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「先生の話を聞きながらノートをとれない」マルチタスクができない子どもが増えたワケ

プレジデントオンライン / 2021年9月26日 15時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Dusan Stankovic

40代を超えても脳が若い人、老化がどんどん進む人がいる。その決定的違いとは? 「脳をダメにする根本原因があるんです」と言うのは「脳の学校」代表の加藤俊徳氏だ。セブン‐イレブン限定書籍『45歳から頭が良くなる脳の強化書』からその驚きの仕組みを特別公開する——。(第3回/全3回)

※本稿は、加藤俊徳『45歳から頭が良くなる脳の強化書』(プレジデント社)の一部を再編集したものです。

■「スマホ脳」が脳力をダメにする理由

現代人は日常的にスマホを使い、SNS経由でコミュニケーションをとっています。常に小さい画面で文字や画像を見続けているわけです。

テレビの良さというのは、実は画面が大きいことなのです。画面が大きければ大きいほど脳にはいいと思います。大画面テレビを見るときには、映画館の大スクリーンで映像を見るときのように、眼球を上下左右に動かします。

ところがスマホは画面が小さい。目を開けているだけで、自分で眼球を動かして情報を取らなくても済んでしまいます。

また、スマホのSNSを使ったやりとりでは、電話など音声のみのコミュニケーションにも馴染(なじ)みがありません。結果として現代人は、「視覚系脳番地」だけでなく、コミュニケーションの出発点としての「聴覚系脳番地」をも使っていないことになるのです。

■人間の可能性を拓く「脳番地」という考え方

ちなみに「脳番地」というのは、私が提唱している考え方で、図のように人間の脳を、同じ働きをする神経細胞集団ごとに分類して捉える考え方です(詳しくは『45歳から頭が良くなる脳の強化書』参照)。

出典=加藤俊徳『45歳から頭が良くなる脳の強化書』(プレジデント社)
出典=加藤俊徳『45歳から頭が良くなる脳の強化書』(プレジデント社)

中でも主な脳番地には、「①思考系脳番地」「②伝達系脳番地」「③運動系脳番地」「④感情系脳番地」「⑤理解系脳番地」「⑥聴覚系脳番地」「⑦視覚系脳番地」「⑧記憶系脳番地」の8つがあります。

■複数の脳番地を使う「電話」が苦手な若者たち

最近話題になっているのが、職場で電話対応ができない若者です。

電話というのは、「聴覚系脳番地」を使うことはもちろん、脳の中で同時処理を行い、複数の脳番地を同時に使わないと対応できない、複雑な作業です。まず、耳から相手の話すことを聞いて、見えない相手の状況や心情を察し、相手に共感しなければなりません。私はこれを「耳から空気を読む」と表現しているのですが、たいへん難しい作業です。

とくに「感情系脳番地」が弱い人は、声を通して相手の心情を察知するのが難しいため、的外れなことを口にして、相手を怒らせてしまうことも少なくありません。

■話を聞きながらメモを取るのは脳のマルチタスク

電話だけではありません。相手の話を聞きながらメモを取ることが苦手な人が増えています。

学校の授業でも、先生が黒板に書いていることを、先生の話を聞きながらノートに書き取ることができない子どもがいます。メモを取るのが嫌なのではなく、聞くか書くか、どちらかしかできないのです。これは「運動系脳番地」が働いていないことからくるものです。

仕事などで求められる電話対応は、①聞いて、②内容を把握して、③メモして、④ほかの人につなぐ、複数の能力が求められる超マルチタスクです。

いわゆる「スマホネイティブ世代」では、固定電話を見たことすらない人も多く、脳のマルチタスクの経験がごく少ないのです。この世代の若い人たちに適切な電話対応を求めるのであれば、きちんと訓練をして、そのための能力を開発しなければいけないでしょう。それでも、なかなか困難な道のりです。

身近なところでは、年配の人の長話に付き合ったり、友だちや後輩の相談事に乗ったりするなど、相手の話を聞いて共感する経験を積むことがおすすめ。「聴覚系脳番地」「感情系脳番地」が鍛えられ、電話対応も上達するようです。

■脳は80歳からでも20代30代と同様に成長する

それでも、脳には「希望」があります。脳は一生未完成だからです。

細かく分けると約120カ所ある脳番地で考えれば、まだまだ使っていない、眠っている脳番地がたくさんある。つまり、電話のようなマルチタスクが苦手な若者も、年を取って後半生に入った人も、これから成長する可能性のある「お宝」ともいえる脳番地が、いくらでも残されているのです。

80歳になったとある経営者のケースです。

この社長さんは、すごく元気で、70代でダンスを始めたり囲碁の有段者になったりと、とても活動的な方でした。ただし80歳の現役社長であるため、座って仕事をする時間が長かったのですね。

そんなある日、「もうちょっと僕の脳が元気になる方法はないですか?」と訊(き)かれたので、「今までやってないことに、チャレンジしてください」と私が言うと、「僕、ドラムはやったことがないんですけど、ドラムでも脳は鍛えられますか?」とのこと。それで、「ドラムは両手両足を使うので、とても良い運動になりますよ」と伝えました。

複数の矢印
写真=iStock.com/oatawa
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/oatawa

すると、社長さんは週に1回、ドラムを習い始めて、家でも練習するようになりました。

■81歳から脳が「激変」した…

この社長さんのドラムを習う前(80歳時)と1年間ドラムを習ったあと(81時)のMRI画像(図表2)を見てください。

【脳の新常識】80歳からでも脳は成長する
出典=加藤俊徳『45歳から頭が良くなる脳の強化書』(プレジデント社)

誰でも年齢を重ねると脳はある程度縮んできますし、MRI画像で見ると白く見える箇所(不活発な部分)も増えてきます。

しかし、この社長さんの2つのMRI画像で点線で囲んだ部分を比較すると、81歳になって「枝ぶり」が成長して黒くなっていることが確認できます。明らかに、使っていなかった脳番地が活性化したのです。

80歳の人でも、たった1年で、20代、30代と同じレベルといっていいくらいに脳は成長する可能性を秘めている。どうか、そのことを覚えておいてください。

■脳の一部が壊れても、別の部分が成長・変化する

加藤俊徳『45歳から頭が良くなる脳の強化書』(プレジデント社)
加藤俊徳『45歳から頭が良くなる脳の強化書』(プレジデント社)

脳の可能性は、それだけではありません。

病気やケガなどで、脳の一部が病んでいたとしても、それは脳が完全に不健康な状態にあるということにはなりません。

MRI画像で見ると、脳の一部が壊れていても、一方で健康な脳の部分もあることがわかります。

脳の病気や損傷で体の一部が不自由になったとしても、脳の別の部分を訓練することで脳は成長し、どんどん変化して、能力を回復する可能性があるということです。

これこそが、脳が示す「希望」だと私は思っています。

■脳が変われば「新しい自分」になれる

それまで使っていなかった脳番地を使っていくと、それにともない考え方や行動パターン、さらには、能力やスキル、性格といったものも変化していきます。

「今のあなた」は、あなたがこれまで、どの脳番地を使ってきたかが表れているにすぎません。脳番地の使う部分を変えたり、増やしたりすることで、それに合った「新しい自分」が表れ始めます。自分を変えることができるのです。

拙著『45歳から頭が良くなる脳の強化書』では、脳番地ごとの鍛え方についても紹介しています。こちらも参照しながら、ぜひ人生においていろいろなことにチャレンジしてみてください。脳番地を鍛えるのは、自分の個性を磨くことにつながりますから。

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加藤 俊徳(かとう・としのり)
脳内科医
加藤プラチナクリニック院長。脳の学校代表。発達脳科学・MRI脳画像診断・認知症などの専門家。独自開発した加藤式MRI脳画像法を用いて、1万人以上の診断・治療を行う。著書に『何歳からでも! 脳を育てるトレーニング』ほか多数。

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(脳内科医 加藤 俊徳)

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