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「小6女子いじめ自殺」チャットに書かれた誹謗中傷はなぜ消されていたのか

プレジデントオンライン / 2021年9月14日 13時15分

2020年11月30日、小学6年生で自ら命を絶った山根詩織さん(仮名) - 筆者撮影

昨年11月、全国に先駆けて「一人一台端末」を配った東京都町田市の小学校で、小6の女の子がいじめを苦に自殺した。遺族は女の子の遺書を持って学校に行き、調査を依頼。しかし、GIGAスクール構想の旗振り役として知られる校長は「いじめは解決していた」と繰り返すばかりだった。告発スクープ第2弾――。

■「最初は学校を信じていました」

町田市の小学校に通う6年生の山根詩織さん(仮名)が、自室で亡くなっているのが発見されたのは、2020年11月30日(月)の0時半頃。兄の信哉さん(仮名)が0時を過ぎても部屋の明かりがついているのを不審に思って部屋をのぞいたところ、首をつって絶命していた。

部屋を探すと、鍵がかかった机の引き出しの中から日記形式で書かれた遺書が見つかった。そこには、「A子とB子にいじめられている」「こいつらのために自分は死ぬ」「もうラクになりたい」などと綴られていた。

いじめについて、両親はまったく気づいていなかったという。

「娘は学校を欠席したこともなかったし、友達の悪口を言うこともありませんでした。だから、亡くなった娘を見た時に、一体、何が起こっているのか……理解できませんでした。遺書を見つけて、いじめを受けていたと書かれていたのですが、初めて知る内容ばかりで、混乱しました」(母・弘美さん/仮名)

明るく快活で、学校を欠席したことがなかった詩織さん(仮名)。写真は5年生の林間学校
明るく快活で、学校を欠席したことがなかった詩織さん(仮名)。写真は5年生の林間学校(写真=母親提供)

翌朝、学校に電話で亡くなったことを伝え、夕方にはA校長を訪ねた。そこにはA校長と副校長、6年生の担任3名が待っていた。

「いじめのことが書き綴ってあるから、調べてくださいとお願いして、遺書のコピーを渡しました。私たちは何もわかっていなかったので、学校に助けを求める気持ちでした」(弘美さん)

そして、最初は子供たちに自殺したことは言わないでほしいと伝えたという。

「自殺したと聞いたら、子供たちがショックを受けて、本当のことを話してもらえなくなると懸念したんです。だから、まずは子供たちに死んだことは言わずに調べてくださいとお願いしました。あとからわれわれはこのときのことを後悔することになるのですが、学校を信じていたんです」(父・達彦さん/仮名)

■心のアンケートでSOSを出していた

山根夫妻から調査を依頼されたA校長は、「ちょうど今、ふれあい週間で、これから人権週間が始まるので、それを理由にそれとなく子供に聴き取りを行います」と請け負い、結果は毎週金曜日の夕方5時半に報告することになった。

報告のなかで学校側から、9月10日に実施した「心のアンケート」で、詩織さんが「友達関係に悩みがある」と書いていたことを知らされた。

「学校は9月10日の心のアンケートのあと、詩織に話を聞いて、A子とB子にいじめられていることを聞いていました。詩織はA子とB子には言わないでほしいと言っていたそうですが、担任のB先生は二人に伝えてしまったのです。9月14日、放課後の委員会活動で3人が集まった時に、当事者だけで話し合いをしたそうです。その時、A子とB子は詩織に謝罪していじめは解決したとB先生に報告したと言うのですが、とんでもないと思いました。詩織は、遺書を9月23日から書き始めていたからです。当事者同士で話し合いをさせた結果、解決どころか、エスカレートしたのだと思いました」(弘美さん)

遺書は、鍵がされた机の中で発見された(写真=母親提供)
遺書は、鍵がされた机の中で発見された(写真=母親提供)

弘美さんは、詩織さんが書いた心のアンケートのコピーをもらいたいと頼むと、「情報管理の手続き上、渡せない」「ご自身で市役所に取り寄せに行ってください」という回答だった。このあたりから、学校だけに任せていては本当のことはわからないかもしれないと思うようになったという。

「いやな予感は11月30日の時点でありました。夫が担任のB先生に『山根詩織がいじめられているのを知っていましたよね?』と聞いたら、『はい、知っていました』と即答しました。すると、A校長が『いやいやいやいや、B先生、そういうことではないですよね?』と制止したんです。B先生が口をつぐんでしまったので、私は『人が一人亡くなっているので、きちんと調査してください』とお願いしましたが、このあとの聴き取り調査の報告で学校から上がってくるのは、『9月にいじめは解決した』という話だけでした」(弘美さん)

■リーダー格の女子4人に振り回されていた

学校任せにできないと思った弘美さんは、12月5日から詩織さんが亡くなったことを伏せたまま、同級生への聴き取り調査を始めた。そこで、学校で配られたクロームブック上で「詩織、まじキモイ」「ウザイ」「死んでほしい」などと書かれていたことがわかった。

「詩織の友達から聞いたことを伝えて、そのことを学校でも調べてほしいと頼みました。すると、実際にA子本人が先生に『チャット(ハングアウト)で悪口を書いていて、B子に送っていた』と認めました。それは二人だけのやりとりだけだったのですが、詩織のパソコンの調子が悪くて、その時は仲良くしていたB子の端末を借りて作業したときに、A子からB子に『まじキモイ』『ウザイ』『死ねばいいのに』などのメッセージが送られてきたのをたまたま見てしまったようです。戸惑った詩織が、友達のC子とD子に相談したことを、学校の聴き取り調査でC子とD子が話しています」(弘美さん)

保護者の話によると、A子・B子、C子・D子は、「6年生女子のスクールカーストの上位4人で、A子・B子コンビ、C子・D子コンビはライバル関係で何かと張り合っていた」という。詩織さんは誰とでも仲良くするタイプで、もとは4人と仲良しだった。

チャットで悪口を書かれたことをきっかけに、C子とD子と過ごすことが増えた詩織さんだったが、誘われればA子・B子とも遊んだり、帰ったりしていた。すると、C子・D子が「かばってやったのに、裏切り者」とクラスの同級生の前で絶交を宣言。どちらからも見放される形となり、同級生たちも4人の報復を恐れて、誰も表立っては詩織さんと仲良くできない状態に陥っていたという。

■チャットの履歴がハッキングで消された?

12月中旬に、弘美さんはチャットの履歴を見せてほしいと学校に依頼する。

すると12月24日にA校長から電話がかかってきて「チャットで悪口が書かれていたのは事実でした。でも、私たちも不思議なんですが、履歴が消えています。書き込んだと認めたA子さんも、『あれ、ない?』と戸惑っていました。誰が消したかわからない、ハッキングにあったかもしれません」と報告があった。

“ハッキング”というと大がかりな事件のようだが、この学校ではIDは出席番号、パスワードは123456789と全員が共通だった。だから、誰でもやろうと思えばA子のアカウントにログインして、チャットの内容を見ることも消すこともできた。

詩織さんの同級生の男の子はこう証言する。

「11月30日以降、詩織が学校にこなくなってから、なぜ学校に来ないのか、それはA子・B子、C子・D子がいじめていたからだとみんなが噂するようになりました。そのとき、C子・D子の子分みたいな男子の孝(仮名)が、C子とD子のせいじゃないと証明するために、A子のアカウントにログインして、悪口を見つけて僕に見せてきました。そこには『死んでほしい』と書かれていて、ひどいなって思いました」

■「加害者の後追い自殺が心配です」

山根さんの家には、12月になると詩織さんの同級生から「早く学校に来てね」という手紙が届いたり、「なぜ、学校を休んでいるの?」と問い合わせが来るようになった。

山根夫妻は「子供たちに嘘をつくことがつらい」と感じるようになり、A校長に対し「年明け早々には自殺を公表してほしい」と依頼した。

するとA校長は「とんでもない。加害者が後追い自殺する危険性があります。後追い自殺って本当にあるので、公表はできません」と断った。山根夫妻が何度頼んでも、「いまの段階では厳しい」と口止めされ、子供たちに嘘をつき続けるしかなかった。当時、子供たちの間では、「山根詩織は不登校になった」と受け止められていたという。

このあと、学校の隠蔽ともとれる対応は露骨になっていく――。

(続く。次回は9月15日公開予定)

(プレジデントオンライン編集部 森下 和海)

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