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「人間はバカになるようにできている」現代人が陥っている"脳の罠"5つ

プレジデントオンライン / 2021年9月25日 15時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/koyu

40代を超えても脳が若い人、老化がどんどん進む人がいる。その決定的違いとは? 「脳をダメにする根本原因があるんです」と言うのは「脳の学校」代表の加藤俊徳氏だ。セブン‐イレブン限定書籍『45歳から頭が良くなる脳の強化書』からその驚きの仕組みを特別公開する──。(第2回/全3回)

※本稿は、加藤俊徳『45歳から頭が良くなる脳の強化書』(プレジデント社)の一部を再編集したものです。

■脳は鍛えるほど適応力が高まる

人は生きていく過程で、さまざまな出来事や問題に直面します。新しい環境や仕事に適応できない、能力を発揮できない、というのは、脳がこれまでの人生で経験してきたこととは異なる「新しい情報」に対して、自分の脳を変えられないということ。

決め手は適応力です。

もし、新しい出来事に対してストレスを感じるようであれば、脳を鍛えることによって、あるいは強化することによって、適応力が生まれてスムーズに対処できるようになっていきます。

まだ20代、30代の若い人はもちろん、40代を過ぎても、適応力を高め、これからも自分の「脳」をもっと高めたい、レベルアップしたいですよね。しかし現代社会は、普通に毎日を送っているだけで脳のパワーをおかしくする「罠」がいっぱいあります。

その中でもとくに注意したいのが、次の「5つの罠」です。デジタルに極端に偏った今の暮らしぶりそれ自体が、私たちの脳の機能を低下させているのです。

■【脳の罠①】脳の使い方がアンバランスになる

脳の成長には欠かせないものがあります。「情報」です。入ってくる情報が多ければ多いほど、脳は成長します。情報とは、五感から得るさまざまな「刺激」を意味します。

インターネットやSNSなどから得るデジタル情報は、主に文字や画像、音声で、そこから獲得する刺激は視覚・聴覚のごく一部に偏り、全身の感覚(五感)を通じて得る刺激は極端に少なくなっています。つまり、現代人は脳の使い方がすごくアンバランスになってしまっているわけです。

脳には、繰り返し何度も使う部分は鍛えられ、使われない部分は休眠状態になるという性質があります。

脳の使い方がアンバランスになって休眠状態の部分が生まれると、目の前にある情報を、情報として認識しないということが起こります。その結果、家族や仕事相手と話をしていても、微妙な表情の変化(怒りや疑問)などに気づくことができず、トラブルが生じてしまうこともあります。

■【脳の罠②】欲求を無限に追求してしまう

インターネットやSNSには、私たちの脳に働きかけ、欲求を刺激するさまざまな仕掛けが用意されています。

あなたは、いちどチェックした製品の類似商品が、ほかのサイトを見たときに自動的に表示され、ついクリックして買ってしまった、という経験をしたことがないでしょうか。これは、欲求を刺激する仕掛けにみごとにハマってしまった例です。

いちど見た情報は脳に記憶されます。そして、もういちど同じものを見ると、2回目の情報が1回目のものと同じかどうか、脳内で確認作業が始まります。

こうした情報の確認を何度もすると、その記憶が「体験記憶」となって脳に定着します。すると脳は、その情報に親近感を覚え、それを選択しやすくなってしまうのです。これは、商品の購入だけでなく、ネット中毒全体の構造です。

■【脳の罠③】リセットができない

いちどネット中毒やゲーム中毒になってしまうと、やめたい、でも、やめられない……という状態に陥ります。

私たちは、何かにのめり込むと自分の欲求を満たすことが最優先になり、ほかのことはどうでもよくなってしまいます。すると、食事も、寝る時間も関係なくなってしまいます。

いちばんの問題は睡眠です。脳は自然に適応するようにできています。太陽が昇ったら活動を始め、沈んだら終了するという「自然のサイクル」に合わせて動いています。そして、睡眠によってリセットされるようにできています。

ところが、深夜までネットサーフィンやゲームをしていると、このリセットができません。パソコンやスマホは、夜になったからといって自動的に電源が切れるわけではないので、自分でやめようとしない限り、脳をリセットすることができないのです。

■【脳の罠④】依存しやすい

脳のリセットができない状態が続くと、ネットに依存する「脳のクセ」が確立されてしまいます。依存とはまさに、自分の欲求を抑えられない状態です。

依存の対象になるものには、買い物やギャンブル、ゲームなどいろいろありますが、インターネットやSNSはその代表といえます。

■【脳の罠⑤】脳を怠けさせる

ネット機能だけではありません。常にパソコンやスマホが身近にあることで、今やこれらは、脳の重要な働きのひとつである「記憶装置」として大活躍しています。

かけたい相手の電話番号だけでなく、辞書がわりに漢字を調べたり、ちょっとした計算すらスマホやパソコンの計算機能に頼ったりしてしまうことで、脳にはすっかり怠(なま)けグセがついているのです。

■「したい」「やりたい」という欲求が脳を進化させる

脳を成長させるために必要なもの、それは、人間の「したい」「やりたい」という欲求です。

欲求がなくなると、人間は途端に衰え、老化していきます。ですから、脳の罠にハマることなく、脳が本来持つこのパワーを取り戻さなければなりません。

実際、脳のMRI画像を見ても、「◯◯したい」「××に行きたい」といった欲求があまりない人の脳は、活発な部分の範囲が徐々に狭くなり、使われている脳の回路が少なくなっていることがわかっています。

つまり、私たちは、積極的に欲求を生み出すとともに、それをうまく消化し、満足度を高めるような生活を送るように心掛けなければならないのです。

■「欲求」と「情報」は比例関係にある

欲求は情報がなければ生まれません。情報が増えれば増えるほど、それに合わせてやりたいことや見たいもの、食べたいもの、行きたい場所が増えていきます。つまり、欲求と情報とは本来、比例関係にあるわけです。

ところが、今の時代は情報だけが多すぎて、脳が処理できなくなり、両者のバランスが取れなくなってしまっています。とりわけインターネットやSNSには、私たちの欲求を満たすあらゆる要素が詰まっています。

赤いバイクに乗る高齢者
写真=iStock.com/Deagreez
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Deagreez

これらから発せられる情報は、目や耳を通して直接私たちの脳に飛び込んできます。そして、私たちの脳は、ニュースやゴシップ、セール情報など、いったん目の前の面白そうな情報に飛びついてしまうと、それを消費し、飽きてはまた次の「何か」を追い求めて漂流することになります。

そうして脳の使い方がどんどんアンバランスになり、脳の中に使われない部分ができてきます。その結果、脳の一部分の働きが鈍って、次々と現れる情報を情報として認識しなくなると同時に、欲求に対する「感度」が徐々に鈍っていきます。

■「年齢とともに枯れる」美学は誤り

現代社会を生きる私たちは、まず自分にとって「何が本物の欲求なのか」を判断するのが難しい。子どものころから周りと同じ考え方や行動をするように教育され、自分の気持ちに正直になれず、本来あってしかるべき「正当な欲求」まで抑圧してしまっています。

ですから、あなたにとって必要な欲求、心地良い欲求、あなたの内面から湧き起こる「本物の欲求」を見極めなければなりません。

そして、それ以上に大切なのが欲求を持続させること。いくつになっても、「あこがれのスターに会いたい」とか、「エベレストに登ってみたい」など、強く願う気持ちを持ち続けている。それこそが脳を成長させる原動力となるのです。

日本ではむかしから、「枯れの美学」のような思想がありますが、脳の機能から見れば、とんでもないことです。

また、「本物の欲求」だからといって、欲求がひとつでなければならないということもありません。たとえひとつの欲求が実現できなくても、気持ちが途切れないように、欲求の選択肢は多数あったほうがいいのです。

歳を重ねたときに、どうしても実現したい欲求が目の前に見えていれば、しかもそれらがたくさんあればあるほど、まだまだあなたの脳は「成長している」ことになるのですから。

■無意識に動く「脳の自動化」は要注意

「本物の欲求」を見極め、持続させるためには、それに適した「脳内環境」が必要です。

私たちの脳は、ひとつの動作を繰り返し続けていると、何も考えなくても自動的にその動作を完結させる回路が頭の中に形成されます。外出するときに、ドアのカギを締めたり、エアコンを消したり、そうした行為は無意識のうちに行われているものがほとんどです。

こうした回路が形成されるプロセスを、私は「脳の自動化」と呼んでいます。

自動化は習慣的に行っているものなので、あれこれ考えなくても、体が勝手に動きます。ですから、あとで記憶をたどっても確実に実行したのかどうか、まったく覚えていないということがよく起こります(カギを締めたかどうかの記憶はなくても、たいていの場合、カギは締まっています)。

■脳には「怠けグセ」がある

なぜ脳は、自動化しようとするのでしょうか。それは、人間が楽なほうに流れやすい生き物で、脳はより負担のかからない状態を選びたがるからです。つまり、脳には「怠けグセ」があるのです。

加えて、人は成長する過程で、脳が自動化するように徹底的に教育されます。計算問題や漢字の書き取りなどは、勝手に手が動いてしまうまで脳が自動化された(教育された)成果です。

自動化というものはいわば、私たちが生きていくうえでの知恵であり、社会生活を営むうえで欠かせないものですが、それにあまりに頼りすぎるようになれば、脳はやがて成長を止めてしまうでしょう。

■「慣れ」は欲求の発生と育成を妨げる

成人していろいろな経験を重ねると、自分が今持っている知識や経験を使えば、ほとんどのことが「なんとかなる」ようになってきます。すると、人にはそれなりの自信が生まれ、ものごとを「慣れ」た方法で処理しようとします。

ところが、慣れに任せていると、自動化された脳が勝手に働くだけなので、脳に新たな刺激を与えることができません。すると、使っていない脳の部分を開発することができず、結果として「新たな欲求」が生まれにくくなります。

欲求の発生と育成を妨げるいちばんの敵は「慣れ」です。「慣れ」から解放されるために、私たちは「脱・自動化」を目指さなければなりません。

■「新しい経験」こそ脳が成長するチャンス

だからこそ、毎日の生活の中から「慣れ」を排除していきましょう。

「いつも同じことをしているなあ」と感じることがあれば、少し違った方法でやってみる。あえて今まで経験していなかったことに挑戦してみる。「脱・自動化」です。

現代脳科学が私たちに教えてくれることは、「人間は、脳が一生成長する生き方ができる」ということであり、その極意は、新しい経験を「チャンス」と捉えてチャレンジする、ということなのです。

40代後半を過ぎてもなお、「人生まだまだこれから」と自分に言い聞かせ、いくつになっても常に新しい経験をする。その姿勢が、みずからを若返らせ、さらには脳をイキイキとさせます。それが将来的な認知症の予防にもつながりますから、こんなに「いいこと」はありません。

■「潜在能力細胞」という宝の山を生かそう

脳は一生成長する器官です。その成長のカギを握るのは、胎児のときに得た神経細胞にあります。

加藤俊徳『45歳から頭が良くなる脳の強化書』(プレジデント社)
加藤俊徳『45歳から頭が良くなる脳の強化書』(プレジデント社)

一般に、脳の神経細胞は40代後半には老化が始まります。ところが、私たちの脳の中には、実は生まれたときから同じ状態を保ち、使われずに眠ったままの神経細胞が山ほどあることをご存じでしょうか。私はこれを「潜在能力細胞」と呼んでいます。

「潜在能力細胞」は100歳を過ぎてもなお脳内に存在します。胎児のときに母親から受け継いだ細胞が、その間ずっと刺激を受けるのを待ち続けているのです。そして、新しい経験をしなければ、目覚めないまま放置されてしまいます。

潜在能力細胞は、まさに私たちにとって宝の山です。

40代、50代になったら、お金の財テクだけでなく、脳の中の「お宝」もしっかり運用することが必要なのです。

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加藤 俊徳(かとう・としのり)
脳内科医
加藤プラチナクリニック院長。脳の学校代表。発達脳科学・MRI脳画像診断・認知症などの専門家。独自開発した加藤式MRI脳画像法を用いて、1万人以上の診断・治療を行う。著書に『何歳からでも! 脳を育てるトレーニング』ほか多数。

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(脳内科医 加藤 俊徳)

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