない。募集は困難になっているが、SNSの発信やオンラインイベントで、スカウト活動は工夫できるはずだ。

ワクチン開発の驚異的な進展と現在急ピッチで進む接種により、コロナ禍にもわずかではあるが、光が見えつつある。光が広がり、街に笑顔の戻ったそのときに「いいスタッフがいない」のでは、立て直しなど根本的に無理だ。

いまだからこそ、感染予防の方法より、優れた人材をあなたの身の回りに集めてほしい。それが不透明なコロナ禍以降の、重要な生き残り戦略だ。

■成功者はみんな図々しいくらい周囲を巻きこんでいる

僕より経営の才能があるビジネスマンは少なくないだろうけど、人を巻きこむ熱意は誰にも負けない。「欲しい」と思えば必死で口説き倒し、スタート時はお金が少なくても事業拡大に必要なら、人をどんどん増やす。「うちで一緒に働いてくれない?」という呼びかけは年中、行っている。緊急事態宣言下でも変わりない。

厳しい時代に推進力となるのは、他人を巻きこむ力だ。ゆめゆめ、受け身になってはいけない。巻きこまれる意識でいると、自粛ムードなど根拠はないのに、強制力のやたら高い圧力に抗えず、時間とやる気を搾取されるだけだ。

人を巻きこみ、ルールを変える側に立とう! 僕の知り合いで成功している人は、みんな図々しいくらい周囲を巻きこみ、独自のルールで大きなビジネスを回している。

■『えんとつ町のプペル』が成功した理由

最近とりわけインパクトのあった成功例は、絵本作家で芸人の西野亮廣くんだろう。自身が原作を手がけた『えんとつ町のプペル』が、出版だけでなく映画でも社会現象を起こしたのは、みんな記憶に新しいはずだ。

堀江貴文『破戒のススメ』(実務教育出版)
堀江貴文『破戒のススメ』(実務教育出版)

2021年の日本アカデミー賞・優秀アニメーション作品賞を受け、観客動員数150万人、興行収入20億円以上を記録した。マンガ原作ではない長編作品では、アニメ史に残る快挙だ。国内のみならず、海外の映画祭でも続々上映されている。

成功を支えたのは、もちろん作品の完成度もあるが、西野くんのオンラインサロンのメンバーによる地道な広報・宣伝活動が大きい。誰に強制されるでもなく、数万人の会員たちが全国各地で劇場に足を運び、作品の面白さを広く発信した。映画にヒットの法則はないと言われるが、結局のところ、口コミの力は最強なのだ。

『えんとつ町のプペル』は、西野くんの他人を魅了し、巻きこむ力が存分に発揮された成功例といえる。次回作以降で、ディズニーを倒す! という壮大なゲームを、彼はクリアしてしまうかもしれない。

他人を巻きこむ力が連鎖していけば、揺るぎなかった常識もいつか覆せるのだ。

----------

堀江 貴文(ほりえ・たかふみ)
実業家
1972年、福岡県生まれ。ロケットエンジンの開発や、スマホアプリのプロデュース、また予防医療普及協会理事として予防医療を啓蒙するなど、幅広い分野で活動中。また、会員制サロン「堀江貴文イノベーション大学校(HIU)」では、1500名近い会員とともに多彩なプロジェクトを展開。『ゼロ』『本音で生きる』『多動力』『東京改造計画』『将来の夢なんか、いま叶えろ。』など著書多数。

----------

(実業家 堀江 貴文)

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください